SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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 考えれば、前回の話で150話超えてるんですね、果たして、この小説が終わる時が来るとすれば、それは何話になることか。


メインシナリオ外伝 第二章 第16話

 狂ったようなピアノの音色が、屋敷の中から聞こえてくる。

 殴りつけるように、そして自分の気持ちをぶつけるかのようなその恐怖の音色に、ペットのアントワネットも、彼の元に行くのを渋っているかのようだ。

 無理もない。例えどれだけ大きな屋敷に住んだと知っても、そこに加えられる音楽一つで、あたかも魔王の城のように思えてしまう。そんな城の中腹に、一体だれが好き好んでいくのだろう。

 彼は今、怒りを曲に乗せている。自分の思いのたけを、全て、ピアノという一つの楽器に注いでいる。

 その姿は、まるで、悪魔に魂を売った音楽家のようにも幻視する。

 前まではこうじゃない。もっと、平凡な曲を弾いていたはずだった。某テレビ局の連続テレビ小説や、時代劇のテーマ曲ばかりを弾いていたはずなのに、気が付けば聞こえてくるのは悲しい曲ばかり。

 まさしく、彼の心を表していると言えよう。

 鏡夜は、そんなBGMが奏でられている中を、使用人のシマの許可を得て歩く。

 今のあの男、須王環という人間にまともに会うことができるのは自分だけだ。そう、願いを託されて。

 そして、たどり着いた彼の部屋は、一言で言うとひどいありさまだった。

 散らばった衣服に、様々な種類の音符の描かれた楽譜。いくら豪華な装飾品で着飾ったタンスやベッドがあっても、それらのせいですべてが台無しになっている。そんな感じだ。

 そして、その部屋の主は、確かにそこにいた。

 窓のそば、開け切った外開きのバルコニーから入る風でカーテンが揺れる。それを背景にしてまるで取り憑かれたかのようにピアノを弾く男。間違いなく、須王環その男だ。

 彼は、親友である鏡夜が部屋に入ってきたことも気が付くことがないかのようにピアノを弾き続ける。まるで、それが使命であるかのように。そうしなければ、生きられない身体になってしまったかの、ように。

 

「鏡夜?」

「……」

 

 彼が入室して、十数分の時間が経った頃、ようやく彼は、鏡夜が自室に来ていたという事に気が付いた。

 環は、やはり、ゾンビのようにふらついている様子で、鏡夜に近づくという。

 

「どうした? 桜蘭は確か、今日休みじゃなかっただろ?」

「それはお前にも言えることだ、環」

 

 というと、鏡夜は一度眼鏡を持ち上げた。

 そう、本来この日は国民の祝日や、創立記念日などの学校行事と一切かぶっていない普通の日。すなわち、彼らは学校に行っていなければならない日であったのだ。

 とはいえ、環自身はあの日以来一週間以上に渡って学校に来たことはないのだが。

 

「藤岡家の前での籠城を辞めたと思ったら、今度はピアノか? いい身分だな」

 

 と、皮肉めいた言葉を投げかけた鏡夜。しかし、環はうっすらと笑みを浮かべるだけでそれ以上のアクションを起こそうとしなかった。

 まさしく、案山子が魂を持った直後、と言ったところか。

 

「それ以上話がないなら帰ってくれ……俺は、やらなければならないことがあるんだ……」

 

 と、環はまるで鏡夜の話がなかったことであるかのようにふるまって、再びピアノの世界に没頭しようとしていた。

 

「岩沢雅美」

「ッ!」

 

 その時だった。鏡夜が、彼女の名前を呟いたのは。

 

「何故、その名前を……」

「悪いが、お前が退院した後もこっそりとその行動を監視させていた。また、馬鹿な行動を起こされても困るからな」

 

 この、鏡夜が言った馬鹿な行動というのは、先の藤岡家の前で座りこみをしていたことに関してか、それとも、その前の、ハルヒのナーヴギアを外しに行こうとした件か。

 もっとも、後者に関しては、自分の記憶にはないのだし、その危険性を知った今となっては、そんな気、起こす気力もないのだが。

 

「彼女についていろいろと個人的に調べさせてもらった」

「ッ!」

「岩沢雅美十七歳。都内の普通の公立校に通っている女子生徒。ごく普通の一般家庭に育ち、父親も三流企業、いや、それ以下といってもいいブラック企業の会社員。現在は、両親ともに児童虐待の疑いで警察に身柄を拘束中……家庭ではかなりの貧困生活を送っていたようだな」

 

 まるで機械のようにタブレット端末を見るだけの鏡夜の胸倉をつかんだ環。その姿は、まるで先ほどまでとは別人であるかのように猛々しく、そしてまた別の怒りに満ち溢れている表情をしていた。

 

「何故彼女のことを調べた!」

「その日からだ」

「ッ!」

「お前が、ピアノに没頭するようになったのは」

「……」

 

 その言葉を聞いた瞬間、環は再び力なくその手を下におろすだけだった。

 そうだ。確かにそうだ。

 少し前までは趣味のように時折弾いていたピアノ。それを、ほぼ毎日、何時間も弾き始めるようになったのは、確かにその日からであっている。

 多分、鏡夜はそのことがとても気になったのだろう。

 彼の探索能力というか、洞察力という物はとても鋭いものがあるというのは、元々知っていたこと。おそらく、岩沢の家庭環境に関しても、自分のプライベートポリス辺りを使って調べさせたのだろう。

 

「音楽が、全てを忘れさせてくれる」

「……」

「そう、彼女は言っていたんだ」

 

 あの後、特別室の前から解散した後に岩沢本人と話したときに出て来た言葉。それを彼は反復するように言いながら、ピアノの鍵盤を一つ、鳴らす。♩ボーン♩という、悲し気な音が、鳴り響いた。

 

「だから、俺も音楽を奏で続けることによって、悲しみを紛らわそうとした。けど、やっぱり駄目だな……」

 

♪♪ダァーン!♪♪

 環は、ピアノの鍵盤の鳴らすことができる、自分の手が届く場所まで、ありったけの力を込めて叩いた。

 

「たとえどれだけ曲を奏でようとも、自分の罪から逃れることなんてできはしないんだ! 俺が、皆を地獄に引きずり込んだことに、変わりはない……」

「それは、中野梓か?」

「ッ、彼女のことも調べていたのか……」

「あぁ……」

 

 というと、鏡夜はタブレットを自分からやや距離があったベッドの上に放り投げた。

 そして、ずかずかと環に歩み寄ると、今度は鏡夜の方が、環の胸倉をつかんで言う。

 

「はっきりと言ってやる。今のお前はただ彼女たちの境遇を真似して、自分を卑下にしようとしているただの偽善者だ!」

「ッ……」

 

 薄々は気が付いていた。

 確かに、自分は彼女たちの思いを、そして考えを聞いてそれに同情し、哀れみ、憐れんだ自分にひどくイラついた。

 もしかしたら、どこか既視感のような物でも感じていたのだろうか。岩沢に、ハルヒの面影でも感じていたのだろうか。

 恵まれない家庭環境、という言葉だけで、彼女たちが同類であるとでも感じていたのだろうか。

 そんな彼女に、自分は魅入られてしまった、いや取り込まれてしまったのかもしれない。

 梓だってそう。そしてそれはある種ではシノにも言えることだ。

 彼女たちは自分と同じ、友を地獄に送ってしまった罪を抱えて生きる者たち。それを見てしまって、自分の罪の重さを再認識してしまった。やはり、自分の犯した罪は罪なのだと、自覚してしまった。

 決して、償いきることができない罪であるのだと。

 そんな罪人の弾くピアノには、一円の価値もない。誰の心にも響くことはない。

 環はまさしく、虚無を弾き続けていたのだ。絶望という言葉を背負い込んだ、虚無の曲を。

 

「なら、教えてくれ鏡夜……」

「……」

 

 環は、鏡夜の手を胸倉から離しながら言った。その目は瞳孔が開いてるかのように大きく、そしてプルプルと震えていた。

 

「俺は、どうすればいいんだ? 教えてくれ、鏡夜……俺は、彼女たちに何をしてやればいい……」

 

 その姿は、あまりにも惨めだった。少し前の彼だったら考えられないような変化。いや、それほどまでに彼にとって悲劇的な出来事が連続して起こった、それが彼にとっての不幸だったのだろう。

 鏡夜は、環の手を振り払うと踵を返して言った。

 

「気にするな。俺から言えることは、ただそれだけだ」

「……」

 

 それだけを言った鏡夜は、一度も振り返ることもなく部屋から出て行ってしまった。

 気にするな、か。それができればどれほど―――。

 

「楽なんだろうな……」

 

♪♪ダァーン!!♪♪

 悲しみの協奏曲は、まだ。

 続く。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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