SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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サブシナリオ 奥さまはアイドル編 第三話

「エリカ! スイッチ!!」

「分かってるって!! ハァァァァ!!」

 

 らん子もとい、サンデーゴーゴーにいわれたエリカは、ソードスキルを放ち無防備となったらん子に変わって前に出てソードスキル≪バーチカル≫を放とうと、構える。しかし。

 

「ソードスキルがッ!!」

 

 焦りによってタメが短かったのか、エリカはソードスキルを発動できないまま≪ダイアウルフ≫の目前まで来てしまう。マズイ、このままだと。そう思った時だった。

 

「フッ!」

 

 横からミユキが現れて、ダイアウルフの鋭い牙からエリカを守ったのである。

 

「ミユキさん!」

「今のうちに、エリカ!」

「は、はい!」

 

 と言われたエリカは、今度こそちゃんとタメと言う物を作ってソードスキル≪バーチカル≫を放った。そして、それが決め手となり、≪ダイアウルフ≫はその小さな体をゆっくりと倒して、青いガラス片へと姿を変えたのである。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「危なかったわね」

 

 そう、危なかった。あともう少しミユキからの援護が遅れていたら、流石にHP0とまではいわない物の大きく削られていたのは確かだ。すべては、自分がちゃんとソードスキルを発動できなかったことに原因がある。

 

「もう、エリカ! スイッチまだ習得できないの!?」

「しょ、しょうがないでしょ!! 誰かと一緒に戦闘するなんて、初めての事だし!」

 

 と、反論するエリカ。スイッチ、それは元来βテスト時に他のプレイヤーがソードスキルを放った直後の硬直時間を狙われないようにするためにプレイヤーたちが独自に作ったテクニック。

 エリカ自身もその存在自体は風の噂で聞いていたものの、実際に行うのは初めての事だった。とはいえ、エリカとサンデーゴーゴーの息はピッタリなので、あとはエリカがモンスターの前に出るのと、ソードスキルを放つタイミングを見極めればいいだけ。ミユキはそう考えていた。

 

「まぁまぁ、チームワークは抜群だから、あとはタイミングを掴めばいいだけね」

「チームワーク!?」

「エリカと!?」

 

 と、なにやら反論の意がありそうだが、しかしミユキからしてみれば、その姿もまた彼女たち二人がソックリであるという事の証明にしか他ならない。

 彼女たちは似ている。言動も、性格も。これだけ同じだったら、スイッチだって、今は少し拙くても、場数を踏んで行けばエリカも習得するときが来るであろう。そうミユキは考えながら、時計を見ると言う。

 

「とりあえず、今日の所はこれくらいにして……エリカはどこに宿を取っているの?」

「ホルンカの村。そこにある宿に……」

 

 なるほど、確かに効率よくレベルアップをするためにはこの辺りにいるモンスターを狩る事が一番いいことなのかもしれない。彼女もソレを分かっているようだ。

 

「そう、だったら私達と同じね」

「そうね。パーティー登録もしているし、いつでも連絡は取れるけど、どうする? 拠点どっちかに変える?」

 

 と聞かれたエリカ。確かに、パーティーとして登録はしているから、自分たちはすぐに連絡を取れる状態にある。しかし、だ。実際にすぐそばにいるのといないとでは、迅速な行動、特に突発的なクエストが発生した時に瞬発力良く行動を取ることができないかも。

 そう考えると、一方の宿に世話になったほうがより効率のいいプレイングができるかもしれない。

 

「それじゃ、ミユキさんの方に行きます」

「分かったわ。ついて来て」

 

 という事で、エリカもまたミユキ達が使用している宿を使う事となった。もし空いている部屋があればの話だが。もしダメだったら、自分だけ元々使っていた宿に行けばいいだけなので、さほど問題にはならないだろう。

 

「はぁ、それにしても……」

「なによ?」

 

 その帰り道、サンデーゴーゴーが突然独り言を呟いた。

 

「いや、この辺よく歩いてるけど、全然知り合いに合わないのが気になって」

「知り合い?」

「そっ、SAOをプレイしているはずの知り合い。私の中学校時代の後輩が、プレイしているはずなのよ」

 

 という。確か、前にどこかの本で彼女の経歴を見たことがある。彼女は中学校時代に≪ノーブル学園≫という、一種のお嬢様御用達の学校に通っていたのだとか。

 ノーブル学園の歴史は長く、その卒業生には目の前の未来のトップアイドルを目指す一条らん子。それからモデルの天ノ川ステラ、在校生にはその娘であり、現在は籍としてノーブル学園には置いている物の海外を中心に活動をしている天ノ川きららがいる。そんな彼女の後輩もまた、このゲームに閉じ込められているとは。お嬢様御用達とは思っていたが以外にもそういう遊び系列は自由なのだろうか。

 彼女が言うには、知っている限り自分の知り合いが≪三人≫このゲームをプレイしているらしい。しかし、三週間経った今になってもその姿を見たことはない。

 

「はじまりの町でゲームがクリアされるのを待ってるとか?」

「そんなわけないでしょ? だって三人の内二人はプ……」

「プ?」

 

 と、そこでサンデーゴーゴーは一度口を閉ざしてしまった。流石にこれは話すわけにはいかない。そう言った信念のようなものをエリカは感じ取った。そして、彼女が出した答えは。

 

「ぷ、プリンセス目指しているんだから!」

「……はい?」

「まぁ、それは一人だけだけど……」

 

 あまりにもとんでもない答えが返ってきて、エリカは一瞬呆然となった。なんだ、プリンセスを目指しているって、ごまかすにしてもあまりにも唐突すぎて驚くことすらもできなかった。

 が、これが事実なのが恐ろしいところである。

 

「フフッ……私の方も、知り合いが少なくとも三人プレイしているはずなんだけどなかなか合わなくて……」

「そうなんですか……」

 

 と言うのはミユキである。そうか、彼女もまた同じように知り合いがこのゲームの中にいる。つまり、ゲームの中に閉じ込められてしまっているのか。それは、とても不安な事だろう。

 普通のゲームであればともかくだ。自分たちが今いるのは命のやり取りをするデスゲーム。その世界に放り出された人間たちの事を心配にならない方がおかしい。

 であるのだが、実際問題彼女たちの知り合い六人の内五人はそう言った命のやり取りと言うか戦うことに関してはある意味で専門家的な存在であるのでまだ大丈夫な方。

 問題はサンデーゴーゴーの言った一人の方なのだが、彼女は彼女で芯のしっかりした強い女の子。きっと、どこかで生き続けているはず。そう彼女は思っていた。

 

「エリカは、だれか知っている人でSAOをプレイしている人はいないの?」

「……よく仕事で顔を合わせるって意味じゃ、知っている人間がプレイしてるのは確実だけど……」

 

 そう、知っている。一人、いやそのマネージャーも含めて二人、ゲームをプレイしているだろうという事を。でも―――。

 

「だけど?」

「……その子、プロジェクトSAOに参加してたのよね……」

「あぁ……」

「そっか……」

 

 その言葉に、二人は悲し気な表情を浮かべた。プロジェクトSAOに参加していた。それはつまり、彼女たちには何も知らされていなかったとはいえ、勝手に茅場晶彦という狂人の作ったゲームの宣伝、告知を手伝っていたという深い負い目を作らされていたのだ。

 茅場のおかげで現実世界とゲーム世界の顔が同一化した今に置いて、大々的にその姿をゲーム世界に表す事、それがいかに危険な事であるのか。プロジェクトSAOに参加すらさせてもらえなかった自分達、それから忙しくて参加を拒否してしまったミユキにも分かってしまっていた。

 

「それに、その子には厳しいマネージャーも一緒についているはずだし、きっと外に出てくることはないはず……だけど……」

 

 と、エリカは言葉を小さくしていった。その姿に何か気が付いたミユキは言う。

 

「会いたいのね、その子に」

「そんなわけないでしょ! だって、アイツはその……」

「なに?」

 

 あの子は、自分にはないすべてを持っていた。すべてを手に入れていた。自分たちが望んでも望んでも手に入れられない、輝きを持っていた。でも、そんな事で威張ることもせずに、逆によく自分たちの事を気にかけてくれて、一緒に宿題とかもして、一緒に暇なときに彼女の町内のボランティアにも参加して。

 そう、彼女は自分にとってはライバル、ではなかった。むしろ、友達。そう、思う時があった。でも、彼女はそれを受け入れることができなかった。なぜなら、彼女を友達と認識してしまったら、自分は、自分たちは彼女を憧れの存在としてしまうから。きっと。

 

「何でもない……ほら、早くしないと日が暮れるわよ」

「えぇ、そうね」

 

 と言って話を打ち切ったエリカが、ホルンカの村の方を見た。その瞬間だった。

 

「……え?」

「どうしたの?」

「今見えたのって……まさか……」

 

 あの顔、あの髪色、あの髪の長さ。そしてゲームと言う虚構の世界でもハッキリと分かるきらきら。間違いない。見間違えるはずがない。今見えたのは、きっと。

 

「ちょっとエリカどこに!?」

「まさか、まさか、今のって!」

 

 エリカは、思わずそのプレイヤーが向かった方向に向けて走り出していた。自分が見つけた、そのキラメキの正体を知るために。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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