SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
「痛っ! もう少し加減しろぉ!」
「あ、すみません! 先輩!」
「けど、バグスターウイルスと戦ってこれだけの傷で済んで、運が良かったと思えばいいと思いますよ」
「ケッ!」
と、G3トレーラー内で芹沢に治療を受ける伊丹に対して、出雲が言った。
確かに、冷静になって考えてみるとバグスターウイルスという未知の存在。仮面ライダーの敵に対して生身で戦って、擦り傷程度のケガで済んだのは、奇跡的ともいえる。
だが、正直言えば自分はあまり役に立っていなかったと伊丹は考えていた。自分の攻撃なんてほとんど通じることなく、最後の方に関しては、一般人を逃がすための囮に徹していた。だから、よく戦ったのは自分というよりも、己の隣にいる男の方だ。
「あぁ、とりあえず無事で何よりだ」
「フン……」
そういうのは、ドラマの衣装から普段着にチェンジした時雨である。結局バグスター騒動によってドラマの撮影は即刻中止。その後の他の仕事も、事情聴取という名目でキャンセルし、彼をこの場所に連れて来たのだが。彼に対して伊丹はやや不満気な顔を見せている。
自分よりも活躍していたからか。ドラマの小道具という偽物の武器でもバグスターウイルスと戦った勇気がまぶしかったからか。いや、違う。
「今のうちにいっとくがな、見逃すのは今回だけだかんな! 次同じことやったら公務執行妨害でしょっ引いてやる!」
「伊丹さん……」
「市民の味方のはずのお巡りさんが、市民に助けられるなんて、笑えねぇよ……」
悪態をついた伊丹はゆっくりと立ち上がるとGトレーラー内の壁に手をつき考え込んでいた。
そう、彼もまたある種の無力感という物を感じていた。バグスターウイルスという敵に対し、市民を守るはずの自分たち警察が、その市民である時雨に助けられた形になってしまった。
本来であれば逆であるはずなのに、いったい自分は何をやっているのかと、憤りが募っていく伊丹。
とはいえ、彼はまだ知らないことであるが、時雨はただの一般人というわけではない。かつてこの世界の平和のために戦った一人の戦士。故にバグスターウイルスという異形の敵に対して勇気をもって戦うことができたし、戦い方を知らなかったわけじゃない。だからこそ、優位に立ち回ることができたのだ。
それを知らないが故の、無知であるが故の、伊丹の無力感。
「誰かを助けたい。その思いに違いはない」
「何?」
と、時雨が伊丹と同じく立ち上がって、手を差し出すと言った。
「少なくとも、俺一人じゃあの数のバグスターウイルスを抑え込むことはできなかった。それは、事実です。一緒に戦ってくれて、ありがとうございます」
それは事実だった。実際あの時かなりの数のバグスターウイルスが公園内には溢れかえっており、時雨一人が何とかできる許容範囲は簡単に超えてしまっていたのだ。
たとえ自分一人が戦ったとしても被害が必ず出てしまう。そう考えた時彼が、伊丹が命を懸けるのもかまわずにバグスターウイルスの前に出たのだ。それを見て、時雨も覚悟を決めることができた。戦うことができた。
伊丹のおかげで、時雨が戦うことができたのは、紛れもない事実であった。
時雨の差し出した手を見た伊丹は、フッと笑うと。
「上から目線で言いやがって」
といって、その手をはたく、代わりに彼の頭を軽くたたいたのだった。
その小生意気ともいえるような発言が気に入ったのか、あるいは時雨自身を気に入ったのか、少なくともこの時の伊丹には先ほどまでのような無力感は見受けられなかった。
「無駄話はすんだか?」
といったのは、Gトレーラーで、伊丹たちからやや離れた位置にいた、赤いレザージャケットを着た刑事、照井竜だ。
「今は少しでも情報を集める。協力しろ」
「分かりました」
と、高圧的ともいえる照井の言葉に対して、真剣なまなざしで言った時雨。そう、今は少しでもバグスターウイルス、中野梓に感染したバグスターに対抗するための情報が欲しいのだ。そのためには、実際に戦った人間の話も聞かなければならない、そう照井は考えていた。
因みに、実際に戦ったとなると照井もまたその人間の一人に入るのだが、そのことを伊丹たちは知る由もない。
今回も、現場に駆け付けた仮面ライダーアクセルこと照井竜は、戦闘が終わった後に別の場所に移動。ほとぼりが冷めたころにGトレーラーに合流したのだ。
これは、彼ら風都の仮面ライダーの敵であるドーパントの捜査をするにあたって自身の情報を流布することによる捜査への支障があると考えていたが故。
そして、現在では自身が仮面ライダーであることが周りに知られることによって、大切な人間が危険な目にあう可能性という物も考えた結果、自身が仮面ライダーであることを隠すという考えに至っているためである。
「この映像を見て」
と言いながらキーボードを操作し、動画を再生したのは小沢である。彼女が見せたのは、仮面ライダーG3に搭載しているカメラによって撮影されていた、今回の戦いの動画と記録などのデータだ。
その動画は、映像技術の進歩によってかなり鮮明にかつ高いクオリティで撮影された物であり、二十年前に氷川誠の戦闘時に撮影された物と比べ物にならない程に綺麗な映像であった。
そこには、無数に群がっている、ゾンビのようなバグスターウイルスが映っているだけに見える。それに対して、仮面ライダーG3がスコーピオンによってバグスターウイルスに攻撃するも、≪miss!≫の文字だけが浮かんでほとんどダメージを与えられていなかった。
「やっぱり、CRのドクターじゃなければダメージを与えられないのか……」
と、尾室がややがっかりした顔をする。無理もない。バグスターウイルスに対して自分たちの装備をもってしてもなんのダメージを与えることもできなかった。つまり、今回の事件において自分たち警察ができることは何一つとして存在しないというのと、ほぼ同一であるという事なのだから。
「いや、それは違う」
「え?」
照井は、動画をある場面で止めた。それは、やはり無限ともいえるバグスターウイルスが映っている画面なだけに見えるが。
「このバグスターウイルスをみて、何か気が付かないか?」
「気が付かないかって……」
問われて、芹沢や出雲は考えるが、点で見当がつかない。そもそも、何か気が付かないかと聞かれても、自分たちはほとんどバグスターウイルスに対して情報を持ち合わせていないのだから、気が付けるはずもない。そう、出雲が言うと、小沢がキーボードを操作し始める。
そして、画面には≪オレンジ≫色の頭をした異形の怪人の全体像。そう、バグスターウイルスの全体像、それを投影したのである。
「これが、通常のバグスターウイルスよ。着ている物や武器は、感染したバグスターによって違いはあるけど、頭部が変わることは≪決して≫ないわ」
「あれ、ちょっと待ってください?」
と、ここまでの情報を出されたことにより、ついに出雲が気が付いた。照井が質問をした意味に。
「今回現れたバグスターウイルスの頭部……全部違いませんか?」
「そう、その通りよ」
確かに、今回の戦闘に現れたバグスターウイルスの映像を見ると、その頭部はオレンジ色ではない。様々に配色がなされているカラフルなバグスターウイルスとなっているではないか。
「さっき、映像を急ピッチで解析してみたけど……どうやら、全部で≪五色≫のバグスターウイルスがいたみたいね」
「五色……」
といって小沢が操作すると、五つの画面に五体のバグスターウイルスの頭部が映し出される。
それを見る限りでは、≪赤≫≪黄≫≪黒≫≪茶≫そして≪黒と茶のマーブル≫という五つの種類が確認できる。
何とも不可思議な配色だ。特に最後の≪黒と茶≫がマーブル状になっているバグスターウイルス。
もしかして、昨晩初めて彼らの前に中野梓に感染したバグスターが現れた時にはすでにこんな顔になっていたのだろうか。だとしても、あの時は月明かりだけに照らされている程度だったため気が付かなかったのは仕方がないのだろうが。
とにかく、おかしいという事には変わりはない。
「バグスターの専門家に聞いてみたけど、今まで現れたバグスターで、こんなにいろんな色の顔を持ったバグスターウイルスが現れたことはないそうよ」
ここで出たバグスターの専門家というのは、自身もかつてバグスターだった期間のあった貴利矢の事である。
「不思議なことはそれだけじゃない」
「何? どういうことだ、坊主」
「坊……」
時雨は、伊丹に坊主呼ばわりされて面を喰らった様子だ。だが、確かに彼ら二人は親と子くらいに年齢が離れているため坊主と呼称されても仕方ないような気もする。
とにかく、時雨は一度咳き込むと話を再開する。
「……俺が戦った時、確かに見えた。≪HIT!≫の文字が」
「ひっと?」
「なんですそれ?」
「バグスターウイルスにダメージを与えた時に見える文字……だそうよ」
「え? それじゃ……」
「えぇ、彼の攻撃が、バグスターにダメージを与えたってことよ」
その事実に、少なからず衝撃を覚える一同。それもそうだろう。CRのドクターでもなく、仮面ライダーでもない一般人(仮)の時雨がダメージを与えることができたのだから。それは大きな謎として彼らの前に浮かび上がる。
「それだけじゃないわ。映像の解析を進めた結果、ある事実が判明したの」
「ある事実?」
といって、小沢は動画を進ませた。それは、仮面ライダーG3が≪GG-02 サラマンダー≫を発射した場面のようである。
カメラ、つまり氷川が左右を確認して一般人がいないことを確認し、引き金を引く。その瞬間、三発のグレネード弾がバグスターウイルスに直撃し、大きな爆発と煙が舞い上がった。
それから数秒後。
『そんな……』
氷川の、絶望するかのような声とともに煙の中から≪四種類≫のバグスターウイルスが現れた。
「おいちょっと待って。バグスターウイルスの数が減ってないか?」
と、伊丹が気が付いた事実に対して、階級の事も考えずに口から言葉が吐き出された。
「それって、まさか……」
「その通りよ氷川君。あなたの攻撃は決して無駄じゃなかった……少なくとも、一種類のバグスターウイルスを倒すことに成功していたのよ」
その瞬間、氷川の顔は驚きと安堵が入り混じったような複雑な表情となった。自分の攻撃が、通じていた。たった一種類、されど、CRのドクターでなければ倒せないはずのバグスターウイルスを、自分が。
「その一種類とは、一体……」
「≪黒と茶≫のバグスターウイルスよ」
「よりにもよってですか!?」
と、芹沢のよりにもよって、という言葉は少し違うかもしれないが、まさか出現したバグスターウイルスの中でも一番奇抜といってもよいバグスターウイルスを倒していたなんて、驚きである。
しかし、だったら問題はなおさら大きくなる。
「一体、どうしてそのバグスターウイルスだけを倒せたんだ?」
「そこが問題なのよね……」
そう、何故そのバグスターウイルスだけを倒すことができたのか。問題はそれである。もし、その答えが解ければ、他のバグスターウイルスも駆逐するヒントを得ることができるというのに。
そうすれば、CRのドクターがバクスターを倒す手助けをすることができる。なんとしてもこの難題を紐解かなければ。
「何かなかったんですか? それまでの戦いと違うところは?」
「何かといわれても……」
自分たちが実際にバグスターウイルスと戦ったのは今回が初めてであるし、違うところ、変なところなんて分かるはずもない。
変な事なら、≪ある男≫がしていたが―――。
「ん?」
その時だった。氷川の携帯が鳴り響いた。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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〜いろんな著作物から以降はいらない
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タイトルはそのままでいい