SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
花家大我は、ゲーム病専門の開業医だ。
とはいえ、最近はワクチンの開発が進んだことによって、ゲーム病自体を起こす人間も少なくなった。発症しても、すぐにワクチンを打てばその効果が眼に見えて分かるほどに良くなるし、彼の仕事と言えば、主治医として西馬ニコの風邪のような軽い病を見ることくらいになっていた。
何年か前までは、まるで専門の看護師であると言わんばかりに大我の経営している小さな個人病院に押しかけてきていたニコ。だがここ数年は彼女自身のゲーマーとしての才能から海外のプロeスポーツの大会に出場することが多くなり、その拠点をアメリカへと移していた。
故、ただの風邪を引いただけで海外に呼び寄せられるこっちの身にもなってほしいと、時折大我は愚痴をこぼしていた。
しかし、そんな日常ですらも、今考えれば可愛い物だったと思ってしまう。それほどまでに、かの事件の影響力に花家自身も恐怖していたと言っていい。
あの日も、自分は別の病院から紹介されたゲーム病の患者に、ワクチンを注射し、暇な一日を過ごしていた。今頃アイツも、世間で話題になっているSAOをプレイしている頃だろうかと、呑気にコーヒーを淹れて飲もうとした時だった。
ニュースが、彼の耳に飛び込んできたのは。
その瞬間、大我はカップを真っ逆様におっことしてしまった。その刹那、一瞬だけ広がった花弁のようなコーヒーの波紋を、彼は一生忘れることはできないだろう。
あの日、自分の片割れと言っても過言ではないニコがSAOの世界に旅立ってから二週間と数日。まさか、目の前でSAOプレイヤーの死を目撃することになるなんて、夢にも思っていなかった大我は、病室内の清掃が終わり、封鎖が解かれた特別室の前で、ニコの顔を見続けていた。
「おい、このまま寝続けているつもりか? さっさと起きろ」
大我は、そう、彼女の向けて声をかけた。
声が届かないなんてこと、重々承知だ。しかし、それでも彼は言葉を投げかけずにはいられなかった。理由は、大我自身にも分からなかった。
「なぁにナーバスになってんのかねぇ? 花家センセ」
「レーザーか……」
と、その時だ。報告書を書き終えた九条貴利矢が現れた。
花家大我、彼は、ゲーム病専門の開業医だ。しかし、それと同時に仮面ライダースナイプとしてゲーム病の治療にあたっているドクターでもある。
しかし、彼の場合はかなり過激な性格で、他の仮面ライダーから変身アイテムを奪おうとするなどの身勝手な行動が多く、そのためほかの仮面ライダーと幾度となく争いを起こしていた。無論、仮面ライダーレーザーである九条貴利矢とも、幾度となく戦った経験がある。そんな彼とも、現在では彼から軽口を叩かれるくらいの関係になっていた。
いや、彼が軽口を叩くのはほぼ全員に対してといってもいいのだが。ともかく、である。貴利矢は、大我の肩に手を回し、その口を耳元に近づけると言った。
「もしかして、SAOプレイヤーが死ぬ姿をみてビビってんのか?」
「バカを言うな。俺も医者だ。アレよりも酷い死に方をする人間なんて腐るほど見てきた……」
と、貴利矢の手を払いのけながら彼はさらに呟いた。
「遺体さえも残らない死に方も……な」
「……」
遺体さえ残らない死に方。それはまさに、ゲーム病に罹患した患者が最終的に辿る道に他ならない。
ゲーム病自体は、最初は普通の風邪のように熱や体の怠さといった極微小な症状しかもたらさない。が、それが重病化していくと、次第に自身の体が薄くなっていき、最後には完全に姿を失う。
今では、ゲーム病による死はないという考え方になっている。身体が消え去ってしまうのも、死んだように見えるだけだという考え方が、ドクターたちの一般的な考えになり始めつつある。
だが、死という概念に抵触することに変わりはない。その死んだように見える人間が蘇るまで、世間一般では死んだままの扱いにされてしまうことには変わりはない。
大我は、かつて、ゲーム病によって親友と言っても良い人間を失った過去を持つ。そして、ゲーム病によってニコを失いかけたことも。
その時の絶望や悲しみは、察して余ることはない程にある。故に、彼は再び同じことが起こることを恐れているのだ。
大切な存在を失う。その可能性を。
「遺体が残っていれば御の字、ねぇ」
「別にそこまではいってねぇだろ」
「あ、そうそう。センセに、耳寄りな情報を二つ持ってきたんだけど、聞いとく?」
「耳よりな情報?」
ある意味、それこそ先ほど耳に口もとを寄せた時に話したほうがよかったのではと思った大我だが、しかし彼は黙ってその話を聞くことにした。
「実は―――」
「……なに?」
その情報は、花家の顔色を変えるのに十分すぎるほどの力を持っていた。
「確かなのか?」
「刑事さんたちの勘によればね。もう一つ……最近、バグスターウイルスワクチンに対して抗体を持ったウイルスが生まれ始めてる」
「……」
その言葉に、大我は驚くことはなかった。なぜなら、それも当たり前なことであると考えていたから。
そもそも病との戦いというものは永遠に終わりのないものである。ある凶悪な病気に対して、どれほど有効な薬ができたとしても、いずれはその薬に対抗したウイルスが産まれるということはある種必然的なこと。
ウイルスだって、≪生きている≫のだ。人間がそうであるように、彼らもまた自分自身が生き残るために自分たちの力を蓄え、そして自分に対して害ある存在に備えるための行動をする。それが、ウイルスの突然変異。
しかし、前述した通り大我はそれを当たり前のことだと思っていたし、それにバグスターウイルスに関しての治療法は完璧と言っていいものが存在していた。
「もしワクチンに対抗したウイルスが生まれたとしても、俺が全部倒せばいいだけだ」
そう、自分が仮面ライダーに変身することによってバグスターどもを倒せばいいだけ。そう、大我は考えていた。
「けど、ワクチンに耐性をもったバグスターは、間違いなく強い。永夢を欠いてる俺たちドクターが、いつまで戦い続けられるかな?」
と、貴利矢はいう。彼の言葉も最もだ。現在のところ、ゲーム病に対抗する力を持ったドクターの中でも、一番強力な力を持った人間、それは宝生永夢であるといっても過言ではない。
それは、彼自身のゲーム攻略テクニックに依存するものだけじゃない。現状彼だけが変身することができる、文字通り無敵の力を持った仮面ライダーエグゼイドムテキゲーマー、それに彼自身の言葉が現実の物となるチート級のノベルゲーマーレベルXといった力。ゲーム病の始まりと言ってもいい人間が持つ力。
しかし、その力を持った人間が、現在ニコと同じくSAOの世界に閉じ込められている。彼を欠いた状態の自分達が、一体いつまでワクチンに対して耐性を持ったバグスターたちに対抗できるかどうか、わかったものではない。
だが。
「それでもやってやる。目覚めたアイツに、馬鹿にされるのだけは嫌だからな」
といって、大我はニコの顔を見た。もし今弱気な自分を彼女に見せたりなんてしたら、一体どれほど癪に障る言葉を投げかけられることか、想像するのも腹立たしくなる。
だから彼は戦うのだ。怒られるのが嫌だから? 違う。己がドクターである限り、戦い続ける義務があるのだ。それが、自分がゲーム病に対抗できる力を持った使命であるのだから。
「フッ、で。どうするのセンセは?」
「どうするって、何がだ?」
「例の話。刑事さんたちは、今夜中にも動くかもって予想してるけど?」
「……」
大我の答えは、もちろん決まっていた。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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ヴァルキリーズfeatボーイ
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プロジェクトSAO
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アルティメットカオス
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無への逃走
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肯定あるいは否定
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フィクションスターズ
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〜いろんな著作物から以降はいらない
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タイトルはそのままでいい