SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
CRに帰ってきた飛彩、そして大我は包帯で身体中を巻かれ、椅子の上で項垂れていた。
結果から見れば、惨敗だった。
確かに、バグスターユニオン自体は中野梓から切除し、彼女とバグスターウイルスを分離させることには成功した。
だが、その後に現れたバグスターを相手に、自分達はなすすべもなく敗北を喫した。
文字通り、何もすることができなかった。バグスターの攻撃は愚か、戦闘員にすぎないバグスターウイルスにダメージ一つ与えることができないままに、バグスターには逃げられてしまった。
不幸中の幸いなのかもしれないが、自分達が負った怪我は軽傷と言って差し支えのない、少し休めばまた戦いに出ることは可能であろう。
しかし、自分達に休んでいる暇はない。なぜなら、時間がないからだ。
「いま、梓さんの両親を送ってきたよ」
「そうか……」
と、CRに入ってきたのは明日那、いや今はバグスターの姿をしているからポッピーピポパポと呼んでいいだろう。
現在、CRのベッドで寝かされている中野梓。昨晩の一件でバグスターウイルスに感染していることが判明したため、この病棟で要観察の必要性が出てきたため、ここで入院してもらう運びになったのだ。
ベッドの上には、彼女のバイタルサイン。体温、心拍数、血圧、SPO2と言った人間の健康状態を知るのに必要不可欠な項目が映し出されている。そして、そのどれもが通常では考えられないほどの異常値を叩き出している。理由は明白、バグスターウイルスからまだ完全に脱却していないからだ。
つい先ほど、病院に一組の男女がやってきた。梓の両親である。どうやら、音楽関係の職に就いているらしい。
彼女の病状については、怪我をしている飛彩たちに変わって院長の灰馬、そして明日那としての姿のポッピーが説明をした。当然のことであるが、かなり心配していると言うことはその後のポッピーの話を聞けばよく分かる。
とにかく、彼女がゲーム病であると言うことがわかった今、自分達にできることはただ一つ。彼女が罹患したバグスターを一刻も早く切除して、彼女の健康を取り戻すことだ。
しかし、その前に一つ。確認しておかなければならないことがある。
「開業医」
「なんだ?」
飛彩と同じく包帯を巻いた大我。あの戦闘の時、彼は気になることを言っていた。その真意を確かめたかったのだ。
「なぜあのバグスターがワクチンに抗体を持った個体だと分かった? お前も、見るのは初めてじゃないのか?」
「あ、そういえば……」
くどいように話すが、これまでワクチンの抗体を持ったバグスターが撃破されたという報告は一切ない。もしあったとすれば、いやそもそももしそんなバグスターが現れたとすればすぐさま対抗処置を考える必要があるからだ。
故に、誰もワクチンに抗体を持ったバグスターなんて見たことがなかったはず。ソレなのに、彼は一目見てそのバグスターが抗体を持った種類であることを看破していた。一体、どう言うことなのだろうか。
大我は、藪から棒に、椅子からスクッと立ち上がると、梓が眠っているベッドを見渡すことができる小窓の近くまで行き、言った。
「知ってて当然だ。アイツにワクチンを投与したのは……俺だからな」
「え?」
「何?」
そう、それは今から二週間ほど前のことだった。突如として自分の病院にやってきた少女がいた。
その少女の症状は、発熱や倦怠感など、どう見てもゲーム病としか思えない物で、事実彼女の体内にはドレミファビートのバグスターウイルスが潜伏していることが検査の結果わかった。
例え、小さな病院であったとしてもゲーム病専門医の資格を得ている花家大我は、病院で保管されているドレミファビートに対抗するワクチンを投与、効果は数時間で現れて、バグスターウイルスは彼女の体内から消えたのを確認した。ここまで書いて分かる通り、その少女こそ、中野梓だったのだ。
と、ここで飛彩は些細なことではあるがしかし、彼女達にとってはとてつもなく大事なことを思い出していた。
「二週間前……まさか、中野梓が尋ねてきた日は……」
「忘れもしねぇ、11月6日だ」
「それって……SAOのサービス開始日じゃ……」
つまり、彼女がデスゲームから逃れる原因となったのは、ゲーム病だった。
その、ある意味で彼女の人生を救ったとも言えるゲーム病が、皮肉にも彼女の体内で残存していて、今牙を向いた。おそらく、ここ数日間で彼女に与えられたストレスを原因として。
「なるほど、だからお前は中野梓のバグスターウイルスがワクチンに抗体を持った種類だと分かったのか」
「あぁ」
「でも、どうするの? あんな強いバグスター……もしかして、ゲムデウスよりも強いかも」
ポッピーの言ったゲムデウスとは、彼ら、ゲーム病と戦うドクター達にとってラスボスといっても過言ではないようなバグスターのこと。その強さはとてつもなく、数多の犠牲を払った末に倒すことができた強敵だ。最も、数多の犠牲を払ったのはたった一人であるし、おまけにその後もしばらくは生き続けていたのだが。
「今監察医が対抗策を衛生省と一緒に考え中だ。その間に、俺たちはバグスターを見つけ出す」
「うん、私も協力する!」
監察医、つまり九条貴利矢のことであり、バグスターウイルスのワクチンを作り出した功労者。彼ならば、抗体を持ったバグスターウイルスへの対抗手段の一つや二つ、浮かび上がるのではないか。そんな淡い期待を抱きながらも、しかしその間にも病状が進行している中野梓のことを指を咥えてただ見ているだけなど、医者としてできるわけがなかった。
とにもかくにも、逃げ出したバグスターの行方を追わなければ。飛彩もまた立ち上がった。
ふと、ここで大我が切り出した。
「おい、そういえばパラドクスはどうした?」
パラドクス、通称パラドとは彼らの仲間の一人であり、ポッピーピポパポと同じくバグスター、それも宝生永夢から生まれたバグスターである。
かつては、敵対関係にあり、命を軽んじていた面もあった彼であった。しかし、ある戦いによって死の恐怖を知り、それを他人にも強いていたことを知った彼は心を入れ替え、今ではCRにてともにバグスターと戦う仲間となっていた。
そのパラド、花家は最近顔を見ていないのだが、果たしてどうしたのだろうか。
「その、パラドは……」
「アイツなら行方不明だ。小児科医がSAOの世界に閉じ込められてからな」
「……」
つまり、二週間も姿を見せていないと言うことになる。
なぜ、パラドが姿を消してしまったのか。
おそらく、それを想像することは容易いことであろう。
自分の競合相手、ライバル的存在であった永夢の消失。ソレによるショックが、悲しみが大きかったのだ。
そんなもの、自分は乗り越えたと言うのに、と大我は一人呟いた。
が、それを乗り越えることができない人間がいることも確かだ。今も小窓の向こうにあるベッドで眠っている梓がそうであったように。そして、その心が壊れてしまったことから分かるように。
大切な人間が突然目の前からいなくなると言うのは、人間にとってとてつもないストレスとなってしまうのだ。
かつての自分が、そうであったように。
「へぇ、ここがCR……ゲーム病医療の最先端ってわけ」
「っ!?」
「え!?」
と、自動ドアが開き、一人の女性が現れた。
と同時に、飛彩とポッピーピポパポの二人は驚きを隠せなかった。
「なぜ貴方がここに……」
「ゲーム病……正式名称バグスターウイルス感染症、ね」
と、女性はまるで飛彩の話を聞いていないように彼女のカルテを勝手にあさると、ソレを机の上に乱暴に置き言った。
「このオペ、あたしにも手伝わせて」
前代未聞だった。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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ヴァルキリーズfeatボーイ
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プロジェクトSAO
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アルティメットカオス
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無への逃走
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肯定あるいは否定
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フィクションスターズ
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〜いろんな著作物から以降はいらない
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タイトルはそのままでいい