SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
時雨は、目の前に現れた文字に驚愕していた。
先ほどの文字。自分の見間違いや幻覚ではないとするのなら、バグスターウイルスに攻撃が通ったと言うことになる。だが、どうしてだ。なぜ、自分の攻撃が≪黒と茶のマーブル≫の顔をもつバグスターウイルスに通じたのか。
時雨は戦いの中で考えようとする。しかし、あまりの乱戦で、そんな余裕もなかった。攻撃が当たったのもそれだけで、それ以外はバグスターウイルスは全くの無傷。
まぐれだったのか。いや、何かカラクリがあるはずだ。そう彼が思案していた時だった。
「!」
パトカーのサイレン音が聞こえ始めたのは。
そして。
「ハァッ!!」
一台の赤いバイクが、時雨と、そして伊丹の前に降り立つと、そのまま回転しながらすぐ近くにいたバグスターウイルスたちを蹴散らしていく。
≪miss!≫
≪miss!≫
≪HIT!≫
≪miss!≫
≪miss!≫
「ん!?」
だが、分かりきっていたことだが、バグスターウイルスたちを吹き飛ばすことができたとしても、その身にダメージを与えることは≪ほとんど≫できなかった。
「今のは……」
しかし、彼の耳にも聞こえていた。≪HIT!≫という、明らかにバグスターウイルスにダメージがはいった音が。
赤いバイク、仮面ライダーアクセルはバイクフォームから通常の人間形態に戻ると、時雨と伊丹に言う。
「大丈夫か?」
「お前、仮面ライダーか?」
「……そうだ」
伊丹が訝しむように聞いた。だが、それも無理はないだろう。市民が認識している仮面ライダーの中で、警察に所属しているとハッキリ分かっている仮面ライダーは、仮面ライダーG3、そして現在は変身することもできないが仮面ライダードライブである泊進ノ介を除いて他にいない。
故に、風都という小さな街で戦っている仮面ライダーアクセルという仮面ライダーの存在も、そしてその変身者が誰であるのかも、警察関係者の多くが知らぬことであるのだ。
伊丹にとって、目の前に突如として現れたバイク、そしてそのバイクから変形した仮面ライダーを信用できる要素はほとんどない。あるとするのならば、自分たちを助けてくれたという恩義だけだ。
しかし、だからといって信用しすぎると痛い目に遭ってしまう。彼は、それまでの刑事人生においてそれを痛いほどに痛感していた。だから、警戒は強めたままだった。
しかし、その警戒もある人物の登場によって弱まることになる。
「二人とも、ご無事ですか?」
「G3か!?」
現れたのは、その手に自動小銃≪GM−01 スコーピオン≫を持った仮面ライダーG3、氷川誠である。アクセルにはやや遅れてしまったが、なんとか彼もその場に到着できたようだ。
「あのバグスターウイルスは、僕達に任せて。二人は、市民の誘導を!」
「ふ、二人!?」
後に聞いた話によると、この時氷川は伊丹と一緒にいた時雨のことも刑事の一人だと思い込んでいたらしい。だが、バグスターウイルスがウヨウヨといるこの状況で、刑事と一緒に戦う一般人なんているわけないと思うのもある種無理はないと言えるのかもしれない。
「早く!」
「お、おう! いくぞ!」
「……はい」
氷川に急かされたふたりはそそくさと逃げるように立ち去り、後ろで避難誘導に尽力している出雲と芹沢に合流し、二人一緒もまた避難誘導を手伝いにかかる。
『氷川君、聞こえる?』
「小沢さん。はい、聞こえています」
と、まだかなり遠くから現場に向かっていたGトレーラーの中にいた小沢から通信が飛んできた。Gトレーラーの内部からは、G3の顔に取り付けてあるカメラやマイクなどを使って、G3、つまり氷川が実際に今見ているものをリアルタイムで見ることが可能でとなっている。
だが、それは裏を返せば氷川が見ることができなければ小沢たちも現場の様子を把握することができないと言っているのと同じこと。故に、小沢は聞いた。
『その場に、バグスター本体はいるの?』
「バグスターですか……えっと……」
といって、氷川は周囲の様子を伺った。しかし、そこにいるのは色とりどりの頭を持ったバグスターウイルスが大挙しておしよせているだけで、バグスター本体の姿は微塵も見られなかった。
「すみません、どうやらいないようです」
『そう……』
どうやら、そのバグスターウイルスたちは、バグスター本体と離れて独自の行動をとっているバグスターウイルスであるようだ。
ということは、今ここに鏡や大我が来たとしても無駄となってしまうわけだが。
「ですが、市民に被害が出るのは食い止めないと!」
「あぁ、せめて避難が完了するまで俺たちが戦う」
と、当然のように仮面ライダーG3、そして仮面ライダーアクセルが言い放った。そう。確かに今バグスターウイルス感染症の根治はできないのかもしれない。だが、それならばせめてバグスターウイルスたちを足止めしなければ。
今は、それが彼らに課せられた責務であった。
『……分かったわ。気をつけて。尾室くん。データの収集をするわよ』
『は、はい!』
「行きましょう、照井警視」
「あぁ……振り切るぜ!」
そして、二人の仮面ライダーによる戦いが始まった。
だが、それは戦いにもなっていない物だった。
「フッ、はっ!!」
アクセルが、武器であるエンジンブレードを振り回し、近くにいるバグスターウイルスに切り掛かる。
≪miss!≫
≪miss!≫
だが、当然のようにバグスターウイルスは攻撃を受け付けていない様子だ。
「くっ、これならどうだ!」
といって、彼はエンジンブレードに一つのガイアメモリを装填した。
≪エンジン≫
それは、エンジンメモリ。疑似メモリと呼ばれる種類の物で本物のガイアメモリを模して作られたものだ。だが、そのメモリの中にも戦うための力が内包されており、彼らはそれを使ってこれまでも戦ってきたのだ。
アクセルは、エンジンメモリを装填したのち、エンジンブレードに備え付けられているトリガーを三回押す。
≪スチーム≫
≪ジェット≫
≪エレクトリック≫
その瞬間、エンジンブレードの刀身に電気のエネルギーがまとわれる。そして。
「フッ! はっ! ハァァ!!」
一振り、二振り、最後に回転斬りで、その場にいたバグスターウイルスたちを全て蹴散らした。
が、やはり効果はなかった。
≪miss!≫
の文字ばかりが浮かび、何事もないように起き上がるバグスターウイルスの姿は、まるでゾンビか何かを彷彿とさせるようだ。
役目をおえたエンジンメモリが、拳銃から廃莢されるように飛び出し、それを掴んだアクセルは、再び剣を構えながら呟く
「やはり一筋縄では行かないか」
と。
一方の仮面ライダーG3。こちらもまた苦戦を強いられていた。
「ハァァァァ!!」
≪miss!≫
≪miss!≫
≪miss!≫
確かに、小銃であるスコーピオンはバグスターウイルスのその顔に全弾命中している。しかし、やはりこちらもダメージはない様子で仮面ライダーG3にゾンビのように近づいてくる。
「くっ!」
G3は、目の前まで接近したバグスターウイルスに対して攻撃をしようとした。だが、その時だった。
「ぐあぁっ!」
背後から、バグスターウイルスによる攻撃を喰らったのだ。まさか、そこまで接近されていたなんて、彼自身も想像もつかなかった。
さらに追い討ちをかけるように組みつかれていくG3。両の手を担がれるように抑えられ、みうごきが取れなくされ、そのままなすすべなく前方からきたバグスターウイルスの攻撃を受けるしかない。
「ぐあぁぁ!!」
『G3、駆動率15%低下!』
『氷川君、すぐにバグスターウイルスを引き離して!』
「ッ! は、はあぁぁ!!」
G3は、さらに追撃を加えようとするバグスターウイルスを前蹴りで引き離すと、渾身の力を込めて右手、左手を振って自分の事を押さえ込んでいたバグスターウイルスを引き離した。
そして、そのまま一度自らのバイク、ガードチェイサーに戻ると、そこに備え付けられている装備品の中の一つを取り出し、GM−01スコーピオンに接続した。
その武器の名前は≪GGー02 サラマンダー≫と呼ばれるグレネード弾を最大三発まで装填することのできる強力な武器だ。
「これなら、はぁぁぁぁ!!!」
氷川はそれを近くに市民がいないことを確認するとつかさず発射した。
凄まじい爆音と煙が、公園内を包み込む。これなら、一体くらいは倒したか。そう考えた氷川だった。
「そんな……」
しかし、そんな希望すぐに失ってしまう。煙の中から現れたのは、4種類の顔を持つバグスターウイルスだ。G3の装備の中でも特出した攻撃力を誇っている武器を使用しても倒すことができない。氷川はしかし、それでも絶望することはなかった。
「くっ!」
すぐに、サラマンダーをその場に置くと、今度は、ガードチェイサーの左後部に備え付けられている装備、≪GS−03 デストロイヤー≫を取り出し、右腕に装着する。その瞬間、その刀身が開くように現れ、あたかも彼の右腕と一体化したかのような形となった。
「来い……」
例えどれだけ絶望が降り注ごうとも、例え、どれだけの苦難の道に迷い込んだとしても、それでも戦い続けた人間。戦うことができた人間を彼は知っている。
自分の記憶が失われても、それでも誰かの居場所を守るために戦った人間を知っている。
自分の居場所を次々と失い、親しくなった人間を殺されても、それでも戦い続けた人を知っている。
彼らのようになりたい、そうあの時は何度も思った。
でも、今は違う。
今は、市民のために戦う。
今は、彼らの代わりに誰かの居場所を守る。
今は、仮面ライダーとして、決して臆することなく戦う。それが、彼の戦う理由となっていた。
ゆっくりと、しかし確実にバグスターウイルスに近づこうとしたG3。
だが、その剣閃が光ることはなかった。
「え?」
「ッ!」
突如として、バグスターウイルスが消滅したのである。ノイズと共に。まるで、ゲームキャラが倒されてしまった時のように。
先程までの混乱が嘘であるかのように静まり返った公園。その中心部にいるアクセルとG3は、突如として起こった異変に困惑していた。
「一体、何が……」
「どうやら、逃げられたみたいね」
「小沢さん……」
と、その時Gトレーラーも都合よく到着し、小沢がG3のもとにゆっくりと歩きながらそう告げた。
「でも、あれだけ向こうが優勢だったのに、どうして?」
「それは、これから解明していくことにするわ。とりあえず、今のところはお疲れ様」
「……はい」
ねぎらいの言葉。しかし、G3の中にいる氷川はその言葉に対して力なく答えるしかできなかった。
なんだか、不完全燃焼といった感じである。それは、隣にいるアクセル、照井竜も同じことだった。
どうして突然バグスターウイルスが逃げ出したのか、いや、それ以上にほとんどバグスターウイルスに対して歯が立たなかった自分たちが、これからどうするべきなのか。
Gトレーラーの車内に戻る氷川は一人、悩むのであった。
結果、この公園で突発的に発生したバグスターウイルスによる襲撃は、怪我人を出したものの死者は一人も出ずに終わった。
多くの謎という、人間への挑戦を残して。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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タイトルはそのままでいい