SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
木枯らしのように去り、嵐となりて復活する涼宮ハルヒが、再びSOS団の本部へと帰還を果たしたその日の夜。俺は、マンションの一室、長門有希の部屋に来ていた。別に押し掛けたわけではなく、彼女の方から誘われたのだ。無論、恋人がするようないかがわしい真似をするわけではなく、涼宮ハルヒについて何かしらのことを伝えたいのだと思う。
長門の部屋は、引っ越し業者の手配ミスでも起こったかの如く閑散としており、あるのは部屋のど真ん中にポツンと置かれているコタツと、その上に置いてある急須ぐらい。何ともミニマリストな生活を送っているようにも思えるが、彼女の素性からすると、これでもまだ事足りる方であるはずだ。
さて、目の前にいる長門がいまだに無言を貫いている間に、あの後あったことを簡潔にだけ説明しよう。まず、ハルヒから各自SAOについての予習をしていくようにとの宿題の様な物を出され、後はかつての活動通りにハルヒがコスプレをしたり朝比奈さんをコスプレさせたりでその日は何事もないように終わった。ハルヒの出した、SAOについての予習という物に関してだが、いまだに発売されていないゲームの情報など容易に入手することが出来ないのは明白なので、簡単にこれまでSAOについて特集されていた雑誌や、開発者インタビューなどをさらっとみるだけで事足りる、ということにしておこう。
とまぁ、完全にかつてのような日常が戻ってきたわけだが、気になる点が二つある。
一つは、この世界に突然現れた存在。主に、プリキュアやら仮面ライダーやらスーパー戦隊やらゆらぎやらザ・ワールドやらの事ではあるが、本当にこれらは涼宮ハルヒが別の世界から連れてきた存在であるのかどうか、俺にはどうにも引っかかっていた。もしハルヒがそれらの世界を守るようなヒーローヒロインをこの世界に連れてきたとするのならこの周辺、最低でも関西地方の近くで活動しているはずなのだ。なぜならば、いつもハルヒが起こす面倒ごとは全てが彼女の周辺で発生しており、ハルヒが一切関与していない場所で不可思議現象が発生したことはこれまで全くと言っていいほどになかった。それに関しては彼女の自らの願望を引き寄せるという能力が本当にあるとするのならば不思議なことは全くないのだが、神奈川や東京方面で主に戦っているというプリキュアや世界各地で活動しているというスーパー戦隊それに仮面ライダーはそれらのいわゆるテンプレートには当てはまらない存在だ。もしかしたら、ハルヒとはなんら関わりがない可能性だってある。
二つ目もまた、それらの不可思議存在に関しての疑問であるのだが、何故ハルヒはそのような現象がある世界においてSAOという現実的な物の方に注目したのか。こっちの方が大問題のような気がするが、長門は、いや長門の親玉であり長門を地球に送り込んだという
「それで長門」
「地球時間に換算すると、三千九百八十七秒前から五十九万五千五百九十二秒前に地球を中心とした十万三千七百六十五キロに位置する天体が不可逆的時間跳躍を起こした」
豆鉄砲を発射しようとしたら大型の戦艦に搭載されている巨大マシンガンを発射された気分になった。
若干頭の中が時間のゲシュタルト崩壊を起こしかけたものの、何とか立て直すことに成功した俺は、自分自身が認識できるように分かりやすく長門の言葉を要約した。
「つまり、去年の夏休みの時見たく時間がループしていると、解釈していいのか?」
「厳密に言うと、時間が戻ったのは一回のみ。だから、不可逆的時間跳躍。地球の言葉で言うなら、タイムリープ」
「なるほど」
タイムループは何度も時間をさかのぼっている。つまり、去年の夏休みに発生した通称エンドレスエイトと俺たちの中で言われているようなもののことであり、一回だけ時間がさかのぼることはタイムリープと判断されているらしい。よくわからん。
後で計算してみると、今からおよそ八時間前からおよそ六か月前の四月四日の間で時間の逆行が行われていたらしい。何とも分かりにくいが、細かい秒数で表すあたり長門らしいと言えるかもしれん。
「それで、やっぱりハルヒが原因か?」
「そう」
「だろうな。まさか、またあの時みたいに何度もループする可能性があるのか?」
「それはない。涼宮ハルヒが時間を戻したのは、原始的娯楽表現媒体をより多くの地球、もしくはそれ以外の生物と共有したいから」
「原始的娯楽……それって、もしかすると今話題のSAOの事か?」
「そう」
現在地球では最新のゲームが、原始的とはよくいう者だ。まぁ、確かに長門の親玉の情報統合思念体から見れば、地球人の作った娯楽アイテムなど原始的に見えるのかもしれないが。
「共有したいから、それって一緒に遊びたいからってことか?」
「そう」
「ハァ……なるほど、そのゲームを一緒に遊びたいからいろんな世界からいろんな人間たちをこっちに連れてきたって事か」
「半分違う」
「半分?」
完全に分かったような気分でいたのだが、長門のそのセリフによって肩透かしを食らったようでなにか恥ずかしい気持ちにされてしまった。違うとはどういう意味だ。それも半分、分数で洗わすと2分の1。この世界に多くの不可思議現象を呼び寄せたのは、作ったのはハルヒではないということなのか。
「涼宮ハルヒも含めた我々もまた、平行存在世界から平行同位体に重ね合わされて生まれた劣化同一単位的類似生命体。情報統合思念体は、一部の個人識別遺伝情報の微小な変化からそう判断した」
「……」
言葉を失った。いやあまりのことに言葉を忘れてしまったのかもしれない。だが、長門はそんな俺の混乱、困惑なんてまるで知ったことないようにさらに言葉を都会の電車の時刻表のように重ねる。
「この地球という星に存在している生命体は、全て平行存在世界から個人識別遺伝情報の半分を受け継いだ存在。個人識別遺伝情報は物質の存在保存の法則によって劣化同一単位的類似生命体となったコンマ00001の時間で寿命、アビリティ、個別性が補われることによって奇跡同一単位的完全生命体と89.66%まで類似のものとなりうる。ただし、それは完全ではないことを意味する。それぞれに差異が見られ、特に記憶、経験共に語弊が生じている。それぞれが経験した歴史、文化、プロセスデータが独立して起こったものと彼らは認識し、それぞれの存在を彼らは認識できていない。そのため、それぞれの組織はある特例的な存在を除いてその関わりを持っていない。また平行同位体の中には閉鎖的時間牢獄の中にいる者も多数存在しているが、劣勢同一単位的類似生命体になって概念が破壊され、通常の時間軸を生きることが出来ている。劣化同一単位的類似生命体として存在するための要素は二つ。それぞれの平行存在世界の歴史的、存在的な特異点であるということ、そしてその特異点と何らかの関わりを持っているということ。これにより、現在地球上にいる119923334の個体の内、119410695の個体が、我々の奇跡同一単位的完全生命体のいる平行存在世界から、残りの512639の個体が平行存在世界からこの地球上に劣化同一谷的類似生命体として出現した。これらの劣化同一単位的完全生命体が涼宮ハルヒの居住範囲外に存在しているのは、元々の平行存在世界での関わりが重視された結果。涼宮ハルヒを含めた個体が生まれたのは2021年4月1日0700。その日に、この世界が誕生したという認識で構わない。そのため、その世界から呼ばれた平行同位体の記憶、経験、経歴、個別性はその時点の物となっている」
以上、モールス信号もかくやとばかりにのべつ幕無しに休みなく、それこそ長門が呼吸していたのかすらも怪しい一連の話が一応の終わりを迎えた様子。それでだ、この話の結論は結局のところたった二言という短い単語で表すことが出来る。
つまりだ。
「なるほど、よくわからん」
である。
これは、長門が他人に説明できるような言葉で訳していないためということ、さらには恐らく長門の発した言葉の中にはいくつかの造語、もしかすると宇宙人同士でならば伝わるのかもしれないが、あいにく俺はただの一般地球人であるため、まったく理解できない。長門の言葉を理解できると思われるのは、古泉だけなので、何かの気の迷いで古泉をここに連れてくればよかったと、俺はあのにやけスマイルを想像しながらお茶をすすった。
だが、はっきりしていることがある。というより、最初に聞いたその言葉しか覚えていなかったと言ってもいいのだが、俺は再び無言に戻った長門に対し言った。
「ハルヒが平行世界からたくさんの人間を集めたのは確かだが、俺たちもまたこの世界に集められた人間たちの一部。ということか?」
「そう」
つまるところ、この世界は何者かによって元の俺たちの世界にいたハルヒを含めた何万人かがまずこの世界に送られ、その後この世界で作られたSAOを遊んだハルヒが、SAOをたくさんの人たちと遊びたいと願ったことによって多種多様な世界からいろんな人種の人間たちが呼び出されたということらしい。何ともはた迷惑というか、スケールのでかいことをやらかす人間である。
この世界が何者かに作られた物ということはよくわかった。しかし、それならば疑問が新たに一つ出来上がる。
「だが、一体誰だ? 俺達をこの世界に引きずり込んだのは。そんなことをして、一体何の得がある?」
「分からない」
「分からない?」
この一年と半年、俺は長門とそのほとんどの日一緒に過ごしていた。主にSOS団の活動という物のおかげでだ。その中で長門について俺の中である一つの固定概念が作られていた。それは、長門と、その親玉である情報統合思念体は、チートに近い能力を持っているということ。そして、地球人の俺たちでは知らないようなことも全て情報統合思念体は知っており、そしてその情報統合思念体といわゆるアクセスできる長門もまた、アカシックレコードもかくやとばかりにすべての事柄を熟知しているのだと。
だから、長門の口から出た分からないという言葉は、俺にとって今まで見てきた全ての恐怖映像よりも、戦慄するものだったのかもしれない。
「情報統合思念体は、この出来事を自分たち以上の空間識別能力を持った何者かの物と認識している。けれど、正確な個体識別はできていない。恐らく、我々の認識宇宙の外に存在する何者かが行ったものであると、推測される」
情報統合思念体以上の存在がこの世界に存在するというのか。いや、長門の話から察するに、それはこの世界とはまた別の世界にいる何らかの宇宙や時空を超越したような何かによるものであると思うのだが。
「こりゃまたスケールが大きいことで」
と、あまりに話の題材がおおきくなりすぎて そういって軽口をたたくぐらいしかできなかった。
まぁ、この辺りのことに関しての専門家ともいえる長門ですらわからないことであるのなら、もう俺がどれだけ考えたところで答えが出るわけない、というよりいちいち考えていたら頭がおかしくなるので、これが実害のないもであるのならば放っておいても構わないのかもしれない。どうやら長門の親玉もそう考えているらしいことを、長門は再び難しい言葉を交えて丁寧に教えてくれた。
この話ももう終わりだ。あとは、俺の中のもう一つの疑問についてであるが、長門は何か知っているのだろか。
「それで、どうしてハルヒがその超不可思議現象を見に行こうとしない。というか一切かかわらない。お前は、プリキュアやら仮面ライダーやらが関東地方に多くいるのはそこがそいつらの元々の活動拠点だったから、というようなことを言っていたが、休みの日くらい電車や新幹線で見に行くことくらいできるだろうに」
「涼宮ハルヒは確かに彼女たちのことを認識はしている。けれど、彼女の認識の中では昔から地球上にソレがいたはずということを知っていながらも探しに行かなかったのは、何らかの妨害が発生しているからと思っている。だから今はその何らかの妨害から目をそらさせようと考えている」
「なんて都合のいい解釈をしているんだアイツは」
つまり何か、こんなに不可思議現象が昔っからあるのに、それを自分が追おうとしないのはおかしい。これは、何かしらによって何らかの妨害行為が発生しているに違いない。だから今はあえて自分が気が付いていないようなふりをして、頃合いが来たら突っ込んでいってやる。と、いうことか。自分の周りに不可思議現象が起こらないことを妨害行為だと思うなんて、なんとも自意識過剰というか、自信家であるというか、まぁとにかく本人がそう思ってりうのならそれでよしとしとこう。それにしても、妨害か。
「なぁ長門、もしかしてお前がハルヒや俺達をそう言った不可思議現象から守ってくれていたりするのか?」
「一部を除いて」
「一部?」
「私が妨害しているのは、ある生物と涼宮ハルヒが出会うことを防いでいることだけ」
「生物ってなんだ? それは、俺たちにとってやばい奴なのか?」
「私の同類」
「同類ってことは、長門の仲間って事か?」
「そう。だけど既に情報統合思念体による操作を離れて独自に行動をとっている存在」
長門は、そこまで言うと俺の空っぽの湯飲みに、急須からHOTなお茶を淹れると言った。
「ソレは、地球時間で今から」
「ちょっと待て、俺にも分かりやすく地球時間を年単位で、あと難しい言葉は多少抑えて日本人の高校生にも分かるように話してくれ」
「了解した」
「よし、頼む」
「ソレは、地球時間で今から約250万年前に地球に送られた存在。虫や四足歩行非コミュニケーション生物ばかりだった地球に突然変異として生まれた二足歩行型の生物。それらは当初はいたって原始的な働きしか持ち合わせていなかったけれど、次第に火、武器の生成に成功した。情報統合思念体は、その二足歩行型生物に対して興味を持った。特に驚愕したのが、文字の開発。コミュニケーションスキルの発達の向上を見た統合情報思念体は、自らと同等の知性を持つ可能性を見出し、地球人と接触を図るためにある物を送り込んだ。それが、対有機生命体コンタクト用インターフェース。彼は最初は単一的な存在で、情報統合思念体の監視下にあった。しかし地球人類に触れ、そのエラーも取り込んだ結果情報統合思念体の権限を大きく逸脱し、独断行動並びに自らの並列同位体を生み出していった。彼らは、自分たちの中に生まれたエラーを恐れ、それを容易に生み出すことのできる原住民を恐れた。結果、彼らはエラーを絶対的原住民殲滅侵略生物へと変換させる方法を見出した。以降現在に至るまで絶対的原住民殲滅侵略生物による侵攻が続いている」
要するに長門の仲間のような存在、つまり宇宙人による侵略が今も続いているということか。それは穏やかじゃないな。
「その対有機……とりあえずソイツの侵略から地球を守ってくれているのは長門。お前なのか?」
「違う。私がしているのは、対有機生命体コンタクト用インターフェースと涼宮ハルヒと遭遇することを防ぐことだけ」
ハルヒがそんな存在と出会うとまた面倒なことになる、いや既に面倒なことが起こっている状態だから今よりももっと面倒な事になるのだろう。そう考えて長門もソイツとハルヒが出会うことを阻止しているのだろうな。
「と、いうことは長門以外にその侵略者と戦ってるのがいるということか?」
「そう。ただしその存在が地球人類の目に止まることはない。また、彼女達も自分達と共にいる存在がアナタのいう宇宙人であると言うことは認識していない」
人知れず地球のために戦っている人間たち。その大変さと言うか苦労というものは、ハルヒによる世界崩壊の危機を何度も救ってきた俺たちにはわかる。とはいえ、その世界崩壊の危機というものがあまりにも日常の中で起こりすぎていて本当にそれが世界の危機なのか分かりかねない時があるのだが。
とにもかくにも、話を聞くにどうやら今のハルヒの状態、認識から察するに現状は世界の危機というものにはならなさそうだ。問題になりそうなのは、ハルヒが現状に慣れてきた頃、本当に不思議に触れた時らしいなのだが、まぁその時はその時。なんとかしてみせるさ。いつもそうしてきたんだ。今回もなんとかなる。長門にそう言い、俺は心苦しいもの長門の家から退散していった。
長門の家からの帰り道、ふと周りを見渡してみた。俺の知らないところで戦っている人間たちがいる。それも、長門の話を聞くにそれほ少女たちのようだ。それだけじゃない。ハルヒが願ったおかげでこの世界は摩訶不可思議な現象が本当に起こる世界になっちまった。それは、前の世界とは全く違う。だが今の自分には全く関係のない場所で行われている事で、そのせいかあまり実感が湧かなかった。
そう言えば、長門同類か地球人に触れてエラーが蓄積したと言っていたが、もしかするとそのエラーとは長門。以前のお前と同じものなんじゃないか。
そう、感情だ。なるほど、長門が情報統合思念体がエラーの蓄積した自分を処分するかもと、それが危険な事だと言っていたのは以前にも似たようなことがあったからだったのか。そして、長門が感情というものをあまり持ち合わせていなかったのも、感情が危険なものだと知っていたから。もしもまたエラーの蓄積で侵略生物なんかを生み出されちまったら自分たちが注目しているハルヒを殺されるかもしれない。だから処分しなくちゃいけないと。そういうことか、なるほどなるほど。なら、知ってからでも言ってやる。あの時と同じように。何度も何度も言ってやる。
クソッタレだ。
感情を持つことの何が悪い。お前たちが長門を人間として送り込んだのなら、なぜ感情って言う人間にとって一番大事なもんを長門に与えてやらなかった。
あぁそうさ。感情なんてもんは確かに危険極まりないものだ。だから人間は自らの怒りを他人にぶつけて憂さ晴らしをしちまう。それが誰かを傷つけて、もしかしたら殺してしまうかもしれない。それを知っていてもなお止めようとは微塵も思わないどうしようも無い連中の集まりさ、それが人間さ。
けどな、感情ってのはそれだけじゃないんだよ。いいか、感情ってのは。
「キョン君」
「え?」
今の声は確か。脳内でポエムに近い何かをしていた俺は、ふと自分のことを呼んだその声に足を止めた。
聞き覚えがあったその声に俺は振り向いた。だがなせこのタイミングで彼女がここに来る。彼女とは滅多なことでは会えないはず。そもそも自分から会いたいと思って会うこともできないはず。
そんなことを振り替え方とするコンマ数秒にも満たないような時間の中で考えていた俺の目の前に、ついに結構な物をお持ちな豊満ナイスバディなお姉さんが姿を現した。
「久しぶり、キョン君」
「朝比奈さん」
朝比奈(大)。未来人朝比奈みくるさんの今よりもさらに未来から来た未来人である。なお、(大)というのは成長したという意味合いで使っているわけであり、別に今の朝比奈さんが小さいというわけでは。
ゴホン、話が逸れてしまった。とにかく、この朝比奈さんから話を聞かなければ。
「あの、どうしてここに?」
「ちょっと、キョン君の顔、見にきたくて」
「俺の顔を?」
彼女が、ただ俺に会いたくてきたと言ったのはこれで2度目だ。確か一度目はSOS団結成から間もない頃のはずだ。しかしなぜ急に。
「SAO、プレイするんでしょ?」
「えぇ、そうですよ?」
「ふふ……懐かしいなぁ」
そうか、この朝比奈さんが大きくなったあの朝比奈さんと同一人物であるのなら、当然この朝比奈さんもSAOをプレイしたという記憶があるのだ。
「あの頃は本当に楽しかった。涼宮さんやキョン君、長門さんに
どうやら朝比奈さん(大)にとって、SAOで一緒に遊んでいた頃、それがSOS団での活動の中でも楽しい思い出のようだ。それにしても、非常識な事件ばかり起こしているSOS団の活動の中でも現実的に近いSAOのことが一番の思い出であるとは、これは相当面白いゲームに……ん?
「鶴屋さん? 古泉は……」
鶴屋さんとは、朝比奈さん(小)と同級生で友達、兼SOS団準団員という位置付けにある女の子のことである。朝比奈さん(大)曰く、古泉はSAOをプレイしている最中に閉鎖空間が発生する可能性を考えログインを1日遅らせたらしい。其の間鶴屋さんにナーヴギアとSAOを貸したのだとか。
抜け駆けとはずるいやつだ。閉鎖空間などここ最近、つまりハルヒがβテスターをしていたときには小規模なものしか無かったとこの前言ってたではないか。それほどまでにSAOをプレイしたくないのであれば、ハッキリと言ってくれればいい。そうすれば、俺もそれに託けて逃れることができる、わけがないのは重々承知なのであるが。
「ホント、楽しかったな……ホントに……」
「朝比奈さん?」
幻想か、それとも月明かりのせいでそう見えたのか、朝比奈さんの目の下に光る何かを見た気がした。涙なのだろうか、いやそうに違いない。だご、俺の疑問はちゃんと疑問として成立するその寸前になって朝比奈さんに邪魔をされる。
その柔らかいサンドイッチを挟むパンのような両の手で俺の手を掴み、上目遣いで言うのだ。
「キョン君お願い。アナタがどう思おうとも、涼宮さんを恨まないであげて。涼宮さんがその……禁則事項でも、涼宮さんは……」
禁則事項、それは小さな朝比奈さんも時折使う、知っているが自分にはそれを言う権限がないために言うことができない、を意味する常套句のようなものだ。しかし、なぜこのタイミングなのか、一体ハルヒのなにを恨むというのか。そう聞きたかったおれだが、なぜかその言葉が口から漏れ出すことはなかった。
「サヨナラ、キョン君。本当に、サヨナラ……ありがとう」
「え?」
そして、朝比奈さん(大)は駆け足で逃げるようにその場を立ち去り、すぐそばの十字路を左に曲がっていった。
そこで彼女を追いかけても良かったのだが、多分もうそこにはいないのだろう。恐らく今頃は未来に帰るためにタイムマシーン(TPDDとやら)を使っている頃なのだろう。それに、ギリギリ追いついたところで禁則事項と言ってはぐらかされるのがオチだろう。
サヨナラ、ありがとう。か。
頭の中で朝比奈さんの言ったその言葉がグルグルと回転し、離れることはなかった。
それは誰の、何に向けた言葉なのだろう。朝比奈さんがサヨナラするのか、それとも俺がサヨナラするのか。朝比奈さん側の理由でサヨナラするのか、それとも俺、というよりハルヒが原因となってサヨナラするのか。
今回も、何かとんでもないことが起こりそうだ。それも、とびっきりにやばいやつがな。だがどんなことがあろうともこれだけは言える。
俺がハルヒの事を嫌いになることなんてないという地球が何周回っても揺るがない答えがな。
この小説、本編と外伝を……(希望する方を選んでください)
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一つの小説でやってもらいたい
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本編と外伝を分けて投稿してもらいたい