SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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 SAOの世界観が、今、破壊される。


メインシナリオ 第二章 第25話

 アンチョビグループー誰がリーダーかで揉めた結果、面倒くさいのでこうなったらしいーが〈グラン・ネペント〉を誘き寄せていた頃、その向こう側で座り込んで呆然となっていたサキの下にのどっち達が到着していた。

 

「サキさん!」

「サキ! 大丈夫か!?」

 

 サキの知り合いであるのどっち、そしてキョウの二人が声をかける。その、つい数時間前まで一緒にいたはずなのに、なぜか遠い過去に置き去りにしていたかの様な声を聞いて我に返った様子のサキ。

 

「原村さん、キョウちゃん! 怖かったよぉ~」

 

 と、現実であれば涙目になっていそうな表情でサキが二人の名前を呼びながら抱き着いた。キョウは、そんな彼女の頭を優しく撫でる。よっぽど怖い目にあったのだろうと、考えながら。

 それにしても、男性プレイヤーが女性プレイヤーに対して抱き着いたり卑猥なことをしたらハラスメント警告されるというのに、女性からそう言った行為をしてもなんの警告も出されないというのは少しだけ不条理なところがあるような気もしないでもない。

 エイミーは、そんな三人の姿を見て安心する、と同時に一つの疑問が生じた。

 

「ねぇ、アランとスミシーってプレイヤーは一緒じゃないの?」

 

 そう、確かヒースクリフの目撃証言によれば、その二人、もしくはその二人と目的が類似したプレイヤーに追いかけられていたはず。

 自分たちは森の中を歩き回って彼女のことを探している途中にその二人のことも探していたのだが、姿は一切見ることはなかったのだ。だから、てっきりこの広場のフィールドに彼女と一緒にいるものだと思っていたのだが、違うのだろうか。

 もしかしたら途中で諦めて帰ってしまったのかも。

 ただ、そんな単純な質問のはずだった。

 

「ッ!」

 

 しかし、その二人の名前を聞いた瞬間だった。サキの顔色が明らかに変化したのは。まるでいがぐりを喉の奥に引っ掛けたような表情を浮かべたサキ。その顔を見て、その場にいた面々はこの場で一体何があったのか、見当がついてしまったのだ。

 

「まさか、あのモンスターに……」

 

 クレールが言ったであろうか。しかし、その言葉が最後まで続くことはなかった。

 

「ごめん、なさい……」

「え?」

 

 そう掻き消えるようなつぶやきをしたサキは、抱き着いていた二人から離れると両手で顔を覆いながら座り込んだ。

 

「御免なさい、ごめんなさい。私が弱虫だから、二人とも……ごめん……」

 

 おそらく、現実だと大粒の涙を流しているのだろう。この辺り、とてもやさしい少女であるのだと、エイミーも思っていた。そして、それと同時にクレールの想像もピタリと当たってしまったという事実にも気が付いてしまった。

 どんな経緯があったかはわからない。しかし、少なくとも彼女の目の前で二人の、アランとスミシーというプレイヤーがゲームオーバーになった。つまり、死んだのだ。

 そして、その死に彼女が関わっている。いや、関わってしまったかもしれない。そう考えているのだろう。

 きっと今、彼女は自分自身の罪と向き合って、崩れ落ちそうになっているのだ。誰かの死に関わってしまったという受け入れがたい事実にどう向き合えばいいのか。わからないのだろう。

 そんな顔を見せる彼女にかじゅは言う。

 

「気にするなとまでは言わん。だが、一人で背負おうとするな、サキ」

「え、あ、もしかして鶴賀の部長さん?」

「いや部長は蒲原、いや今は津山だが……」

 

 と、今のこの状況に全くにあっていない返答が返ってきたことに苦笑したかじゅ。

 この点は頻繁に勘違いされるところなのだが彼女、現実名加治木ゆみは本来は部長などでなく、副部長。

 そのたたずまいや麻雀の卓越さ、そして人心掌握術から多くの人間に部長だと思われてしまっているのだが、鶴賀の本来の部長は蒲原智美という人間であるのだ。雰囲気ではまったくそうは見えないのだが、決して折れることのない事実である。

 とはいえ、二人ともすでに麻雀部は引退しており、部長でも副部長でもないし、神原は今回プレイすらもしていないのだが。

 

「ともかくだ……お前は確かに気が弱いかもしれない。だが、今回のことにたいして弱虫などと言うモノは決していない」

「でも……」

 

 スミシーの場合はもうどうにもならなかった。でも、アランの時は、アランが死んだとき、自分にも何かできたんじゃないか。

 少なくとも、あの〈グラン・ネペント〉に攻撃してその気を逸らすことくらいはできたのではないか。そんな、あったかもしれないもしもの世界が思い浮かんでしまうのだ。

 

「その二人のプレイヤーを殺したのはお前か?」

「え、ち、違います」

「二人を殺したいと思ったのか?」

「違います……」

「なら、二人が死ねばいいと、そうも思ったのか?」

「そんな、そんなこと思ってません!」

 

 サキは、矢継ぎ早にかじゅから飛んでくる質問に答えていく。それを聞いたかじゅは、笑顔でサキの肩に手を置くという。

 

「なら、それでいい」

「え?」

「どういう経緯で、アランとスミシーというプレイヤーが死んだのかは私にはわからん。だが、少なくもお前が後悔している。二人の人間が死んだことに。今回は、ただどうすることもできなかった。それだけだ」

 

 多分、そういう事だろう。とかじゅは言った。おそらく、アランが倒されたあの場面で、サキが勇気を出して行動していたとしても〈グラン・ネペント〉の攻撃は止まることはなかった。

 結局は、アランが〈グラン・ネペント〉の攻撃対象にされた時点でもうどうすることもできなかったのだ。

 また、その直前。サキが独断で別々の方向に走ったことによってアランの方にターゲットを移したことに関しても、状況的には二人一緒に動き、共にゲームオーバーになる可能性もあったことからリスクの軽減としては最善の選択だった。

 結果的にそのタゲがアランに向いてしまっただけで、彼女は決して最悪の選択ばかりをしていたわけではないのだ。

 だったら。

 

「……でも、もし私がこの森に迷い込んだりなんてしなかったら……」

 

 その前のイフ、そのまえのもしも。

 もし、自分がこの森に迷い込むことなんてしなかったら。アランとスミシーが離れ離れになることもなく、この場所で〈グラン・ネペント〉に倒されることはなかった。あるいは―――。

 等と、サキの頭の中には最悪のもしもばかりが並ぶ。まさに、罪悪感に打ちのめされている人間のソレだ。

 

「宮永さん」

「え?」

 

 そんな、彼女の最悪の思考を止めたのは、友達だった。

 のどっちは、彼女の手を持つという。

 

「加治木さんも言ってるじゃないですか。一人で背おう必要なんてないんです」

「そうだぜサキ! サキ一人が悩むことなんてない! 俺たちもいるじゃないか!」

「原村さん……キョウちゃん……」

 

 それは単なる言葉だ。そのような言葉を発したところで彼女の罪が軽くわけではないし、彼女の罪が他人に分け与えられるわけでもない。

 でも、サキにとってはその二人の言葉はとても心強かった。まるで、雪の下で芽吹いた草木が初めて太陽の光をその身に浴びた時のように、とても温かい気持ちになることができた。

 

「私の友達も……」

「え?」

 

 そう、呟き始めたのはベーゼラだった。彼女は遠い過去を見つめるような目で空を見上げて言う。

 

「大昔に好奇心で決して許されないような罪を犯しました。その子も、そんなつもりはなかった。そんなことになるなんて知らなかった。でも、償いきれるはずのない大きな罪です」

「罪……」

 

 その、罪の話に関しては今のこの状況だ。話している時間はない。でも、少なくともその子がとんでもない過ちを犯したこと、そしてその過ちに対してどう向き合ったのかを知ってもらいたかったのだ。

 

「その子は自分のココロを守るために、自分の記憶を封印して、一緒にいた私が、その許されざる罪をした人間だと思い込んで……あんなことを……」

「あんな、こと?」

「……」

 

 ベーゼラは、そう言うとサキから少しだけ目をそらし、目を閉じた。そして見たのだ。あの時の、炎を身に纏った鳥の姿を、瞼の裏に。

 そして、その友達のココロを守るために偽りの街を作り上げ、偽りの物語を真実としようとした二人の、尊敬する人たちを、思い出していた。

 

「サキさん。どんな人でも罪を持ちます。大切なのは、その罪を忘れないこと。その罪とどう向き合えばいいのかを悩むこと。そして、どんな罪を持っていても支えてくれる人がいることを、忘れないでください」

「罪を、忘れない……」

「はい……私の名前、≪ベーゼラ≫も……その証……あの子の罪を私も背負って、生きています」

 

 ベーゼラは、サキに面と向かっていった。自分と同じように生きてくれとは言わない。でも、何でもかんでも一人で背負い込むんじゃない。

 その罪を一緒に背負ってくれる誰かがいること。どんな罪を持っていたとしても、一緒にいてくれる人間が必ずどこかにいるのだという事を知ってもらいたかった。のかもしれない。

 

「……イキマショウ。サキさん」

「原村さん……」

 

 果たして、それがどちらの意味だったのかは分からない。いや、もしかしたらどっちも、なのかも。でも、どちらにしても彼女は立ちあがって手を伸ばして言ったのだ。

 

「たとえ、サキさんがどんな罪を持っていても……私は、サキさんの友達です」

「あぁ、そうだ! 何度だって言ってやる! 一人で悩むな! 俺たちが傍にいるってな!」

「キョウちゃん……うん!」

 

 こうしてサキは立ち上がる。自分の罪と向き合うために。そしてその罪を償う方法を考えるために。そして、“罪を忘れない”、その約束を果たすために。

 

「よし、セノ達がおとりをしてくれている。今のうちに出口に走るぞ!」

「はい!」

 

 今現在〈グラン・ネペント〉はもう一組のグループに手いっぱいでこちらを気にしている場合じゃない。今のうちだったらその横を通り過ぎて広場から出ることができる。

 〈グラン・ネペント〉の出現場所はこの広場のみであるという事は前の戦闘の時にすでに織り込み済みだ。広場から出てしまえば追ってくることはない。

 だから、彼女たちは走った。

 出口に向かって、走った。

 はずだった。

 

「なに!?」

「な、なんですかこれ!?」

 

 その時、景色が崩壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

データのダウンロードが完了しました

 

これより、プログラムを実行します……

 

データの置き換え完了しました

 

クエストを再開します

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここは私の夢の薔薇園

 

 

 

 誰にも邪魔されない薔薇の庭園

 

 

 

 私と私の仲間たちで作る夢の園

 

 

 

 けどあるのは色も花もない草の苗

 

 

 

 足りない足りない

 

 

 

 色が足りない

 

 

 

 足りない足りない

 

 

 

 花が足りない

 

 

 

 どこにあるの私の花

 

 

 

 どこにあるの私の色

 

 

 

 どこにどこにどこに

 

 

 

 どこにどこにどこに

 

 

 

 どこにどこにどこに

 

 

 

 見つけた見つけた花と色

 

 

 

 綺麗な綺麗な赤い色

 

 

 

 少し奇妙な花の束

 

 

 

 仲間が見つけてくれる花の束

 

 

 

 花から出てくる赤い蜜

 

 

 

 それを一つ飾ってみよう

 

 

 

 できたできた綺麗な薔薇園

 

 

 

 でもまだ足りない

 

 

 

 足りない足りない

 

 

 

 色が足りない

 

 

 

 足りない足りない

 

 

 

 花が足りない

 

 

 

 もっともっと見つけに行こう

 

 

 

 奇妙な花と赤い蜜

 

 

 

 探しておいで私の仲間

 

 

 

 探しておいで私の薔薇を

 

 

 

 あなたもよって見てごらん

 

 

 

 きっと酔いしれるその匂い

 

 

 

 目が奪われる甘美な景色

 

 

 

 これが私の理想の園

 

 

 

 私の薔薇園

 

 

 

 開園です

 

 

 

Gertrud

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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