SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ外伝 第二章 第22話

 エレベーターの中自体が明るいからだろうか、それとも息苦しさのようなものを感じないからか。地下に降りているという実感がまるで湧かない。

 はたまた、そんなもの感じる暇がないほどに自分の心がざわついているからか。小夜は、胸に一度手を当てて深呼吸をした。

 

「大丈夫ですか、小夜さん」

「えぇ、ありがとう、明日那さん」

 

 と、小夜は目の前に立つ明日那に言った。

 明日那は、それを聞くとやんわりと笑い。

 

「もうすぐ着きますから」

 

 とだけ言うと、また前の方を向いた。

 そう、今は落ち着くのだ。心の平穏を保たなければならない。小夜は、自分で自分に言い聞かせていた。

 小夜の周りには、病院の前で再会した瀬奈や美希、そしてなつめがいた。ここに、己と明日那を合わせて合計五人。それだけの人数が入っても十分なほどの広さのエレベーター。しかし、その程度のことで驚くような小夜ではない。

 病院のエレベーターというものは、患者を運ぶストレッチャーを入れるために基本的に広く設計されている。自分の勤めている病院がそうなのだから、この病院だってそうなのだ。

 しかし、これから自分たちが向かう先は普通の病院には決して存在していない場所。本来なら立ち入りも禁止されているようなこの聖都大爆附属病院の中枢部に向かっているのだ。

 ハッキリ言えば、その場所。その病棟がどのような場所であるのかと、そんな期待もあった。けど、それ以上に今は、そこにいるあの子と、友達の方が心配だった。

 それが今、彼女の心の大半を支配していたと言ってもいいだろう。

 突然の出来事だった。充瑠たちの面会のために受付に赴いた自分たち。だが、いつもはすんなりと通してくれる特別室に、今回は向かうことも許されなかった。

 病院の前にあったパトカーといい、その対応といい、何かが特別室で起こったのだと想起させるには十分過ぎるほどの要素が詰まっていた。

 いったい何があったのか、そう受付の女性に聞こうとしたその時、現れたのが明日那であった。

 そして、明日那からすべての事情を聞いた小夜達はすぐ、彼女達に会いたいと申し出た。

 すると、あっさりと了承した明日那にこのエレベーターまで案内された。そして、まるでゲームのコマンド入力のように階数ボタンを押すと、エレベーターは地下に降り始める。深い深い、地下へ。

 そして電光パネルの表示が階数表示から二文字のアルファベットに変化した。

 ≪CR≫、電脳救命センターの頭文字へと。

 

「うわっと、え? 後ろから?」

 

 と、突然背後の壁が開いた瀬奈。そこに背中をくっつけていた彼女は突如として消失した壁に驚きながらも、しかし持ち前の身体能力でその身を持ち直した。

 小夜にとっても、このように出口が二つあるエレベーターを見るのは初めてではない。これまた彼女の病院にもあるようなもので、通常時患者やその家族が使用して病棟へとつながる扉と、バックヤード、つまり自分たち職員の職場へとつながる出口の二つあるのだ。

 今回、バックヤードもバックヤード、病院関係者でもその場所への行き方すらも知らないような場所。彼女たちは、ついにそこに降り立った。

 エレベーターを降りた先で、まず彼女たちを出迎えるのは、コンクリートで囲まれた壁である。とても硬そうな鉄筋コンクリートで、きっとちょっとやそっとの衝撃じゃ壊されることはないのだろうと思えるほど分厚い。

 それだけ見ると、少し違うかもしれないが洞窟のような雰囲気を醸し出しているにすぎないのだが、問題はその先にある。

 コンクリートの壁とは不釣り合いなほどに近代的、いや、未来的なドアが一つ。

 明日那は、そのドアの前の壁に埋め込まれている電子パネルを操作し始める。どうやら、セキリュティを高めるためのパスワードがあるようだ。

 しばらくして、自動ドアが開いた。

 その先に見えるのは、これまたドアである。この先に、CRに置いてある唯一のベッドがあるそうだ。しかし、こと今回はその場所に行く必要なんてない。本題は、左手に見える螺旋階段の上にある。

 明日那に先導され、青い螺旋階段をゆっくりと、滑らないように昇っていく小夜たち。一回転分くらい昇っただろうか。彼女たちは、ついにその場所に、CRの中枢部に辿り着いたのだ。

 

「ここが、CR……」

 

 小夜は、少しだけ感動を覚えてしまう。自分たち医師も噂程度には聞いていたが、まさか本当にこんな病棟が実在しているなんて。

 電脳救命センター、通称CR、についてはもはや何度も説明したことであるためこれ以上いう事はない。その特異性や、役割については周知の物であるとして、話を小夜の視点で進める。

 はっきり言って、CRの全貌という物は、彼女の半分予想通りであり、半分予想外の物だった。

 まず、CRの中にはいかにも最新式ともおもわれるパソコンが多く並んでいて、それら自体は最先端を地でいくようなスタッフルームであると言える。

 でも、その端っこに置いてあるものが異常だった。そこには、よくゲームセンターに置いていあるようなアーケードゲームの媒体が置かれていて、中では、ゲームのデモ画面が流れ続けていた―その様子を見る限りでは、どうやらリズムゲームであるようだ―。でも、なぜこのようなところにそんなものが。

 いや、そういえば聞いたことがある。バグスターウイルス感染症は、通称ゲーム病と呼ばれているのだと。ということは、それに関連したゲーム媒体であるのだろうか。この辺りは、後で聞いておいた方がいい。

 今は、そんなアーケードゲームや、壁に設置している小窓の件よりももっと大事なことがあるのだ。

 

「梓ちゃん!」

「小夜さん……」

 

 と、部屋の真ん中の机の周りにいくつか置かれていた椅子。そこに座っていた、顔を両掌で覆っていた少女。中野梓に声をかけた小夜。

 梓の顔に、小夜は顔には出さないもののおっかなびっくりと言った感じだ。とても、ひどい顔つき。泣き腫らした目に、老婆のようにしわくちゃな唇。一体彼女がどれほど泣いたものかというのが想像するのも酷な程だ。

 

「こんなひどい顔になって……」

 

 吐息混じりに小夜は、梓の顔に触れながら言った。梓はそれに対して、小夜の手に触れながら言う。

 

「私のことはいいんです。でも、純や、先輩が……」

「え?」

 

 と言って、彼女が目線を向けた先。そこには、やはり暗い顔をした二人の女の子の姿。梓が言うには、一方のメガネをかけた女の子は、和といい、彼女の通っている桜ヶ丘高校の生徒会長、もう一人の女の子、純は梓の友達の一人であり、やはり彼女の友達の一人である憂とも親交があったそうだ。

 

「そっか、貴方たちは確か……」

 

 と、なつめが思い出したように言った。

 受付で、明日那に聞いた話によると、今回特別室で亡くなったのは、憂と同室にいた中年の男性だったという。そのため、彼女や軽音部の人間たちのお見舞いに来ていた二人は、その男性が亡くなる直前の姿を目に焼き付けてしまっていた。

 特別室の仕様上、お見舞いに来た人間たちが―考えたくないことだが―万が一プレイヤーが死亡する姿を見てしまわないようにと、ナーヴギアがプレイヤーの脳を破壊する直前に曇りガラス状になって中が見えないようになる。

 しかし、その機能は万全ではない。ゲームの世界でどのようなことが起こっているのかわからない関係で、その機能が働くのは、主にナーヴギアの暴走が確認され、特別室を監視しているAIが認識してからになってしまう。故に、それまでの間、少しの間だけとはいえ彼女たちは見てしまっていたのだ。

 人間の頭が、焼かれていく瞬間というものを。例え、それが自分たちとは関係のない、人間だったとはいえ。それでも彼女たちは見てしまった。自分たちの知り合いと同じ状況に陥っている人間の死を。

 

「……」

「……」

 

 二人は、言葉も出すことができなかった。初めて見たから。人が死ぬという姿を。

 いや、あんなもの、人の死に方じゃない。人が死ぬというのは、もっとこう、とても静かなものであると思っていた。

 でも、違っていた。

 彼女たちは見ていた。

 ナーヴギアが突然異常な発光をし始めたのを。その時は、いったいなんなのか分からなかった。ただ、それまでにはなかったような異様な発光に対し、まるで街灯に集まる蛾のように注視してしまった彼女たち。

 だから二人は見てしまった。見るはずがなかった、悪夢のような光景を。人の頭が、まるで内部から焼かれているように膨張し、口から薄ら白い煙を吐き出し始めている。意識がないはずのその手足が痙攣を初めて、激しく動いていく様は、あたかも地獄の業火に焼かれる罪人のようで、見ていていい気分がするはずがなかった。

 それからすぐ、特別室のガラスが曇って中は見えなくなった。けど、多分、二度とあの光景を忘れることはないだろう。

 あれが、人間の死。認識してしまった彼女たちは、恐怖するしかなかった。自分の友達が、親友が、仲間が、あのように死んでいくかもしれない。そんな恐怖。

 今までは、頭の片隅くらいに置かれていた恐ろしい光景が、実際の光景を見た瞬間に頭の中に固定されて、男性の顔が彼女たちの顔に変わってしまう。

 もし、ゲームの中で死んでしまえば、彼女たちもあの男性のようになってしまうかもしれない。

 そんな恐怖が一度浮かんでは、もう二度と振り払うことのできない悪夢へと変わり果ててしまう。

 彼女たちはまさに、絶望の一歩手前にいた。

 小夜たちは、そんな彼女たちをただ慰めることしかできなかった。

 ただ、それぐらいしか彼女たちを救う方法を持たない。そんな自分たちを恨むしかなかった。

 こうして無防備に過ぎていく一日という時間。

 この時には、夢にも思わなかっただろう。

 まさか、その一日が終わった後に、このか弱き少女が大事件を起こってしまうなんて。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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