SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ 第二章 第26話

 これは、夢か幻か。夢だったとしたら悪夢。幻としたら幻惑。そんな、摩訶不思議な空間を前にし、プレイヤーたちの顔は、困惑の表情で埋め尽くされていた。

 だが、無理もない。先ほどまで薄暗い森の中という現実にもありそうな場所にいたはずなのに、突如として奇怪なる壁紙の部屋に閉じ込められてしまったのだから。

 蝶や王冠、それから四葉のクローバーのようなマークが壁に描かれており、それがあたかも刑務所の壁のようにその部屋を取り囲んでいた。

 その上には、形容するのも難しいようなつらなった円形状の壁が所狭しと並んでいる。

 その壁は、時計回りであったり反時計回りであったり、ゆっくりであったり早かったりと不規則な動きを見せていて、じっと見ていたら三半規管がおかしくなってしまいそうになる。

 見上げてみると、そこには天井があった。しかし、一面を血のように真っ赤な薔薇の花で覆われていて、それがその部屋の不気味さをさらに引き立たせるのに一役を担っているようにも思えた。

 そしてその中心部にはーーー。

 

「な、なんなの、あの化け物!?」

 

 とても珍妙なる姿、モンスターとはこのような化け物のことを言うのだろうと思わせるような存在がそこに鎮座していた。

 薔薇の花園の上に立っている、食虫植物が解けたかのような顔をしたモンスター。その背中には巨大な蝶の羽が付いており、そのグロさとファンタジーさが入り混じった外見は、正直あまり直視したくないような存在だった。

 

「〈グラン・ネペント〉はどうしたの?」

 

 と、クレールがつぶやいた。そうだ。自分たち、というよりも自分たちのもう一つのグループが戦っていたのは〈グラン・ネペント〉だったはずじゃなかったのか。

 それが一体、いつ、どこで、あのモンスターに変化してしまったのだろう。

 

「知らないわよ!」

「!」

 

 と、サマーがそれまで見たことがなかったようなモンスターを切り捨てながら言う。綿毛にダンディーな髭をつけたモンスター。

 しかし、そのモンスターが操っているであろうツタは、とても切れ味がよさそうなハサミを所持しており、否が応でも危険な存在であることを認識させる。

 

「こんなモンスターがウヨウヨ現れたと思ったら!」

「急に景色が変わったんです!」

 

 スターがそう言った。

 先ほどまでは確かに作戦は順調に遂行されていた。〈グラン・ネペント〉の攻撃が別動隊に向かわない様に自分たちに意識を向かせて、幾度もの隙を見て攻撃して、このまま順調に終わるものとばかり思って。

 しかし、突如として現れた綿毛のモンスター。名前を見ると、どうやら≪アントニー≫という名前らしい。それが、忽然と森の中から出現して彼女たちを襲ったのだ。

 幸いにも、発見と対応が早かったために致命傷に至るほどのダメージを受けたプレイヤーは皆無だったそうだ。

 しかし、安心したのもつかの間。そのすぐ後に突如として景色が飴細工のようにグニャグニャに変化していき、気が付いたらこんな部屋になっていた。

 広さは自分たちがもともと戦っていたあの広場と同じくらい。でも、≪アントニー≫という小さなモンスターが山程に出現し、密集したことによってとても狭くなってしまったような印象を受けてしまう。

 

「でもなんでモンスターがいきなり……」

「敵のHPを減らしすぎたのか……」

 

 と、ハワードが推測した。こういったゲームにおいて、HPを減らすことによって敵モンスターに何らかの変化が訪れる可能性に関しては、すでに論述した通り。

 故に、今回もそのパターンに当てはめて考えていたのだ。

 

「いや、それはないだろう」

「え?」

 

 しかし、それを即座に否定したのはヒースクリフだ。

 

「その根拠はなんだ?」

 

 ノルゲイの言葉に、ヒースクリフは≪アントニー≫の攻撃を受け流しながら言う。

 

「私は、元βテスターなのだが。βテスト当時、確かにHPを減らすことによってモンスターの攻撃パターンが変化すること、またその姿を多少なりとも変化させることはあった。だが、ここまで……ましてや、フィールドもろとも変化させるようなモンスターは、階層ボスにもいなかったはずだ」

「ヒースクリフさん、βテスターだったんだ……」

 

 意外なことに、ここまで多くのプレイヤーが入り混じっている中で、元βテスターであったのはヒースクリフただ一人だけなのだ。

 まぁ、そんなこと今は大した問題ではないのだが。

 

「そんなことより! どうすんのこれから!」

「出口も無くなってしまったみたいですし……」

 

 とセレーネが周囲を見渡して言った。ことこの状況においても冷静に周囲を見渡すことができるのは、ある種とてつもない度胸の持ち主であると言えるだろう。

 だが、彼女の懸念ももっともだ。せっかく退路を背後に確保していたというのに、その方向にあったはずの広場の出口が消えてしまっていた。

 その後、モンスターに攻撃しながらも出口を探したのだが、どこをどう見渡しても出口らしき場所も入口らしき場所も見当たらなくなってしまった。

 という事は、あのモンスター。〈グラン・ネペント〉という名前から≪ゲルトルート≫という名前に変化したモンスターを倒さなければこの空間からは抜け出すことができないというのだろうか。

 

「いや、もう少し上を見ろ。出口があった辺りのだ」

「え?」

 

 と、言ったナイト。一同は、もともと出口があったであろう壁のやや上を見上げた。すると、そこには通路らしきもの。この非常識な空間には似つかわしくない現実的な通路がそこにはあった。

 

「まさか、あれが出口!?」

「現実ならともかく、ゲームの世界じゃあんな高さ届かないんじゃ……」

「え、現実なら届くんですか?」

 

 と、スノーの言葉に驚いたのどっち。

 

「私も私も! あのくらいの高さなら、山で慣れているから!」

 

 対抗するようにシズが主張をし始めた。他、この場所にいる面々なら他にも身体能力が高い人間がゴロゴロといるのだが今はそんなことを言い合っている場合じゃない。

 

「とにかくだ!」

 

 話がそれかけたところを大声で戻したナイトが言った。

 

「あの高さ、おそらく全力でジャンプすればあの通路には届くだろう」

「それじゃ! 逃げ道がないってわけじゃないんですね!」

「そのとおり。しかし、問題なのは!」

 

 その時、≪ゲルトルート≫によるツタの攻撃がヒースクリフを襲った。攻撃自体は、〈グラン・ネペント〉のソレと似た物があるようだが、しかし、先ほどよりもさらに鋭さとスピードを増しているようにも見える。

 

「この攻撃をいなしながらどうやってあそこまで飛ぶかだ!」

 

 ≪ゲルトルート≫の攻撃は絶え間なく続いており、一切の隙を見せず〈グラン・ネペント〉の時よりも戦い辛い。

 周囲を囲む≪アントニー≫だってそうだ。ハサミによる攻撃自体は、それほど早くないため恐怖心に心を支配されなければ冷静に対処することが可能である。

 しかし、ソレが何十体も集まればこれほど驚異的なモノはないだろう。

 

「とにかく敵の攻撃を分散させるぞ! 全員散会だ!」

「ダメです! アランさんはそれで……」

 

 と、アンチョビの策に対してサキが物申す。やはり、先ほどのアランの一件がトラウマとなってしまっているのだろう。戦力を分散させて、自分たちとはまた別の人間が犠牲になる。ソレが嫌なのだ。

 

「だが、固まって動けばいずれは動けなくなるぞ、いいマトになる!」

 

 ここで、大人数で行動していることが裏目に出る。仮にゲルトルートの攻撃に個人で避けることができたとしても、その避けた方向に味方がいれば、邪魔になり、避けきることができなくなる。

 または、その味方に攻撃が当たってしまうという事も考えられる。集団で動くという事は、そう言ったデメリットも存在しているのだ。

 

「くっ、ならどうすれば……」

 

 全員が、未知のモンスターを前にして混乱していた。

 いや、正確に言うと違う。何名かのプレイヤーは冷静に現在の状況を分析し、どうすれば生存確率が上がるのかを頭の中で計算していた。あらゆる方法を模索し、そしてシミュレーションをした。

 その人物たちの中で、意の一番に発言したのはヒースクリフである。

 

「私に考えがある」

「え? 本当!?」

 

 こうなれば藁にも縋る思いだ。マリンが、ヒースクリフに聞いた。一体、どんな方法があるのかと。

 その時だった。ノルゲイやビショップ、ナイトなど、勘の鋭い者たちは確かに垣間見た。

 

「一人があのモンスターの気を引き、その間に他のプレイヤーが脱出する! それしか方法はない!」

「え?」

 

 なんの葛藤もなくその作戦を提案するその姿に、彼の裏の顔を、狂気性をおぼろげながらも。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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