SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
「悪いな。アリアたちの見舞いについて来てもらって」
シノは、隣を歩く男に対してそう言った。
男は、その言葉にゆっくりと首を振ると言う。
「いや、俺はただ……自分の過ちの結果を、見届けなければならない。そう思っただけだ……」
「そうか……」
この日は、シノと環の二人が出会った数日後の事。
環は栄養失調や冷たい雨を浴び続けたことによる風邪で入院していたという事で、それが治ったら即刻病院から退院できたのは、当然と言えば当然のこと。
そんな彼が、この日、花束をもって向かった先、そこはシノの友人たる人間たちが眠っている病院であった。
聖都大学附属病院。その特別室に辿り着いた二人は、ガラス越しに面会する。シノの友人たちに。
「アリア、ムツミ……」
七条アリア、そして三葉ムツミ。シノの大事な友人たちである。
特にアリアは、生徒会役員として書記を担当していた人間として、シノの一番近くにいた、いわゆる側近に近い人間。
そして、今回のSAO事件に、シノの友人たちが巻き込まれてしまった遠因を作ってしまった。罪人となってしまった女性だ。
「時々、思うことがある」
「え?」
と、環がガラスに手を触れながら言った。
「七条家のご令嬢もそうだが……ごくたまに、桜蘭のような金持ちが入学するような学校を避け、普通の一般の庶民が通う学校に進学する生徒がいる……」
水無月家の令嬢や香久矢家の令嬢。はたまた、志筑家の令嬢や雪広財閥の令嬢にそれから―――。それこそ、挙げればきりがないほどに多くのお嬢様と呼ばれる人間たちが、桜蘭高校のようなお嬢様お坊ちゃま御用達の学校に行っていない。
普通の一般校に通い、何不自由なく多数の一般人と一緒に勉学に励んでいる。
セキリュティの面から見れば、桜蘭高校のような学校に入学すれば、安心できるはずなのに、自分と同じ境遇の人間たちに囲まれていれば安心できるはずなのに。
「……かと思えば、ハルヒのように将来を見据えて、自分には不釣り合いだと分かっていても入学してくる猛者もいる」
「……」
その令嬢たちと真逆を言っているのがハルヒ。彼女は、自らの将来のことを見据えた結果、勉学に適している学校として桜蘭高校を選んだ。
学校指定の制服も買えない程に貧乏で、周りからはとても浮いていると言ってもいい存在になる。それをも覚悟で彼女は入学し、そしてこの事件に巻き込まれた。
きっと、ごく普通の一般校に通ってたのなら、ハルヒは、自分たちホスト部などと接点を持つことなく、今も、元気に過ごしてたはず。
今も、一般の学生として友達と和気あいあいとしゃべっていたはずなのに、それなのに。
「一体、何が違うというのだろうな……桜蘭と、他の高校と……」
全く持って、お嬢様お坊ちゃま御用達の高校としての面目丸つぶれ。
いやそれ自体は良い。でも、時折こう思ってしまうのだ。もしも、桜蘭高校のようなお金持ち学校がなかったら、桜蘭高校に通うはずだった人間たちは、どうなっていたのだろうかと。
一般の学校に通っている令嬢たちと同じく、周囲に自分と同じ立場の者がいない境遇の中で勉強するのか。
それとも、学校なんかに通わず家庭教師をつけるのか。
この世界には、多様性なんて言葉が存在する。しかし、自分は多様性に関してはあまりにも認識が低すぎる。
かつて、歌とダンスで有名な宝塚を模した部活動、ヅカ部という輩が他の学校から来た時も、自分は彼女たちのことを否定したな、と思い出し自嘲する。
女性と女性の恋愛はなんの生産性も生み出さないとか、女性は男性と恋愛すべきだとか、今の時代にはあまりにもそぐわない言い方をしてしまったような気もする。
けど、そもそも自分には多様性に関しての理解が足りていなかったのだ。だから、きっと、理解することができない。
お嬢様というレッテルで見られるのも覚悟で一般人とともに勉強する人間たちのことを。
一般人というレッテルを貼って、見下していた自分が、理解することなんて到底できることではなかったのだ。
「……私には、アリアが桜才を選んだ理由は分からない。だが……少なくとも」
「少なくとも?」
シノは、アリアの姿を見た。まるで、眠っているかのように安らかな顔を見せていて、それを見ているだけで、なんだか安心できるような、しかしこのまま目覚めないんじゃないかという恐怖心に駆られてしまいそうになる。
でも、決して彼女は親友から目を離しはしなかった。たとえその姿がこれからどれだけ醜くなろうとも。
「アリアが、桜才に来てくれたおかげで、私たちは友達と、親友となることができた……それは、確かだ」
「友達……か」
もしも、自分とアリアが別々の学校に行っていたとしたら。お嬢様と普通の一般人である自分だ。絶対にどこにも接点なんて生まれることはなかった。
それを考えると、彼女が桜才に来てくれてよかった。そう、心の底から思うのだ。生涯の親友と、竹馬の友とも呼べる存在と出会うことができた。
それが、どれだけ彼女の学校生活を豊かにしてくれたことか。
アリアだけじゃない。津田や、スズ、他の学校の仲間たちも。一つ違えば出会うことができなかったかもしれない者ばかり。自分は、その出会いに感謝し、この高校生活を終えることになるのだろう。
そう、思っていた。
「俺は、その友達を君から奪ってしまったんだな」
「だからそれは!」
「分かっている! 悪いのは全てSAOをデスゲームにしてハルヒたちを閉じ込めた茅場晶彦だ……分かっているはずなんだ」
そうだ。すべての元凶は茅場晶彦にある。責任転嫁するわけでもなく、それが真実なのだから仕方がない。
「けど……」
だったら―――。
「その茅場晶彦に協力した俺たちの責任はどうなる? 俺たちの資金援助が茅場晶彦がデスゲームを作るのを助長させて一万人もの人間……いや、それ以上の人たちの人生をブチ壊した」
そう、自分たち須王グループが、そして、それ以外の多くの金持ちが茅場晶彦にゲームを作る資金を提供した。それは、紛れもない事実だ。
それが今、彼の、そしてこの日本中に存在しているすべてのSAOの被害者たちを傷つけた。
何万、何十万ともいえる人間たちを傷つけておいて、自分たちには何も処罰は与えられない。そんなはずはない。
事実、須王グループをはじめとした茅場晶彦に資金援助した会社は、ことごとく一時株価が下落したり、バッシングの対象となった。
また、プロジェクトSAOとして、SAOの宣伝に結果的に加担させられた形になっているアイドル達もまた被害を被っていたりする。
いまだに自分たちに、茅場晶彦に協力した人間というレッテルは付きまとい、彼ら、そして彼女たちを苦しませている。
「俺には、ただ謝ることでした責任を取る方法が分からない……でも、謝っても許される問題じゃないことも知っている」
謝って済めば警察はいらない。警察という組織がこの世界に産まれてから一切消えることのない社会の常識。
たとえどれだけ謝罪したとしても、どれだけ償っても償いきれない罪。それが肩に重くのしかかる。
今、環の心は確かに壊れかけていた。
「俺は、一体どうすればいいんだ……一体、俺は何をすれば……」
どうすれば、彼女たちに償うことができる。シノをはじめとした多くの被害者の親族縁者友人たちに対して、自分は何をすることができる。環は、この一週間ずっと悩んでいた。
でも、結論として答えは出ることはなかった。
いや、出るはずがないのだ。
結論が出るようなことに悩んでいるようなら、それは真剣に考えていない証拠であるのだから。
「……大丈夫。きっと、帰ってくる」
「え?」
シノは、そういうとガラスに手を置いて向こう側にいるアリアたちを見つめながら言った。
「きっと、大きく成長して帰ってくる。デスゲームを乗り越え、成長して、友情を育んで、きっと帰ってくる……きっと……きっと……」
それは、あたかも自分自身を鼓舞しているかのようにも、環は見えた。なんだろう、シノは、何かを恐れているようだ。しかし、それがなんであるのか、彼にはわからなかった。
なぜならば、彼は完全に失ったわけじゃないからだ。ホスト部の絆を。まだ、ホスト部の仲間達がいるから。
考えてみれば、まだ彼は幸運だった。完全に失ったわけじゃないから、すでに、ハルヒの彼氏としての存在が確率されていたから。
だから、彼は幸せ者だ。
何もかもを失う、シノと違って。
「ん?」
「あ……」
その時だった。三つ目の『桜』の名を冠する学校の生徒、中野梓が、二人の女性を伴ってその場に現れた。
「君は……?」
「え?」
その時の、梓の唖然とした表情を、きっと彼女は生涯、忘れることはないであろう。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
-
ヴァルキリーズfeatボーイ
-
プロジェクトSAO
-
アルティメットカオス
-
無への逃走
-
肯定あるいは否定
-
フィクションスターズ
-
〜いろんな著作物から以降はいらない
-
タイトルはそのままでいい