SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ外伝 第二章 第14話

 空虚とも言える廃墟。そのように見えるのは、何も物がない殺風景さと、音がほとんどない静けさがそうさせているのかもしれない。

 この中で聞こえてくるのは、自らが装着している機械の駆動音だけ。仮面ライダーG3の装着者氷川誠はその中で目を瞑って精神を統一していた。

 と、その時だった。突如として鳴り響いたアラーム音。そして、廃墟の中に突如として現れた赤くて丸い、ターゲット表示が合計三つ。

 目を開けた氷川は、G3の装備品であるサブマシンガン、≪GM-01 スコーピオン≫を手に取ると、そのターゲット三つをすぐさま撃ち抜いた。すると、銃弾が当たったターゲットは瞬く間に消失。かけら一つ残らずその世界から消え去った。

 直後、今度は彼の背後にターゲットが出現する。それだけじゃない。次から次へと、時には物陰から、時には人間が視認することができる限界まで達するほどの速さで目の前をかけぬけていく丸いターゲット。

 氷川はしかし、それを一切撃ち漏らすことなく破壊していく。その精密な攻撃は、G3に組み込まれているプログラムが優秀であることが多分に影響していることだろうが、しかしソレと同時に彼、氷川誠がG3の、そしてその武器の扱いに慣れているということもまた、理由に挙げられる。

 まるでブランクを感じさせない動きを見せる。自分だけが、このG3を上手く使う事ができるのだと言わんばかりの動きっぷりに、モニターで見学している者たちも。特にG3ユニットとして現役で戦っている警官たちは感心するしなかった。

 G3−Xという次世代機は、ついこの前に一度だけ装着したという経験はある。しかし、前世代機ともいえるG3を装着するのは、あのアンノウンとの戦いの最序盤以来、二十数年ぶりのこと。だと言うのにそれをモノともしない動きはまさに圧巻であった。

 そのうち、氷川は最後のターゲットである的を撃ち落とし、シミュレーションは終了する。

 

「ふぅ……」

 

 氷川は、G3の中で一息をついた。先も言ったように、G3を装着するのは久しぶりのことで、自分自身腕が落ちていないか心配だったが、これならばなんとかなりそうだ。

 と、その時だった。彼の周囲に変化が起き始めていた。先程まで廃墟同然だったはずの部屋が、一瞬にして崩れ去ったのだ。いや、元の姿に戻ったと言った方がただしいのか。部屋は、最初から何も変わっていない。コンクリートで作られた小さな訓練場へと戻ってきたのだ。

 

『お疲れさま、氷川君。調子はどう?』

「はい。問題はありません、小沢さん」

 

 と、彼はコンクリート部屋の片隅、そこにある壁に作られた長方形の防弾ガラスの向こうにいる現G3ユニット開発班主任となる小沢に返答した。

 

「そう。じゃなきゃ困るわ」

 

 と、まるで興味を失ったかのように椅子に座った小沢に、どこか安心感と懐かしさを覚える氷川は、G3のスーツを管理する部屋に向かいながら通信にて彼女に聞く。

 

「それで、点数はどうだったんですか?」

『もちろん満点。判断能力も正確性も問題なしよ』

「そうですか」

『けど、いくら正確な射撃でも威力がなければ……どう改良しようかしら……スーツの転送に関しては≪四葉財閥≫の力を借りるとして……もう少し爆発力を……』

 

 と、思考の領域に入り込んだ小沢をよそに、氷川は軽々とスーツを保管している部屋に入ると、スーツを手慣れた感触で脱いでいく。

 それにしてもスーツ、というよりもG3自体は確かにすこしのアップデートはあったものの自分がアンノウン達と戦っていた時と、扱いに関しては同じである。

 G3ユニットの統括責任者である尾室は、その姿を現役のG3ユニットのメンバーにきっと勉強になるはずだと思って見学を許可していたのだが、やはり若手の警官たちも彼の動きには参考になるどころか、感動を覚える者も多かったらしい。

 今後のG3ユニットの発展は間違いないだろう。そう尾室は確信にも近い自信を持ちながら、そんなすごいシミュレーションを見せてくれた氷川に感謝をしていたそうだ。

 一方でシャワーを浴びていた氷川は思い返していた。確か、自分が現役でG3ユニットにいた頃は、先ほどのコンクリートに囲まれた殺風景な部屋で、実際に存在している的を撃ち抜くと言うことしかできなかった。

 だが、技術革新によって部屋にはホログラム装置が組み込まれ、的もまた、実物の物を使うことなくどのような戦いでもシミュレーションが可能になっていたのだ。

 これにより、当時では不可能だった訓練もでき、その分のデータをG3に組み込むことが可能になる。

 小沢の提唱した、Gシリーズの新たなる進化、八百年前の王のような強力な相手を想定した戦いもできるGシリーズの完成も、そう遠くはないのかもしれない。

 

「氷川警視」

 

 訓練で流した汗をシャワーで流し、着替えを終えた氷川は、小沢から詳細な訓練の報告を聞くために廊下を歩いていた。

 その時である。一組の男女のペアの刑事に出会ったのだ。

 

「あ、貴方は確か……」

「泊進ノ介です」

「その妻の、霧子です」

 

 と、二人は惚れ惚れするような敬礼を氷川に示す。彼ら二人にとって、警視の氷川は階級から見ても、そして刑事歴から見ても先輩である。故に、そのような対応をするのもわかるだろう。

 そして、そんな二人に対して氷川もまた通例であるかのように敬礼で返した。そして、その手を下に下ろすと言う。

 

「そういえば、今日は午後から合同捜査でしたね」

「はい。同じ仮面ライダーの大先輩の、なおかつ、刑事の大先輩の活躍、近くでその姿を見たいと思います」

「そんな、大先輩だなんて……」

 

 と、氷川は謙遜するが語弊もない。仮面ライダードライブの泊進ノ介からしてみれば、自分が戦った十年以上も前に、アンノウンという未知の敵と戦った氷川誠は、刑事の先輩であるのと同時に、仮面ライダーの大先輩でもあるのだから。

 それはさておき、今回は氷川の言う通り、泊夫妻との合同捜査がある。捜査内容は当然、今世間を騒がしている茅場晶彦の探索と逮捕。

 これはある意味では警視庁内外を問わずとした日本全国津々浦々の警察官達の共通目標のような物だ。しかし、だからといってそっちの方ばかりに気を取られているとまた別の事件を見逃してしまう恐れがある。そのため、警察官、特に刑事よりも上の階級の人間達でローテーションを組んで情報を聞き込むと言うことがついこの間の会議で決定されたばかりなのだ。

 かくして、今回のローテーションの中で選ばれたメンバーの中にいた刑事が、この三人と後もう一人、と言うことなのだが。

 

「どうやら、あの人は遅れているみたいですね」

「えぇ、まぁ場所が場所ですし……」

 

 と、霧子が言った。通常時、警察官というものは何かがあった時のために原則二人一組で行動することとなっている。故に、そのもう一人ともまた、この場所で合流すると決まっているのだが、なぜかその一人がまだ来ないのだ。

 ソレに関しては霧子が言った通りだ。今回泊夫妻と氷川は警視庁から捜査本部へと出向中の身、しかし最後に合流する手筈となっているもう一人の人物に関しては東京の隣町にて活動している刑事なのだ。泊たちはその人物のことを知っているらしいのだが、氷川は会ったことも話したこともない刑事である。一体どんな人間が来るのだろうか。

 ともかく、隣町といっても多少道が混んでいれば遅れることもあり得る。その彼がくるまで世間話で場を埋めようという事になった。

 まず、話を始めたのは進ノ介であった。

 

「それにしても、さっきのシミュレーションはすごかったですね」

「え? あぁ、あれですか。あれは……」

「AR技術とホログラムを利用したゲームみたいなものよ」

「え?」

 

 といいながら、現れたのは先程まで氷川に指示を飛ばしていた小沢である。

 

「小沢警部! ご苦労様です!」

「敬礼はいいの。それより、あの程度の技術、今じゃもうごく一般的よ」

「そうなんですか?」

 

 と、驚いていたのは先程までそのホログラムを利用して射撃訓練並びにデータ取りを行っていたはずの氷川である。

 

「えぇ、今じゃアミューズメント施設のゲームコーナーにも置かれるようになってるわ。知らなかったの?」

「はい、すみません……」

「警察でも実際の的を使用することの後始末とか、それから一々新しい的を作る手間とお金を考えた結果、これになったそうよ」

「そうなんですか……」

 

 よく小沢もそこまで知っているものである。もしかして、意外とゲーマーなのだろうか。

 

「一応言っておくけど、ゲーマーっていうわけじゃないわよ。ここの施設を利用するときの説明欄に書いてあったの」

「あ、そうなんですか」

 

 違ったようだ。

 しかし実際問題、破片が飛び散ったりして射的の手が怪我したり、飛び散った破片を回収する手間というものが省かれ、尚且つすぐにまた別の人間が使用することができるというのは利点に数えられるのかもしれない。

 しかし、これだけ最先端でトップシークレットとも思われるようなものでさえゲームに利用されるなんて、技術の発展には目を見張るものがあるというものだ。

 

「そして、その技術を悪用する人間がいる……」

「茅場晶彦、ですね」

 

 その、平和利用できるはずの技術で、何万人もの人間の人生を狂わせた茅場晶彦。誰かを悲しませるために技術を悪用させた男に、間違いなく二人の刑事は怒りに震えていた。

 

「絶対に逮捕しましょう。茅場を」

「あぁ!」

 

 思わず、氷川は泊進ノ介に対して手を差し出していた。進ノ介もまた、階級や年齢と言った諸々の事は度がえしとして、二人の刑事は硬く握手をした。

 と、その時だ。

 

「なるほど、どうやらすでにエンジンは温まっているようだな、泊刑事」

 

 廊下の向こう側から一人の男が現れたのだった。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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