SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ 第二章 第28話

「話は終わったっすか! 姐さん!!」

 

 と、アントニーの攻撃を受け流しながら聞いたのはペパロニである。

 彼女だけではない。他に何名ものプレイヤーがアントニーの集団に対してタゲを取ったり、攻撃を仕掛けたりしている。

 ヒースクリフが作戦を提案して以降、それぞれの仲間たちが彼に対し作戦の真意を聞くための時間を稼ぐ。そのために彼女達がアントニーやゲルトルートからの攻撃を防いでいたのである。

 その中でヒースクリフの言葉を聞き逃さないようにし、手をあげてたりしていたのだから、とてつもない技量のメンバーであると言える。

 

「あぁ! よくやったぞ!」

「はい!」

 

 アンチョビの言葉に応えるカルパッチョ。因みに、ペパロニとカルパッチョの二人。現実世界でもアンチョビの側近のような立ち位置にいる二人は、たとえアンチョビがどちらの道を選ぼうとも、この場所に残り囮を務めることもいとわなかった。

 でも、結果は彼女たちも心の中で思っていた通り、アンチョビもまた囮として残るという事になった。

 いや、もはや囮という言葉は不適切。これは、ゲルトルートととの戦いなのだ。

 ネトゲ用語を使うのであればレイドバトル。複数人で強大な敵モンスターと戦う道。彼女たちは誰もがそれを選んだのである。

 

「小雪ちゃん! 何かわかった!?」

「はい! まず、綿毛のモンスター。アントニーの攻撃方法はハサミだけ! ソレ以外の攻撃は皆無です!」

 

 サマーの問いに答えたのは、スノーであった。サマーは彼女に目の前の二種類のモンスターと戦っている間に少しでも多く情報を集めてもらいたいと頼んでいたのだ。

 

「それに、ゲルトルートの方もだな」

 

 そう言葉を紡いだのはヒースクリフだ。

 

「みたところ、攻撃方法は〈グラン・ネペント〉と同じツル。それとアントニーと同じハサミの攻撃、ただしスピードは体感一.五倍といったところか。後は地面の近くで飛び回る蝶のようなもの……コレは先程まではなかったはずだが……」

 

 と、考えるように手を顎に置いた彼に、けげんな顔をしたキッドが聞いた。

 

「お前、さっき自分だけ逃げようとしてたのはどうなったんだよ?」

「勘違いしないでもらいたいが、私はただ作戦を提案しただけだ。もし誰も囮になることを望まなかったら、私が名乗り上げる予定だった」

「本当か?」

 

 話の真偽はともかくとしてだ。アントニーに関しては直接戦闘を行った者が多数いることからその特性は間違いないだろう。

 しかし、ゲルトルートに関しては、まだ直接戦ったわけではないため未知数のことが多い。戦いは慎重の上に慎重を喫した方がよいだろう。

 

「よし、まずはアントニーから片付けようよ!」

 

 ならば、と提案したのはスターだ。確かに、周囲に他のモンスターが密集している状態で一体の強力なモンスターとの戦いは、かなり厳しいものとなる。故に、まずは取り巻きのように現れているアントニーから対処しなければならないと思うのだが。

 

「しかし、もしもアントニーが無限湧きするタイプのモンスターだったら……」

 

 と、のどっちが懸念事項を述べる。

 無限湧き、つまり一体倒したらまた一体敵が増える。どれだけ倒したとしても数が減らないというモンスターの湧き方の事だ。その場合、そのモンスターを使役しているモンスターを倒せば無限湧きは止まる。

 もしもアントニーがそのタイプのモンスターであるのならば、率先して倒さなければならないのは逆にゲルトルート、という事になる。

 しかし、やはりその場合も周囲にいるアントニーが邪魔だ。果たして、どうしたものか。

 

「なら、先ほどの様に二組に別れよう」

 

 進言するのはノルゲイである。

 

「俺やビショップ、他何名かのプレイヤーでアントニーの相手をする。その隙に、他のプレイヤーがゲルトルートの相手をする」

「でも、それだとさっきの……」

 

 ヒースクリフの提案した囮作戦と何ら変わらないのではないかと、懸念したキョウ。しかしナイトは言う。

 

「いや、ヒースクリフの作戦は、撤退を主にした囮作戦。ノルゲイの提案は、陽動作戦。表面上は似ているが、その結果が違う」

「誰かが死ぬか……相手を倒すか……」

「それとも、全員が死ぬか……か」

「その通りだ。ノルゲイ、俺も陽動に参加する。キッドもいいか?」

「おう!」

「ふっ、なら私も参加しよう」

「私も!」

 

 などなど、結果アントニーと戦うのは、ノルゲイ、ビショップ、ナイト、キッド、かじゅ、セノ、あこちゃー、キョウ、サキ、フラウ、ハワード、ラフルール、ペパロニ、カルパッチョの十四人。

 それ以外の十五人がその間にゲルトルートと戦うという事になった。

 

「よし、作戦開始だ! だが、その前に言っておく……」

「……」

「……」

「総員……絶対に死ぬな!」

「はいっす!!」

 

 アンチョビのとても重い言葉。これが自分が考えた作戦でなかろうとその提案に乗ったからにはその責任の一端を感じいていたのかもしれない。

 けど、そんな責任持たなくていいと誰もが思っていた。

 これは、その作戦に乗った自分たちの責任なのだから。

 だが、責任を取る。それがリーダーたるものの大事な責務なのだ。そう、彼女は自覚していた。

 故に、彼女はリーダーたる資格を持っていたのかもしれない。

 

「行くぞ! アタック!」

 

 その声と指を弾いた音を皮切りに、作戦が開始された。

 

「フッ! ハァッ!!」

「ハッ! こんのォ!」

「こっちだ!!」

 

 それぞれに、ソードスキルを繰り出し、モンスターを散らばらせるように動く。その際、孤立してしまうリスクを補うために互いに互いの動きを観察しながら、一定の距離を保って。

 その時、一体のアントニーが青白いガラス片と化した。と、同時に一体のアントニーが白い綿毛の向こう側で復活したのが見て取れる。

 

「やっぱり無限湧きするタイプか!」

「なら、せめてシシーラたちの動線を確保しよう!」

「うん!!」

 

 と、敵が倒しても減らないという事が分かった彼女たちは、ゲルトルートと自分たちの間にいるアントニーを倒す作戦に切り替える。

 無限湧きといっても、モンスターがその場で復活するわけではない。必ずその場所以外のどこかで復活するようにプログラミングされているのだ。だから、この場合は、ゲルトルートのところまで続くアントニーの群れを倒すことによって、一時的にその動線を確保した方がいいと判断した。

 そのフラウの言葉に、周囲のアントニーと戦っていた者のうち半数が、ゲルトルートを倒すためにグループ分けされていた討伐体の前に立った。

 

「しゃあ!」

 

 そして、キッドがお決まりの掛け声をかけた瞬間、突撃する。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

 次々とソードスキルを繰り出すプレイヤーたち。横水平斬りの≪ホリゾンタル≫や斜め斬りの≪スラント≫など。中には、ソードスキルを使わずに攻撃するプレイヤーもいた。

 

「って! なんでソードスキル使わねぇんだよ!」

 

 と、スキルを使わずに戦うノルゲイに対し文句を言うキッド。だが、ノルゲイは目の前のモンスターを切り伏せながら言う。

 

「フッ! 全員がソードスキルを使って、硬直時間が重なったら危険だからな」

「あ、なるほど……」

 

 考えてなかった。ソードスキルには、確かに使用直後に少しだけその動きが止まる硬直時間という物が存在する。その間、敵に対して無防備な隙を作ることになってしまい、重い攻撃を受けてしまえばひとたまりもないのだ。

 それに対応するため、βテストの時はスイッチという方法を編み出し、他のプレイヤーがソードスキルを放つことによって硬直時間にあるプレイヤーを補助するという作戦が練られていたのだが、ことこう言ったモンスターが密集している状況においてスイッチの効果は薄くなってしまう。

 そのため、ノルゲイは一人ソードスキルを使用せず敵モンスターを引き寄せおびき寄せ、またソードスキルの硬直時間が他プレイヤー同士で同じになってしまった時にモンスターに対応しようという事で、ソードスキルの使用を必要最低限にしているのだ。

 どうやら、見た目と話し方にそぐわず、知略家の一面を持ち合わせている様だ。

 それもそのはず、彼もまた現実に戻れば一つのある部隊のリーダーだった。

 仲間を指揮し、仲間に助けられ、そして、仲間と共に苦難の冒険にも挑んでいく。

 そんな人間に洞察力が備わっていないわけなかった。

 

「ハァッ! よし、今だ! いけ!!」

 

 彼の独自の作戦もあって、ついにその道が開かれる時が来た。

 気が付けば、彼彼女たちの前にいたアントニーはほとんどが討伐され、ゲルトルートへと続く道が出来上がったのだ。

 もちろん、まだアントニーの湧きは続いているのだが、それもまたキッドやノルゲイたちが防いでくれている。これならば、行ける。

 

「よし、君たち……」

「お先!」

「なっ!」

 

 と、リーダーシップを取ろうとしたヒースクリフを差し置いて、な・ぜ・か・マリンが突撃した。いや、これは現実の彼女のことを知っていればなんとなく想像できるようなことなのだが、いかんせん彼女のことをほとんど知らない周りの面々は面を喰らった様子だ。

 

「ハァァァァァァァァ!!!」

 

 そうこうしている間に、マリンはゲルトルートの目の前にまで来て、≪スラント≫を放つ体制をとった。

 その時だった。

 

ブチッ!

「へ?」

 

 何かを、踏んづけてしまったようながした。地面を見ると、どうやらそこには低空飛行しているクリオネらしき物が何匹か見える。もしかしてこれを踏んづけてしまったのか。

 その時だった。何か嫌な予感がした。

 

「えっと……」

 

 恐る恐る顔をあげたマリン。その先には―――。

 

『……』

 

 こちらに顔を近づけているゲルトルートの姿。その顔は、あまり変わっていないがなんだか少し怒っていらっしゃるようにも見える。

 そして。

 

「な、なんかきたァァァァァ!!!」

 

 次の瞬間には。どこからともなく出現した巨大なハート形の椅子をぶん投げてきた。

 何故、ハート形なのだろうか。そんなことを考えている余裕なんて彼女たちにはなかった。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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