SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ 第二章 第13話

 霞を食った仙人、というのはこういった気持ちなのだろうか。

 男、茅場晶彦はとある県境に存在している山の中、優雅なティータイムを楽しみながら考えていた。

 自分がこの場所で、潜伏を始めてからもう二週間になる。その間、誰一人としても自分の居所はつかめていない。

 考えてみれば当然の話だ。自分が、この場所にいると教えた人間は、誰一人としていない。

 さらに言えば、この場所を探し当てることは絶対に不可能なのだから。

 電気も、ガスも、水道も、ライフラインのすべてを絶ったこの山の中腹に存在する小屋を見つけること、それは未だ存在を確認されていないUMAを見つけるのに等しい行いだ。

 そう、彼は考えながら、冷蔵庫の中に保管してある高級なマスクメロンを取り出した。

 網目状に付いたその皮の凸凹はまるで今の自分たちの人生そのもののように見える。

 いくつもに枝分かれしたソレ。本来のメロンは、最初の内はなんの傷も凹凸もまいただのまっ平らな皮だった。

 しかし、それが成長することによって無数の凹凸がその皮に刻まれていき、美しい芸術品かのような姿を見せている。

 まさしく、今のこの地球の、果ては現在のSAOの世界のソレと同じではないか。

 その既視感に感動しながらも、つい昨日買ってきたばかりでとても新鮮なソレに、刃を入れようとした。

 その時だった。

 

「ん?」

 

 パソコンが、鳴り響いた。どうやら、自分の作った城の中で何かが起こったらしい。

 茅場はせっかく出したメロンを再び冷蔵庫の中に入れなおすと、パソコンの前に座り、SAOのプログラムから送信されたメッセージファイルを開いた。

 何百行にも渡るソレを、人間業とは思えない速度で読み進めた茅場は、ファイルを一度閉じると噛み締めるように言う。

 

「バグ……か」

 

 つい先日。SAOの中にある一つのクエストに重大なバグが見つかった。という報告。

 クエストの名前は〈老婆の思い出〉。第一層の中でも、際立って田舎の趣をイメージして作り上げたのどかな村。そこで受注することができるクエストだ。

 彼は、そのクエストの内容を思い出す。

 

『老婆が若いころ。村を訪れた旅人に一目ぼれをして花を贈ったことがあった。旅人は、それをとても喜び、森の奥深くにその花を植え、巨大な花畑を作って見せると約束をした。それから何十年もたち、老婆は本当に旅人が花畑を作ってくれたのかが気になったため、それを新しく来た旅人、つまりプレイヤーに見てきてもらい、その証拠として花を一輪持ってくる』という簡単なお使いクエスト。

 その報酬アイテムは確か〈救済の剣〉だったか。第一層で手に入れられる剣の中でも上位を争うほどのステータスを持ち、さらにテキストにも記載されていない【隠し効果】まで付与した貴重な剣だ。

 しかし、その日訪れたプレイヤーが受注したクエストは、全く別の物となっており、さらには、入力した覚えのない凶悪なモンスターが出現したという。

 普通であれば、そんなハッカーか何かの仕業を疑うような所業に、自分の世界が壊されたと怒り狂ってもおかしくない程。

 だが、彼の男の反応は全くもって予想もつかない者だった。

 

「そうか……フッフッフッ……ハァッ、ハッ、ハッ、ハッ!」

 

 ただただ、狂ったかのように大声をあげて笑うのであった。まるで、そうなることを望んでいたかのように。

 そう、望んでいたのだ。こうなることを。

 こうしてはいられない。自分もまた、その≪バグ≫とやらを、そしてそのバグを引き起こしたプレイヤーを見に行くとしよう。

 茅場晶彦は、机の上にあった紅茶を消すと、その横に置いてあったナーヴギアをパソコンにつなげ、ベッドに臥床する。そして―――。

 

「リンク・スタート!」

 

 彼もまた、ゲームの世界に旅立っていったのだった。一人の、ただのプレイヤーとして。

 

 はじまりの街は、その位置を第一層の外延部に沿った場所に存在している。

 だから、町の南側に向かうと、この巨大な浮遊城の横壁が欠落した部分から、城の外につながる空を見ることができるのだ。

 普段、第一層の中を歩き回っていると、第二層天井しか見ることができないこの世界。

 フワフワの白が浮かぶ青空を見たい時、自分自身が焦げてしまうと錯覚するほどの赤い空を見たい時、そして米粒がちりばめられたような暗い空を見たい時にはもっぱらこの南側に人は来ている。

 エイミー達がその夜泊まった宿屋は、クエストの発生場所とほど近い宿でであった。つまり、はじまりの街の南の末端にあった。

 だからこそ、彼女は、エイミーは出会うことができたのだ。

 

 星の名を冠した、あの少女に。

 

 その夜、またあの夢を見た。友達に置いて行かれる夢、でも、声も出ず、その背中に虚無の手を伸ばすだけの夢。

 コレを毎日見ているのだ。毎日、毎日、毎日、同じ夢を。

 その悪夢から逃れるために夜遅くに飛び起きたエイミーは、再度眠ることなんてできず、一度外の空気を吸いたくて部屋から出て行った。

 外、といってもこの世界における外は、やっぱりゲームの世界の中の外。別に出たところで空気が変わるわけではない。

 しかし、気分の問題があった。誰もいない真っ暗な夜の町を歩く、ただソレにしたれる優越感や、独占欲が満たされるような感覚。

 現実の世界であったのならば、こんな真夜中にも起きている夜鷹のような人間が、おもむろにつけている電灯を見ることができたりするのだが、この世界ではそう言った者はない。

 NPCは決められた時間を過ぎれば、すぐに店じまいしてそのまま朝まで一切の動きを見せることはない。

 夜中開いている酒場のようなモノはあるのだが、そういったお店ははじまりの街の出入り口にほど近い場所にあるため、そこからの喧騒もこの場所までは届いてこない。

 本当に、静かなものだ。そして、不気味だ。なぜならば、明かりもも何もない道なんて、真っ暗で目の前の道も見えないくらいに暗黒に支配されていなければならない。

 だというのに、確かに昼間と比べれば劣るとはいえ、足元も、遠くの家々もハッキリと見えてしまうほどに情景が、明るく見て取れるのだ。

 それがゲームの仕様なのだから仕方がないのかもしれないが、しかし現実的観点からしてみれば、あまりにも異様だった。

 はやく、こんなところから出たい。エイミーは都合何度目かわからない程の望郷の念に駆られていた。

 こんな夜遅くに出歩いて、父や母に怒られて、しばらく外出禁止にされてしまう。そんな現実の世界に帰りたい。

 友達と、夜遅くまで電話でおしゃべりをして、もう遅いから早く寝ろと怒られる世界に、帰りたい。

 でも、帰れない。

 このゲームを、クリアしない限り。

 それがとてもつらく、彼女の脳裏に文鎮が乗ったように重く、沈む。

 自分は、本当にあの世界に帰れるのだろうか。父や、母、友達はみんな、自分のことを待っているのだろうか。そんな心配ばかりが頭に浮かんでは消え、浮かんでは消えていく。

 根暗になってはならないとはわかっている。でも、それでもそれまで普通の鹿目まどかとして生活していた彼女の、恐怖の一つとして存在いている考え。

 このまま、闇の中に沈んでしまいそうになる。

 そんな時、彼女は見た。

 そして、聞いた。

 

「キラやば~っ☆!」

「え?」

 

 双眼鏡を手にし、城の外を見ている少女。そこは、小さな橋の上であって、建物の位置関係上夜空を見物するのに邪魔になる物は何もない。そんな場所だった。

 でも、双眼鏡なんてものを持ち出してでも、見たくなるようなものがあるなんて到底思えない。エイミーは、暗い空を見ながらそう思っていた。

 自分のような桃色の髪の、巨大なツインテールを持った女の子。遠くからだから、顔はハッキリと見えない。

 でもその声色からなんだか楽しそうだと彼女は感じ、少し微笑ましく思えた。

 

「ん?」

「え?」

 

 その時だ。双眼鏡から目を離した女の子が、自分のことに気が付いた。そこまで物珍し気に凝視していれば、当然と言えば当然の話だ。

 女の子は、エイミーの顔を見ると、近づき、笑顔で言った。

 

「あなたも、星を見に来たの?」

「え? 星?」

「うん!」

 

 星、そんなものを見ていたのか。と、エイミーはちょっとだけがっかりしたような気分になる。

 自分はてっきり、もっと大層な物、竜とか空飛ぶ人とか、そういう物を探しているモノだと一瞬本気で考えていたからだ。

 まぁ、この世界だとそんなもの当たり前の光景となってしまうのだが。

 

「ほら見て見て! とってもキレイなんだから!」

「え? あ?」

 

 と、少女は、エイミーの手をつかんで橋の上に連れて来た。

 刹那、彼女は後悔することとなる。

 

「ッ!」

 

 その、圧倒的なまでの美しさに、この二週間気が付いていなかったと言う事を。

 彼女の目を覆ったのは、満天の星。まるで黒いお盆の上に塩、違うキラキラ輝くコンペイトウをちりばめたかのように辺り一面に見える星々は、それぞれが違う光を放っていて、でも、どれもが一番に輝くために必死で、人工物である事を一瞬でも忘れさせてくれるような雄大さ。

 プラネタリウムよりも大きくて、そして美して、でも本物にはかなわない。

 いや、どうなのだろう。自分が現実の時に暮らしていた町、見滝原は、都会寄りに発展した町であった。

 そのためか、夜になっても暗くなることは一切なく、夜空に浮かぶ星を綺麗に見ることなんて、全くと言っていいほどになかった。だから、本物の星とどれだけ変わっているかなんて、彼女には分かるはずもない。

 だからこそ、思うのだ。自分は今、人生で一番ともいうべき綺麗な星を見ているのだと。

 

「綺麗……」

「でしょでしょ! 私、この場所から見る星が大好きなんだ!」

 

 これは、彼女が双眼鏡を持ち出してまでも星を見たかった気持ちが分かるような気がする。

 でも、それ以上にエイミーは感心していた。彼女の、その豪胆さ。デスゲームの中に囚われるという異常事態の中においても星を眺めることができるほどの、その度量の広さが、とても印象的で、そしてうらやましかった。

 自分も、彼女みたいな心の広さを持っていればなと。

 エイミーは、思わず聞いた。

 

「私、エイミー……あなたの名前は?」

「私? 私は星奈ひかる! こっちでは、≪スター≫って名前を使ってるの!」

「スター……」

 

 こうして、二人は出会った。

 あと、さらっとスターの本名を聞いてしまったエイミーであった。




プレイヤー№ 83 星奈ひかる(スター【STAR】)≪原作:スター☆トゥインクルプリキュア≫

スター☆トゥインクルプリキュア 参戦

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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