SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
〈グラン・ネペント〉にターゲット、つまり狙いを出さめられたプレイヤー、それが何者であるのかは明らかだ。
〈グラン・ネペント〉は、もともと広場から逃走を図ろうとしていたアランの姿を追っていた。つまりアランをゲームオーバーにした今、その視線は広場の出口と近いところにあるのだ。
必然、そのターゲットもまた広場の出口、そして入り口にあらわれる人物と言える。
そう、アランが死んだ。その数秒後に現れたプレイヤーたち。そこに、モンスターの目は向いたのだ。
「サキさん!!」
「え?」
絶望と、無力感の中に沈むサキの耳に聞こえてきたもの。それは、彼女の現実世界からの友達、仲間の声。
自分を、あの麻雀の世界に引き戻すきっかけを与えてくれた。
自分に姉と向かい合うチャンスを与えてくれた少女。
「は、原村さん!? キョウちゃん!」
そして、自分をあの麻雀部に連れて行ってくれた幼馴染。
再び、麻雀と向き合う機会をくれた幼馴染。
〈グラン・ネペント〉の巨体に隠れてはいるが、しかし彼女にはしっかりと聞こえていた。
こんな愚かな自分を助けに来てくれた者たちの声を。
「まさかとは思ってたけど……本当にこの場所だったなんて」
声は二人だけじゃない。もっと沢山、大勢の声がしている。
そのほとんどは彼女の知らない声だったが、でも一人ぼっちにされて心細かった彼女の心は、その沢山の声のおかげで満たされていた。それは、事実だった。
〈迷いの森〉の中を走り回っていたエイミーたちは、途中で現れる数多くのモンスターと戦いながらサキのことを探していた。通常のモンスターに関しては、こちら側が大人数で尚且つ、実力者の集まりであることが幸いし、少しくらい自分たちよりもレベルの高いモンスターが現れても対処することができていた。
けど、どれだけ探してもサキの姿は見当たらなかった。まさか、すでにモンスターにやられてしまったのではないか。そう頭に掠めた時、最後に残ったこの場所にたどり着いたのだ。
そう、あの凶悪なモンスター〈グラン・ネペント〉が出現する、あの広場に。
「何て大きさのモンスターだ……」
「フム……」
〈グラン・ネペント〉の姿を見たプレイヤー達。エイミーやクレールといったそのモンスターを一度見たことがある面子以外はその、ネペント系列のモンスターを忠実に再現しながらも、凶悪さを増しているような姿に、気を引き締めるような顔つきになる。
その一方、ヒースクリフは一人怪しげな微笑みを浮かべていた。まるで、そのモンスターの品定めでもしているかのようだ。
「とにかく、モンスターの狙いはこっちに向いているようだな」
「そうっすね! そんじゃ!」
「陽動作戦、ですね!」
アンチョビは、〈グラン・ネペント〉のタゲが現在サキではなく、自分達の方にあることを確認すると、ペパロニ、カルパッチョがそれぞれに作戦を確認した。
それと同時にプレイヤー、総勢二十八人は、左右二組に分かれる。
すると、〈グラン・ネペント〉は≪左側≫に密集しているプレイヤー達に対応し、一網打尽にするべく粘着液を放出。
そちら側にいたプレイヤーたちは、その攻撃を難なく避けることに成功した。
元々〈グラン・ネペント〉の情報に関してはナイトやスノーなど、実際に戦ったことのあるプレイヤーたちがこの場所に来るまでに全員に周知させていた。
なので、少しでも腕のあるプレイヤーであるのならば攻撃を避けることなどたやすいのだ。
ともかく、これでわかったことが一つある。〈グラン・ネペント〉がターゲットにしているプレイヤーは、先ほど攻撃されたプレイヤーたちの中にいるということだ。いや、もしかしたら全員なのか。
モンスターがタゲを取るパターンという物は複数ある。目の前にいるプレイヤーにターゲットを絞る者。攻撃を加えたプレイヤーにターゲットを絞る者。時には、ターゲットを絞ったプレイヤーが自分の目から逃れるまで追いかけてくるモンスターも存在するという。
中でも厄介なのは、その場にいるすべてのプレイヤーに対してタゲ、というよりも無差別攻撃をしてくるモンスターがごくまれにいるというパターンだ。ヒースクリフは、〈グラン・ネペント〉はその最後の、無差別攻撃をしてくるモンスター群の一体であると認識していた。
もしくは、数が少ない時には一人に対してのみタゲをとるモンスターなのか。どちらにしても今がサキを救出する絶好の機会である事には変わりはない。
「のどか! 京太郎! 今のうちにサキを!」
「分かりました!」
「待って! 私たちも!」
「はい!」
もう一方、右側に走っていたグループの中から、のどっち、キョウ、エイミー、ベーゼラ、スター、かじゅ、そしてクレールの七人が、〈グラン・ネペント〉の死角からサキの方へと走っていった。
「よし、私達は退路の確保!」
「えぇ!」
残りの七人と、そして右側にいた十四人。合計二十一人はその場に残る。〈グラン・ネペント〉をかく乱し、その間にサキを逃がすために。
「来たよ!」
「ッ!」
といったのは誰だっただろう。上空からとてもよくしなる二本のツルが振り下ろされた。狙っているのはセノ、セレーネ、クリプティッドあたりだろうか。
「きゃぁ!」
「ッ!」
「うわぁ!!」
三人はそれぞれに反応を見せながら避ける。セレーネはいたって冷静にその軌道を読み切って逃げ、クリプティッドとセノは転がるように、しかし確実にツルから逃れることに成功した。
そして、それで終わる彼らではない。
「よし、今のうちに! はぁぁぁ!!!」
と、キッドを含めた数名のプレイヤーが〈グラン・ネペント〉の懐に飛び込んでソードスキルをそれぞれに発動させた。
〈グラン・ネペント〉は、ツルによる攻撃を行った後に大きな隙ができるのだ。そのタイミングを狙って攻撃すれば、少しずつではあるがHPを減らすことができる。前回の戦いのときにすでにこのことに気が付いていた彼らがその隙を見逃すはずがなかった。
『シャァァァァァ!!!!』
複数名のソードスキルがあたり、まるで痛みに耐えるかのような叫び声をあげた〈グラン・ネペント〉のHPが徐々に減っていくのが自分たちにも分かった。ざっとゲージの十分の一くらいは減っただろうか。
「よし、これなら倒せるんじゃない!」
マリンがガッツポーズを作りながら言った。確かに、今の攻撃でHPが十分の一減らすことができたという事は、あと十回同じように攻撃を当てれば倒すことができるという答えに他ならない。
しかし、そんな彼女に釘をさすかのようにノルゲイが言う。
「慢心するのはやめといたほうがいい。冒険じゃ、過信や慢心で誤った行動をして命取りになることがある」
「私達は勝つために、ではなく逃すために来たんです。それを忘れないでください」
「は、はい!」
そう、今回の戦いは、モンスターを倒すために来たわけじゃない。サキという一人のプレイヤーを救助するために来たのだ。
確かにマリンの考える通り、同じ行動を十回繰り返せば〈グラン・ネペント〉を倒すことができるのかもしれない。しかし、それは理論値に過ぎない。
そもそも、先ほどの攻撃、セレーネはともかくとしてセノやクリプティッドはギリギリのタイミングでようやく避けることができていた。もしもタイミングが悪ければクリーンヒットして、その時点で彼、彼女たちがゲームオーバーになっていた可能性もある。
さらに、攻撃方法はツルだけじゃない。一度あたれば装備品の耐久値を大きく減らすだけじゃなく、一定時間身動きをとれなくするような粘着液を吐き出す。そんな敵を相手にして理論値に身体を支配されてしまっては、生き残れるものも生き残れなくなる。
それに、HPの減少具合によっては攻撃方法が変わったり、はたまたHPが突如として回復するというパターンも考えられる。それを考慮に入れれば、一度目の攻撃がうまく入ったとはいえ、まだ完全に安心することは危険なのだ。
先にノルゲイとビショップが言った通り、今回は〈グラン・ネペント〉を討伐することが目的などではない。〈グラン・ネペント〉の向こう側にいるサキを助けること。それが今回の作戦最大の目標であるのだ。
ここから先の戦いは、サキをいかにして助けるか。それが最大の焦点となっていくのである。
だが、これだけの人数がいるのだから楽勝。そう考えている人間はマリンとキッドくらいな物であろう。
(何なの、この胸騒ぎ……)
(嫌な予感がする……)
全員が全員。そのフィールドに何か違和感のようなものを感じていた。この場所に来てから感じるようになった違和感。まるで、自分がSAOとはまた違った別の空間にいるような、そんな謎に満ちる感覚。果たして、その正体を知るのはすぐの事であったのだ。
「え?」
果たして、ソレを最初に見つけたのが誰だったのか。今となってはどうでもいい話だし、思い出すことなんて到底できるはずもない。しかし、その人物は目の前に出て来たソレを見るなり言った。
「何、この綿毛とヒゲ……」
と。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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ヴァルキリーズfeatボーイ
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プロジェクトSAO
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アルティメットカオス
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無への逃走
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肯定あるいは否定
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フィクションスターズ
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〜いろんな著作物から以降はいらない
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タイトルはそのままでいい