SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ外伝 第二章 第34話

「たく、なんで俺たちがバグスターの捜索に当てられてんだよ」

 

 と、パトカーの中で愚痴をこぼしているのは、パトカー後部座席に座っている捜査一課の刑事の一人である伊丹憲一である。

 本来であるのならば、SAO事件の主犯である茅場晶彦の捜査に赴いているはずの自分たちが、その当初の任務から外されたことが相当不満である様子だ。それ自体、彼本人の性格からすればいあり得ることだろう。だが、今回不満だったのはそれではない。

 

「まぁ、実際茅場晶彦の捜索も行き詰まってましたからね」

「それに、バグスターの捜索も、一人の人間の命に関わることです。無下になんてしていいわけありません」

 

 と、言うのは捜査一課で伊丹といつも行動を共にしている芹沢、出雲の二人。三人合わせてトリオ・ザ・捜一である。

 そして出雲の言う事も間違いじゃない。確かにSAO事件の被害者一万人よりも遥かに少ない、たった一人の人間の命なのかもしれない。しかし、命に大きいも小さいも存在しない。事件に大きいものも小さいものも存在しないと言うのと、同じように。

 故に、最初の伊丹の発言はソレを考えるとやや不謹慎な物言いである様にも思える。が、当然伊丹にもそれはわかっていたようだ。

 

「んなこと分かってんだよ! 俺が言いたいのは、こういった雑用は特命係の専売特許のはずだろ。それなのになんで俺たちが捜査に狩り出されてんだよ!」

 

 そう、これが伊丹が怒っている本当の理由なのだ。本来、こういった本命の捜査や警察官にとって雑用に等しい行為というのは、警視庁の陸の孤島である特命係の杉下右京と亀山薫の仕事であるはずなのだ。

 それなのに、今回はその逆。特命係の方が本来の仕事である茅場晶彦の捜査に駆り出され、自分たちは言わずもながの仕事を押し付けられた。それがどうにも納得できなかったのだ。

 

「まぁ、杉下警部の有能さは、大岩課長や小田切部長も知っていますし、当然と言えば当然じゃないかなと」

「亀の野郎はただの付き添いじゃねぇか! アイツくらいよこしやがれって!」

「ちょ、運転中ですって!」

 

 悪態を付きながら、運転手である芹沢に掴みかかろうとした伊丹。確かに、杉下右京は、勝手に現場にずかずかと上がり込んできたり、捜査権も持ち合わせてないのに勝手に捜査したりして、最終的には犯人を見つけ出すという有能さを持っている。ソレ自体は、伊丹もよく知っている。

 だが、相棒である亀山に関しては別だ。伊丹の悪友たる存在、亀山薫。とある県の県庁所在地を間違えたり度々事件の容疑者になったりと言った、数多くのトラブルを引き起こしてきた男。何年も海外で子供達の先生をしたりといった功績自体はあるものの、トラブルメーカー的な側面は消えていない男亀山薫。

 どうせ今回もまた、杉下右京とセットで茅場晶彦の捜査をしているのだろうが、茅場晶彦の捜査自体進展がないと言うのならば、亀山くらいはこっち方面の捜査によこしてもいいんじゃないかと言うのが、伊丹の言い分なのだ。

 

「喧嘩しないでください、とにかく今は……あ」

「あ?」

 

 呆れながら言葉をかけようとした出雲。しかし、彼女は窓の外に見えた人だかりに目を向けていた。

 伊丹もまた、怒りを忘れ、ビル街の中心部にある少し大きな公園に目を向ける。

 

「なんだありゃ?」

「気になりますね、行ってみますか?」

「それじゃ、近くの駐車場に……」

 

 とは言ったが、あいにくその公園の近くの駐車場は全部満車で、芹沢はやや離れた場所にあった駐車場にパトカーを置き、出雲、伊丹共々なかなかの距離を歩きながらその公園へと向かうことにした。

 しかし、今が冬であったため、あまり汗をかかなかったことが唯一の救いだろうか。これが夏場の暑い時期であったと考えると、それだけで冷や汗が出てきてしまう程だ。

 とにもかくにも、ようやく先ほど人だかりが出来上がっていた公園まで歩を進めた三人。

 みていると、どうやら女性の数が多いように思える。

 

「いったいなんだってんだこの騒ぎは?」

「時雨様~!」

「こっち向いてぇぇ!!」

「ん?」

 

 聞いていると、どうやら女性たちは一人の人間の名前を呼んでいるようだ。時雨、という人物のようだが、いったい何者なのか。

 とりあえず、出雲がすぐ近くにいた女性に話を聞いた。

 

「あの、なんなのこの騒ぎ?」

「知らないんですか!? 今、ドラマの撮影をしていて、俳優の押切時雨様が来ているのよ!」

「あぁ、なるほど……」

 

 と、女性の言葉を聞いてどこか納得したような出雲。確かに、ソレだったらこの人だかりも、そしてこの黄色い声援にも納得がいくと言うものだ。

 

「おい、一人納得してんじゃねぇ!」

「押切時雨って一体……」

「二人とも知らないんですか? 押切時雨は……」

 

「時雨さん、スタンバイ。お願いします」

「あぁ、分かった」

 

 といって、一人の整った顔立ちの男性が、読み込んでいた台本を机の上に置き、今の自分の相棒と言っても良いベースを手に立ち上がった。

 彼こそ、先ほど話題に出ていた俳優、押切時雨である。昨今イケメン俳優が多く輩出されている芸能界において、今最もキラメイていると言っても過言ではない若手俳優だ。

 彼は、主に時代劇を主体に活動している俳優なのだが、最近は時代劇自体テレビで放送する機会というものがなくなっているので、徐々に現代を舞台にしたドラマへの出演も増えている。

 しかし、その俳優としての押切時雨は仮の姿。その正体は、瀬奈や小夜と同じく、魔進戦隊キラメイジャーの一員、キラメイブルーであるのだ。いや、と言うよりもキラメイブルーとしての姿の方が仮の姿なのかもしれないが。

 とにかく、今から2年前まで、彼は俳優業と並行しながらも、キラメイジャーの一員として世界の平和のために戦っていた。その最中には、彼の俳優人生に影響を与えかねないような事件に巻き込まれたり、演技力が空回りした結果の珍演技を見せつけたりと色々あったのだが、当時から若手俳優の筆頭とも言われていた彼はそれから演技力を磨き続けていた。

 そして、ついには数多くのドラマの主演を勝ち取り、今は押しも押されぬ人気者の仲間入りを果たしていたのだ。

 ということで、今回の仕事は、自分がキラメイジャー時代から主演を務め、さらにはシリーズ化までされた人気作品。≪低音弁護士≫シリーズの最新作のクランクインの日なのだ。

 弁護士なのになぜベースをもっているのか、そんな疑問はさておき、自分の代表作の一つとしてしられることになった低音弁護士シリーズに再び参加することができるのは、何よりも喜ぶべきことであった。

 本来は、である。

 

「マネージャー、この後時間は空いていますか?」

 

 時雨は、現場に向かう途中でずっと自分に寄り添ってきたマネージャーにスケジュールの確認をした。しかし、マネージャーは苦しい顔をしながら。

 

「あぁ、ダメですね。この撮影が終わった後も、インタビューや次のドラマの打ち合わせが……」

「そうですか……」

 

 分かっていたことだ。今の自分には空いている時間なんてない。キラメイジャーの仲間を見舞う時間なんてないと。

 彼は、かのSAO事件によって大切な仲間を奪われていた。充瑠に為朝、そしてキラメイジャーではないが柿原というあの戦いの中で知り合った女性も。その三人が同じ病院で今も眠っていると言うことは、彼の耳にも入ってきている。彼は、そんな三人を一度でもいいから見舞いたいと心の底から思っていた。仲間だったのだから、当然だろう。

 それに、最近地球に帰ってきたキラメイジャー、キラメイブルーとしての相棒の魔進ジェッタとも会いたい。

 だが、彼が願えば願うほどに、彼らの姿は遠ざかっていく。彼が、俳優として順風満タンな人生を送ろうとしているそのすぐそばで、大切な仲間たちはその人生を奪われている。

 俳優として成功した。でも、その結果皮肉なことに、大切な仲間たちから離れていくことになるなんて。時雨は、今日何度目か分からないようなため息をついていた。

 しかし、俳優としての仕事も悪い面ばかりではない。この≪低音弁護士≫シリーズのおかげでベースの練習時間が合法的に取れているというのは幸いだった。これなら、件の日に間に合わせることができるかもしれない。

 そう、≪彼女≫を励ます、その日に。

 だが、この時の彼はまだ知らされていなかった。

 その件の少女に関わる人間が今、命の危機に晒されているなどとは。

 

「チッ、なんだよドラマの撮影かよ」

 

 一方、伊丹はわざわざ駆けつけたと言うのに、蓋を開けてみればドラマの撮影なんて自分にとって興味のないようなことがおこなわれるのだと知り、一気に興味を失ったように悪態をついていた。

 つまりなんだ、このひとだかりはその撮影を見学に来たただの野次馬という事か。なんて人騒がせな。

 

「けど、撮影なんて滅多に見れるものじゃないですよ。もう少し見学して行きますか? 痛ッ!」

 

 と、芹沢が呑気に言うものだから、伊丹は彼の頭を叩いて言う。

 

「馬鹿野郎! 俺たちにはやるべきことがあるだろ!? こんなところで油売ってる場合か!」

「は、はい……」

 

 芹沢はやや残念そうに言うが、確かに伊丹の言う通り。自分たちにはバグスターを捜索するという任務があるのだ。いつまでも遊んでいる暇なんてない。出雲も最初からドラマの見学なんてするつもりはなかったので、そそくさと退散しようとしている伊丹の後をついていこうとしていた。

 その時だ。

 彼らは痛いほどに痛感するのだった。

 

「キャァっ!」

「ッ! なんだ!!」

 

 何気ない日常というものは、壊れるときはとても脆いものであるのだと。

 突然の爆風に驚いた伊丹たちと、ドラマの撮影を見にきていた野次馬たち。

 これもまた撮影の一環なのか、一瞬だけそう考えた伊丹であったが、しかし煙の中のそれが眼中にはいった瞬間にそんなチャチなもんではないということがわかった。

 

「あれは……」

 

 彼らは、自分の悪運を呪った。まさか、こんなにも早くバグスターを見つけることができるなんて、本当に最悪な不運だ、と。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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