SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
あの子のことは、あの森に入る直前に一瞬だけ見ただけの、縁もゆかりも何もない女の子だった。
でも、なぜかその子のことが頭から離れることはなかった。
きっと、どこかが似ていたからなのだろう。彼女に、私の一番の友達であり、親友であり、そしてライバルの一人のあの女の子に。
誰にでも優しくて、笑顔を絶やすことはなくて、負けず嫌いで明るくて、そして、自分の行動がどんな結果になるかなんて全くわかっていない。
ただ、目の前にいる誰かを救いたいがために、自分の中のキラメキを失うかもしれない。そんな≪レヴュー≫に参加した。あの、女の子。
自分に自信が持てなくて、引っ込み思案の気質が見え隠れしている様子は、別のライバルにも似ている。
だからなのだろうか。自分が彼女のことをとても気にかけてしまったのは。別に、関わらなくてもいいようなことに関わってしまったのは。
もしかしたら、重ね合わせていたのかもしれない。もしも、あの子だったら同じことをしていたんだろうなと、彼女の、その背中に。
「やはり気になるのか、エイミーのことが」
「……」
エイミー一行が、花畑で花を集めるクエストを進めている一方。その一行のことを遠くから眺めていたプレイヤー、クレール。
その彼女に語り掛けたのは、昨日までキッドとともに行動を共にしていたナイトである。
彼は、キッドたちがエイミーのクエストについて行くことになった後は、一人残ってレベリングやアイテム集めをすることになっていた。
サマーの仲間である他の三人は、そもそもエイミー救出のために一時的に手を組んだに過ぎないし、一緒にいる理由もないため早めのうちに別れていたのだ。
そんなナイトは、ヒッソリと、エイミーたちがはじまりの街に向かったそのすぐ後に、その後を追ってきていたのだ。
道中モンスターに遭遇するなどのアクシデントはあった物の、レベル差もあって難なく切り伏せていった。
クエスト発生場所を聞いていなかったのではじまりの街を探し回るというアクシデントはあったものの、ようやく彼らの居場所に辿り着くことができた。
かなり遠回りしてしまった。だが、そのおかげでこのクレールのことも見つけることができたのは幸いだった。
「何か、私に用事ですか?」
「いや、俺はただ、アイツがまた馬鹿をやっていないか気になっただけだ」
やりました。
エイミーの時と同じく、見ず知らずのプレイヤーのために戦い、主に用いていた片手剣を犠牲にするという馬鹿を、やっておりました。
だが、それを言ってしまうとエイミーやただ通りすがったというだけで助けてくれた二人の女性プレイヤーもそうなのだが。
要するに、ただ通り過ぎただけでエイミーのことを気になったクレールと似たような理由である。
「俺も、お前に聞いておきたいことがある」
「何?」
「何故、一度だけあった彼女のことを気に掛ける。わざわざ寄る必要もないはじまりの街に戻ったりしてまで」
「……」
はじまりの街は、確かに大きな町で、その分多くのクエストを受注することができる。
しかし、道具やアイテムの質であるのならばもう少し先にある村や町の方が十分にそろっている。
さらには、武器の強化に関してもそちらに行った方が得策。つい昨日までいたあの森の近くの村。そこの近くには武器の強化や修繕をしてくれるNPCの鍛冶屋があったはずなのでなおさらである。
つまり、わざわざはじまりの街まで戻ってくる彼女のメリットはないのだ。エイミーを追ってきた、という可能性を除いて。
「別に、ただあの子に興味があっただけだから……」
本当なら、さっさと上記したエイミーが自分の友達と似ていたという物を話してしまえばよいもの。
でも、それを語るほど彼女はおしゃべりでもなかったし、そういった気分でもなかった。
「そうか。お前の真意はどうかは俺は知らんがな。あのエイミーというプレイヤー、放っておくととんでもないことをしでかす。そんな気がする」
「……何故?」
「あいつも、キッドのやつもそうだったからだ」
ナイトは、そういうと自分たちの身をエイミーたちから隠していた大きな岩に背を預けながら言った。
「お人好しで頑固でおせっかいで、これといったことは曲げない。余計な事に首を突っ込んで、自分の思いとのギャップで悩んで、一人で抱え込むこともしばしばある。それが、キッドという人間だからだ」
かつて、キッドの上司が彼のことを形容して言った言葉がある。
『祭りの取材に行って、いつの間にか神輿を担いじゃっているタイプ』と。
結果、自分がどうなってしまうのかを知ったうえで深みにはまって。そんな彼のことを、ナイトは知っていた。
「あの人は、貴方の親友?」
「腐れ縁のようなものだ」
ナイトは、その後彼女に語った。自分とキッドとの≪この世界での≫出会いを。
彼との出会いは二十年前、自分がたまたま立ち寄った喫茶店。そこから出ようとしたときにちょうどキッドもまた喫茶店に入ろうとしていた。それが、彼と自分のファーストコンタクト。
それから、まるで示し合わせたかのように、そして運命であるかのように何度も何度も、様々な場所で出くわした自分たち。
先述した喫茶店もそうだが、ある弁護士の事務所、砂浜、大きなダムの前、廃教会の中など、どうしてそんなところにいるのかと言わんばかりの場所で会ってきた自分たち。
そして、いつの間にか自分たちは仲良くなっていた。わけじゃなく、どちらかがどちらかを追ってきているストーカーなんじゃないのかなどという疑いをかけられるくらいの出会いに、キッドは気持ち悪さを感じていたらしい。
そんな自分たちが、SAOというゲームを手に入れることができた。それもまた運命と思い、なんなら一緒にプレイするかという話を始めたのは、どちらだったのか、もう思い出すこともできはしない。
でも、ハッキリと思い出すことができる物がある。それは、デスゲームになってすぐにキッドが言った言葉だ。
『よし、ゲームクリアするぞ! ロン!!』
『蓮だ!』
彼は、言ってのけたのだ。生死をかけた戦いに巻き込まれたというのにそれを何とも思っていないかのように。
自分の名前を間違えたことに関しては思うところがあったロン、いや蓮、いやナイトだがしかしある意味でコイツらしいと心の奥底で微笑んだナイト。やっぱり、コイツは何も変わらない。どこかで不安だった心が確信した時だった。
「まぁ、そんなところだ」
クレールは、一つ、気になったことがある。それは、彼がエイミーのことを指して言った時の台詞だ。今更何故、と思われるかもしれないが、しかしことこのタイミングだからこそ聞ける言葉。
「キッドさんは、何をしたの?」
「何がだ?」
「エイミーがとんでもないことをする。あなたの親友がそうだったからって言うけど、キッドは、何をしたの?」
「親友じゃない」
と、ナイトは吐き捨てるかのように言った。
そう、先ほど確かにナイトは示唆していた。エイミーがキッドと似ているなら、何らかの過ちを犯す、という事を。
先ほどの話の中では、それほど大きな出来事としてキッドの犯した過ちという物について表面に出してきていなかった。果たして、キッドの犯した罪というのは何だったのだろう。
長考、そしてナイトは言う。
「自己犠牲だ……今は、それだけで十分だろう」
「……自己犠牲」
ナイトは、それだけ言うと岩場から離れて去っていった。
なるほど、自己犠牲までも、あの子と同じか。自分のライバルと、エイミーと、キッド。どうして、こうまで似た性格を持った人間がこの世界に来ているのだろうか。
いや、この世界というのは語弊があるか。なぜなら、自分のライバルは≪この世界≫にはいないのだから。この、デスゲームの世界には。
似た性格の三人。
その内の一人であり、一番彼女守りたいと願った女性。
彼女が、この世界にいないこと。それがいまのクレールにとっては一番の幸運だったのかもしれない。
そう考えながら、彼女は見守る。エイミーとキッド、そして二人の周りに集まった多くの人間たちの姿を。
花畑という名前の舞台の上で舞う役者たちを見つめている、観客のように。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
-
ヴァルキリーズfeatボーイ
-
プロジェクトSAO
-
アルティメットカオス
-
無への逃走
-
肯定あるいは否定
-
フィクションスターズ
-
〜いろんな著作物から以降はいらない
-
タイトルはそのままでいい