SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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サブシナリオ 奥さまはアイドル編 第一話

「ちょっとやめてよ! こっちでは、その名前使ってないんだから!」

 

 と、エリカから名前を言われてしまった少女一条らんこ(仮)は憤慨しながら近づいてくる。まぁ、本名を名乗ったところでここはどでかいフィールドの中、他に聞いている者もおるまい。

 それに、この世界は既に本人の顔がプレイヤーの顔になっている世界。個人情報の漏洩なんて気にしても仕方がないこと。そうは知っていてもだ、そう言う色々なところに配慮している辺り、やはり彼女も現実の世界で生きようとしている≪アイドル≫なのだろう。

 

「それじゃ、何て名乗ってるの?」

「サンデーゴーゴーよ!」

「ふぅん」

 

 サンデーゴーゴー、確かに彼女らしくないと言うかなんというか、でもどこかで聞いたことがある名前だなとエリカが考えた時だった。

 

「って、それアンタがレギュラーやってる番組名じゃない! そんなのつけるのアンタぐらいしかいないからもろばれでしょ!」

「なんですってぇ!!」

 なんて、やっぱりエリカとほぼ同レベルの会話を繰り広げている。らしいといえばらしいことだろう。

 この世界では彼女の言う通り≪サンデーゴーゴー≫なんて名称を使っているバラエティアイドル、一条らんこ。現在高校一年生であり、エリカの言う通り、情報番組≪サンデーGOGO≫のレギュラーレポーターをしている女の子。

 そのレポーター能力、バラエティ番組に適応する能力とコメンテーター能力、そして彼女自身の根性は目を見張るものがあり、彼女もまた、エリカと同じくバラエティアイドルとして一目を置いている人間が多い。

 しかし、バラエティ番組に出演こそすれど、彼女もれっきとしたアイドル。将来の夢はテレビで輝くトップアイドルという、どこかエリカと似た夢を持った女の子だ。以前、ある事件においてその夢を利用されてある者たちと戦わされたが、その際にも相手を苦戦させるくらいに大きな夢を持った女の子。

 今は、エリカと同じく長い下積み時代中。今はまだバラエティにしか出演していないが、いつかは必ずテレビでは見ない日がないと言うほど輝くトップアイドルになる。それが、彼女の夢だった。そう、夢、≪だった≫。

 

「たく、まぁどうせ……現実に戻ったところであたしたちの居場所何てないでしょうけど」

「え?」

 

 と、エリカは一転して冷静になって言った。その表情は、どこか諦めにも、そして冷めた感じにも思える物だった。

 

「だってそうでしょ? 私たちバラドルの枠なんて、すぐ新しい子に取られちゃうそんなあたしが、帰ったところで芸能界に居場所なんて……」

「……エリカ、あんたそんなくだらない事考えてたの?」

「は?」

 

 くだらない事。自分の、いやひいては自分たちにとって大事なことを、くだらないことと言い張った。そう言った≪サンデーゴーゴーは、彼女の首筋に剣先を突きつけて言う。

 

「いい? 居場所がなかったら目の前にいる人間を押しのけてでも前に出る。仕事がなかったら動画配信でもゲリラでもなんでもして自分たちの名前を売る。アンタだって、今までそうやって仕事を勝ち取ってきたんじゃないの?」

「それは……」

 

 確かに、そうかもしれない。主演のドラマじゃなかったとしても、少しでも爪痕を残そうとし、バラエティ番組でも少しでもいいから目立とうとしていた。それは全部、自分の顔を世間に知ってもらうため。自分の認知度を高めてもらうため。

 そう、自分はずっと貪欲に前だけを見て来た。後ろ何て振り返らずに、ずっとずっと、トップアイドルに追いつけるようにと努力してきた。自分たちも、その場所に辿り着くのが夢だったから。

 

「それに……」

 

 といいながららんこは剣を収めて言う。

 

「もし私たちがSAOをクリアすれば、私たちはSAOからプレイヤーを救った英雄よ。そうすれば、テレビ番組に引っ張りだこになる。そう思わない?」

「……」

 

 この辺り、彼女のポジティブさに頭が下がる。実際の話、確かにもしSAOを自分たちがクリアすれば、その話題性で一時はテレビ番組に引っ張りだこにされる。それは、自分も思ったし当初の目的がそれだった。

 でも、流行なんて一過性の物。例え自分たちがSAOをクリアしたとして、果たしてそれを外の人間たちが信じてくれるだろうか。自分たちがSAOをクリアしたと言う話題だけで何年何か月も使い続けてくれるテレビ番組があるだろうか。

 そんな、不確定要素のために、命を張るなんて、自分には―――。いや、自らフィールドに出てモンスターを狩ってレベルアップを続けている自分が言う事じゃないか。彼女は自嘲気味に言った。

 

「アンタのそのポジティブなとこ、見習いたいわよ……」

「何言ってんのよ、アンタだって昔は……SAOに入る前まではそうだったじゃない」

「え?」

「主演じゃなかったとしても爪痕残そうとして、バラエティ番組に出ても誰よりも目立とうとして頑張ってた。アンタ、ずっとそうやってアイドル人生を送ってきたじゃない」

「らんこ……」

 

 この子、ずっと見てくれていたんだ。私の事を。エリカは、どこか感動にも似たうれしさを感じ取った。

 そう、同じだった。自分も彼女も。どちらも、今はバラエティアイドルという立場ではあるが、しかしどっちも将来の夢はテレビで輝くトップアイドル。そのために辛酸をなめる苦労をずっと続けて来た。

 まさか、その苦労をバラドルとしてはライバル的な立ち位置にいるらんこに分かってもらえるなんて、いや、同じバラドルだから、か。エリカは、今度は嘲笑うような笑みを浮かべて言った。

 

「アンタだって、コメント力と根性だけでやっているだけで、やってること同じじゃない。他のタレントを押しのけてカメラの前に立とうとして、誰よりも目立とうとして貪欲すぎて呆れるわ」

「なんですって!」

「でも、それに少し……勇気もらってた」

「……」

「あたしだって憧れてた。限りのない、広いアリーナに、私たちエリマリの声が響く。そんな夢を……でも何度か挫けそうになった。もう限界だって、諦めそうになったことがあった。でも、そのたびに貴方の事を見て、勇気をもらってた」

「……」

 

 サンデーゴーゴーはその言葉を聞くとエリカから背を向けて遠くの方を見ながら言った。

 

「あたしも、何度か諦めかけることがあった。もうダメだって、思う事とか、こんなに辛いならって……思う事が、何度も何度もあって、でも、そのたびにテレビで必死に頑張ってるアンタたちを見て、勇気をもらってた」

「らんこ……」

「エリカ……アタシたちって、互いに勇気をもらいあってアイドルしてきたのね」

 

 その時、一筋の風が通った。それは、まるでエリカの事を後押ししているかのように、優しく、そして気持ちのいい風だった。

 そうか、こんな自分でも誰かに勇気を与えることができていたんだ。それが奇しくも、同じバラドルのライバル、そして、自分が勇気をもらっていたサンデーゴーゴーだったなんて、思ってもみなかったけれど。でも、嬉しかった。

 こんな自分にも、救えた人間がいたんだって、涙を、こぼしそうになった。この世界じゃ当然、涙なんてこぼれるはずないけど。でも、きっと現実の世界だったら泣いていただろう。そんな中、サンデーゴーゴーは言った。

 

「この話、SAOから帰ったら番組で使ってよね。アタシの好感度を」

「らんこ……」

「……」

「ありがとう……」

 

 エリカは、そんならんこの強がりとも本音ともいえる言葉を遮って、背後から抱きついた。サンデーゴーゴーもまた、そんな彼女の手を優しく握り返す。この世界で、このくそったれな世界で、育まれた友情の一頁。

 現実では絶対に起こりえないような状況。互いに互いの弱みを見せてこそ、本気で話すことができる。それはある意味では、この世の心理とも言えるものだったのかもしれない。




プレイヤー№ 102 一条らん子(サンデーゴーゴー【SandyGOGO】)≪原作:Go!プリンセスプリキュア≫

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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