SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
「はぁ……」
シノは、生徒会室にて一人資料をまとめ終えるとそれを紙束にして机に二度、三度と降ろして整えた。
今日も一日、とてつもなく忙しいままに終わってしまった。やはり、一人で学校全体をまとめ上げるのも無理がある。
というよりも、前までのメンバーがあまりにも優秀すぎたという事もある。書記のアリアに、会計のスズ、そして副会長の津田タカトシ。
並びに、会長の自分。そんな四人だったからこそ生徒会という物が成り立っていた。そう言っても過言ではないだろう。
顧問の横島ナルコからは、誰か代わりの人間を入れようかとも相談されたが、正直のところ彼ら以上の人材なんてこの学校にはいないし、彼らの代わりが務まるとは思えない。
自分にとって、いかに彼らが大切な、かけがえのない存在だったのか。それがよくわかるという物だ。
それに、ここ最近は悩みの種も増え始めている。
「岩沢……彼女は大丈夫なのだろうか……」
中野梓という人間のために曲を作ると高々に宣言していた。だが、病み上がり、というより病んでいる途中の人間が曲を作り、何なら歌おうとするなんて、果たして大丈夫なのだろうか。
無論、いらぬおせっかいであるという事は重々承知だ。岩沢も、梓も、この桜才学園の生徒というわけじゃない。
ただ、自分の友が眠っている病院に入院中の患者と、そして同じ被害者仲間というだけの二人。
けど、どういうわけか彼女はその二人のことがどうも気になっていた。
特に、梓。どうやら、自分と境遇が似ているようであり、それなら、もう少し親しみという物がありそうなものなのだが、しかし彼女は逆に自分のことを避けているようにも感じる。
何故なのだろう。考えると止まらなくなる。
「天草会長」
「ん? 畑か?」
と、その時生徒会室に一人の女生徒が現れた。
畑ランコ。桜才学園新聞部部長で、いたるところに出没する、まさしく神出鬼没という言葉がぴったりの高校三年生。つまり、シノと同学年の少女だ。
常にポーカーフェイスでその表情を一切顔に出さないことから、顔つきで感情を読むことができないし、何か情報を出せばすぐに学校中に噂話としてゴシップネタを流されてしまうという少々とっつきづらい性格の持ち主。
彼女とは、桜才学園の行事について学園全体に周知させる義務を果たすために協力体制という物をしいていたため、こうして頻繁に生徒会にて顔を合わせる機会が多い。
しかし、最近はSAO事件の影響もあって、ほとんど顔を合わせていなかったのだが、一体どうしたのだろうか。
「どうした?」
「いえ、実は最近天草会長が桜蘭高校の男子生徒と一緒に居るという事を、≪とある筋≫から聞きまして」
「あぁ……」
桜蘭高校の制服というものは、この辺の界隈では目立つ制服だ。男子生徒はそうではない者の、特徴的な女生徒のソレと合わせてよく覚えられているモノとなっている。
「あれは、津田を見舞いに行った時にたまたまであっただけで、その後も、アリアとの見舞いについて行ってくれただけだ。それ以降は会ってもいない」
きっぱりとここで否定しておかなければ、彼女のゴシップ精神であることないこと色々と書かれてしまう。
自分が今話したことはすべて事実だし、あの後会ったことがないというのもまた事実だ。
というより、そもそも自分と彼らとは世界がまるで違う。向こうは大金持ちで、自分は一般庶民。面会で顔を合わせるくらいしか接点なんてものはない。なくて、当然だ。
「まぁ、そんな事だろうと思いました」
「は?」
「会長は津田副会長一筋ですし」
「なっ!」
シノは赤面する。どうしてここで津田の名前が出てくるというのだ。
「何を言う! 津田とは会長と副会長という間柄で、それ以上の関係ではない!」
これまたしっかりと否定したシノ。だが、その反応は明らかに先ほど環との関係を疑われたソレとは全く違っていた。
ここまで読んでもらって分かる通り、シノはどこかで津田タカトシのことを気にしている場面が多々ある。おそらく彼女は内面的には津田の事が―――。いや、これ以上のことは胸の内にしまっておいた方がいいのかもしれない。
「なるほどなるほど、いい取材ができました」
「なんのだ!」
「あぁ、それから」
「まだ何かあるのか!?」
「桜が丘高校の中野梓さんとも仲がよろしいようで」
「梓のことを、知っているのか?」
これは少し驚きだ。桜蘭高校の環はともかくとして、梓は一般人。そんな目立つような人間ではないはずなのだが。
「えぇ、実は前々から桜が丘高校の軽音部に関しては調査をしてまして」
「調査?」
「えぇ、会長に似た人物がそちらで軽音部をしているとのことで、桜才学園と桜が丘高校の二つに通っているのかと」
「そんなわけあるか」
というのは半分ランコの冗談。
会長に似た人間が軽音部にいるという事までは本当の事。
新聞の記事のネタに関して探している途中で発見したもので、結局ネタ的にはあまりよろしくないという事であえなく没なってしまった。
今回ランコの報道部ネットワークに中野梓が引っかかった。そして、その時の調査のことを思い出したため、こうして彼女に話を聞きに来たのだ。
「言っておくが、これ以上梓の心に負担をかけるような真似をするなよ。彼女はもう、心身共にボロボロなのだからな」
「えぇ、そりゃもう」
少しだけ心配だ。彼女は取材という大義名分のために色々な手を使う時がある。そして、その新聞の記事に至っては、時折脚色や捏造が入った物も見受けられるという少し危険な一面も見受けられる。
なんとしても、梓のことを守らなければならない。
まぁ、最低限度の常識という物は持ち合わせているため、彼女の事を追い詰めるよう記事なんて絶対に書かないという確信はあるのだが。
と、そういえば。
「桜が丘高校のことを調べていたのか?」
「えぇ、そう言いましたが」
「なら、知っているのか? 秋山澪、という少女の事」
「えぇ、勿論。何なら動画もありますけれど」
「動画?」
「はい。今の時代、一般人が動画サイトに動画をアップロードするのはたやすいことですので」
といって、ランコはどこからともなくパソコンを取り出し、おそらく日本で一番著名な動画サイトを開いた。
そして、そこの検索欄に、
『桜が丘高校 学園祭』
と打ち込んだ。すると、いくつかの動画がヒットした。
その一番上に会った動画。それが、桜が丘高校軽音部の学園祭での演奏の動画のようだ。
「では、まず一年目の物から見て見ましょうか」
といって、ランコがその動画を再生し始めた。
動画は、薄暗い場所―おそらく体育館と思われる―から始まった。ざわざわとしているのはある意味学園祭らしいにぎやかな物で、自分たちの学園祭の時もこんな感じだったなと今では懐かしいその雰囲気に懐古心を持っていた時だ。
赤い緞帳が、ゆっくりとあげられていった。緞帳の奥には、四人の女生徒の姿が見える。その少女たちは、確かに三日前に見た少女たちそのもの。
しかし、梓はいないようだ。いや、当たり前の事か。彼女が入学するのはこの一年後。彼女たちが二年生の時なのだから、一年生の映像に映っていないのは当たり前のことだ。
そして、彼女は見つけた。中央にいる、メイド服を着た、女生徒の姿を。
「もしかしてこの少女が……」
「えぇ、秋山澪さん。軽音部では、ベースを担当していたとか」
確かに、似ているかもしれない。この前は、ナーヴギアをかぶっていたからよく見えたなかったが、確かに黒髪ロングヘアーな部分は自分そっくりだ。
でも、何だろう、少しオドオドとしているように見えるのは、でもその姿も何か可愛いと思えて、愛おしい。
それから一、二分。舞台上でなにやら会話を交わした後。
『ワン・ツー・スリー・フォー・ワン・ツー・スリー!』
演奏が、始まった。そして、耳に聞こえて来た秋山澪の声は―――。
「私、か?」
まるっきり、自分にそっくりだった。
その後、彼女は放課後、日が落ちるその直前までそのパソコンから離れることはなかったという。
しかしなるほど、とシノは納得した。何故、彼女が自分に対して絶妙な距離を置いているのか。その理由がはっきりしたのだから
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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ヴァルキリーズfeatボーイ
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プロジェクトSAO
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アルティメットカオス
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無への逃走
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肯定あるいは否定
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フィクションスターズ
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〜いろんな著作物から以降はいらない
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タイトルはそのままでいい