SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

180 / 361
メインシナリオ外伝 第二章 第36話

 一方で、バグスターが現れた現場は、騒然としていた。

 

「きゃぁぁぁ!!」

「おい押すなよ!!」

「お前が遅せぇからだろ!」

 

 野次馬は逃げ惑い、あたり一面から聞こえてくる悲鳴津々浦々は、地獄絵図であると評されてもおかしくはなかった。

 四方八方に逃げ回り、途中で転び、その転んだ人間を踏んで逃げていくものたち。もはや、この場所に常識や人間を思いやる心なんてものはない。

 あるのは、ただ、自分たちが助かりたいとだけ考えるものたちの当然の自己中であった。

 

「ッ!!」

「!」

 

 そうやって、現場から逃走しようとしている観客たち目がけ、ドラマの撮影用の機材を押し倒しながらバグスターたちは侵攻する。このままでは野次馬に被害が出るのもそう遠くないだろう。

 

「おい、止まれ!」

 

 と言って二組の間に出たのは、ドラマ撮影の警備に駆り出されていた警備員たち。公共の場での撮影ということで、地元の所轄から警備担当として呼び出されていたのだ。

 しかし、たとえ彼らが犯罪対処の≪プロ≫であったとしても、≪ウイルス≫であるバグスターに対処することなんて、できるはずもなかった。

 

「うわぁ!」

 

 警棒を抜いた男性警官。しかし、それを扱う前に≪赤い≫頭のバグスターウイルスのナイフによる攻撃が当たる。

 また、別の警察官は、警棒を振り上げて倒しにかかったものの、軽く避けられてしまい、背後に回られた≪黒≫の頭のバグスターに蹴られて遠くに置いてあった撮影小道具の入った段ボールの山に吹き飛ばされる。あたり一面に、撮影で使うはずだった金色の折り紙で作った紙吹雪が舞った。

 こうして、次々と蹂躙されていく警察官たち。その姿を見て、この男が黙っていられるわけがなかった。

 

「なんだよやられっぱなしじゃねぇか! クソ!」

「あ、先輩!」

 

 伊丹は、見てられないと言わんばかりの形相でバグスターウイルスたちの前に立った。

 だが、形成的には明らかに伊丹の方が不利。それもそのはず。今回彼らは拳銃はおろか警棒すらも持ってきていなかったのだ。

 これに関しては、拳銃は特別な許可を得なければ警視庁から持ち出すことができないということもあるが、しかしそれ以上にそもそもバグスターを相手に拳銃が効くわけがないということを伊丹たち警察が知っていたことも災いした。

 しかし、たとえ効かなかったとしても、威嚇程度には使えたのかもしれないと考えながら、だがどうせこの人口が密集している地帯。流れ弾が逃走中の一般市民に当たることを考えると、最初から使えるはずがなかったのかもしれない。

 なんにせよ、いまは目の前のバグスターを今持てる力でなんとかするだけだ。

 

「おい、こっちだ! こい!!」

 

 ということで、伊丹は、バグスターたちを観客たちがいない方へとなんとか誘導しようと自分自身が囮になる策に打って出た。

 

「ほら、どうした? 怖いのか!? あぁ!?」

 

 と、まるでヤクザかとも言わんばかりの形相と声色でバグスターたちをけしかける伊丹。

 それに反応したのかは分からないが、≪黄≫の頭のバグスター、そして≪黒と茶色がマーブル状に着色された≫頭のバグスターウイルスは伊丹の方へと誘き出される。

 

「うし、かかってこい!!」

 

 結局、その場にいるバグスターウイルスの半分も連れてくることはできなかった。しかしそれでも観客に襲い掛かろうとしていたバグスターを引き寄せられたのは良かった。そう考えて、彼は臨戦体勢を取る。

 だが、さっきも言った通り自分は丸腰。先ほど携帯で連絡してG3ユニットの出動を願い出たのだが、果たして彼らが現着するまでもつかどうか。こうなれば、大けがをするのも構いなく戦うしか。

 と、その時だった。

 

ボーン

「ん?」

 

 なにか、とても低い、何か大きな物を叩いたときのような、しかし小さな音の波が耳に聞こえてきたのは。

 伊丹が、その音が背中から聞こえてきたことに気づき振り返る。すると、そこには。

 

ボーン ボンボンボン ボン

「聞こえる聞こえる。民共の叫び声。私を助けてとの甲高い声が」

「は?」

ボッ

「ならば、拙者が助けてしんぜよう。拙者、低音侍! 江戸の街から現代にやってきた」

 

 と言いながら、押切時雨は≪弾いていたベース≫を地面に優しく下すと、腰に刺してある鞘から小道具の日本刀を抜き―何故時代劇でもないのに持っていたのだろうか―キリッ、とした顔つきで言った。

 

「今ここに、成敗いた」

「何やってんだお前は!」

「痛っ!」

 

 と、伊丹は当然のように、突如としてドラマの役風に現れた時雨の頭を叩いた。

 時雨は、叩かれた頭をさすりながら言う。

 

「いや、俺もバグスターと戦おうとしただけです。安心してください、殺陣には自身がある故」

「そうか、なら安心だなって、それはドラマの世界の話だろうが!」

 

 と、伊丹が至極真っ当なツッコミをする。時雨自身、あまりにも無茶苦茶なことをしているなとは思う。しかし、こうでしかこの戦いに参戦することは叶わなかったのだ。

 と言うのも、彼が元魔進戦隊キラメイジャーのキラメイブルーであると言うのは影としての姿。役者としての彼こそが本来の表の姿であるのだ。と言うことは以前にも話したと思う。

 が、それ故にこうして敵が目の前に現れても戦隊の人間として大々的に戦うことはできないのだ。だったら変身して正体を隠して戦えばいいのではないかと、思われるのであるがあいにくそうもいかないのが現状。

 実は彼、現在キラメイジャーに変身するためのアイテムであるキラメイチェンジャーを博多南大吉に預けてしまっているのだ。どうやら、アップデートする必要が出てきたからというのが理由なのだが、そのために変身はおろか、自分の相棒である魔進も呼べない。

 だから、こうしてドラマの登場人物になりきってバグスターたちの前に現れるという奇行を持ち要らなければ、彼が戦闘に加わることはできなかった。

 いや、そもそもして彼の性格から考えればその奇行もまた平常運転であると言ってもいいのかもしれないが。

 

「とにかく、ここは拙者も助太刀いたす!」

 

 何はともあれ、これでこの戦いに参加する大義名分は確かに取ることができた。

 

「一般人を巻き込めるわけねぇだろ! 引っ込んでろ!」

 

 わけがない。そう、伊丹にとって、と言うより警察官全般にとって自分たち以外の市井の人々は守るべき存在。そんな人間たちを危険にさらす警察官がどこにいると言うのか。

 そんな、信念を持つ全うな警察官が今ここにいるのだ。当然、時雨の行動を容認できるわけがなかった。

 しかし、時雨はそれを分かった上で言う。

 

「俺は命をかけてでもファンを守る。それが、ドラマの世界の登場人物じゃない、俳優……人間押切時雨の覚悟だ」

「……」

 

 漢は、一瞬彼の見せたその顔つきに驚きを隠せなかった。

 真に迫った表情。自分は、彼が戦おうとしているのは、ただ目立ちたがりだからとか、ファンを守ったという美談のためなのかと思っていた。

 でも違う。彼は本当に守りたいのだ。例え、自分の力が通じないと分かっていたとしても。それでも、ファンを、そして人間を守りたい。

 それは、まさしく自分の中の信念の一つと似た部分があった。

 

「たく、格好つけやがって、変なやつだな……大目にみるのは今回だけだぞ!」

「……えぇ!」

 

 こうして、伊丹刑事と押切時雨の戦いが始まった。

 

「伊丹先輩!」

「芹沢さん。今のうちに市民の誘導をしましょう」

「え、でも先輩が!」

「今は……仕方ありません」

 

 心苦しいが、自分たちは伊丹たちの手助けなんてできない。優先事項から考えて、今すぐやらなければならないことは混乱し、パニック状態に陥っている市民たちの誘導。

 それを分かっているからこそ、出雲は悔しさの中で口から心の声を絞り出さざるを得なかった。

 こうして、彼彼女たちは動く。自分たちがやるべきことを。今、自分たちにできうることを、最善のことを。それが、最善であると信じて。

 

「おら!」

 

 伊丹は、黄色の頭のバグスターの顔面に殴りかかった。

 が。

 

≪miss!≫

 

 当然、仮面ライダーですらない伊丹の攻撃は、通用することなく、バグスターウイルスはほとんど微動だにすることはなかった。

 

「ッ、硬てぇ……!」

 

 伊丹は、バグスターウイルスに殴りかかった手を振る。相当な硬さだったのだろう。手がジンジンと痛んでいて、まるで鉄でも殴ったかのようだ。

 そんな痛みに耐える伊丹に、しかしバグスターウイルスは容赦しなかった。

 

「おっと!」

 

 黄色の頭のバグスターウイルスは、手にもったナイフで伊丹を斬ろうとした。なんとか避けることができた伊丹は虚勢をはるかのごとく叫びながら蹴りを入れた。

 

「危ねぇだろ!」

 

 と。

 

≪miss!≫

 

 しかし、やはり攻撃は全く効いていない様子だ。まったく、とんだ化け物と戦うことになってしまった。伊丹はそう感じながらも、バグスターウイルスに飛び掛かっていく。

 一方こちらも黄色の頭のバグスターウイルスと戦う時雨。

 

「フッ! はっ! やぁ!」

 

 時代劇で生かした殺陣の技術を惜しげもなく使っていく。しかし、彼の持っている刀は偽物の刀、いわゆる模造刀である。それ自体は至極当然の事であるのだが、それが故に恐れていた自体が発生する。

 

≪miss!≫

≪miss!≫

「はっ! むっ!!?」

 

 そう、刀が折れてしまったのだ。挙句、伊丹のようにバグスターウイルスにダメージを与えることもできなかった。

 やはり、ゲーマドライバーで変身した仮面ライダーでなければ倒すことができないのか、自分たちは無力なのか。

 いや、そんなことはないはずだ。

 

「おのれぇ!!」

 

 時雨は、自分自身に対する怒りをも込めてバグスターウイルスに向かっていく。根本から折れ、ほとんど刀身の残されていない模造刀を振るうために。

 その瞬間だった。

 

≪HIT!≫

「なに……」

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。