SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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サブシナリオ 奥さまはアイドル編 第四話

 この部屋から出るな。彼女は、そうきつく厳命されていた。

 それでも彼女がその部屋を出て危険なフィールドに出てしまったのは、窓の外に、あの人の。あの男性の姿を見てしまったからだろう。

 そう、自分の旦那の姿を。

 彼女、『桜井まゆり』はこの世界に来て三週間。まったく外に出ることはなかった。その理由は前述した通りマネージャーで、一緒にこの世界に来ている松川からそう指示をされていたから。

 あの、茅場明彦による宣戦布告ともとれるチュートリアルが終わった直後、松川は混乱する頭をしかしフルに働かせてこの後どうなるのかを察知した。

 そう、プロジェクトSAOに参加していたアイドルへの憎しみの増加。

 元々ゲーマーと言う存在は他人への攻撃性が高いと彼女は感じていた。レアアイテムの取得や情報の取得、そういった自分達よりも一歩進んだ存在の事を赦せないのだ。それは、人間の本質の一つである欲望や嫉妬と言う物が駆り立てる醜い惨事であるという事を、彼女は知っていた。

 知っていたからこそ、まずいのだ。元βテスターとしてこの世界にいち早く入り、色々な事を知って、そして知らなかったとはいえその宣伝に協力をしてしまったまゆりが、危機に陥る事を。

 松川は正式チュートリアルが終わるとすぐ、膝から崩れ落ち、まだ理解もほとんど終わっていないまゆりをつれてホルンカの村へと向かった。理由は当然、はじまりの町に居続けることにより、まゆりの存在が露見するリスクが高かったから。

 故に、彼女はいち早く次の村に向かって、そこに拠点を構えることにした。そう、全てはまゆりを守るために。

 結果、彼女たちは他の多くのプレイヤーに先んじて、と言っても一番乗りと言うわけではないがホルンカの村に辿り着き、そこで宿を取った。こじんまりとした、まゆりには似つかわしくない内装の部屋に、松川は少しだけ苛立ちを覚えたがしかしそんな事を言っている場合じゃない。

 松川は、そこのベッドの上にまゆりを座らせると言った。

 

「いい、まゆり。貴方は絶対に外に出たらだめ。後は私に任せて」

「え、でも……」

 

 と、困惑した表情を見せたまゆりに対して、しかし松川は続ける。

 

「あの男の話が本当なら、この世界で死んだら現実世界の貴方も死んでしまう。そんなの、あの男にも見せたくないでしょ!」

「ひろりん……」

 

 松川は、苦々しい顔を浮かべた。まさかこのタイミングであの男の名前を使うなんて。

 彼女にとって、桜井まゆりの旦那である竹内博嗣はいわゆる、目の上のたん瘤的な存在。アイドルをしているまゆりが既婚者であると言う事実そのものがスキャンダルと言っていいもの。そんな存在、松川も当初はいい思いを抱いていなかった。

 でも、まゆりが、人生で初めて自分に行ってきた我儘。それが、その男との結婚だった。彼女は許してしまった。まゆりが選んだ男との結婚を。彼女は誓った。決して、彼女が結婚している事実を公にしないと。

 その結果、自分の仕事がたくさん増えることにもつながって、それどころか自分が愛しているまゆりに他に愛する人間ができたことに嫉妬を覚えてしまった。けど、そんな人間の名前を出さなければ、まゆりの事を止められない。松川はそう考えて彼の名前を伝えた。

 そして、実際にその効果はあったようで、まゆりはうつむき加減に。

 

「分かった」

 

 と言うと、それから三週間。その宿に引きこもり状態となる。

 松川は毎日のように外に出かけてはフィールドでモンスターを狩り、あるいはクエストをクリアすることによって≪コル≫と経験値を稼ぎ、この宿の代金を払い続けていた。

 まゆりを外に出さないために。まゆりを守るために。まゆりを守れるのは自分だけだと、そう思っていたから。

 

「松川さん……」

 

 そんなマネージャーの姿を見て一番ショックを受けているのは、まゆり本人であると言うのに。

 確かに、松川が考えていることは、頭が悪い自分でも少しは分かる事。特にアイドルである自分が外に出ることによってパニックになるなんてこと、想像するのも簡単なことだ。名前だって現実世界其のままに≪まゆり≫なんて使ってるし、顔だって現実世界そのまま。こんな人間が外をうろつけば一発でアイドル桜井まゆりだと気が付かれてしまう。

 いつも通り、オフモードの状態、つまるところ変装している状態ならばなんとかそのオーラを隠すことができるかもしれないが、あいにく彼女の装備品は≪スモールソード≫のみ、それ以外は全部初期装備というこのホルンカの村に来ている人間にしてはあまりにも貧相な物だけだった。

 コレは先も言った通り松川だけが≪コル≫を稼ぐためにフィールドに出ているために起こっている事象なのだが、それゆえにまゆりは心を痛めていた。

 自分にも何かできる事があるはずなのに、自分だって、松川の役に立ちたいのに。

 自分も、早く現実の世界に戻りたいと言うのに。アイドル生命とか、高校生活とか、そんなのどうだっていい。ひろりんに、自分の夫に会いたかった。ただ、そう言う願いがあったのだ。

 ある時、仕事場から勝手に抜け出して、街中に出た時にうっかり転んでしまって、誰にも助けを求めることができずに、誰にも手を差し伸べてもらえなかった時に、向こうの方から優しく声をかけてくれた男性。

 其の時ドラマの小道具の指輪を持っていて、ソレを落としたという言葉と同時に手渡された自分は、すぐさま言ってしまった。

 

『結婚してください』

 

 と、初めて出会った、それも年上の男性にプロポーズ。でも、それでもひろりんはOKしてくれた。もしここで断ってしまったら、二度と会えない気がしたから。そう、彼はのちに言ってくれた。

 因みにその時二人の運命を決定づけた指輪は、現在桜井家の電灯の紐に括りつけられている。いつでもその時の事を思い出せるように。にしても、かなり乱暴な扱い方な気もするのだが、そう言った天然なところも彼女のいいところだ。

 ひろりんに、会いたいな。まゆりは宿の窓から外を見ている時ずっとずっとそう考えていた。

 ずっと、ずっと、ずっと、ずっとそれしか考えることができなかった。

 その時だった。

 

「え……」

 

 今通りすがったプレイヤーは、まさか。

 ひろりん。

 そんなはずはない。だってひろりんはSAOをプレイしていないはず。SAOを手に入れたとは一言も言っていないはず。だから、彼がこの世界にいるなんて本来ならあり得ないはずだ。あり得ない、はずだった。でも、それでも彼女は一目散に向かって行った。

 ひろりんの所に、自分の愛する旦那の所に。宿の扉を勢いよく開き、三週間ぶりとなる外の世界へと飛び出したまゆりはその男性の姿を探す。しかし、自分が少し目を話した隙にどこかに行ってしまったのだろう。彼の姿は一向に見えなかった。

 方向的には多分、フィールドの方に向かったはず。まゆりは、つかさずフィールドの草原の方へと走って行った。

 その途中に出会う多くのNPCやプレイヤーなんて無視して、レベル1というこの周辺のモンスターにとって狩りの対象としてはとてもうってつけなプレイヤーが野に放たれてしまったのである。

 運がいいことに、彼女はモンスターの一匹にも出会うことなく、フィールドの中を駆け巡った。大きく、広く、どこまでもどこまでも続いているであろうフィールドの中に、足を踏み入れて、しかし彼女は結局ひろりんの事を見つけられなかった。

 あのひろりんは自分が作り出した幻だったのか。自分が彼に会いたいと願うがために作り出された幻想だったのか。もしそうだったら、ここまでひどい幻惑なんてないだろう。

 会いたい。ひろりんに、会いたい。まゆりがそう願い続けた。

 その瞬間だった。

 

「おい」

「え?」

 

 恐らく、この世界において考えらえる最も最悪な出来事に、彼女が遭遇してしまったのは。

 まゆりの目の前に現れたのは数人の男性プレイヤー。勿論ひろりんじゃない。物騒な武器をその手に持ち、威圧感を与えて来るその姿に、まゆりはゆっくりと後ろに下がるしかなかった。

 そして、男たちのリーダー格であろう人間が言う。

 

「お前、桜井まゆりだよな……プロジェクトSAOに参加していた」

 

 と。




プレイヤー№ 104 桜井まゆり(マユリ【Mayuri】)≪原作:奥さまはアイドル≫
プレイヤー№ 105 松川みなと(マツカワ【Mathukawa】)≪原作:奥さまはアイドル≫

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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