SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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サブシナリオ 奥さまはアイドル編 第二話

 らん子とエリカ。似た者同士であり、互いに互いを尊敬しあっていた、未来のアイドルを夢見る女の子が出会ってから実に十数分後のことだった。

 

「おおいらん子!」

「げっ」

 

 とらん子の名前を呼びながら、自分も拠点としている村の方角から一人の女性が現れたのである。らん子は、きっとエリカに抱き着かれている姿を見られたくなかったのだろう。すぐに彼女を引きはがすと何事もなかったかのようにモンスター狩りをしていたかの様に武器を取り出して、その女性プレイヤーを待つ。

 そして、現れたのは。

 

「ふぅ、やっと追いついた。もう、先に行っちゃうんだから……って、貴方は……」

「え、ま、まさか貴方は……ダンスユニットトリニティの……」

 

 その女性。エリカもまた知っていた。いや、知っているだけじゃない。彼女は、自分達二人、つまり己とらん子の事だが、その二人とは住む世界が違う人間。

 自分たちが目指している目標に対して右往左往と寄り道をさせられていると言うのに、その女性は実力で自らがやりたいことを、いわゆるスターダムの道を行っている女性だったのだから。

 そうその女性の名前は。

 

「知念ミユキ。この世界では、ユニット名のトリニティの名前を使ってるわね」

 

 そう、人気ダンスユニット、『トリニティ』のリーダーとして活躍しているミユキ、である。先も言ったが、彼女は自分達とは違い、持ち前の運動神経、そしてセンスを用いてダンスの世界で活躍している、自分たちから見れば雲の上の存在。

 テレビでも、ほとんど見ない日がなく、そうじゃない時でもいろんな町に行ってダンスの指導をしているのだとか。自分も一度彼女が主催していた無料ダンススクールに通っていたことがあるのでその顔も、そして美貌も理解しているつもりだ。

 

「そういう貴方は、もしかしてエリマリのえっと……」

「エリカの方よ」

「そうそう、アイドルユニットの……前に私のダンススクールに来てくれたわね」

「え……」

 

 と言われたエリカは、一瞬言葉を失った。エリカか、それとも妹のマリカかどちらか分からなかった事に対してじゃない。自分たちは双子アイドルを売りにしているため、特に初対面の人間がそのどちらであるのかを見極めるのは非常に困難だから。

 だったら、前にダンススクールで会ったことを覚えていてくれたこと。いや、それじゃない。もっと前の、ある言葉に、彼女は反応していたのだ。

 

「バラエティアイドル、じゃないんだ……」

 

 そう、彼女は言ってくれていた。自分たちの事を普通の、アイドルユニットとして、扱ってくれた。多くの人間は、自分たちのことをただのバラエティアイドルとして認識している。それはどの大物司会者でも、そして、どのお笑い芸人にもそう思われている。

 初めてであったかもしれない。自分たちの事を、真正面にアイドルユニットとして受け入れてくれる人に、芸能人に出会えたのは。それに、エリカは感動していた。

 

「あら、そっちの方が良かったかしら?」

「そ、そんなわけありませんよ! ただ……みんな、私たちの事バラドルだと言って……普通にアイドルとして見てくれる人はなかなかいないから……」

 

 仕事だって、歌の仕事を貰えることなんてごく稀、ドラマの仕事も稀で、呼ばれても端役だったり、いてもなくても同じような役回りだったりと、そんな仕事ばかりしてきた。そんな自分を、真正面にアイドルとして見てくれたこと、それが、嬉しかった。

 

「そう。私は、二人がアイドルとして頑張っている姿見てたら、私も頑張ろうって気持ちになれるけれどね」

「え……」

 

 まるで、ソレはらん子に言われた言葉に似ているモノがあった。ミユキは、エリカがそう思ってると知ったか知らずか続ける。

 

「もちろん、出ている番組のほとんどがバラエティ番組だっていうのはわかるけど、でもそこから溢れる情熱というか、向上心は、私も見習わないとって、思っているから」

「ッ!」

 

 らん子以外にもいたのか。自分の事を見てくれてる人間が。芸能人として、雲の上的な存在だと思っていた人物からの言葉に、エリカは胸が詰まるような気がした。そうか、自分はたくさんの人を勇気づけていたのかと、そんな自分にも勇気を、そしてこれからも芸能生活を送ろうと言う気にさせてくれる言葉。

 不思議なものだ。彼女たちに出会うまではせめて茅場晶彦に反抗して死んでやるとずっと思っていたのに、そこまで言われてしまうと絶対に生き残らなければならないと思えてしまうようになるのは。

 やっぱり、自分には必要だったのだ。相棒が、現実世界に残してきたマリカのように、自分の事を支えてくれる仲間が、必要だったのだ。

 自分は一人じゃ何もできない。いつだって、どんな辛い仕事の時だってマリカが一番近くにいてくれて、互いに見守り合って、互いを尊重し合って、そして互いに高みを目指していた。それが、エリカにとってのマリカ。

 思い知らされたような気がした。思い上がりだと、知らされたような気がした。自分が、あまりにも滑稽だ、そう思えるような気がした。ただただ一人で頑張って、一人で苦しんで、一人で悩んでいた自分が馬鹿みたいだ。こんなことなら、もっと早く誰かと一緒に冒険をすると言う道を選んでいればよかったかもしれない。

 そうだったのなら、この三週間も、暗い顔一つ見せずに済んでいたはずなのに、どうして、自分は。

 

「ねぇ、エリカちゃんは一人でプレイしているの?」

「あ、はい……」

「なら、私たちと一緒にプレイしないかしら?」

「え?」

 

 それは、突然の申し出だった。自分がミユキや、らん子と一緒にこのSAOの世界を冒険する。一緒にプレイをする。なんというアンバランスな更生だろう。一人はスーパースターで、二人は、目標としている場所で輝くこともできない出来損ない。でも、そんな自分を誘ってくれるミユキさんという存在が、彼女にはとても輝いて見えたのだろう。

 

「いいでしょ。らん子ちゃん」

「だからこの世界じゃ……まぁ、エリカがいいっていうなら誘ってあげてもいいけど」

「……」

 

 等と、らん子はプライドの塊のような発言をする。でも、きっと彼女も心の中では思っているはずだ。大勢でプレイした方がより攻略の難易度が低くなるという事。ミユキと一緒にプレイしているはずの、らん子だったら。

 

「もう、らん子ちゃんったら……どうかしら、一緒にプレイしていたら、より一層攻略が捗ると思うのだけれど……?」

「そう、ですね……私もその、限界みたいなものを感じていましたし……」

 

 確かに、MMORPGという物にはソロプレイ。つまり、他の誰の手も借りないでたった一人でプレイすると言う攻略方法があるのは事実だ。しかし、ことこのSAOというゲーム内に置いてソロプレイは文字通り命取りになる。それは、ネットゲーム初心者である彼女ですらもこの三週間で分かった事。

 数々のモンスターと戦い、数々のクエストをこなしていくうちに気が付いた、MMORPGの真理。エリカは、完全攻略するまであと百層あるという、その第一層目にてその真理に辿り着いてしまっていた。

 いや、違う。たどり着けていた。だからこそ、己の限界を知り、そして他人にも頼らなければならない。そう考えることができたのである。

 

「でしょ? この先は一人でプレイしていたら危なくなる。みんなでプレイした方が危険が少なる。リスクマネジメントはきちんとやらないと、ね」

 

 こうして、一人でゲーム世界を行くはずだった一人の少女に、仲間ができた瞬間だった。

 エリカは、心の底から彼女たちに感謝していた。しかし、この時はまだ思ってもみなかった事だろう。まさか、この時仲間を作ったことが、後のエリカにとって、苦渋の決断を選ぶ事になるなんて。




プレイヤー№ 103 知念ミユキ(トリニティ【Trinity】)≪原作:フレッシュプリキュア!≫

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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