SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
芳しい匂い。それは、時に人間の心身を解きほぐす良薬になる。しかし、一つ扱いを間違えれば、人間を狂わせる害薬にもなってしまう。
でも、間違いなく今自分たちが味わっているのは前者の方だ。そう、フラウは感じていた。
「あったよ! ピンク色の花畑!!」
「よっしゃ! あとはあの花束を持って帰ればいいだけだな!」
フラウの言葉に、キッドがそう答えた。
今、自分たちがいるのははじまりの街からやや離れた、草原のフィールドの端の方に存在している花畑だ。
今度こそ〈救済の剣〉入手のためのクエストを遂行するためだ。
昨日は、定休日のため閉まっていた花屋さん。オープン直後に入ってみると、そこには見目麗しい女性のNPCが色とりどり、形とりどりの花々を組み合わせてブーケを作っていた。
ここで、ただ話しかけただけでは、花を購入するためのウィンドウが出て、ただの買い物にしかならなくなるのだ。
そのため、クエストの開始の合言葉のようなものが必要なのだ。
その言葉はいたって単純だ。その女性のNPCに対して、こう、声をかければいいだけ。
「そのブーケ、誰かへのプレゼントですか?」
この言葉かけを行うことによって、クエスト受注のマークがNPCの上に出てくるのだ。
これは、エイミーが偶然見つけたクエストだった。ただ、彼女の持ったブーケが気になったから声をかけたら、たまたまソレがクエストに繋がっただけなのである。
NPCは、『好きな人にプロポーズをしたくて、ブーケを作っているところなのだが、必要な花が少し足りなくなっていて困っている』というような話をした後、プレイヤーに指定する色の花を取りに行ってもらおうと言うことになる。
このクエストの大まかな概要はそんな感じである。
エイミーが言うには、前に来た時には青い花を頼まれたそうなのだ。けど、今回はピンク色の花。
もしかすると、曜日、あるいはランダムで色の指定が変わっているのかもしれない。
とにもかくにも、ピンク色の花が群生している花畑を探さなければならない。今回は、エイミーだけでなく、昨日の戦いで使用していた剣が壊れてしまったキッド、並びにベーゼラもまたこれからの戦いに備えるためにクエストを受注した。
今回は前のように一人でフィールドを歩き回ったわけではなく、大勢のプレイヤーでフィールド内を探し回ったおかげもあって、すぐに目的のピンク色の花畑を見つけれたことは幸いだった。
キッドが、他の場所を探している仲間たちに向けてメッセージを飛ばし、その数十分後には、全員が集合した。
「うわぁ、すごく綺麗……」
「はい、前の青い花畑もきれいでしたけどでも……この花畑も綺麗……」
エイミーは感慨深く、桃色に敷き詰められた花畑を眺め、つぶやくように言った。
確かに、前の花畑も綺麗だった。まるで夏の海を思わせるような青色で、でも、こんな時にのんきに眺めている場合じゃないとその時はすぐに花々を集めるとはじまりの街に帰っていった。
でも、今回は違う。満開の桜を思わせるようなピンクを、心の底から堪能する時間が、いや余裕が彼女にはあった。
昨日までの自分には、きっとできなかったことだろう。あの、キッド達やベーゼラやスターとの出会いが、自分に心の豊かさを与えてくれたのだ。
だから、こうして、何でもないような風景をも感動することができる。そう、信じていた。
心が、洗われたようだ。鼻に抜けるえもいわれぬ香しい匂いに、HPが回復していくわけでもなのに、身体が癒されている。そんな気がしてならなかった。
「……」
「どうしたの、ベーゼラ?」
「あ、いえ……」
なにか、浮かない顔をしているベーゼラに気が付いたハワード。彼女は、少しだけためらった後に言う。
「なんだか、私の故郷を思い出してしまって……」
「ベーゼラさんの、故郷?」
「はい。私、イギリスで生まれて、ある町で生まれてからずっと生活していたんです」
「ベーゼラって、イギリス出身だったんだ……」
「はい」
確かに、日本人ではないだろうなとは思っていたし、イギリスで生まれたと聞かされれば、そうかもしれないという趣があったのも事実だ。
彼女は、花畑を眺めながら言った。
「私の育った町は外の世界から隔離された、海の上の島で……そこには、町と、その外には綺麗な草原があって……」
ベーゼラは、そこで言葉を区切ると、はるか後方に見えるはじまりの街の外壁を眺めながら続けた。
「はじまりの街と、この花畑や草原を一緒に見ていると……あの町のことを思い出せるんです。それに……」
「それに?」
「……いえ、もう終わったことです」
ベーゼラはただ、そういうとまっすぐ前を向き、花畑を眺めながら言った。
「この架空の世界でも、花は咲くんですよね……」
「うん、まるで本物の花みたいに……」
「でも、生きているわけじゃない……」
「きっと、抜いたとたんに新しい花が生えるんじゃないのかな? ほら」
そういいながら、ハワードが足元にあった花を一輪地面から抜いた。すると、すぐにまた別の花がその下から生える。いや、出現する。
果たして、それは生きていると言えるのか。いや、言えない。だって、この世界がデータ上の世界である以上、ここにある花々は決して生きているとは言えないのだから。
「でも、私たちは生きている。この架空の世界で。だからこうして感動することができるんです。物語に書かれているように、決められた感動じゃない。心の底からの、自分自身の感動……」
「ベーゼラさん……」
ベーゼラは、エイミーの方を向くとすがすがしいほどの笑顔で言った。
「ありがとうございます。ここに連れてきてくれて」
「……ううん、この場所を見つけてくれたのはフラウさんだし……」
「でも、このクエストの事を教えてくれのは、エイミーさんだよ!」
「うん、エイミーがボクたちをこの花畑に連れてきてくれたんだ」
なんだか、そういわれると嬉しいような照れるような、そんな顔をしたエイミーは、ベーゼラに恥ずかしがりながら言った。
「ねぇ、ベーゼラさん」
「なんですか?」
「いつか、ベーゼラさんの町、行ってもいいかな?」
「……はい! もちろん! 私の親友や、パパや、町の人たち……みんなを紹介します!」
「うん、約束だよ」
エイミーは、ベーゼラと小指同士を絡めて約束をした。
それにしても、彼女は分かっているのだろうか。ベーゼラの生まれた町に行くという事は、すなわちイギリスに行くという事。国内を旅行するよりも、当然お金はかかってくるし言語の違いという問題も生まれるのだ。
エイミーは、とある友達と比べるとそれほど学力が劣っているは言えないくらいだが、しかし優秀生と言われるほどまで学力は高くなかった。そのため、英語も学校で習うような実用的かどうかわからないような物しか学んでいない。
そんな彼女がイギリスに行くことになったときに大丈夫なのか。そんな心配をしなければならないはずなのに、彼女は、ベーゼラとの約束に夢中になるあまり失念していた。
というより、イギリス生まれ、イギリス育ちの人間であるはずのベーゼラが、日本に来てわずか数か月でエイミーとも対等に話せるくらいに流暢に日本語をしゃべっているという時点ですごいのだが、悔しいかな、その凄さにも気が付かないエイミーの残念さ。
とにかく、彼女が言語の壁について頭を抱える時が必ず来る。いつかのその時を、楽しみにしておくとして、エイミーたちはピンクの花畑の中から何輪かの花を頂戴するのであった。
そのころ、ある森の前に一人のプレイヤーが現れた。
「ここが、バグの発生した森か……」
なるほど、どうやら≪フィールドの構造自体≫が自分の≪デザイン≫したソレと変わってしまっているようだ。と、森全体を見渡しながら考えたプレイヤー。どうやら、この変化はちょっとやそっとの物ではない様子。
これは、調査のしがいがあるという物。とりあえず、クエストの発生地点である村に赴くことにしてみよう。そう、男が考えた時だった。
「ん?」
遠くから一人の女性プレイヤーと二人の男性プレイヤーが現れたのは。どうやら、男性プレイヤーは女性プレイヤーを追いかけている様子だ。
まさかとは思うが、このデスゲームの世界において貴重な存在となるPK狙いのプレイヤーであろうか。
その場合、自分はもしかしたら追われている少女を助けた方がいいのかもしれない。しかし自分にとっては運のいいことに、そして少女にとっては運の悪いことに向こうは自分のことに一切気が付いていない様子だ。
なので、ここは放っておいたとしても誰も文句は言うまい。
彼女には悪いが、それもまたこのデスゲームたるSAOの一つの側面。プレイヤーに殺されるのもまた運命だ。そう解釈し、男はその三人の目に留まることのないようにその場から立ち去った。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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ヴァルキリーズfeatボーイ
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プロジェクトSAO
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アルティメットカオス
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無への逃走
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肯定あるいは否定
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フィクションスターズ
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〜いろんな著作物から以降はいらない
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タイトルはそのままでいい