SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
解せぬ。
それがハワードがクエストを終わらせたときの最初の感想だった。
〈救済の剣〉入手のクエストは、あの後滞りなく終わり、エイミーら三人は件の剣を入手することができた。
しかし、である。ハワードには気になることがあった。
「なんだか、あまりにも楽すぎないか?」
「え?」
彼がそういうのもわからないまでもない。なぜなら、彼女たちが手に入れた〈救済の剣〉、武器屋で鑑定をしてもらった結果分かったことなのだが、実は第一層でも高い能力を持った剣であるのだ。
無論、この第一層時点で手に入れることのできる片手剣の中でも能力が一番高いアニール・ブレードには劣る。
しかしそうはいっても使い手に、そして強化しだいによってはアニール・ブレードを凌駕するほどのポテンシャルを持っているかもしれない。
そんな剣が、はじまりの街の、それも花を摘みに行くという簡単なクエストによって入手できるなんて、どうにもモヤモヤした気持ちがたまってしかたがなかった。
アニール・ブレード。これは、リトルネペントの胚珠というアイテムを入手しなければならないクエスト。そのためリトルネペントというモンスターと必ず戦わなければならないうえに、そのアイテムドロップ率もかなり低いと来た。
おまけに、ある特定のリトルネペントの倒す手順を間違えてしまうと、大量のリトルネペントが発生して囲まれてしまうという始末。
そのため、このアニール・ブレード入手のためにクエストに挑戦して、あえなくゲームオーバーになったプレイヤーもいると聞いたこともある。
一方の〈救済の剣〉は、花畑がフィールド内にあったため、その道中に至るまでにはモンスターが出てきていたりはした。
けど、それらも別に倒しきることが必須であるわけでもなく、運がいい人間であったのならば一度もモンスターに出会わないままにあの花畑までたどり着くことは可能だろう。
高難易度のクエストによって手に入れられる剣より若干劣った剣が、こんな簡単なクエストで入手できるなんて、本当にいいのだろうか。
これは、ハワードの母親が生粋のゲーマーであり、彼自身もそれに付き添って数多くのゲームをしてきたことがから生まれる発想でもある。
「お母さん、ゲーマー何ですか?」
と、エイミーが彼の考えの流れをぶった切るような話をし始めた。
結果、この話は一度打ち切りとなってしまう。
「そう。まぁ、もともと、このゲームも母さんが買ってきたゲームだったんだ。でも、急に遠くの方で仕事の用事ができたからって、僕にくれて」
「そうだったんですか……」
つまり、本来は彼の母親がプレイする予定だったらしい。ハワードが言うには、もしも母親がプレイしていたとなると、きっと通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃になっていた可能性があると、なんだか変なことを言う。
その時にはよくわからなかったのだが、後々聞くと、そういう名前のライトノベルが存在するらしい。
それに、それくらいに強い母親であるらしく、モンスターの一体や二体フォーク一本で倒すこともできるかもしれないという。
それはいったいどこの戦闘民族だ。
「へぇ、それじゃ私のママとも気が合うかも」
「サマーさんのですか?」
「うん」
一方サマーの母親は、漫画の編集者でありながら、運動神経が非常に高く、合気道の有段者でもあるそうだ。こちらもハワードの母親に負けず劣らずの武勇伝を数多く持っているらしい。
エイミーは、なんだかそれがうらやましいと思ってしまいそうになるが、でも彼女自身自分の母親に誇りを持っていた。どれだけ平凡な仕事であっても、それで優劣なんてものは存在しないと。
とはいえ、彼女の母親も母親で、キャリアウーマンとしてバリバリで働き、庭付きの一軒家に家族三人を養える分稼いでいるので、彼女の母も母で凄いような気もする。
つまり、すごくない母親なんてどの世界にも存在しない。どの母親も最強であり、最高であり、一番である。それが真理なのだ。
と、ここでフラウが気になったことがあったようで聞いてみることになった。
「ハワードがゲームを買わなかったってことは、本当はサマーたちとゲームをする予定じゃなかったってこと?」
「まぁ、そもそもボクとサマー、それにサーヴァントさんも含めて、この世界で初めて会ったし」
「そうなんですか」
聞くところによると、もともとこのゲームにログインしてゲームの正式チュートリアルを受けた時にはまだ会ってなかったそうだ。
その後、これからどうするかとそれぞれがはじまりの街の中で考えている時にふいに遭遇。その後意気投合してハワード、サーヴァント、そしてサマーのグループは一緒に行動しようという事になったのだとか。
「それじゃ、私たちと同じだね」
「フラウたちと?」
「え? それじゃ二人もこの世界で初対面?」
「いや、そういうわけじゃなくて……」
彼女たちは、この世界で出会った多くのプレイヤーと最近一緒に行動をしているという。
そもそもふたりは 姉妹。この世界が初対面のはずもない。どうやら、二人は血の繋がりも一切ないのだが、シシーラの方が姉、フラウの方が妹で通している儀姉妹のような状態なのだとか。
この辺り、結構ややこしいらしく、シシーラと、シシーラの兄が何十年も前にあった渋谷に隕石が落ちた災害によって離れ離れになり、シシーラの兄だけが、フラウの家に引き取られた。
つまり、本来の血のつながりがある兄妹は、フラウの義兄とシシーラであるそうだ。
その後、紆余曲折あり二人は再開。色々ないざこざがあって、フラウも義兄とシシーラの関係を知って、フラウ自身もシシーラのことを姉と呼ぶようになった。そうだ。
「や、ややこしい……」
「う、う~ん……」
この二人の関係に、特にキッドが頭を抱えることになった。さすがに彼には難しすぎる話題であったようだ。
しかし、すこしだけ考えた末に言う。
「よし、分かった。つまり、二人が姉妹だってことは変わらないんだろ!」
ある意味、分かっていないような、でも分かっている発言でもある。
でも、事実である。
「ふぅん、まぁ、いいんじゃないのかな、そう言う関係も。」
というサーヴァント。大人であるためなのか存外理解してくれるのだなといった気持ちだ。
また、この後の会話でキッドたちは初めて知ったのだが、実はサーヴァント、サマー、そしてハワードの三人にはある共通項があったのだ。
それが、家に居候と一緒に住んでいるという事。特にサーヴァントの家の居候は、ほとんど家族も同然であり、ある小学生の女の子の親代わりにもなっているのだとか。
何故、小学生が居候として潜り込んできたのかはなはだ疑問であるが、彼女が言うにはもう一人の居候が関係してくる話なのだそうだ。
それにしても、とエイミーは思う。
「やっぱり、誰かと一緒にいるのっていいな……」
「え?」
前に、はじまりの街からあの村にまで行くときは、たった一人で心細かった。
もしここでモンスターに襲われて死んでしまっても、誰も自分が死んだ理由とか、その時の自分の気持ちを代弁してくれずに死んでいくんだろうなと考えると、こんな場所で死にたくないと思うようになった。
もしかしたら、あの時が一番自分が死にたくないと思った瞬間だったのではないだろうか。
キッドにはナイトがいて、他の人たちにも仲間や家族がいて、でも自分には何もない。
自分、一人だけ。
「それなら、エイミー……私と……」
「え?」
と、ベーゼラがあることを問おうとした。その時だった。
「おッ! 見えてきた!」
キッドが指を刺した方向に、自分たちが先日旅立った。あの村が見えてきた。どうやら、無事に到着したようだ。
急いで村の中に入っていこうとした彼女たち。エイミーは、ベーゼラに何を言おうとしたのかを聞いた。
「それで、ベーゼラさん、何だったんですか?」
「え? あ、その……いいの。今は、また次の機会に」
ということで、この話は一旦終わってしまった。
この時、ベーゼラが何を言うとしていたのか。聡明なる読者はもちろん分かることであろう。
だが、この話の続きを語るには、まだ時間を置く必要があった。なぜなら。
この後すぐに、ある事件が発生するのだ。
このSAOというゲームの根源を破壊する。ある、大事件が。
ここからこのゲームは、誰もが考えもしなかった、しかし多くの人間は考えていたであろう展開を迎えていく。
果たして、その時製作者、茅場晶彦の考えることとは。
そして―――。
「あの、すみません! サキを、見かけませんでしたか!?」
「へ?」
運命の針は、一つ、また一つと刻み始めていた。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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ヴァルキリーズfeatボーイ
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プロジェクトSAO
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アルティメットカオス
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無への逃走
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肯定あるいは否定
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フィクションスターズ
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〜いろんな著作物から以降はいらない
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タイトルはそのままでいい