SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
元からこれ連載楽しみにされてた方がいるので、その人達のための予告でもあるのかもしれません。
彼女がそれに気がつけたのは、偶然と言ってもいいのかもしれない。
《魔女の結界》の内部は迷路のような形状であり、中にはあまりにも複雑になり過ぎて
この複雑な道が功を奏した。彼女は、同じ道を行ったり来たりとしていたのだ。その時に微かに耳に聞こえてきたのは銃声だった。もしかして、同業者が結界の中に入ってきたのか。そう思い、彼女は出口に向けて走った。
しかし、見つけたのは同業者ではなかった。自分が何十体と倒した《使い魔》に囲まれたふたりの女の子。
だが、同業者ではないにしてもその手に持った銃、そして制服からも普通の女の子というわけではないのは確かだ。
少女は、その制服に見覚えがあった。確か、あれは《
武偵、それは《武装探偵》の略である。年々凶悪化する犯罪に対抗するために設立された国家資格。その免許を持つ者は警察に準ずる活動ができ、逮捕権や武装の許可も得ているのだとか。
少女は、実のところこの武偵と言うものに憧れていた。制服の可愛さもそうであるし、なにより自分も《銃》を使用するから何かあった時に合法的になれ、さらには就職先にも幅が出るであろう武偵の資格を持っていた方がいいからと、進学先の候補の一つに決めていたのだ。
だが、ここは東京から少し離れた群馬県。何故そこに東京にいるはずの武偵がいると言うのか。
それにあの顔。あのツインテールの女の子はもしかして。
いや、今はそんなことを考えている時間はない。もし彼女達が普通の武偵であると言うのならば、今間違いなく二人は危機的な状況に陥っていると言うことだ。助けなくてはならない。
少女は、黄色いリボンを出現させると、上空にある突起に引っ掛けて片手で持ち、ターザンロープの要領で勢いよく飛び出した。
そして、単発式の銃4門の火が吹いた。
「え?」
「何?」
アリアとあかりは突如として足元に着弾した弾に驚きを隠せなかった。
自分達の銃が暴発したわけではない。なにせ、自分達はまだ《撃っていなかった》のだから。それなのに、地面には均等の距離に四つの着弾点。よく見ると、自分達の周囲を囲っているかのようだ。一体、何処から。
「ふたりとも! 伏せて!」
「ッ!」
「はいッ!」
上空から響いた声。ふたりは咄嗟にその言葉に従いその場に伏せた。
その時、空から一人の黄色い髪をした女の子が降り立ち、地面に銃を打ち付けた。
その瞬間、四つの弾の着弾点から黄色い紐が天井に伸び、そのちょうど中心。少女が銃を立てた場所の真上で合流して繋がった。その途端、黄色いフィールドのような物が周囲を囲んだ。
「これって」
「結界を張ったわ。これでしばらくは持つはずよ」
「あ、貴方は……」
「初めまして、武偵校の人達よね。私は
「巴さん?」
少女改め《巴マミ》は、優しげな笑みをあかり達に浮かべる。自分に敵意はないと言っているかのようだ。
と、その時マミは気がついた。
「あら、怪我してるじゃない」
「これ? いいわよこれくらいなら跡も残らないし」
マミが気がついたのは、先程逃げる直前にアリアが負った傷。しかし、アリアの言う通り傷は深くなかったし、時間が経てば自然治癒して跡も残らないと彼女は考えていた。
「そう言うわけにはいきません。私に任せて」
「え?」
そういうと、マミは両手を優しくアリアの傷に当てる。
瞬間、淡い光と共に魔法陣らしきものが出現して、徐々にアリアの傷が塞がり、最後には跡形もなく綺麗な肌が蘇っていた。
「はい、OKよ」
「嘘、本当に治ってる」
「凄ーい、まるで魔法みたい!」
「見たいじゃなくて、魔法なの」
「「えッ!」」
あかりが比喩で使用した魔法、と言う単語。実際この世に魔法なんてものがあるとは当然信じられるものではなかったために比喩として使ったのだが、残念ながら、これは本当に魔法の力であるのだ。
「私、魔法少女なんだから」
「「魔法少女!?」」
にわかには信じられない。だが、今実際に魔法によって傷が治る瞬間や、結界を張った様子などを見てしまったために信じるしかない。
「魔法って、本当にあったんだ……あ、私間宮あかりです!」
「神崎・H・アリアです。助けてくれて、感謝します」
「敬語なんていいわ。あなたも、中学生でしょ?」
「「えッ」」
この時、ふたりに衝撃が走った。あなた《も》と、言うことは彼女は中学生。なのか。その胸囲を持って、自分達よりも背が高くて《年下》であるというのか。
「あの、高校生です。私は2年生、先輩は3年生です」
「えッ!」
今度はマミの方が驚く番だ。
実は武偵校には、中等部と高等部があり制服はほとんど同じであるのだ。
そのためアリアはともかく、あかりに関してはただ体格を見て自分と同じ中学生であると判断してしまった。それが運の尽きだった。まさか、あかりも高等部の先輩だったとは。
「え、えっと、御免なさい……その」
居た堪れなくなったマミは何を言おうか迷った。しかし、何も言葉が思いつかない。ちなみにこの間、アリアは何をしていたかというと。
「……」
結界の端の方でいじけていたという。
とにもかくにも、今はそんなこと気にしている場合じゃない。
「と、とにかく! あの怪物はなんなんですか?」
あかりは、場の雰囲気を元に戻そうとマミに怪物のことを聞いた。
アリアもその頃になるとようやく心の傷が回復したのか、話に戻ってきた。
「あれは、使い魔。魔女の手下みたいなものです」
「使い魔?」
「魔女ってあの魔女のこと?」
「えぇ、とは言っても人じゃないんだけど」
「人じゃない。それじゃ、この使い魔と同じ怪物?」
「そうよ。結界に入ったのが貴方達で不幸中の幸いだわ。本当に普通の人が迷い込んだら、こんなに長く生きていないもの」
貴方達は怒るかも知れないけどね、そうマミは付け加える。
だが、彼女の言葉には間違いはないだろうと、実際に戦ったアリア達も思っていたことだ。
もし、自分達じゃない一般人があの生物に遭遇したとして、あのハサミを避けれただろうか。逃げ続けることができただろうか。
数々の修羅場をくぐり抜けてきた自分ですら一撃をもらったのだ。普通の人間なら避け切ることはできないだろう。
そう考えれば、本当に迷い込んだのが自分達でよかった。
「とにかく、貴方達を出口まで案内します」
「え? 魔女って言うのはいいんですか?」
「今は貴方達の身の安全を確保しないと」
マミも悩んだ末の結論である。
魔女はその場から動かないものではなく、結界ごと移動する存在なのだ。その為、ここで見逃してしまうとまた何処かへと移動し、また再び捜索しなければいけなくなる。その間、魔女の犠牲者が生まれ続ける。
今回のように偶然迷い込んだ人間だけじゃない、結界の中に入ることは無くても心の弱った人間を自殺という方法を用いて殺そうとする。そんな存在を見逃すという事はマミにとっても心苦しい。しかし、一般人のふたりをこのまま放っておくわけにはいかない。
だが、彼女は言う。
「いえ、私たちのことはいいわ」
「え?」
「アリア先輩?」
アリアは、結界の際にまで歩を進めてから振り返る。
「この結界があれば、使い魔がいくら来ても私たちを守ってくれるんでしょ? なら、貴方は早く魔女を倒してきて」
「守ると言っても……そんなに長い時間は、守り切れないわ。ここなら、出口も近いし……」
「なら、私たちも連れて行けばいいじゃない」
「え……」
「アリア先輩、どうしてそこまで……」
「危険なんでしょ、魔女を放っておくと。だから、貴方も本当は魔女を倒しに行きたいはず。だけど、私たちがいるから動くに動けないんじゃないの?」
「……何故、そう思うの?」
「勘よ」
「勘?」
「えぇ」
それは、この結界の中に入り込むきっかけになったものとまるで同じ。ただの勘による意思表示であった。
上手く説明できないが、今彼女と共に結界から出てしまうとなにかマズイ気がする。そんな第六感が働いたのだ。
「でも確かに……さっきのマミさんの話だと、入ったのが普通の人なら命の危険がある。私たちみたいに偶然入り込んでしまうこともあるのなら、このままこの結界を放っておくことなんてできないかも……」
「そ、そうよ! そういう事!」
と、あかりに補足される。本来この役目は別の人間であるのだが、今回に限りあかりがワトソン役を買って出ているのだ。
「えぇ、確かにその通りよ。もし魔女を放っておいたら多くの人の命が危険にさらされる。でも……今は貴方達を……」
「『行動に疾くあれ。先手必勝を旨とすべし』」
「え?」
「今この時も誰かが死ぬかもしれない! なら、ベストの選択は魔女を倒すことでしょ!」
「ッ!」
アリアがつぶやいたのは、武偵憲章の一つ。
今この状況に置いて優先すべきは自分たちの命である。それは確かだ。しかし、他人の命も大事となってくる。こうして自分たちが議論を重ねている間にも誰かの命が脅かされるというのであれば、自分たちがするべきなのは、誰かの命を守るという事。
だが。
「『武偵は自立せよ。要請なき手出しは無用のこと』」
「それって……」
「武偵憲章の一つ。私だって、来年武偵高校を受ける予定だから予習くらい……」
「……」
そう、武偵憲章にはそんな条文もあるのだ。この条文よく見てみると一文だけでなにか矛盾しているような気もするが、しかし助けを求められていないのに誰かを助ける、そんなヒーローの真似事をして偽善者と罵られる可能性があるこの世の中では、最も厳守しなければならない条文なのかもしれない。
だからこそ、である
「正式に要請させてもらいます。この結界の持ち主である魔女の退治のために、共同戦線を張らせてください」
「依頼料は?」
「貴方たちの護衛料と、それから……自作のケーキをおごらせてもらうわ」
「少し足りないわね。魔女、それから魔法少女についての情報も上乗せでどう?」
「……いいわ、ここを出れたら教えます」
「乗ったわ……あかりも、それでいい?」
「……はい!」
こうして、建前上はマミから二人への依頼となった。これで、何のしがらみもなく二人は行動することが出来る。
とはいえ、ふたりの攻撃は使い魔には通用しないためにマミにとっては足手纏いとなってしまうかもしれないが。
「二人とも、武器を出してもらえるかしら?」
「え?」
「あ、はい」
と言うと、二人はそれぞれの銃三つをマミの前にだす。マミがソレに触れると、ぐにゃぐにゃと飴細工を加工するかのように銃の形状が変化していき、白を主体とした銃へと変化する。
「これって……」
「私の魔力を分けました。気休めになるかもしれないけど、これで使い魔にも通用するはずです」
マミは、自分の魔力を二人の銃に込めた。これにより、発射される弾には魔力が込められ、使い魔や魔女とにも攻撃が通用するようになったのだ。
とはいえ、使う本人が魔法少女ではないためにこれでも気休めにしかならないのかもしれないが。
「ありがとうございますマミさん!」
「それと、あかりさん。私の方が後輩ですから、敬語なんて……」
「あ、ごめんなさい。えっと……マ、ミ……やっぱりマミさんで!」
「あらら……」
自分の方が年上であるという事は分かっている。しかし、どうにもあかりは彼女の事を呼び捨てにすることが出来なかった。その雰囲気が全然年下に見えないからだろうか。それとも、その胸が年下に見えない程に大きいからだろうか。定かではない。
「合図を出したら結界を解きます。その後は……」
「この銃で風穴を開けて!」
「一気に走り抜ける!」
「えぇ……私のそばを離れないでください」
みると、使い魔たちはなんとか結界を破ろうと一点に集中している様子。ならば、結界を解除した瞬間にその一点に向けて攻撃を加えるのみ。三人の思惑は一致していた。
「行きます!」
マミの合図で結界が解除される。
その瞬間だった。三人の銃撃の雨が使い魔を襲う。
マミは使用する銃が単発式のマスケット銃という物であったために撃つたびにまた別の銃を取り出しているのだが、しかしそれでも撃つタイミングに全く隙が生まれることもないほどに休みなく撃ち続ける。
アリアとあかりの、先ほどまでは全く通用しなかった銃弾も、次々と使い魔を撃ち倒し、またリロードしてもその銃弾には魔力がこもっているようだ。恐らく、銃口から弾が発射される瞬間に魔力が弾に込められるのであろう。
それからもう間もなく、その場にいた使い魔は全ていなくなっていた。残ったのは薬莢だけとなる。
「行きましょう!」
「えぇ!」
それからは、まさしく圧巻の一言だ。
結界の奥に進むほどに道は複雑になり、蝶々のような使い魔の姿も見え始めた。しかし、どれだけの使い魔が現れようとも三人は全く退くこともせずに突き進む。そして使い魔の死体が積みあがっていくだけだった。
やはり、マミが魔法少女としてのプロであるというのならば、アリアたちも銃の扱いに関してはプロ。攻撃が通用するのであれば、使い魔相手でも後れを取ることはない。
果たして、どれだけ走っただろう。
どれだけの使い魔を倒しただろう。
どれだけの銃弾を撃ったのであろう。
ついに三人は最奥部手前の扉の前にまで来ることが出来た。
「この先に、魔女がいるわ」
「この扉の向こうに……」
「ここまでありがとう。けど、使い魔はともかく、魔女を相手にするのは魔法少女の役目よ」
「生身では危険なの?」
「えぇ、使い魔の何十倍も。中に入ったらさっきと同じ結界を張ります。後は、私に任せてください」
「……はい」
魔女がどういう物であるのかは分からない。しかし、先ほどの使い魔の何十倍も強い敵であると彼女が言うのであれば、残弾も少なくなってきた自分たちが行っても足手纏いにしかならないのであろう。
とりあえず念のためにあかりの持つアリアと同じ種類の拳銃であるコルト・ガバメントに魔法をかけてもらってから、扉を開ける。
ここは私の夢の薔薇園
誰にも邪魔されない薔薇の庭園
私と私の仲間たちで作る夢の園
けどあるのは色も花もない草の苗
足りない足りない
色が足りない
足りない足りない
花が足りない
どこにあるの私の花
どこにあるの私の色
どこにどこにどこに
どこにどこにどこに
どこにどこにどこに
見つけた見つけた花と色
綺麗な綺麗な赤い色
少し奇妙な花の束
仲間が見つけてくれる花の束
花から出てくる赤い蜜
それを一つ飾ってみよう
できたできた綺麗な薔薇園
でもまだ足りない
足りない足りない
色が足りない
足りない足りない
花が足りない
もっともっと見つけに行こう
奇妙な花と赤い蜜
探しておいで私の仲間
探しておいで私の薔薇を
あなたもよって見てごらん
きっと酔いしれるその匂い
目が奪われる甘美な景色
これが私の理想の園
私の薔薇園
開園です
幾重ものドアを開けたような感覚。一体どれだけのドアをくぐったのだろう。気が付けば、自分たちは通路の中に立っていた。
先ほどの迷路よりも格段に狭い、恐らくこの場所で戦うなど決して無理と断言できるほどに狭い、トンネルのような場所だ。
そこから少し進むと、手すりがあった。白くて、巴マミの腰位の高さがある手すり。その間は人一人分くらいが通れそうなスペースが開いている。
そして、その先に見えるのは大きなドーム状の空間。いや、もしかしてこれは温室なのか。あかりは以前、希望ヶ花市という街にある植物園にプライベートで訪れたことがあったのだが、その時に見た施設にどことなく似ていた。あの時は、優しい園長やそのお孫さんという女の子と出会って仲良くなって―――。
いや、それはともかくである。
「あの真ん中にいる大きいのが、魔女ですか?」
「そうよ」
「グロイわね……あれって生き物なの?」
「人間の負の感情が生み出す怪物ってところね。意思なんてないはずだわ」
「そう」
部屋の真ん中には溶けたチューリップのような頭と、蝶の羽を持ったこの世の物とは思えない紛れもなく怪物が存在していた。最初から怪物であるとは知っていた物の、魔女というネーミングだけではその怪物の名前を当てることなどできなかったであろう。
「少し下がってください」
マミは、初めてふたりと会った時のようにマスケット銃を地面に突き立て、それを中心とした黄色い結界を張る。
「じゃぁ、行ってくるわね」
「気を付けてください!」
「……」
マミは、一度二人に対して笑みを浮かべる。しかし、それも一瞬だけ、魔女に対してはその綺麗に浮かべていた三日月は真っ平となって、歯を食いしばっているよう。
「憧れの先輩の前で無様な真似、さらせない物……『
「マミ……」
双剣双銃のアリア、それは神崎・H・アリアが二つの銃、二つの刀を使用することからつけられた二つ名である。
アリアは思い返す。先ほど、マミは来年東京武偵高校を受験する予定だと言っていた。恐らく、その受験のための準備の時に自分のことを知ったのだろう。
全くあかりと言い彼女と言い。どうして自分はこうも同性から尊敬の念を集めるのであろうか。自分にはそんなつもりはないというのに。
だが、あこがれて悪い気がしないのも確か。アリアは、そんなマミに対して言った。
「マミ、決して油断しないで。私たちが後ろにいるからって言って焦らないで。自分のペースでやりなさい」
「……はい!」
なんだか、マミは勇気づけられたような気がした。憧れていた先輩から言葉をかけられたからか。違う、自分のペースでやるようにと言われたから。なんだか、気が楽になった気がした。それでいて、引き締まる。不思議な気持ちだ。
「ハァッ!」
♪solti ola ♪
マミは、その場から飛び降りながら、周囲に幾重にもマスケット銃を出現させる。そして、一斉にハンマーが撃ち落されて弾丸が発射される。
弾丸は、すぐさま魔女とその周囲に着弾。先制攻撃は成功した形だ。
「まだまだ!」
♪amaliche cantia masa estia e♪
地面に着地したマミは、着地したタイミングで攻撃を受けないように顔をあげるとすぐに走り出す。
すると、それから一瞬だけ遅れて茨のムチが彼女が着地した場所に向けて伸びる。もし一瞬でも判断が遅れていたのならば、足をからめとられてピンチとなっていたであろう。
「ッ!」
♪sonti tolda i♪
マミは、急停止すると、かぶっていた帽子を取り、下に向ける。すると、中からは何丁ものマスケット銃が現れてマミの周囲へと突き刺さった。
「ッ! ッ! ッ!」
♪emalita cantia miadistia♪
マミは、その銃を撃っては投げ、撃っては投げを繰り返して魔女に弾を当てていく。途中で足に何か重い物を感じる。休みなく動き続けたからか。だが、彼女は構わずに銃を撃ち続ける。魔女は、たまらず巨大なハート形の椅子のような物をマミに投げると、蝶の羽を羽ばたかせて空へと逃げる。
「ッ!」
♪a litia♪
マミは、その椅子を避けると再び魔女に向けて銃を放とうとした。しかし。
「あッ!」
♪dista somelite esta dia♪
何かが足に絡みつく。見ると、手のひらサイズくらいにまで小さくしたような何かが自分の足に何体もしがみついていた。先ほども重さは疲れから来るものではなくこの小さなものが足にしがみついた重さだったのだ。
そして、それは何体も連なって黒いツタとなって身体を縛り付けた。そして、そのツタの先は魔女の元にある。
「キャッ!」
♪a ditto i della♪
マミの身体はまるで吊り下げられるかのように宙を舞った。
「クッ!」
♪filioche mio solti ♪
それでも、マミは逆さのままで魔女に向けて銃を撃ち続ける。だが、上手く照準が定まらない。鞭によって振り回されている状態で狙いを定めるなど恐らくアリアであってもできなかったであろうことだ。
「アァッ!」
♪tola solti ola i♪
ムチは、振り子のようにマミの身体を大きく振り、ついに彼女は壁にたたきつけられた。壁には小さなクレーターができ、どれだけ強い力で彼女が叩きつけられたのかが見て取れる。
このままではマミが危ない。しかし、それを歯がゆい思いでしか見られないアリアとあかり。
「マミさん!」
「あのツタが厄介ね……」
♪amaliche cantia masa estia♪
どうにかしてあのツタを切らなければならない。しかし、どうやって。
刀。いや、生身の自分が魔女に対して接近戦を仕掛けるなんて自殺行為に等しい。使い魔の時でさえ接近戦の危険性を知っていたからこそ刀には魔力を込めてもらわなかったのだから。
では、銃はどうだ。しかし、自分の銃は残弾がほとんどない。それに、あんなに動き続けるツタを狙い撃つことが出来るか。それもマミを縛って振り回すことが出来るほどの強度。同じ場所に何度も弾を当てなければならないのに、どうやって。
「ッあ!」
♪e sonti tolda i emalita cantia mia distia♪
マミは、再び逆さづりにされた。そして、まるでマミを食べようとするかのように魔女は口らしきものを大きく開く。もう、一刻の猶予もない。こうなったら危険を承知で飛び出すしか。
「ぶ、武偵憲章……第7条」
「え?」
それは、たびたび彼女たちが語っている武偵憲章の一つだ。武偵憲章第7条、それは。
「悲観論で備え……」
「楽観論で行動せよ!」
♪alita della maliche sonta dia mia sonta della♪
その時、最初にマミが斉射し、地面に着弾した幾重もの銃弾から紐が伸びる。二人と初めて会った時とまるっきり同じものだ。それが、魔女に絡みつくと、魔女はそれに気を取られてマミから目線を外してツルを動かすことも忘れてしまったかのようだ。
このタイミング、もしかしてマミはこれを予想して備えていたというのか。という事は。
「あかり、UZIまだ弾は残ってたわね!」
「あ、はい!」
「ガバメントを」
「はい!」
♪i testa mia testi ola♪
二人はどこか気持ちのいいほどに言葉を交わすと、アリアはあかりからガバメントを受け取る。そして結界を出ると共に照準をツルに向けた。
「風穴ァ!」
「ハァァァァ!!!」
♪solti ola♪
引き金は引かれた。その弾丸は、全てツルの同じ個所に当たり、削り、千切れる。
「切れた!」
「今よ! マミ!」
「ありがとう、アリアさん! あかりさん!」
♪solti ola i amaliche cantia mia dia, ♪
これにより解放されたマミは、反転し、胸元のリボンを引き抜く。
リボンは、瞬時に巨大な銃へと変化する。それは、先ほどまでのマスケット銃と呼ぶにはあまりにも大きい物だった。大きく、絢爛豪華のソレは、銃というよりもはや大砲に近い物だった。
これこそ、魔法少女巴マミの最大の切り札。物理的にはあり得ない程巨大な銃を使用するというまさしく物理的な要素を超越した魔法少女ならではという武器。
そして、それから放たれる弾丸こそ、彼女の必殺技。直訳すると、《究極の一射》の名を冠するマミ最大最強の技。その名も。
「ティロ・フィナーレ!!」
♪dia♪
すべては、その一撃で終わった。
黄色の弾丸に撃ち抜かれた魔女は、その身体を爆散させ、消滅。マミは、地面に降り立つと、その場に落ちてある黒い宝石を拾い上げた。
すると、結界は歪み始めて徐々に消え、終には元の路地裏へと回帰する。
「終わったの?」
「えぇ、魔女は倒されました。コレが、その証拠です」
「その宝石は何?」
「これはグリーフシード、その説明は後からします。それより……」
「え?」
マミは、グリーフシードと呼ぶ黒い宝石を仕舞うと、変身を解きアリアに言った。
「ありがとうございます。私の意図に気がついてくれて」
それは、あの銃のことだろう。
やっぱりあれは彼女が張った予防線の一つだったのだ。
確かに主に戦う役目を担ったのはマミだった。しかし、その中でピンチに陥った際にアリアやあかりに助けてもらえるようにとあの銃に魔法をかけていたのだ。
「本当は、あんな事頼むのはいけないことなのに……」
本来、たった一人で戦う魔法少女の自分が他人の手を借りるというのはご法度なのかもしれない。しかし、こと今回に限っては助けてくれるであろう人物がそばにいた。もしかしたら、少し甘えてしまったのかもしれない。
「依頼人との契約は絶対に守れ」
「え?」
「あの魔女を倒すのに共同戦線を張る。それが依頼だったから全力を持って協力をした。それでいいじゃないかしら」
「はい!」
「そう、よね……」
恐らく、これが相手が戦うことに慣れていない一般人であればできなかったこと。マミが、アリアやあかりの事を信頼していたからこそなしえた事であるのだ。
「それに、武偵憲章でも言ってるじゃないですか!」
「……えぇ」
そう、それは武偵が一番守らなければならないこと。武偵憲章の一番最初に書かれていることだ。それは―――。
「「「仲間を信じ、仲間を助けよ」」」
意図せずして、ハモってしまった三人は笑いあう。そして思う。
あぁ、生きてこうして笑いあうことが出来てよかったなと。
きっと、誰か一人がかけてもこうして笑いあうことはできなかっただろう。誰か一人でも大怪我を負っていたとしても笑うことはできなかった。三人ともに無事に魔女を倒して結界から出ることが出来たからこそ、こうして笑いあうことが出来るのだ。
マミ思う。こんなにうれしいことは無いと。憧れの先輩と、武偵の先輩と、一緒に戦うことが出来た。誰かと一緒に戦うことが、こんなに頼もしいことであった等、すっかり忘れていた。
あの日、自分のことを師匠と言ってくれた《あの子》と離れてから初めての事だ。
「っと、それで魔女や魔法少女のことについて、教えてくれるんでしょ?」
「えぇ、私の家に来てください。ケーキと紅茶もご馳走します」
「やった!」
三人はともに歩きだす。この見滝原の街を。
別の依頼でこの街にあかりと共にきて、こんな奇妙な事件に遭遇するなんて。恐らく誰も信じてくれないであろう。
そう、これはきっと夢だ。いつもいつも命がけで任務に臨んでいる自分たちに与えられた、友という夢。
それは、さっきまで確実に悪夢であった現象が、まぎれもなく幸せな空間へと変貌した瞬間。
けど、彼女たちはまだ知らない。この出会いが、再び悪夢に変わるという事を。
彼女はまだ知らない。もしここで出会わなければ、後に自分が傷つく必要はなかったという事を。
彼女たちは知らない。二人の少女の事を見下ろす赤い目玉の生物がいたという事を。
彼女は知らない。今日、この日に三つ編み赤眼鏡のとある少女が見滝原総合病院に入院したという事を。
彼女たちはまだ知らない。
アリア組は、最初は銀行強盗とかと戦わせる予定だったのですが、なんかそれだと面白みにかけると考えた結果このクロスオーバーになっちゃったぜ!
あ、因みに作者は小説派ではなくアニメ派なのでキャラとか設定はほとんどアニメで出てきたものまでです。
この小説、本編と外伝を……(希望する方を選んでください)
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一つの小説でやってもらいたい
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本編と外伝を分けて投稿してもらいたい