SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
元βテスター、それは有利でもあり、不利でもある。現在のアランの状態。それが、証拠であった。
彼はβテスト時代。何度もこの世界にログインし、何度もSAOの世界を堪能した。
その中で、幾度となくモンスターに挑み敗北を喫し、そのたびにゲームオーバーとなって黒鉄宮からリスタートしていた。
まだ、ゲームとして機能していたSAOで、精神的に余裕もある状態で、彼はほとんどやられっぱなしだった。それほど彼がゲームに弱い、と言うのもあるがそれ以上にSAOの難易度が高かったとも言えるのだろう。
結果、彼はβテスト後半においてはモンスターと戦う事は極力避け、各階層にあるフィールド、ダンジョン、そしてそこにあるアイテムや受けることができるクエストを覚えることに専念した。
朝、起きて朝ごはんを食べた後、すぐにSAOにログインし、各階層を隅から隅まで、一日をかけて歩き回る。隠された部屋や、トラップのある部屋まで一つ残らずだ。
そしてログアウトしたらその地図をすぐにノートに書き写す。そんな生活を繰り返していた。何度も何度も何度も。
だから彼は、己こそがSAOのことを一番よく知っている人間だという自負があった。
当然、彼が井の中の蛙であり、上には上がいることを彼は知らない。悲しいことに。
そして、デスゲームとなった今も、彼は自らの知識を生かして効率よくクエストをこなし、強力なアイテムを入手していた。
極力モンスターに出くわさず。いたとしても、極力自分より弱いモンスターがいる場所を探り。
この二週間で彼は、どのプレイヤーよりもアイテムを入手していたと言ってもいい。
それもこれも、β時代の記録があったから。そしてそのデータを頭の中に叩き込んでいたから。
彼は、努力の人間であった。努力していたからこそ、今の強さを手に入れることができた。それは事実だ。
「クソ、何なんだよこの森は!?」
だからこそ、彼は混乱しているのだ。自分の知らないダンジョンに。
記憶が確かであるのなら、βテストの際この辺はただの草原が広がっているだけのフィールドのはずだった。
だだっ広いだけの草原。めぼしいアイテムも、武器もない。モンスターもそんなに強くない。そんな、何の特徴もない一帯、のはずだった。
それなのになんだ、このダンジョンは。この巨大な森は。
奥に進めば進むほど、巨大な蛇の体内に入っていくかのように狭く、黒々となっていく世界。
冬でもないのに背筋から腹まで凍ってしまうかのような涼やかさ。
それに当たりから聞こえてくるモンスターの鳴き声は、間違いなく≪アニール・ブレード≫のクエストの際に訪れる森のソレと同じ。
という事は、この森は間違いなく危険。まず、長い時間この場所にとどまるのは自殺行為といえるだろう。
「クソ……」
だが彼は逃げなかった。いや、逃げることができなかった。なぜなら、彼の相方でもあるスミシーが、行方不明になってしまったからだ。こんな危険な森の中で一体どこにいったのか。
アランは、今日何度目になるかわからない程のMAPを開いた。しかし、やはり自分の現在地だけが示されていて、スミシーの姿は見えない。
フレンドに登録している相手なら、現在位置をMAP上でサーチすることができるはずなのに。
今自分は、この森の奥に来すぎて、出口を見失ってしまっている状態だ。もしここでスミシーを見つけられても、その後モンスターの群れをかいくぐることができるか。そう聞かれれば五分五分であると答えざるを得ない。
全く、どうしてこんなことになってしまったのか。すべてはあの女性プレイヤーのせいだ。
自分たちが、無理やり仲間に引き入れようとした、あの短髪で、弱そうで、でも蒔餌には十分使えそうなあのプレイヤー、
「うぅ、ここ……どこなの……」
の声がすぐ後ろから聞こえて来た。首が九十度回ったかと思うほどに急に振り向いた彼は、そこに女性プレイヤー≪サキ≫の姿を見た。
「お、お前どうして!?」
「どうしてって……出口に出ようと思ったらこんなところに……」
聞くと、彼女は彼と離れた後出口を探すためにダンジョンの中を歩き回っていたらしい。
しかし、確か彼女と自分が離れた場所は出口とはそう遠く離れてはいない場所だったような気がするのだが。
まさか、方向音痴か。だとすれば、自分たちは何とも運が悪い。方向音痴の少女に目を付けた挙句、それを追いかけてこんな訳の分からない場所に来てしまうなんて。
しかし、それにしたって今の今までこのモンスターはびこる森でよく生きていた物だという関心もしてしまう。もしかして、意外と強いのか。それとも、ただモンスターとエンカウントしなかったというだけの運がいいだけの女なのか。
「こ、ここはどこなんですか?」
「こっちが聞きたいぜ」
なんにしても、彼女が合流したところで状況が好転することはない。早くスミシーを見つけてこの森から抜け出さなければ。
「あ、あの……」
「なんだよ」
アランは、ややいらだった声で聴いた。
サキは、それに怯えながらも言う。
「どうして、私を追いかけたりなんてしたんですか?」
「……」
「私なんて、麻雀以外は何も取り柄がなくて、ちょっとやそっとの事ですぐに泣いてしまうのに……」
「ハッ! 別にそんなの知ったこっちゃねぇよ! 俺はただ、ゲーム攻略のために必要だと思っただけだ」
「え?」
アランは、ゆっくりと歩を進め、モンスターが近づく音を聞き逃さないようにしながら言う。
「このゲームはな、自由にプレイできるオープンワールド型のゲームだがな、事攻略に関してはソロプレイなんてものは推奨してないんだよ」
「え?」
と、言うのは彼の持論。これは、先述したβテストの時の一件が理由であった。
「βの時、俺は一人で攻略するのに必死になっていた。最初はそれでも何とかなったが、階層が進むにつれてモンスターも強くなって、たった一人じゃどうにもならなかった。おまけにボス戦までくれば、あんまり接点のないプレイヤー同士で連携することになる。それ自体はMMORPGでよくあることだがな……」
「?」
サキはよく理解できなかった。ゲームと言ったらネット麻雀くらいしかやったことのない彼女には無理のないこと。
このゲームにおけるボス、というのは各階層の迷宮層の最奥部に存在している部屋の中にいる敵の事。ソレとタイマンで勝負しても、多少のHPは削れても勝てる確率はかなり低い。というか実質不可能だ。
故に、ボス戦は必ずレイド、というパーティーの上位互換的な物を作らなければならない。
そして、そのレイドを作って戦うにあたって大切になるのが、勿論連携だ。
しかし、それまでほとんど顔の合わせたことのない、もしくはフィールドで顔を合わせただけのような、そんな人間同士が簡単に息を合わせることができるだろうか。利己的なゲーマーであるのならそれが顕著に見える。
だから仲間を、ともにプレイするメンバーを作らなければならない。アランはそう考えていたのだ。
「だから、俺はスミシーを誘ったんだよ。でも、当然二人だけじゃ何の足しにもならない。だから仲間を増やして攻略を有利に進める。そのために、女のプレイヤーを手に入れようとしていたんだ。綺麗どころを集めて、それを撒き餌にして男のプレイヤーを集めるためにな」
「……」
何ともすがすがしいクズっぷりだろうか。サキは、言葉には出さなかったが心の中で軽蔑をした。多分、それを彼もわかったのだろう。
「はっ、軽蔑するってか? だがな。使える物は何でも使う。それがゲーマーってもんなのよ」
絶対に違う。サキは信じていた。
自分の友達にも、MMORPGというジャンルじゃない、でもほとんど毎日のようにネットの世界に足を踏み入れている女の子がいた。
でも、その子はいま目の前にいる男性プレイヤーのように自分勝手な人間じゃない。むしろ、誰かのことを考えてくれるような―――。
いや、思い返してみれば自分と彼女が初めて会った時、そして初めて≪ちゃんとした≫麻雀をしたとき、彼女は自分の麻雀を打ちたくないという意思を無視して必死で麻雀に誘ってきていた。
それはまさしく、目の前にいる男と同じように。だとすると、本当に、ゲーマーはーーー。
「違う……絶対に……」
「ん?」
その時だった。
森の遠くの方からかすかに、悲鳴が聞こえて来たのは。
「今の声って!」
この声、モンスターのソレじゃない。人間の声だ。という事は、この先に誰かがいる。こんな森の奥深くにいるプレイヤーなんて数が限られている。
「スミシー!」
アランは、なりふり構わずその声が聞こえて来た方向に向け走り出した。
「あ、待ってください!」
サキもまた、アランとスミシーのことが心配であるとかそんなこと関係なくアランの後を追っていった。これ以上一人ぼっちでいるのが嫌だったから。
その場所は、意外とすぐ近くにあった。一度、二度ほど角を曲がった先にあった大きな広場。そこで彼女たちは見た。
「あ、あぁ……」
「こいつは、ネペント系モンスター……だが、このサイズは!?」
巨大な、まるで花のつぼみを思わせるような形の植物。ウツボカズラという植物を逆さにしたものに似ているような。そんな気がする。
そして、彼女は見た。その、巨大な植物モンスター、〈グラン・ネペント〉のツルの先に縛り付けられているプレイヤー。
スミシーの最期の姿を。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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ヴァルキリーズfeatボーイ
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プロジェクトSAO
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アルティメットカオス
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無への逃走
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肯定あるいは否定
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フィクションスターズ
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〜いろんな著作物から以降はいらない
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タイトルはそのままでいい