SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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 今回、今まで暗躍してきた男の正体、目的、そしてようやくこの章のクライマックスに向けての歩みが早まります。そのスタートのカウントダウン、その最後の数字はーーー。


メインシナリオ外伝 第二章 第45話

 基本的に、病院内での携帯電話の使用は御法度だ。

 それは、公共の場で大声で通話をする人間がいるものかという道徳的な一面も持ち合わせている。

 だがそれと同時に、病院内には様々な電子機器、命に直結するようなものが多いため、それに悪影響を及ぼすという恐れがあるからだ。

 故に、大門未知子も、仮野明日那も、そして男も、病院内で通話可能な場所を見つけ、そこで電話をしていた。

 

「分かった。私もそっちに向かう」

 

 梓の、そしてアナザーポッピーがいるかもしれない場所を聞いた大門未知子は、ただそれだけを言うと通話を切断した。

 

「そう言うわけだから明日那、行くわよ」

「あ、はい!」

 

 と、思わず返事をしてしまった明日那だが、考えてみるとここで大門未知子が出る必要性なんて物、ないんじゃないかとすぐに思いついた。それは、男のほうもそうだったようだ。

 

「待て」

 

 と、自分の横を通り過ぎようとする大門の腕を掴んだ男。

 

「ちょっと、離しなさいよ!」

 

 と、大門が腕を振りほどくが、それにも意を返さず、男は言った。

 

「大門先生。貴方も言っていたはずだ。自分には、バグスターウイルス感染症の切除はできないと」

「……」

「だから岩沢雅美に頼り切ることしかできなかった。そんなあなたが行ったとしても」

「そんなこと関係ない」

 

 大門は、顔色を一切変えることなく言い放つ。

 

「切除できるとかできないとか、仮面ライダーじゃないからとか、そんなの理由にもならない。そこに、病気で苦しんでいる人がいる。だから、あたしはそこに向かう」

「例え、それが……極悪人でも、か?」

「……」

「極悪人って……梓ちゃんは犯罪には問われないって泊さん達は言っていました!」

 

 と男の言葉に意を唱えたのは明日那である。確かに、結論として梓のしたことは全て合法的に罪に問われるようなことはない、良くて厳重注意レベルの案件として片がつく運びになっている。

 しかし。

 

「だが、彼女のやろうとしていたことは間違いなく犯罪だ。もしも、この病院が対策を講じていなかったら、何人もの命をうばいかねなかった。それは事実だ」

 

 そうなのである。例え、災害等による停電に備えた自家発電があったとしても、彼女のやろうとしたことがSAOプレイヤーたちを、そして、病院の患者達の命を危険に晒したのは間違いのない。

 先ほど、大門未知子は結果論で話を進めることを咎めていた。しかし、これこそまさに結果論の話。もしも、何の対策も講じていなかったら、今頃どんな影響が出ていたことか。男の懸念も尤もなこと。そう考える人間もいるだろう。

 

「アンタね、何も分かっちゃいない」

「なに?」

 

 しかし、そんな男に対して大門未知子は言い放った。

 

「梓は、何もしていない。ただ、部屋の中に入って、レバーに手を伸ばした。ただ、それだけ」

 

 ただそれだけ。けど、そのそれだけがいかに重要なのか。いや、それだけということがいかに重い言葉であるのか。この時の男はその情報を持っていなかったために知る由もなかった。

 

「それに、例え相手がどんな事情を持ってても、あたしは絶対に手術する」

 

 そう、歩きながら言う大門。男は、それを止めることはしない。いや、止めることができなかった。その圧力に気をされたのか、それともその言葉に同調してしまったのか。分からない。

 しかし、そんな男の背中に向けて最後に大門は言い放った。

 

「あたし、医師免許持っているので」

 

 ただ、それだけを言って大門未知子は歩き去っていった。その後ろを明日那は男に何度か目線を向けながら追いかけていく。まるで何かに警戒するように。

 いや、違う。彼女はどこかでみたことがあるのだ。男の顔を。暗がりで、あまりハッキリと見ることができなかった。しかし、何かの資料でみた覚えがあるのだ。でも、一体どこだろう。彼女はついぞ思い出すことができなかった。

 

「……」

 

 一人残された形の男。ふと、腕時計に目を配る。それは、午後10時59分を示す2本の針がゆっくりと、別々のスピードで動いていた。

 いや、あともう一本の針が頂点に達すれば、11時を回る。つまり、定期連絡の時間、というわけだ。

 そう、自分が所属している組織の≪一つ≫からの連絡。その上司とも言ってもいい人間からの連絡を、彼はその場で待つのである。

 あと5秒、4、3、2、1。

 

「ゼロ」

 

 ピロリロリロ、ピロリロリロ。

 その時、持っていたスマホが鳴り響いた。全くもって、時間に正確な人だ。男は、スマホの通話ボタンを押す。

 

「もしもし、こちら5103。大門未知子と接触しました。……はい、貴方の考えている通り、かなり危険な人物だと思います。ですが……」

 

 男、自らを5103と名乗った彼は、自分の考えを電話の向こうにいるある人物に向けて伝えようとする。その瞬間だった。

 

『私は、あの子を心の底から助けたいって思ったから助けた! ソレの何がいけないっていうの?』

 

 彼女の言葉が、脳裏を横切った。そう、彼女はただ助けたいと願って助けているだけ。目の前で傷ついている人間がいるから、そこに手を伸ばしただけ。彼と、自分の仲間と同じように。

 その先の人生なんて、分かった物じゃない。例え、助けた人間が犯罪者であったとしても、その後にテロを起こしたとしても、それでも彼女は後悔しないだろう。それが、あまりにも危険な思考であるのも知らずに。

 しかし、どう言うわけだか、彼には大門未知子を悪く言うようにはなれなかった。彼女から感じたのだ。底の知れない、信念のような物を。それに揺れ動かされている、自分の心も。

 男は、数秒黙り込んだ後に言う。

 

「いえ、引き続き彼女の監視は続けようと思います。……えぇ、俺がダブルフェイスであることは、誰にも明かしていません。もちろん、会長にも……とは言え、あの人のことだ。そのことすらも知っていそうですが……」

 

 と、男は今自分が勤めている≪もう一つの居場所≫の会社の会長の姿を思い浮かべていた。あの、自分の欲望に忠実な、天衣無縫とも呼べる人物を。

 

「分かっています。『彼』が命を賭してまで守った平和です。俺も……影ながらやれることはやります。はい、では……」

 

 そう言うと、男5103はスマホを切る。次の定期連絡は一週間後、それまで彼ら二人の接点はまるで無くなる。はたして、その一週間でこれ以上の大門未知子の情報を得ることができるだろうか。

 ふと、彼は思い出していた。自分が電話の向こうにいた人物に語ったとある事件。その事件である人物が、命を落とすことになった。

 たった一人で無茶をして、命を落とした『彼』の事を、嘲笑う人間なんて誰もいないだろう。何故なら、『彼』のおかげで救われた人間が大勢いるのだから。彼がいたからこそ、今を生きる人間がいるのだから。

 その人間達が未来で何をするのか、そんなもの分からない。だが、分かっているのはただ一つ。

 

「アンタは、何も分かっちゃいない……か」

 

 知ってるさ、誰かのためにと自分を犠牲にした結果、多くの人間に冷たい傷跡をつけた、人間を。

 男、は彼女が最後に言った言葉を反復しながら廊下を歩く。

 

♪ねえ、あんたわかっちゃいない♪

 

 その音の反響は、どんどんと小さくなり、しだいに、その姿は見えなくなってしまっていた。

 一方で、駐車場に向かった大門未知子と仮野明日那は、CRの所有しているバイクに今まさに乗ろうとしていた。と、その時だった。

 

「大門未知子先生」

「アンタ……」

「……」

 

 それは、必然であると言えるだろう。同じ病院の中で通話をしていたのだから、彼もまたこの場所に来ることは予想できることだった。

 鏡飛彩。彼は、二つのヘルメットを持参していた。ここで彼がこの場に来た目的。それは、十中八九自分のことを止めるためだろう。

 仮面ライダーでもない人間が、向かったところで何も変わりはしない。そう自分に伝えるために。

 そう考えた大門であったがしかし、飛彩は、ヘルメットを大門に向けて差し出した。

 一瞬困惑し、ヘルメットを凝視した大門だったが、しかしすぐに飛彩にその顔を向けた。

 

♪誰それがお手元の世界に夢中 化け物の飼い方を学んでる♪

「貴方は俺のバイクの後ろに。明日那はもう一つのバイクを使え」

「うん! 分かった!」

 

 そう言われた明日那は、もう一つ置かれていたバイクの方に向かった。ある意味で、意外な展開であると言えるだろう。

 

♪選ばれる為なら舌を売る♪

「止めないの?」

 

 と聞いた大門に向け、飛彩はヘルメットを被りながら言った。

 

♪裏切られた分だけ墓を掘る♪

「止めても無駄なのは分かっている。その代わり……」

 

 そして、飛彩はバイクに跨ると、まっすぐと前を向いたままで言う。

 

♪へらへらのおつむがどうにかして♪

「もしもの時は、貴方に全てを委ねる」

 

 と。こうして、二人の天才外科医が現場へと向かうのであった。

 また、警視庁でも。

 

♪うすら寒い言葉ばかりになる♪

「行きましょう。進ノ介!」

 

 と、パトカーに向かう泊進ノ介と霧子夫妻。しかし、その途中で立ち止まった進ノ介。

 

♪覚えない顔とバイバイできるなら 阿修羅にだってなれるわ♪

「進ノ介?」

 

 不思議そうな顔を浮かべて振り返った霧子に、進ノ介は、やんわりとした笑顔を浮かべると言った。

 

「霧子。お前は家に帰っていてくれ」

「え?」

 

 どうして、そんなことを言うのか。自分たちはいつだってバディで、どんな事件でも一緒に行動してきた。それなのに、こんな一番大事な時になって帰れって、それはあまりにもひどすぎる。

 そう、心の中で思った霧子だが、進ノ介は彼女の肩に手を置くという。

 

♪逃げるえすけいぷえすけいぷえすけいぷ 仏のまま 飛べるすてっぷすてっぷすてっぷ 仰せのまま♪

「エイジを、早く迎えに行ってやらないとな」

「あ……」

 

 そうだ、自分は一警察官である前に一人の息子をもつ母親だった。それを、彼の言葉で思い出した霧子。

 息子のエイジは、まだ保育園で預かってもらっている。いわゆる延長保育の状態だ。確かに彼の言う通り早く迎えに行かん帰れば保育園の先生にも、なによりエイジにも悪い思いをさせてしまう。というよりもうこの時間だ、とっくに保育園の先生からも連絡が来ている。

 幸いにも、保育園側は自分たちの立場の事を知っているし普通の保育園よりも長い時間預かってもらえる保育園を探したので、もうしばらくは大丈夫なのだろうが、しかしそれでもソロソロ迎えに行かねばならぬ。

 事件が佳境に向かう中でそれを失念していた霧子に対し、ギアの入った進ノ介はちゃんと子供のことを覚えていた。慌ただしくなる中でも子供のことは覚えていたのだ。

 

♪アンダスタン アンダスタン どーどー閻魔様さえ喰らって 騙るすにーくすにーくすにーく 嵐の中♪

「だから、現場には俺が一人で向かう」

「進ノ介……」

「大丈夫だ。絶対に戻る。お前と、エイジの所にな」

「……」

 

 刑事という職業は過酷である。特にこと今回に至っては相手は自分たちがかつて戦っていたロイミュードのように人類全体に仇をなす強大な敵。それを前にして、絶対に生き残ることができるとは言い切ることができない。

 特に、彼の場合は、己の、元は警察官だった父親を殉職という形で亡くしている。だから彼は知っているのだ。死することによって悲しむ、残された物達の姿を。

 だから彼は絶対に帰ると約束できるのだ。あの頃の自分の気持ちを、エイジや霧子にさせないように。

 

♪跳ねるすきっぷすきっぷすきっぷ あっそ、へのかっぱ アンダスタン アンダスタン いっそ骨の髄までしゃぶって♪

「おーい泊!」

「え?」

 

 と、その時だった。警視庁の入り口から一人の男性が二人に向けて駆け出したのは。先ほどまで食堂で一緒にいたはずの角田である。

 先ほどのグループ通話が終わったすぐ後に、いつの間にか消え去っていた角田は、その手に大きなアタッシュケースを携えて泊夫妻の元にもどってきたのである。

 

「はぁ、間に合った……」

「角田課長?」

「おい、これ、持っていけ!」

 

 と、角田は泊にアタッシュケースを胸に当てつけるように手渡した。

 

♪ねぇ、あんたわかっちゃいない♪

「これは……」

「対未確認生命体専用の拳銃と弾だ。悪いが、俺は明日のヤクザの事務所への出入りの準備で行けないからな。これくらいしかできねぇ」

「角田課長……」

 

 そう、それはこの間のSAOプレイヤー移送作戦の際に使用された、かつて未確認生命体と呼ばれていた怪物達と戦うために開発された銃と弾。そして今回の茅場晶彦が起こした事件と並行して現れたかつて、スーパー戦隊や仮面ライダーたちが倒してきた怪人怪物が復活し始めているために多くの部署に貸し出されている拳銃でもある。彼は、それを泊たちに渡したのだ。

 本当は自分も行きたかったが、なんせ彼の課は明朝すぐに、とあるヤクザ事務所へと家宅調査にで向くことが決まっている。その準備のために深夜もかけてやらなければならないことがあったため、ならばとこの拳銃と弾を貸し出したのである。

 

「ありがとうございます!」

「フッ、中野梓って子……救ってやれよ!」

「はい!」

 

 そう、背中を叩かれた泊は、みていて惚れ惚れするような敬礼を角田に返した。

 さらに、その地下では。

 

「よし、G3−Xのアップデートが完了したわ」

「それじゃ……」

♪日々の滲みを木々に焼べて暖をとり合う 義理を誣いた彼の四肢は散り散りになる♪

「えぇ、次の戦闘から使えるわよ」

「よし!」

 

 小沢からの朗報に、ガッツポーズを作る氷川。確かに、G3でも多くの敵を倒すことは可能である。しかし、それよりも性能が上のG3-Xの復活に、喜ばないわけがない。これで、思う存分に戦うことができる。そう考えた氷川は、すぐ出発するように小沢に提言しようとした。

 

「おい! 俺たちも連れて行け」

♪知りもせずに意味を美意識だと崇める♪

「え? ですが……」

 

 言ったのは、伊丹である。ちなみに、時雨は件の作戦の実行のための準備に入るためにGトレーラーからは離れていた。

 伊丹たちは、やや困惑した氷川に向けてこう言い放つ。

 

♪疑似餌じみた恣意に御の字だった 愉快な御託のフルコースに うわべの面をして可愛がった くだんない僧と踊るくらいなら♪

「乗りかかった船だ。途中で降りちまったら、あの馬鹿に何言われるか分かったもんじゃねぇ」

「それに、俺たちだって、警察です」

「市民を守りたい。それ以上に、理由なんてありませんよね?」

「……」

 

 確かに、彼らの言っていることはわかる。だが本当にいいのだろうか。いや、それは単に伊丹たちのことが頼りないからと思って言っているわけじゃない。

 彼が危惧、していたもの。それは、照井竜の存在。彼は、自分の正体を他人には明かしたがらない。例え、同じ警察官であったとしても。故に、伊丹たちがついてくることに反対するのではないか。そう考えたのである。だが。

 

♪悪魔と手繋ぐわ♪

「分かった」

「照井警視!」

 

 あっさりと許可を出した照井は、氷川の肩を叩くと言う。

 

「戦力の方が大事だ。そうだろ?」

「……はい!」

「しゃあ! 行くか!」

 

 Gトレーラー内に、伊丹が拳を手のひらに叩きつけた音が響き渡った。

 

♪逃げるえすけいぷえすけいぷえすけいぷ仏のまま 飛べるすてっぷすてっぷすてっぷ♪

「はい、ありがとうございますでは。みんな、機材搬入の準備はできたよ!」

 

 そして、一方ここはキラメイジャーの本部カラット。その中で、博多南が、その場にいる三人の人間。小夜、時雨、そして連絡を受けて超特急で駆けつけた瀬奈に向けてそう言った。

 

♪仰せのまま アンダスタン アンダスタン 阿鼻地獄の果てまでロックオン♪

「じゃあ、行きましょう」

「あの子達は?」

「今、マッハ達が迎えに行っている。合流は……例の場所で」

「そうなの……」

 

 それを聞いた小夜は、包帯を巻いた手首をさする。昨晩の戦いで負った傷が、まだ疼くのである。

 この状態で、果たしてどこまで出来るのか。不安なのはそこだけだ。

 

♪騙るすにーくすにーくすにーく嵐の中 跳ねるすきっぷすきっぷすきっぷあっそ、へのかっぱ アンダスタン アンダスタン♪

「あとは、私がどこまで叩けるかね」

「小夜くん……」

「大丈夫です。絶対に、≪彼女≫の前に、中野さんは、救って見せます」

 

 と言った小夜は、時雨、瀬奈の二人と頷き合う。そして―――。

 

♪あんた寝言はあの世で言って♪

「……」

 

 一人の男は、すっ、と立ち上がると徐にピアノの方へと向かった。そして、まるで吸い寄せられるように鍵盤の一つを押した。

 

♩ポーン♩

 

 月が輝く一室に、小さなピアノの音が鳴る。

 

♪逃げるえすけいぷえすけいぷえすけいぷ仏のまま 飛べるすてっぷすてっぷすてっぷ仰せのまま♪

「……」

 

 また、こっちにはベッドの上でやや言葉に出せないような格好をしているクマのぬいぐるみを抱いている少女がいた。

 少女は、そのクマの向こう側に見える仲間たちとの写真を見ると、意を結したように立ち上がった。

 

♪アンダスタン アンダスタン どーどー閻魔様さえ喰らって♪

『二人とも、お乗りください!』

「行こう」

「うん!」

 

 そして、とある街。魔進マッハが二人の少女を迎えに来ていた。

 二人は、互いに声をかけると、先ほどの少女と同じようにある写真を見てから、その手に持った。まるで、共に戦いに行こうと、しているかのように。

 暗闇に沈む街中、一人の少女を救うために多くの人間たちが覚悟を決めていた。

 その中で―――。

 

♪騙るすにーくすにーくすにーく嵐の中 跳ねるすきっぷすきっぷすきっぷあっそ、へのかっぱ アンダスタン アンダスタン いっそ骨の髄までしゃぶって♪

「岩沢雅美……」

 

 5103と呼称された男は、再び岩沢の病室の前に来ていた。そう、彼女の監視を再開するためである。

 彼の任務は、確かに国にとって危害を与えかねない女性、大門未知子の監視。それも一つだった。だが、それともう一つ、彼にはある別の任務を請け負っていたのだ。

 それが、岩沢雅美の監視。それが、彼が潜伏中のもう一つの場所から託された任務。

 5103は、いや、≪後藤≫はそのもう一つの任務に戻ろうとしていた。

 しかしおかしい。いつもなら病室の前にくればギターの音か、彼女の声が聞こえてくるはずなのに、耳を研ぎ澄ませてもそんな音聞こえてこない。どう言うことか。

 

「なんだこの胸騒ぎ……」

 

 妙な物を感じた後藤は、病室の中に入った。

 もし、自分の中の違和感が間違いで、中に彼女がいた場合には、不審者であると言われても間違い無いだろうが今はそんなことを言っている場合じゃないのだ。

 

♪ねえ、ギャーギャー言っちゃって 頭を垂れないで♪

「っ! いない!? ……まさか!」

 

 病室の中はもぬけの殻だった。岩沢も、そして彼女のギターもそこにはない。当然だ。何故ならば。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

 彼女は走っていたから。彼女がいる場所に向けて、彼女が、最期に過ごす場所として選んだであろう場所に。

 その時、また頭に痛みが走ったような気がした。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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