SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ 第二章 第33話

「ハァぁぁぁぁ! ッ!」

 

 目の前のアントニーと戦っていたキッドは、ソードスキル、≪ホリゾンタル≫を放とうとしていた。だが、その攻撃は放たれることなく終わる。

 

「これは……」

 

 周りにいたアントニーたちが皆、青白いポリゴン片となって消失していったのだ。それだけじゃない。周りを囲っていたあの薔薇の庭園のような気持ちの悪い空間もまた、徐々に徐々に霧のように消えようとしていた。

 もしかして、キッドは後ろにいたゲルトルートの姿を見た。その瞬間だった。

 ゲルトルートの上に見えていたHPが全消失し、その動きを、まるでカメラに映し出された写真のように完全に停止させ、ガラスの割れる音とともに完全に崩れ去ったのだ。

 刹那。空間も完全に崩れ去り、周囲は、彼らがよく見るような森のステージに変容した。そう、≪グランネペント≫がゲルトルートに変貌するまでの間、彼らを怖いくらいに見つめていた、あの森の中に戻ったのである。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「か、勝ったの?」

「見たい、ですね……」

 

 あたりにもうモンスターがいないことを確認したプレイヤーたちは、総じて座り込んだ。

 そう、勝ったのである。イレギュラーともいえる事態に遭遇した物の、彼、彼女たちは危機を乗り越えて、無事に“全員”が生還したのだ。

 敵の正体が一切不明な凶悪なモンスター。そしてプレイヤーの数の倍以上が無限湧きしてくるモンスター群に囲まれたという誰もが絶望しそうな状況。

 ゲームオーバーとなる者が出ても何ら不思議ではなかった状況下で、誰一人として死者を出すことなく全員が乗り切った。生き残ったのだ。

 これは、もはや快挙といってもいいかもしれない。

 とはいえ、少々危なかったのは確かだ。特にアントニーと戦っていたプレイヤーの半分はHPがレッドゾーンにまで陥っていて回復アイテムもいつの間にか枯渇していた。

 エイミーに届けた分だけじゃなく、自分たちでも使っているうちにいつの間にか無くなってしまっていたのである。本当に、ギリギリの勝利であったことがよくわかろう。

 ゲルトルート討伐隊の方も、致命傷の人間はおらずとも、精神的な疲れがたたってその場に倒れこむように座り込み、立っているのはヒースクリフ等の一部の大人のプレイヤー達だけだった。

 と、その時プレイヤーたちの目の前に経験値やコルを入手したというウィンドウが出現した。どうやら、この場所で戦ったメンバー全員に均等に分けられているようだが、にしてはかなり多い気もする。

 というか、確かこういった物は敵を倒した瞬間に出されるものなのではないかとか、別にパーティーを組んでいたわけじゃないプレイヤーたちにまで均等に分配されていることが気になるとか、途中参加のDOMたちにも均等に分配されているだとか、諸々の疑問点が生じるが、今はそんなこと考えていられる余裕なんてなかった。

 

「エイミー……」

「く、クレールさん……」

 

 と、その時エイミーに声をかけたプレイヤーがいる。クレールだ。

 エイミーもまた、場所が場所だったためかフィールドの出口付近でシシーラやセレーネとともに座り込んでいたのだ。

 

「……」

「……」

 

 なにか気まずい雰囲気が流れる。その中で、クレールは彼女に向けて手を差し伸べて言った。

 

「お疲れ様……」

「あ、うん。ありがとう」

 

 そして握手を交わした二人。クレールはただそれだけ言うと離れて行った。

 

「ってえ!? それだけ!?」

「なにか他に言う事があるのかと思った……」

 

 と、周囲のメンバーがその状況に突っ込む。確かに、何か言いたいことがありますという雰囲気を持ったクレールの足取りに、誰もが耳を傾けていた。でも、結局彼女はエイミーにねぎらいの言葉をかけるだけで終わりなんて、ある種拍子抜けである。

 まぁ、少しだけコミュ障の女の子が勇気を出してかけたからそんな雰囲気を出してしまったから、なんて知る由もないわけだが。

 

「あっ……」

「どうしたの?」

 

 と、エイミーが声を上げた。その理由は、彼女の視界に現れたある物からだ。

 

「クエストがクリアしたって、メッセージが……」

「え?」

 

 そう、実は彼女の視界の中心部にクエスト達成を告げるメッセージが流れたのである。しかしそれは変だ。

 何故ならば、本来自分が請けたクエストは、モンスターから取り返した指輪を持ち主である人物の奥さんに返すという物だったはず。つまり、その指輪を当該人物に渡して初めてクエスト終了となるはずなのだ。それなのに、どうして今クエスト達成になるのか。

 

「というか、そもそもその衣装って何なの?」

「え?」

 

 モンスターを倒し終え、色々と冷静になったプレイヤーたち。その中で、あこちゃーがようやくエイミーに聞いた。

 一体、そのファンタジー一色の衣装は何なのかと。

 

「えっと、これは……この指輪を指にはめたらこうなって……ってあれ?」

 

 と言いながら、手袋を取って指輪を見せようとしたエイミーは、しかしソレが取れないという事に気が付いた。

 

「どうしたの?」

「あの、手袋が脱げなくて……」

「それじゃ、メニューウインドウの装備フィギュアを使えば?」

「あ、そっか」

 

 そういえば、この世界では衣服や装備品の着脱には、装備フィギュアを操作するのだったなと思い出した彼女は、メニューウインドウから件の装備フィギュアを呼び出した。

 その時、彼女はある違和感に気が付いた。

 

「あれ?」

「今度は何?」

「装備が……一括になってる?」

「え?」

 

 本来なら、服やズボン、靴、などの項目があるはずなのにだが、それが一括りとなって装備解除というボタンになっていた。とりあえず、彼女はその項目を押した。

 その瞬間、桃色の光に包まれたエイミーの姿は、その姿になる前と同じ、SAO初期装備のそれに変化する。

 元の姿になれたのにほっとすると同時に、彼女は左手中指に指輪がはまっているのを確認した。

 装備フィギュアを見ると、どうやら〈ソウルジェム〉という名前の指輪らしいのだが、とりあえずそれをタップして、解除を試みた。しかし。

 

【この装備品は外すことができません】

「え?」

 

 というエラーウインドウが出るだけで、外すことができなかった。何度も何度も試すが、結果は変わらず外すことができない。

 

「なんで?」

「もしかして、呪いの装備品とか?」

「えぇ!?」

 

 ハワードは言う。ある有名なゲームには、呪われた装備という種類のアイテムがあり、一度装備すると外せなくなり、また大した効果がないというまさしく呪いという言葉がふさわしい種類のアイテムがあるのだとか。

 もしかしたら、このSAOの世界にもそう言ったアイテムがあるのかも。それが、彼の推測だ。

 

「でも、そのソウルジェム? っていうのを使ったおかげで、エイミーは変身できたんだよね?」

「うん……」

「という事は、効果はあったってことじゃないの?」

「まぁ、攻撃すれば自分のHPが減る、っていうのは呪いみたいなものだがな……」

「ごもっとも」

 

 逆に言えば、その力と引き換えにしてでも有能な装備品であるという事だ。ある意味メリットとデメリットがいい塩梅になっていると言っても過言ではないのかもしれない。

 エイミーは、一人ソウルジェム、並びに魔法少女の説明欄を黙読する。そこには、こう書かれていた。

 

[魔法少女 願いから摘まれた呪い。魔法少女の装備を装着すれば、固有の武器を使用可能になる。ただし、武器の使用の際には、HPを消費する。HPの消費量は、技の種類によって変化する]

[ソウルジェム 魂を宝石に変換した石。スキル≪魔法少女≫を取得できる代わりに装着すれば二度と外す事はできない。またーーー]

 

 え?

 

「そういえば、あの弓は?」

「え、あ、弓、弓ね!」

 

 ベーゼラに言われて気が付いたが、自分が先ほどまで持っていたはずの弓が消えてしまっている。アイテムストレージを見ると、確かに〈救済の弓〉という武器が存在しているのだが、装備しようとしてもできない。

 

【スキル≪魔法少女≫使用中でなければ装備できません】

 

 というエラーメッセージが出るだけである。

 

「魔法少女……」

「?」

 

 この時、クレールは彼女の表情に微小な変化を見た。いや、正確に言えばベーゼラが弓のことについて聞いた、その前にもしどろもどろになっていたようだが、一体どうしたのだろう。

 ともあれ、色々と検討してみたいことが山積みとなってしまうが、その前に、である。

 

「サキ、大丈夫か?」

「……」

 

 まずは、彼女の心のケアからだろうか。

 考えてみれば、彼女はこの場所で二人の死に遭遇したのだ。

 

「うん。大丈夫……って、自信をもって言えないけど……」

 

 アランとスミシー、決していい印象があるプレイヤーとは言えなかった。でも、それでもともにこの世界に閉じ込められ、そして生きたプレイヤーなのだ。その事実を考えれば、とてもではないが、忘れろともいえる物じゃない。

 だからこそ、彼女は言う。

 

「私忘れない。今日の出来事を、目の前で死んだあの二人の事……私は、あの二人の分までこの世界で戦う……戦えたら、いいなって思う」

「……そっか」

 

 そう言うと、キョウは彼女の肩を叩いた。

 まだ心の整理なんてつかない。つくはずもない。でも、いつか、必ず乗り越えて見せる。そう強く祈って彼女は手を合わせた。

 二人が生きた、あの場所に向かって。

 

「……」

「……」

 

 それを見たサキ以外の周りのプレイヤーたち。キョウ、のどっち、シズ、あこちゃー、キッド、ナイト、サーヴァント、クリプティッド、ラフルール、サマー、スノー、ハワード、ベーゼラ、フラウ、シシーラ、スター、セレーネ、かじゅ、セノ、アンチョビ、ペパロニ、カルパッチョ、ノルゲイ、ビショップ、マリン、DOM、TSF、きりんりん、クレール、そしてエイミーもまた黙とうする。

 この世界で確かに生き、そして戦って死んだ人間たちに向けて。

 

「……」

 

 ヒースクリフはただ一人、その様子を眺めているだけであった。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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