SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
助かった。そう、男性プレイヤーは感謝していた。突如として目の前に現れたプレイヤーの正体は分からない物の、四人のプレイヤーは条件反射的に剣を構えようとした。その時だった。
「ひっ!?」
「ウワッ!?」
剣を抜く暇もなく現れた四人の女性プレイヤーにその剣先を向けられたのである。特にそのうちの二人はウィークポイントである首をすぐに掻っ切れる体制であり、もし一歩でも動いたらすぐにその首を刎ねると目で訴えているかのようだった。
その、二人の女性が笑顔で言う。
「全く、こうなるから宿で待ってなさいって言ったのに……」
「でも、まゆりお姉さまを守ることができるのなら、こういう場面も悪くないですね」
と、まるでこのような状況になったことを感謝でもしてるかのように、笑顔で話す二人の言葉に、男性プレイヤーは恐怖を覚えた。間違いない。この二人は、本気になったら自分たちを殺すことも厭わない。そう言う雰囲気を醸し出していた。
「全く、どの子もこの子も少し目を話したらこうなるんだから……お姉さん、心配になるわよ」
「エリカ! 誰かの人生を守るのもいいけど、その前に自分のアイドル人生守りなさいよ!」
と、残り二人の女性プレイヤーは言った。この二人もまた、前者の二人よりは優しかった。ただ、剣を抜こうとしたその手を切断しようとしているだけだったから。ある意味それもそれで一番怖いが、しかしやはり二人ともが笑顔だったのが一番怖かった。
ふと、一人のプレイヤーは思っていた。この女性たち。四人の内三人、知っている。確か、一人はバラドルで有名な女性タレントに、今人気急上昇中のアイドルてぃあらん。そして、もう一人は人気ダンスユニットトリニティのリーダーのミユキさんだったはず。どうしてエリカといいまゆりといいこんなに著名人ばかりが集まっているのか。
いや、著名人だからか。だとしたら、残る一人はいったい誰だ。
「ま、まつかわさん。それに、てぃあらちゃん!?」
「ミユキさん……らん子……」
「ま、まさか松川ってあの……」
其の時、男性プレイヤーたちの顔が真っ青になった。勿論ゲームの中に話なのでそんなことはないのだが、しかしその言葉を聞いた瞬間に彼らの顔が一瞬だけ歪んだのは間違いないだろう。
「アイドルまゆりの専任マネージャー……」
「鬼の松川……!?」
伝説に聞いたことがある。桜井まゆりには専属の敏腕マネージャーがいるのだと。
話によれば、ライブ会場に現れた悪質なまゆりオタク数十人を一網打尽にして返り討ちにしたり、握手会に参加してまゆりに過剰に触れようとしたオタク数百人を病院送りにしたり、表に出ている伝説だけでもまさしく鬼と呼ばれるにふさわしい凶悪マネージャー。
そして、その深すぎるまゆり愛に勝る者はいないと言われている。アイドル桜井まゆりのために生き、桜井まゆりの芸能生活を守るためならばその命も捨ててもいいと思っているほどの人間。そう噂には聞いている。その事を思い出したとき、男たちはまずいと思った。
理由は至極簡単。今、自分たちはその鬼の松川に殺生与奪の権利と言うものを握られているのだから。
「さぁて、貴方たちどうする? まゆりに対する批判は私が受け付けるわよ。あ、ちなみに私……エリカ程優しくないから……」
「まゆりお姉さまのためだったら手を汚しても構いませんからね」
訂正、鬼の松川だけではない。アイドルのてぃあらもまた、一つ選択を間違えれば自分たちを殺しに来ることが確定。つまりだ、自分たち四人は完全に猛獣の折の中に閉じ込められてしまったのだ。例え汚名をかぶっても、そんなもの意にも返さない猛獣の住処の中に入れられてしまった。
きっと、今動こうものならば松川に、てぃあらに斬られること、なんなら殺されることもあり得る。村や町に入れなくなるというデメリットも、彼女たちにとってはまゆりを救うための尊い犠牲程度にしか思っていないっだろう。完全に、四人は詰んでいた。
「さて、どうする? 男ども?」
と、松川がとてもいい笑顔で、しかし鬼の顔をのぞかせて言った。その瞬間であった。
「ひ、ひぃぃぃぃ!!!!」
と、男たちは皆、ホルンカの村に向けてとんずらをかましたのであった。その姿は、まるで≪うさぎとかめ≫の童話に出てくるゴール間近の亀めがけて走るウサギのように滑稽に見えて仕方がなかった。
なんとか、まゆりとエリカは危機を脱することができた様だと、フッと力が抜いて行った。松川は剣をしまうと言う。
「ふん! 私のまゆりに手を出そうなんて、一千万年早いわ!」
「……」
エリカはそんな松川の姿を見て、流石まゆりのマネージャーだと感心していた。彼女の凄さと言うのは芸能界にいる自分が良く知っている。その裏の顔も含めて。だが、ことこのデスゲームの世界観においてもその命に、そしてその名声を捨てる覚悟でまゆりを救う姿はとても格好よく見えた。
「エリカちゃん!」
「まゆり……」
「ごめんね、エリカちゃん……私のせいで……ごめんね……」
一歩間違えれば、エリカを殺人者にしそうになっていた。エリカの芸能人生を完全に終わらせてしまうかもしれなかった。まゆりはエリカに抱き着くと謝罪をする。ごめんね、ごめんねと。何度も何度も。
「な、なに言ってんのよ! 私は、私がしたいようにしただけだから……」
そう、自分はただまゆりのことを救いたかった。自分勝手でやった事。自分の芸能人生なんて顧みずに行ったことだった。だから、まゆりが謝ることなんて何もない。そう、エリカは言う。その言葉自体が、彼女の優しさを表しているかのように。
「でも……おかげで私、助かった……きっと、一人だったら、怖かったから」
「まゆり……」
もし一人だったら、どうすることもできなかった。ただただ彼らに謝り続けて、何もできなかった。何もすることができなかった。何も思い浮かばなかった。そんな自分の事を助けてくれたのは紛れもなくエリカ。
エリカが一緒にいてくれたから、エリカが守ってくれたから、自分は確かに助かったのだ。そう彼女は信じていた。そして。
「エリカちゃん……まゆりを……妹を助けてくれて、ありがとう」
「あ、はい……」
まゆりの兄、という事になっている博嗣がエリカに礼を言った。兄として、そしてその裏ではまゆりの夫として、彼女のアイドル人生を顧みずに行った自己犠牲に対応する礼。
そして、それから数分後。落ち着いてきたまゆりは、松川たちと一緒に自分達が拠点としているホルンカの村に戻り、宿の中に入ってコーヒー≪に似た飲み物≫を飲んでいた。この世界では、飲食物と言う物を食べても現実世界の身体に影響を及ぼすことはない。あるとすれば、食欲が満たされることくらい。
それに、味覚と言うものも完全に再現ができなかったのか、似ているモノを食べたり飲んだりしてもそれほど感覚が満たされることはなかった。しかしそれでもないよりはまし、と言うところなのだろう。七人は、それぞれに落ち着くと、まずまゆりが言った。
「やっぱり、ひろりんもこっちの世界に来てたんだ」
「あぁ、本当はサプライズみたいなもので驚かせようとしたんだが、まさかこんなことに巻き込まれるなんてな……帰ったら、山のようにたまった仕事を片付けなければならんな」
「それに、てぃあらんも……」
「わ、私は本当はもっと早く伝えたかったのですが少し遅れてしまって……」
「で、さっきばったりと出会ってあの場面に辿り着いたってわけ。ミユキさんやらん子とはその途中で合流したの」
「そうなんだ……」
松川にエリカいてぃあら、そして博嗣。思っていたよりも自分の周囲にこのゲームの被害者がたくさんいたのだと、あらためて感じたまゆり。
もちろん、この事態になったのは彼女のせいではない。全ての元凶は茅場晶彦なのだ。だから、彼女が責任を感じることはない。
松川もまゆりが自己責任を感じていると思ったのだろう。いつものようにその身体を抱きしめて大丈夫、大丈夫と言い聞かせる。まるで、彼女の母親のように。
プレイヤー№ 106 竹内博嗣(ヒロツグ【Hirothugu】)≪原作:奥さまはアイドル≫
プレイヤー№ 107 草壁花冠(てぃあら【thiara】)≪原作:奥さまはアイドル≫
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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ヴァルキリーズfeatボーイ
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プロジェクトSAO
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アルティメットカオス
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無への逃走
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肯定あるいは否定
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フィクションスターズ
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〜いろんな著作物から以降はいらない
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タイトルはそのままでいい