SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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サブシナリオ 奥さまはアイドル編 第六話

 エリカは自らに宿った感情に困惑することはなかった。むしろ、どこか清々しさすらも感じた。

 もう、全て失ってもいい、そう感じた。彼女のためなら、ライバルを守る為ならば、自分なんてどうなったって構わないと、自分が、彼女を、まゆりを守る。絶対に。そう決意したエリカの行動は早かった。

 彼女は、再び堂々と、今度はまゆりの事を一切見ずにその背中を見せると、男たちに向けて叫んだ。

 

「アンタたち、今すぐまゆりから離れなさい」

「なんだと?」

 

 しかし、そんな言葉を男たちが聞く義理はなかった。

 

「ハッ、テメェみたいな三流アイドルに命令される筋合い……」

「ッ!」

 

 もっともだ。そう。自分はまゆりのような一流のアイドルでも、二流のアイドルでもない。アイドルとしての仕事もほとんど貰えず、夜中のバラエティ番組でまるでお笑い芸人のような扱いを受けている、バラエティ専門アイドルだ。

 そうだ、だからこそ、自分にはできる事があるのだ。エリカは、腰に携えている剣を抜くと、構えた。

 

「エリカちゃん! ダメ!!」

 

 まゆりはその行動から彼女が何をしようとしているのかすぐに理解した。それは、男たちも同じことだ。

 

「て、テメェ分かってんのか!? 村や街の外で≪決闘(デュエル)≫以外でプレイヤーを傷つけるとどうなるのか!?」

 

 そう、エリカは決して離れようとしないプレイヤーたちを実力行使で退かせようと考えていたのだ。その身体を傷つけることによって。

 この世界はデスゲーム。いくら何でもHPが削られてしまえば、まゆりにこれ以上近づくことはしないだろう。そうエリカは考えていたのである。だが、それは究極の選択と言っても他ではなかった。

 なぜならば、男の言う通り村や町以外でプレイヤーを傷つけるのはこの世界においてぜったいにやってはならない犯罪であるから。道徳的にも、そしてプレイリング的にも。

 もし、村の中や町で他のプレイヤーに攻撃しようとしても、安全エリア圏内であるが故に相手にダメージを与えることはない。

 しかし、外は違う。このフィールドの中で他のプレイヤーに攻撃を仕掛けようものなら、一瞬で今自分や他のプレイヤーの上についているカーソルの色がオレンジとなってしまう。

 これは、いわゆるそのプレイヤーが他のプレイヤーに攻撃を与えたと言う目印、つまり危険なプレイヤーであるという事を他のプレイヤーに知らせる鍵でもあるのだ。

 もしも、これが≪決闘(デュエル)≫で相手を傷つけた、と言うのならば話は別だ。しかし、言わずもなが自分たち今≪決闘(デュエル)≫をしているわけじゃない。野良プレイヤー同士で小競り合いをしているのだ。

 もしもここでエリカが相手のプレイヤーにダメージを与えたら、その時点で彼女のカーソルはオレンジになる。そうなれば、村や町への立ち入りは制限され、救済クエストをクリアするまでカーソルの色が元に戻ることはない。

 そして、もし一度でもそのカーソルの色を、他の攻略中のプレイヤーに見られようものなら、瞬く間にこのSAO中に彼女の悪い噂が流れ、彼女は、行き場を失う事だろう。

 

「分かってる。でも、それでも……まゆりから離れないのなら……」

「エリカ、ちゃん……」

 

 しかし、エリカはソレらすべてを承知の上でやっているのだ。すべては、まゆりという一人の女の子を助けるために。デスゲームの世界に入る前までの自分だったら絶対にやらない。むしろ、彼女を蹴落とすために色々とやっていた可能性だってある。

 でも、今は違う。今、まゆりから自分への考えを聞いたときから、エリカは既に覚悟を決めていたのだ。

 

「てめぇ、ふざけんな! そんなことして、向こうに戻ったらインターネットに書き込んでやるからな!!」

「エリカちゃんダメだよ! そんなことになったらエリカちゃんの芸能活動が」

 

 そう、もしこの男プレイヤーがデスゲームの世界を生き残って、現実世界に戻ったら、自分事エリカに殺されかけたなんて、尾ひれのついた噂をネットの掲示板に書かれてしまう。

 そして、自分はゲームという箱庭の中で殺人未遂を行ったという事でつるし上げられ、一大スクープとなって、芸能界から干されてしまう。まぁ、自分が一大スクープという名目を背負えるほどのアイドルであるかどうかは置いておくとしてだ。

 エリカは、フッと笑うとまゆりに言った

 

「まゆり、私ね……アンタの事がうらやましかった」

「え?」

「煌びやかなステージに立てる貴方が、ちんちくりんだけど、でも人を魅了するその歌が。あとそうね、何年たっても子供っぽいところとかも……」

 

 数か月、あるいは一、二年。自分達が出会ったのはわずかその間だけだった。でも、テレビの向こうで輝いてるまゆりをずっと見続けて来た。そう、ずっとずっと、まゆりのファンである妹にも連れられてずっと、ステージの上で輝きを放ち続けるまゆりの事を見続けて来た。

 すぐ近くで、吐息もかかるくらいの近さで彼女と一緒にいることも、そして、自分が夢見た世界で堂々と活躍をする彼女の姿を見た。

 決して届くことのない夢。決して届くことのない世界。諦めてしまった方が楽になれる。そんな芸能界。でも。

 

「確かにこいつらの言う通り、私の芸能生命はほとんど終わってるも同然なの。でも、まゆりは違う……」

 

 だからこそ、エリカは知っていた。彼女にはまだ、待っていてくれる人たちがいるのだと。彼女のファンが、たくさん彼女が帰ってくるのを待っているのだと。

 彼女が自分のことをライバルとして見てくれている人たちがいるように。彼女に希望を持って、待ち続ける人達がいてくれるのだと知っていた。だから。

 

「まゆりには待ってくれる人がいる。待ってくれているファンが必ずいる。だから、まゆりを傷つけさせたり、まゆりを悲しませたりなんてしない。私は……まゆりを守りたい……ただ、それだけなの」

「エリカ……ちゃん」

 

 ただ、それだけ。そのために、自分は犯罪者になる。その覚悟は、芸能界と言う魑魅魍魎跋扈する世界の中でもアンダーグラウンドの世界を生き抜いて来たからこそ出る言葉、出せる覚悟。そして、誰かのアイドル人生のために自分のアイドル人生を捨てるという暴挙。

 いや、もうないも同然の人生だ。だったら、他人のために捨てるのも悪くない。エリカは、緩んだ頬をキリと整えると、目の前の男たちに向けて言った。

 

「アンタたち、例え手負いの虫一匹でも、いえ手負いだからこそ噛みつくことができるって知ってる?」

「ひっ……」

 

 もう自分は手負いも手負い。死にかけの虫けらだ。でも、虫けらだからこそ自分にはできる事がある。未来を守ると言う、その手段が。

 それは、ある意味では洗脳と言ってもいいかもしれない。ある意味では自己催眠だったと言っても過言ではない。彼女は彼女の中の芸能人生にまだ区切りを付けていなかった。それでも、もう終わったと、そう思わなかったら絶対に剣を抜くことができなかったのだ。

 

「私にはもう何も失う物はない。何も怖い物はない。例え犯罪者になったとしても、私は、私が守りたい憧れを……守って見せる」

 

 そして、彼女はソード・スキルを発動させた。相手プレイヤーのレベルがどうであれ、しかし致命傷には至らないはずの威力のソード・スキル。いや、威力なんて関係ない。これを敵の身体に当てた瞬間自分は犯罪者となる。

 何度も何度も、言い聞かせる。それでいいのか。犯罪者になっていいのか。そう、何度も。何度も。何度も。

 でも、エリカにはもう怖い物なんてなかった。

 

「や、やめ」

「エリカちゃん! だめ!!」

「うあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 其の時、彼女の剣が一つの煌きを纏って前にいた害虫を切り裂こうとしていた。

 二度と後には引くことができない。そんな攻撃を、彼女は無慈悲にも、しかししっかりとした覚悟、そしてほんの少しの後悔とともに、放ったのである。

 その、瞬間だった。

 

「ッ!!」

「え?」

「あ……」

 

 其の時、盾であるバックラーを構えて自分と男の間に入り込んできた男性プレイヤーがいた。その男性はエリカの放ったソード・スキルを受け止める。

 その攻撃を受け止めたプレイヤーは、いわば横入りしてきたプレイヤーであった為に彼女の攻撃対象として見られなかった。故に彼女の攻撃はシステム上では攻撃と見做されなかったらしく、彼女のカーソルはまだグリーンのままとなった。

 しかし、自分の目の前に滑り込んできた男性は、一体。男性は、バックラーの後ろからその顔を出すと言った。

 

「間に合った、のか?」

「アンタ、たしかまゆりのお兄さんの……」

 

 見覚えがある。確かこの人は、よくまゆりのすぐ近くにいた―――。

 

「ひろ……りん」

 

 そう、まゆりの兄。いや、夫、であった。エリカは知らないことであるが。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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