SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
私は罪人。決して許されざる罪を犯した。邪悪なる者。
もう、自分に帰るところなんてない。
自分に、居場所なんていない。
唯一残っていた親友も、先生も、きっと自分から離れていくだろう。
父や母だって、こんな罪を背負った女の子を育てていくなんて、鬱陶しいだけだろう。
自分にはもう、どこにもいくところはなかった。
自分ではもう、どうしようもできない罪を背負ってしまった。
だったら、そんな自分消えてしまえばいい。消えて、消滅して、離散して、この世界の原子の一部にでもなってしまえば、いい自然の肥やしになる事だろう。
生きる意思のない人間が生きているよりも、もとから、いない方がマシだから。
でも、それでも。もし、最後の居場所を選べるのだとしたら。自分は、きっと。
「え?」
その時だった。中野梓が≪バグスターユニオン≫に包まれて、消失したのは。
「中野梓が消えた? どう言うことだ、説明しろ!!」
と、街中で叫んだのはアナザーポッピーを探していた花家大我である。
今、彼が通話しているのは、いわゆるグループ会話と呼ばれるもので、一人対一人で通話する物でなく、複数人が一緒に連絡を取り合うことができるモードだ。彼は、そのグループの一人、鏡飛彩からとんでもないことを聞いてしまった。
CRから、中野梓の身体が消えたのだと。
『分からない。俺もポッピーピポパポも席を外している間に、中野梓が姿を暗ました』
「まさか……ゲーム病で消えたなんていうんじゃねぇだろうな!」
ゲーム病専門医の仮面ライダーである彼らはもちろん知っていた。ゲーム病に罹患した人間が、最後にどうなってしまうのか。
肉体の消失だ。それは、イコール死、というわけではない。正しくは、消えたように見える病であるのだと、現在は定義されているゲーム病。しかし、その消失した肉体を甦らせる方法は、今の所見つかってはいない。あの戦いから、ゆうに5年の月日が経ち、日々研究されている中でも、見つかっていないのだ。
その方法を知っている男、いや、見出した男といえばただ一人、同じくゲーム病によって肉体が消失した。元幻夢コーポレーションの社長であった檀黎斗だけ、と言ってもいいだろう。実際、大我はかつてゲーム病によって無くした親友を、檀黎斗が引き起こしたある事件によって、取り戻すことに成功しているのだから。
だが、その檀黎斗が今この世にいない中で、ゲーム病で身体が消失する現象は、死に等しいと言っても過言ではない。大我が非常に色めきだっているのは、そのためでもある。
しかし、そんな大我に向けて一人の、グループ通話に参加していた男が言った。
『いや、その可能性はない』
「レーザー!」
レーザー、つまり九条貴利矢である。貴利矢は、電話の向こう側でパソコンを操作しながら言った。
『さっきCRから送られてきた監視カメラの映像から見るに、中野梓の身体は、消失したっていうより、バグスターユニオンに飲み込まれたって、言った方がいい』
「バグスターユニオンだと? ふざけんじゃねぇ! バグスターユニオンは、昨日の夜俺たちが」
切除したはずだ。そう続けようとした大我にしかし、貴利矢は横から被せるように言った。
『忘れたのセンセ? あの子が感染したバグスターウイルスは、ワクチン拮抗型の新種のバグスター。一度切り離したと思っても、体の中に残存したバグスターウイルスが再び増殖した可能性だってある』
「ッ!」
そう、彼女の感染したバグスターは、いわゆる未知の新種。今までのバグスターとは全く違う特性を持っている可能性は十分にあるのだ。現に、自分たちは昨晩の戦いでその未知の能力と思われるものでまごうことなく敗北を喫してしまったのだから。
『にしても、前々から思ってたけど、アンタの病院、患者によく逃げられるねぇ』
『余計なお世話だ』
と、飛彩は言ったものの、事実彼の病院のCRはよく患者に逃走を図られ、実際に病院の外に逃げ出されてしまっている。時には、子供一人が目を離した隙にCRから飛び出し、病院の外で待ち構えていたバグスターに捕えられたなんてこともあった。
ソレを考えると、貴利矢の皮肉も皮肉ではないのかも知れない。が、今はそんな事を言っている場合じゃない。
『そんなことより! 今は、中野さんがどこに行ったのか、それを考えるべきです』
グループ会話に参加しているもう一人。泊進ノ介。
それに応えたのも、また、グループ会話に参加している小沢であった。
『順当に考えれば、バグスター、つまりアナザーポッピーのいるところってなるわね』
確かに。感染者を自らの懐に抱え、そのままゲーム病が進行するのを待つ。そんな考えを持つバグスターもいるだろう。
けど、そう考えたところで何だと言うのだ。
『だから、その場所がどこなのかって言うのが問題なんでしょ!』
大門は、小沢に叱責した。ここまで聞いてもらって分かる通り、このグループ会話は今回の一連の事件に関係している全ての人間に伝達されているもの。その中には、梓の親友である純も混じっていた。彼女は、震えるような声で言う。
『もしも、このまま梓が見つからなかったら……』
答えなんて決まっている、とても簡単な質問だ。純にだって想像がついていた。もしこのまま梓が見つからなかったらどうなるかなんて、でもソレでもその言葉を質問形式にしたのは、多分、怖かったからなのだろう。
想像することが、答えを、考えることが。そして、それを言葉にすることが。
『あぁ、恐らく本当に消えてしまうだろう。文字通り、俺たちの手の届かない場所で……』
『ッ……』
純の息を飲む声が確かに聞こえてきた。答えたのは、大門と一緒にいた男だ。なぜ、男までもが会話に参加しているのか。そんなことを問いただしている暇も、考えている猶予もない。一刻も早く、中野梓を見つけ出し、そして、アナザーポッピーを倒さなければ。
このままだと彼女は誰にも看取られることもなく、消滅したことも悟られないまま、この世界からログアウトすることとなる。そんなの、悲しすぎるではないか。
『早く見つけ出さないと……』
『でもどこにいるの? 梓さんも、アナザーポッピーも……』
そう、結局はソレに問題は帰結してしまう。梓がどこにいるのか、バグスターがどこにいるのか、それが分からなければ手の出しようもないのだ。最悪、バグスターだけでも発見して、倒してしまえば梓の消失は逃れることができる。彼らが問題にしていた、アナザーポッピーの攻略法に関しても、進ノ介の閃きによって解決に向かっており、小夜や時雨がそのための準備をしている段階だ。
しかし、ソレに関してもバグスター本体が目の前にいなければどうすることもできない。早くバグスターを見つけ出し、そして尚且つ梓の身の安全を確保できれば幸い。
だが、一体バグスターはどこにいる。梓は、一体どこに攫われた。
『ちょっと待って。どうしたの?』
「ん?」
そんな、不思議な会話が聞こえてきた。電話の向こう側で、女性と、誰かが喋っているようだ。その声、大我は知らなかったが、一応今回の事件の関係者の一人としてグルーブ通話に参加していた人間の一人であるのだ。
その女性は、しばらく誰かと会話をした後に言う。
『みんな、もしかしたら、バグスターを見つけられるかもしれないわ』
『本当ですか!?』
『えぇ、確かじゃないけど、可能性はある』
確かじゃない。つまり、実際にバグスターがいるかどうかも分からないが、しかしその可能性が十分にある情報を何か手に入れた、そう言う事なのだろう。
『とにかく今はどんな些細な情報でも欲しい。バグスターのいる場所を教えてくれ』
『ちょっと待って……ゾワゾワはこっちの方向から感じた……と、言うことは……』
「ゾワゾワ?」
なんだか不思議な単語が聞こえてきた。ゾワゾワ、って何のことだ。大我は不思議に思っていたが、しかし、その言葉はとある人間たちにとってはとても大切な人間の言葉の一つであり、尚且つ、大変な意味を持つキーワードであるのだ。
『まさか……だとしたら、梓ちゃんもここに?』
『どう言うことです?』
『でも、ありえないことじゃない……きっと、梓ちゃんも、バグスターも、そこにいる』
『ちょっと、はっきり答えなさいよ!』
大門未知子の急かすような声に、女性はゆっくりとした口調で言う。
『彼女がいる方角。そこにある建物の中で、彼女がいそうな場所……それは……』
それは、意外、ともいえない場所だった。いや、むしろ彼女が、消える前に、死ぬその前最後に訪れる場所としては、あまりにも、あまりにも当たり前。しかし、当たり前すぎて思いつかなかった場所。
物語の最後の舞台は、全ての関係者を同じ場所に集めようとしていた。
いや、むしろ必然と言っても良い。
運命の歯車は、今、その動きを加速させていった。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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ヴァルキリーズfeatボーイ
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プロジェクトSAO
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アルティメットカオス
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無への逃走
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肯定あるいは否定
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フィクションスターズ
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〜いろんな著作物から以降はいらない
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タイトルはそのままでいい