SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ 第二章 第14話

「へぇ、まどかちゃんって言うんだ。偶然だね!」

「偶然?」

 

 とりあえず、自分だけが彼女の本名を知っているというのも少し歯切れの悪さという物を感じたエイミーは、自分の本当の名前を伝えてみた。

 ネットゲーム、通称ネトゲにおいて個人情報の流出は極力抑えなければならないというのは、関心に疎いエイミーでも知っていること。

 けど、目の前の少女が自分の情報を何か悪いことに使うような人間に見えなかったこと。

 それから、現実の顔だけで言うのならばどうせもう流出しているも同じ状況であるので、自分の名前を伝えたところでもはや手遅れ感は否めない、ということもある。

 しかして、己の名前を告げた際の反応が、一番最初の言葉だ。

 それにしても、偶然―多分、この場合は奇遇と言った方が正しいのかもしれないが―とはどういうことなのだろうか。

 

「あ、実は私の先輩に、まどかさんっていう人がいるの!」

「へぇ……」

 

 エイミーは普通に感心してしまった。自分の名前は、こういっては自慢になってしまうかもしれないが日本中を見ても、ありふれているような名前ではないと思う。

 少なくとも、十歩行けば同じ名前の人間にぶつかるみたいな感じの頻出名称ではないはず。

 そんな、自分と同じ名前の知り合いを持つ人間に出会えるなんて、偶然とは恐ろしいものだ。

 彼女の先輩であるまどかという人、自分も現実に帰れるものならばあってみたい。そう思った。

 

「まぁ、その人も今このゲームをプレイしてて、一緒に行動している一人なんだけどね」

「そう、何ですか……」

 

 その言葉を聞いた瞬間に、自分の中に芽生えたその会いたいとう感情に影が差す。

 なぜなら、このゲームをプレイしているという事は、彼女の先輩もまた、このデスゲームに囚われた被害者であるという事なのだから。

 会いに行こうと思えば、すぐに会いに行けるかもしれない。でも、同じデスゲームの被害者であるという言葉が付くだけで、なんだか会いに行くのが憚れるような気がした。

 

「あ、そんな顔しないで! 私も、まどかさんも……ゲームの中に閉じ込められたってこと、気にしていないから」

「え?」

 

 気にしていない。どうして、そんなことが言えるのか。

 そうか、彼女は失ってないのだ。彼女にはいる。自分と一緒に悩んでくれる先輩が、それでも歩んでくれる仲間が、同じ時を歩んでくれる仲間がいるから。そんなにさみしくないのか。

 

「良いな……先輩が一緒で、私は……一緒に来てくれた友達なんていなかったから……」

 

 言った直後、エイミーは思わず口走ってしまったその嫌味のようなセリフに自己嫌悪した。これでは、まるで彼女と、彼女の先輩に起きた不幸を、喜んでいるように思われるじゃないか。

 いつもの自分だったら、決してそんな台詞を吐くことないのに、どうしてそんな言葉を使ってしまったのだろうか。いくら、彼女たちがデスゲームに囚われたことを気にしていないと言っても、これでは。

 

「うん……でも、現実の方にもたっくさんの友達を残してきたんだけど、ね」

「……」

 

 スター、はそう言いながら暗い空を見上げていた。そこには、いつもと変わらぬ、満天の星が広がっているだけだった。

 

「もちろん私たちだって、最初は悲しかったよ。友達に、何年も会えないんだって……一緒に笑って、話しあえる。そんな友達と会えないんだって……でもね」

 

 スターは、夜空に手を伸ばした。まるで、星の一つを掴もうとしているかのよう。

 伸ばしても、伸ばしても、決して届くはずのない星。それをわしづかみにしようとしているかのような彼女は言った。

 

「離れていても……心は通じ合っているから。みんな、空の下に……そして、この宇宙のどこかに、絶対にいるから。だから、私たちはいつまでも、どれだけ離れてもつながっているの」

「どれだけ、離れていても……」

 

 何か、心が揺り動かされるような気がした。

 本当にそうなのだろうか。もし、そうだったらうれしいな。そんな願望にも似た感情だ。

 

「SAOに来る前にね。私も、友達と長いお別れをすることになったんだ」

「長い、お別れ?」

「そう、ずっとずっと遠い場所。遠い世界に帰っていた大事な、大事なお友達。もう、二度と会えないかもしれない。言葉も、通じるかわからないような、そんなお友達……」

 

 その、友達のことを考えている尊いスターの顔は、それまでのどの顔よりも切なく、そして柔らかく、愛おしく見えた。

 彼女の言う友達。きっと、とても大事な、とても仲の良かった友達であるのだろう。

 もう、二度と会えないかもしれないと言った彼女。でも、こんなにも友達の事を思っている少女なのだ。きっと、心の奥底では信じているはずだ。

 もう一度、自分が、友達と出会える。その時を。

 たとえ、心が同じ場所になくとも。身体は、きっと『同じ空の下に』いるはずだから。

 

「また、会えるといいね。そのお友達と」

「……うん! 出会えたら、まどかちゃんのことも紹介するね!」

「えっと……この世界じゃエイミーって呼んでもらえないかな?」

「あ、そっか忘れてた……」

「フフフ……」

 

 なんだろう。少しだけ気が楽になったような気がする。心の余裕ができたというか、とにかく、少しだけ気分が晴れたようだ。

 満天の星。それを見る余裕すらなかった自分。そんなものを見ても何も思えなくなっていた自分が、彼女の、明るさのおかげで少しだけ変われた。いや、もしかしたら、すでに変われていたのかもしれない。

 今日の一日の中で、ベーゼラを助けるためにない勇気を振り絞ったあの時に、すでに心変わりしていたのかも。

 もしそうだったら、うれしいな。と、エイミーは胸に手を当てて考えていた。その時だ。

 

「こんなところで何しているの?」

「え?」

「あ……」

 

 と、≪月明かりによって照らされた≫道の奥から一人の女性プレイヤー。昨日から一緒に行動を共にしているサーヴァントが現れた。彼女は、エイミーの頭に手を置くという。

 

「いくらゲームの中って言っても、こんな夜遅くに出歩いたら危ないでしょ?」

「あ……はい……」

 

 そのやり取りに、エイミーは思わず笑みをこぼしてしまった。だって、今のやり取りはつい先ほど、スターと出会うまで彼女が想像していた母とのやり取りそのものだったから。

 夜遅くに出歩いて怒られる。そんな家族のようなやり取りを、こんな形で経験できるなんて、思ってもみなかった。

 

「どうしたの?」

 

 おそらく、そんな笑みを訝しんだのだろう疑問が流れて来た。

 

「いえ、なんだか……お母さんに怒られたみたいで懐かしいなって……」

「お、お母さん……」

「?」

 

 なにやら、ショックを受けている様子だが、どうしたのだろう。

 

「私、まだ二十五歳なんだけど……」

「え、そうだったんですか!?」

 

 それは、驚きの情報である。失礼を承知で言うのなら、自分は、彼女のその落ち着きの良さ、それから物言いやら外見やらの情報からてっきり三十代くらいかなと思っていたから。

 そりゃ、中学二年生の自分にお母さんみたいと言われてしまったら、ショックを受けるであろう。

 

「えっと、す、すみません!」

「あぁ、いいの……私も現実で、年齢を聞かれて驚かれるし……」

 

 とはいえ、失礼なことを言ってしまったのは間違いない。猛省しなければ。

 

「初めまして! 私は、スター、よろしくお願いします!」

「あ、うん。サーヴァント。この世界じゃそんな名前使ってる」

 

 と、スターが少しだけ重くなってしまった雰囲気に一石を投じるかのように自己紹介をする。やはり、こういった時に彼女のような元気活発な女の子というのは、キャラ的にも助かるという物だ。

 

「そういえば、どうしてサーヴァントさんも起きたんですか?」

「あぁ、うん……なんというか、あまり早くに寝る習慣がなくってね……」

 

 聞くところによると、彼女が務めている会社というのは半分ブラック企業に片足を突っ込んでいるような企業。

 彼女の仕事は、終業時間すれすれ、下手をすれば残業帯にまで働かなければならない程に仕事の量が多い、システムエンジニアであるそうだ。

 だからなのか、帰る時間も夜遅くになるという事が多く、その分睡眠時間も減っている。なので、今日のように早めにベッドにもぐって就寝。なんて習慣は皆無である。

 だから、なんとか眠りに入ってもすぐに起きてしまう体質であるがゆえにこうして外を出歩いて気分を紛らわせていたのだとか。

 

「お酒があったら、すぐに眠れるんだけどね」

 

 と、サーヴァントは言う。でも、お酒を睡眠薬代わりにするというのは良質な睡眠には妨げになるとどこかで聞いたことがあるのだが、逆に言えばお酒で悪酔いしなければ熟睡できない程に彼女の睡眠の質が悪いという事なのだろうか。

 

「お酒か……お母さんもよく外で飲んで帰ってたなぁ……」

 

 と、エイミーは現実世界にいる母のことを思い返す。彼女の家は、男性の方が家事を行っている専業主夫という家であるため、母親の鹿目詢子が、キャリアウーマンとして会社勤めをしているのだ。

 けど、彼女の会社もとても忙しく、さらには会社にはストレスの元凶ともなる人間が多くいて、その解消のため二日に一度の割合で外でお酒を飲んで帰ってきていた。

 その姿を見て、自分も将来お酒を飲むようになったらこうなってしまうのだろうかと、戦々恐々としたものだ。

 

「う~ん、私もお酒には興味あるけど、まだ未成年だし……でも、将来友達みんなで飲み会に行くのもキラやばかも!」

「キラ?」

「やば?」

 

 そのへんな言葉さっきも聞いたな、とエイミーは思った。

 

「キラキラしてやばいって意味だよ。もともとはお父さんの口癖なんだけど」

「へぇ……」

 

 造語なのだろう。でも、とても耳に残るいい言葉のような気もしてくる。こんな女の子と一緒に飲み会する。それもまた、キラやばなのかもしれないな。

 

「スターって、年齢どのくらいなの? 私、中学二年生で、十四歳なんだ」

「そうなんだ。私は三年生、十五歳! だから、一緒に飲めるのは六年後だね!」

「そうだね」

「その時には、あたしは今度こそ三十代か……まぁ、その時になっても身体を壊してなかったら、あたしがいい酒の飲み方を教えるからさ」

「「よろしくお願いします!」」

 

 そして、しばらく話をした後、二組は解散した。いつか、一緒にクエストをしようという約束、そして六年後に、一緒にお酒を飲もうという約束をして。

 

「あれ?」

「どうしたの?」

「いえ、なんでも、ないです……」

「?」

 

 この時、エイミーは違和感のようなものを感じたという。でも、彼女がその正体に気が付くのには、もう少しだけの時間が必要となる。のであった。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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