SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ外伝 第二章 第28話

「うぅあぁッ!」

「これは……」

「もしかして!?」

 

 突如として中野梓に起こった異変。

 うずくまった少女は、息が荒く、そもそも座っていること自体も側から見ればしんどそうに見えている。

 いや、もっと彼女の異変が察知できる兆候がある。それは、身体に走るノイズだ。その名前の通りに、少女の体のいたるところで、まるで古いテレビの映像に入るような数瞬の空白が、その身体を襲うのだ。

 普通の人間であれば、この様子に戸惑うだけであろう。しかし、とある人間達にとってはこの光景は、よく見知った光景の一つであった。

 互いに顔を見合わせた明日那と飛彩は、梓に駆け寄ると、すぐさま聴診器型の機械≪ゲームスコープ≫のベル面を彼女の方に向けた。

 すると、その目の前にホログラムで形作られたような画面が出現し、そこに、音符の形をした金色の何かが見える。

 

「やはりゲーム病か!」

「しかもこれって、ドレミファビートの!」

 

 ドレミファビート。その言葉を、どこかできいた読者もいるかもしれない。

 そう、ドレミファビートとは、現在ここにいる仮野明日那の本来の姿であるポッピーピポパポと同じ種類のバグスターなのだ。

 つまり、ドレミファビートのバグスターはすでに彼らの勝手知ったるところであり、ソレに関する抗体、ワクチンはすでに作られてはいる。

 だが、そのワクチンを使うわけにはいかなかった。

 

「すでにここまで症状が顕著になっていると、ワクチンでの対処は不可能だな」

「うん……」

 

 そう、本来ゲーム病のワクチンは、初期症状の際に、厳密に言えば、倦怠感や発熱が発生した時に処置してこそ、その効果を発揮することができる。

 つまり、このように患者自身の身体にノイズが走る、ゲーム病の発症状態に陥っている時に使用しても意味がないのだ。

 いや、そもそも彼女はすでにワクチンの適応外ではあったのだが。

 ともかく、である。

 

「では……」

「あぁ、ここで切除する」

 

 と言って、飛彩。そして、大我の二人はどこからともなくゲーマドライバーを取り出すと、腰に装着した。

 その瞬間である。

 

「ツッッ! うあぁぁぁぁ!!!」

 

 梓は、頭に激痛を感じた。そして、ソレと同時に現れる茶色い塊。間違いない。バグスターウイルスの発症時の症状の第一段階、バグスターユニオンと呼ばれる怪人が生まれようとしているのだ。

 早く対処しなければ。その大きさからして、この小さな部屋で戦闘なんてすれば、上の階で眠っている一般の患者にも迷惑となってしまうだろう。

 

「腕は鈍っていないだろうな、開業医」

≪タドルクエスト!≫

「誰に言ってやがる、ブレイブ」

≪バン! バン! シューティング!!≫

 

 二人が互いに憎まれ口を叩きながら、それぞれのガシャット、≪タドルクエスト≫と≪バンバンシューティング≫を起動させた。

 すると、その背後にそれぞれライダーガシャットの要素が混じった≪TADDLE QUEST≫≪BANG BANG SHOOTING≫という文字がホログラムモニタとして現れた。

 そして―――。

 

「「変身!」」

 

 二人は、同時にそれぞれのライダーガシャットを、左側の差し込み口に装填する。

 

≪≪ガシャット!!≫≫

 

 すると、二人の周辺に複数の小窓のようなもの、ライダーの顔らしきものが描かれた小窓が現れ、飛彩はその中から青い騎士を、大我は片方の目が髪を模した何かによって防がれた顔を選んだ。

 そう、仮面ライダーブレイブ、そして仮面ライダースナイプである。そして、その小窓から漏れた光が二人を包んだ瞬間だった。

 

≪≪レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! ワッチャネーム!? アイム ア カメンライダー!≫≫

 

 飛彩と大我がいた場所に、二体の、二頭身の戦士が現れる。『仮面ライダーブレイブ レベル1』と『仮面ライダースナイプ レベル1』である。

 

≪ステージセレクト!≫

 

 ブレイブは、さらに、ゲーマドライバーの左側に付属しているスイッチを一度、押した。

 すると、それまで真っ白な部屋だったはずの空間が一変して、だだっ広い荒野が広がるだけの世界に移り変わる。

 これもまた、ホログラム装置が作り出した幻想なのだろうか。いや、違う。彼らは本当に移動したのだ。自分達が自由に戦うことができる場所へと。

 ゲーマドライバーに付属するスイッチ、キメワザスロットホルダーにはいくつかの機能が存在する。その中の一つが、ライダーとバグスターを別の場所に転送するシステムであるのだ。

 時に、バグスターのような怪物と戦うのにはあまりにも支障が多い、先ほどまでのような狭い部屋でゲーム病が発症することがままある。

 その場合において、使用されることがある機能が、ステージセレクト機能であるのだ。今回は彼らドクターライダーだけではなく、泊たち刑事も一緒についてきているようであるが。

 その時、梓の姿形が完全に変化した。バグスターユニオンが、その実態をついに表したのだ。まるで、鳥とゴーレムを合わせたかのような茶色の怪物は、あたかもゲーム世界から飛び出してきたかのような、何処かこの世のものとは思えない雰囲気を醸し出していた。

 その怪物を前にして、二人のライダーはそれぞれに言う。

 

「これより、バグスター切除手術を開始する」

「ミッション、開始だ!」

 

 ブレイブはガシャコンソードと呼ばれる剣を、スナイプは、ガシャコンマグナムと呼ばれる銃を手にし、バグスターユニオンに突撃していった。

 一方、一緒についてきた形になった小夜たちは、明日那に促されて、岩場の影にその身を隠すことになる。

 小夜は、物陰から戦いに走った二人の姿を見ると、腕に装着してるキラメイチェンジャーに触れながら、明日那に言う。

 

「明日那さん、私も戦います!」

「ソレはダメ! バグスターウイルス感染症は、ゲーマドライバーで変身した仮面ライダーじゃないとオペはできないの!」

 

 ゲーマドライバーによる変身、ソレによるバグスターとの戦いは、いわゆる医療行為。ブレイブが先ほど言った通りに、ウイルスを切除するための手術であるのだ。

 専門のライセンスを持った人間と、ウイルスに適応した人間でなければバグスターウイルスを切除することはできず、ソレ以外の人間がバグスターと戦っても無意味なこと。スーパードクターたる小夜が知らないはずなかった。けど。

 小夜は歯痒かった。梓の心が壊れていく様を間近で見て、彼女≪達≫のことを救いたいと願っていたのは自分であるのに、その自分が今何もできないでいるなんて。

 しかし、今戦っている、いや手術をしている二人の医者はゲーム病という病と何年にもわたって戦ってきた専門医。彼らのことを信じなくてどうすると言うのだ。

 そう今自分ができる最善の手は、見守っていくこと。ただ、それだけだ。

 

≪HIT!≫

≪HIT!≫

 

 そうこうしている間にも、戦いはすでに佳境に入りかけていた。いくら変身して戦う回数が少なくなったとはいえ、彼らは歴戦の戦士、いや専門医。バグスターユニオン程度に遅れをとるわけにはいかないのだ。

 

「決めるぞ!」

「いわれなくとも!」

 

 と、言いながらブレイブは手に持ったガシャコンソードに炎を纏わせ、スナイプはガシャコンマグナムに付属している『Bボタン』を押した。

 そして―――。

 

「はぁぁぁぁ!!!」

 

 スナイプのガシャコンマグナムによる連射、連射、連射。

 

≪HIT!≫

≪HIT!≫

≪HIT!≫

 

 ソレに怯んだバグスターユニオンに、ブレイブは近づき。

 

「ハァァァァ!!!」

 

 一刀両断その茶色の身体を真っ二つにした。

 

≪PERFECT!!≫

 

 その瞬間苦しみ、悶えながら消え去ろうとするバグスターユニオン。ブレイブは、真っ二つにしたその勢いでバグスターユニオンの中に飛び込み、一人の女の子、中野梓をその手にお姫様抱っこの形で抱えて、地面に降り立った。

 

「勝ったの?」

 

 霧子の、風にかき消されるような声が流れた。意外と呆気ないものだったようなきもする。だが、中野梓は救え、バグスターウイルスも倒した。これで万事解決。あとは梓の処遇に関しての諸々の手配に入ればいいだけだ。

 そう、楽観的に考えていた。

 

「いえ、まだです」

「え?」

「ですよね、明日那さん」

 

 と、小夜が隣で険しい顔をしていた明日那に問うた。そう、小夜は確かにバグスターウイルスに対処するための特別な免許を持っていない。しかし、その治療法や手術内容に関してはすでに把握済みだった。

 ゆえに、彼女は知っていたのだ。コレがまだ、バグスターウイルス切除手術の途中であるのだと。

 明日那は、小夜の言葉に対し、無言でうなづくだけであった。

 

「おいブレイブ」

「なんだ?」

 

 仮面ライダーブレイブ、そしてスナイプの二人は、とりあえず梓を戦闘の中心部から離れた位置に寝かし、明日那や小夜たちが駆けつけようとしている姿を横目に見ながら、目の前で人の形になりかけているバグスターユニオンを見ながら話を続ける。

 

「気をつけろ」

「何度もいうな。俺が手術ミスをするとでも思っているのか?」

「そうじゃねぇ、俺の予想が正しければあのバグスターは……」

「ん?」

 

 そして、ドレミファビートのバグスターが地面に降り立ったその瞬間である。

 

≪うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!≫

 

 大地を震動させるような叫び声が、鳴り響いた。

 それは、あたかも地球の雄叫び、鼓動のように、遠くにいる獣を叩き起こすかのような勢いで。

 地球もまた、一瞬悲鳴を上げた。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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