SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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 ついにこの章だけでも五十話突破。これ映像にすると映画よりも長いんじゃないか(なお次の章も五十話を余裕で超える模様)。


メインシナリオ外伝 第二章 第50話

 金属と、金属がぶつかり合う音が聞こえた。

 けど、痛みは襲って来なかった。いや、正確にいえば今自分が味わっている痛み以上の痛みが与えられることはなかった。

 もしかしたら、これ以上の痛みはないと言うことなのかもしれない。死、以上の痛みなんて、あるわけがない。そんなものを人間が経験して、正気を保っていられるはずがない。だから、きっと、自分はもう死んでいるのかもしれない。そう思っていた。

 しかし、一つの疑問が岩沢を襲う。あの音はなんだ。金属と金属がぶつかり合う音。なんで、そんなものが起こる。自分の頭に振り下ろされたソレなら、最低限自分の頭の骨が折れるか砕ける音がするのならわかる。

 でも、聞こえてきたのは、人間のソレからは絶対に発しないような音。これは明らかにおかしい。

 それに、そう、あの音。

 自分が金属と金属と呼称したあの音も、考えてみれば少しだけおかしいものだった。どちらかといえば、あれは、そう。

 昔テレビで見た鍛冶場の音のような。

 金属を石で叩くあの音に、似ていたような気がする。

 それに、なんだ。この―――。

 

「きら、めき……」

 

 光り輝く、火花は。

 

「ま、間に合った!」

「あなたは、陸上選手の……?」

「速見瀬奈! よろしくね! 岩沢さん!」

 

 岩沢は、自分の目を疑った。そう、自分の目の前にいたのは、短距離走者として有名な女性。速見瀬奈だったのだ。

 なぜ、そんな人物が、あたかも、宝石のように光っている剣を持ち、自分の前に立っているのか。彼女には理解できなかった。

 

「ハァァァァァァ!!!」

「え?」

≪miss!≫

「やっぱりダメか! ハァッ!!」

 

 その時だった。ドアの方からもう一人の人物が、瀬奈と同じ剣をもって斬りかかったのである。

 だが、その攻撃はあまり効果が無いようで、その人物、男性はダメージを与えられなかったことを知ると、すぐに攻撃方法を変え、瀬奈や自分から怪物を引き離すために蹴りを入れた。

 

「ッ!」

 

 その蹴りでもダメージは入らないものの、力業によるゴリ押しによって怪物、アナザーポッピーを岩沢と瀬奈から離すことに成功。アナザーポッピーは、ちょうど、梓と岩沢の中間地点に倒れ込んだ。

 

「時雨、やっぱり」

「あぁ、俺たちの攻撃はコイツには効かないようだ」

「えっと……」

 

 と言いながら、男性、押切時雨は岩沢とアナザーポッピーの間に、そして瀬奈の方はその向こう側にいる梓に駆け寄った。

 ちなみに、ドラマや映画には一切興味を持っていなかった岩沢。目の前にいる男性が俳優であることなんて、全く知らぬことであった。伊丹の件と言い、人気俳優なのかそうでないのかいまいちハッキリとしない男である。

 

「梓ちゃん大丈夫?」

「う、うぅ……」

 

 瀬奈は、半透明になっている梓の身体をさする。どうやら返事もできないほどに衰弱してしまっているようだ。

 無理もない。彼女のゲーム病はかなり深刻。もしもこれ以上ストレスが与えられれば、消えてしまう可能性が高いと、先ほどもう一人の仲間から教えられたばかりなのだ。

 なんとかしなければ、でもそのためには―――。

 

「一体、これは……」

 

 突然現れた陸上選手と、見知らぬ男性による戦闘に、呆然と見ているしかなかった岩沢。ただ自分に分かることと言ったら、自分はどうやら一時ではあったが命の危機を脱したと言うことだけ。とはいえ、いまだに現在進行形で命の危機に瀕しているのは変わりないのだが。

 

「岩沢さん!」

「え……」

 

 と、その時であった。その場にもう一人の人物が現れる。

 その人間は、彼女も面識のある人間であった。

 

「小夜、さん……」

 

 そう、大治小夜である。小夜は、岩沢の頭から流れている血を見た瞬間、ドクターとしての顔つきとなって彼女の手を触れたり、包帯に滲み出ている血の痕跡をみたりしてから言う。

 

「傷が開いている……それに、麻痺の兆候……脳出血の再発……急いで手術しないと……」

 

 やはり彼女も優秀なスーパードクター。少しの触診と観察で、まるでそれまで見ていたかのように相手の状態を把握する事ができるなんて、岩沢はまるで他人事のように感心するしかなかった。

 

「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

 と、その時だった。床に転がっていたアナザーポッピーが急に動きを再開したのだ。

 いや、そもそも自分たちの攻撃がアナザーポッピーにダメージを与えられていなかったことは明白。ここまですぐに起き上がることなんて、想像の範囲内の話だ。

 

「どうする、“キザイ”が到着するまでまだ時間がかかるぞ」

「き、ざい?」

 

 キザイ、とは一体なんのことなのだろうか。よくわからない。それに、彼ら自身のことも、小夜や瀬奈、そして男性が持っている武器。あれがいったいなんなのか、全く意味がわからない。

 ただ、一つ分かることと言ったら、これ以上この場所で戦ってはならないと言うことだ。

 

「岩沢さん、あまり動いたら……」

「あ、あんたたちがなんなのか、私にはわか、らないけど……ここで、たたかわない、で……」

 

 そう、彼女たちが何者であるのかはわからないが、少なくとも戦うのであればこの場所ではない場所で戦ってもらいたかった。

 ここには、梓にとって大事な、軽音部の思い出が詰まっているのだ。これ以上、その思い出に泥を塗るような真似、してもらいたくなかった。それが、岩沢の思い。

 そして、その思いは彼らにも痛いほど伝わっていた。

 

「分かってる! まずは、このアナザーポッピーをどうやって外に出すかね!」

「だがどうやってだ、窓から投げ下ろすにも、この部屋の窓は跳ね上げ式。しかも異様に細かい窓枠だ。これじゃ、子供すらも通らない」

 

 そう、瀬奈と時雨が言った。

 もちろんこの場所でそのまま戦うつもりなんて毛頭なかった。しかし、だからといってどうやってこのアナザーポッピーを外に出すかが問題だ。

 窓を見ると、ソレが跳ね上げ式という少々古いものであり、しかも一つの窓に六つ八つもついているから、子供一人分が通るスペースすらもない。

 故、窓を開いてアナザーポッピーを外に出す、なんて答えはナンセンスだ。では、どうすれば。

 

「お、音楽室……」

「え?」

 

 ここで、答えを捻り出したのは他でもない。この学校で何年も教師として勤めているさわ子であった。

 彼女は、痛む肩を抑えながら言う。

 

「この部室の隣の、音楽室。今度、改装工事をする予定なの。だから、そこの窓からなら……」

 

 と言った。なるほど、確かに一度壊れる予定であるのならば、そっちのほうが気が楽でいいのかもしれない。

 

「これが、音楽室の鍵。すぐ隣だから、わかりやすいと思うわ……」

「分かった。瀬奈! アナザーポッピーを音楽室に!」

「うん! やぁぁぁぁぁぁああ!!!」

 

 というと、時雨は音楽室にむけて、瀬奈はアナザーポッピー目掛けて走り出した。

 

「ハァッ!!」

 

 そして、その勢いのままアナザーポッピーの腹部を蹴る。陸上選手の脚力によって蹴られたアナザーポッピーはその強さにより廊下に飛び出て(当然ダメージはないが)、瀬奈はソレを追って音楽準備室から出ていった。

 音楽準備室には、梓とさわ子、小夜、そして岩沢の四人しか残っていなかった。

 

「ッ、流石に……怒られるわよね……」

 

 と言いながらさわ子は痛む身体をおして立ち上がった。

 

「もしかして、改装工事っていうのは……」

「えぇ、出鱈目よ。でも、このこの部屋を戦場にするくらいなら……」

 

 と、言いながらさわ子はすぐ近くにあった壁にその背中を預ける。かなり辛そうだ。よく見ると服もボロボロで、相当のダメージをうけたことが容易に想像できた。

 

「その傷、あなたも診ないと!」

「わ、私のことはいいから、中野さんと、岩沢さんを……」

「ッ……はい」

 

 傷が痛むだろうに、それでも自分の生徒を、そして生徒ではないものの一人の少女のことを思いやる彼女の先生としての器量、並大抵のものじゃないだろうと、小夜は思っていた。これが本来あるべき先生の姿であるとも。

 とりあえず、梓に関しては先ほど時雨が言った通りとある“キザイ”が来ないことには対応することができない。だから、今自分ができることと言ったら岩沢の出血がこれ以上ひどくならないように応急処置をすることくらいか。

 

「岩沢さん、横になって。あまり体を激しく動かしたら傷がますますひどくなるから」

「横になれ……か。最初に出血した時も、バイト先でそう言われたっけ……」

 

 岩沢は遠い昔を回想するかのような、しかし実際にはまだ一ヶ月も経たないようなあのバイト先での二人の医師の対応を思い出していた。

 あの時もまた、自分は脳内出血を起こして、横になるように言われた。それが、救急車が来るまでの一番の対処法だからと。

 

「フゥ……」

 

 岩沢は、徐に一息を吐いた。そして―――。

 

「ごめん、小夜さん。あたし、やることが、あるから……」

 

 そういうと、ゆっくりと、しかししっかりとした足取りで立ち上がる岩沢。

 本当であれば、麻痺によって立ち上がることもままらないというのに、なんという精神力か。そう思わせるほどの岩沢の迫力に、小夜は思わず彼女を止めることを忘れてしまっていた。

 

「岩沢さん。ダメです。無理をしたら……」

 

 分かっている。これ以上無理をしたら自分は、取り返しのつかないことになってしまうのだと。

 でも、それでも、彼女は、その言葉の主である梓に笑顔を向けて言った。

 

「大丈夫。これが、私の……人生最後の歌になるから……」

「え……」

 

 と、その時だった。近くで、ガラスが割れる音が響いたのは。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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