SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ外伝 第二章 第54話

 バグスターウイルスの集団と戦闘中だった戦士達。

 元から消耗戦になると言うことは分かりきっていた。しかし、歴戦の勇士達であっても今現在の状況は流石にまずいものがあった。

 敵は学校に向けて、あるいは梓に向けてまるでゾンビ映画のごとく密集してしまっている。その状況で学校に影響を与えてしまうような大技は使えないし、なんならそこにいる伊丹達一般人―と言っていいのか分からないが―に危害が及ぶ技を使う事ができない。だから、接近戦でちまちまと敵を学校から追いやることしかできない。

 また、拳銃を主体にして戦うしかない伊丹達普通の一般人と言ってもいい人間達もまた仮面ライダーやキラメイジャーに弾が当たらないようにしなければならないため援護射撃もできず、基本的に武器をバイクやトレーラーに取りに行かなければならない仮面ライダーG3ーXもまた、なかなか戦闘に参加できずにいた。

 

「くそ! 何もしないでただ見ているだけしかできねぇのかよ!」

 

 伊丹はそんな状況に苛立ちを隠せなかった。

 

「焦ったらダメです、伊丹さん」

「そうですよ! 元々敵を倒すなんてことできなかったんですから!」

「馬鹿野郎! その中でもなんとかしなきゃならねぇんだろ!」

「けど、確かにまずいですよこれは……」

「はい……彼女達が早く到着することを祈りましょう……」

 

 と、後ろに下がっている伊丹、芹沢、出雲、そして仮面ライダーG3ーXは会話を交わしていた。

 そうだ。自分たちにはある秘策があった。けど、そのための人員も、機材も、まだ学校には到着していない。

 それに、その秘策は、今も前線で戦っている泊の発案による推論を元にしてたてられた作戦。故に、実証実験なんてものはしておらず、本当に効果があるのかも定かではない。

 もしも、その作戦が失敗に終わってしまったら、効果がなかったとしたら、攻略法として間違っていたら。そんな不安がよぎらない彼らではなかった。

 しかし、それでも何かを、なんとかしなければならない。焦燥感に駆られるのも無理はないだろう。

 彼らだって、プロなのだから。市民の味方なのだから。今、学校の中には苦しんでいる市民がいるのだから、その市民を守るのが、自分たちの役目なのだから。

 だが、どうすればいい。これ以上自分たちに何ができる。

 どうすれば。

 

「あ、なんだ?」

「どうしたんです、伊丹さん?」

 

 その時だった。伊丹が空を見上げた。いや、正確に言えばどこかから聞こえてくる≪ソレ≫の発信源を探していたのだ。

 

「聞こえねぇか? 声が?」

「声?」

「あぁ……」

 

 そう言われた仮面ライダーG3ーXもまた、耳をすませてみた。すると―――。

 

♪何度も強がって 傷つけ合った♪

 歌が、心の中に入って来た。

 

♪自分をすこし♪

「聴こえる、誰かが、歌っている……」

「だろ?」

 

 確かに耳をすませばかすかに聞こえてくる女性の歌声。それは、前線で戦っているもの達には全くと言っていいほどに聞こえてこないほどに、小さなものだった。

 当然だろう。その声は、マイクなんてものを通さずに放たれた声であったのだから。

 しかし、次第に、その声は大きく、そして鋭くなってきた。これは、スピーカーから聞こえてくるのだろうか。誰かが、マイクで拾って、それを学校中のスピーカーで流しているのか。いや違う。声が大きくなったわけでも、スピーカーを使っているわけでもない。

 誰かの歌が、誰かの声が、心の中に直接響いている。そんな感じがした。

 

♪愛しすぎてたの あなたに今全部♪

「これは!?」

「あ、なんだこの声?」

「この声……あの≪二人≫じゃ、ないよね……」

「あぁ、聞いたことのない歌声だ……」

 

 と、キラメイグリーン、そしてブルーは初めて聞く歌声に、ついその手を止めてしまった。

 なんだろう。この歌声。聞いていると、とても心が穏やかになってくる。

 満たされていく。

 あったまって、幸せな気分になってくる。それほどまでに尊い歌。

 しかし、その歌声に耳を貸している場合じゃなかった。

 二人は気が付かない。その声に気を取られている間に、背後に迫ってきたバグスターウイルスの存在に。それに最初に気がついたのは伊丹であった。

 

♪合わせられる♪

「おい、後ろだ!」

「え?」

「馬鹿やろう!」

 

 伊丹は二人に大声で声をかけた。だが、ほんの数瞬の油断が命取りとなる。そんな戦場で隙を見せたのは不味かった。

 二人は咄嗟に反応することができず、バグスターウイルスはナイフを持った手を振り上げた。

 伊丹は、無駄だと分かっているが、しかしそれでも何もしないよりはマシだという悲観的な思いで、銃弾をバグスターウイルスに向けて撃った。

 すると、思いがけなかったことが起こる。

 

♪それが本当の♪

≪HIT!≫

≪HIT!≫

≪HIT!≫

「何!?」

「え!?」

 

 なんと、彼の撃った弾丸は、バグスターウイルスにヒット、つまりダメージをあたえることに成功したのだった。

 思いがけず通用した攻撃に、伊丹含めて全員が一瞬呆然となってしまう。何の変哲もない、というのは間違いだが、拳銃の弾丸がそれまで一切攻撃を防いでいたバグスターウイルスに通用した。その意味を、ほとんどの人間が理解できなかった。

 

♪強さだと思うの♪

「まさか、ハァッ!!」

 

 そう、その答えに最初に辿り着いたのは、事前に彼女からその情報を知らされていた泊だった。

 伊丹達とは違い、ブレイブらと共に危険な前線で生身で戦っていた泊。

 彼は、目の前にいた三体のバグスターウイルスに向けて対未確認生命体用の弾の入った拳銃の引き金を引いた。

 

≪HIT!≫

≪HIT!≫

≪HIT!≫

「やっぱり、そうか!」

 

 その銃弾は、まるでそれまで通用しなかったことが嘘であるかのように容易くバグスターウイルスにヒットしていき、次々とその身体を倒し、消滅する。

 やはり、≪彼女≫の考えは正しかったのだ。

 

♪同じ音で 同じ呼吸で 歌うように 生きよう♪

「どう言うことだ! 泊刑事!」

「照井警視! これは、岩沢さんの歌です!」

「なに!?」

 

 瞬時に事情を聞いてきたアクセルに、泊は銃を構え、敵を見失わないようにしながら答えた。

 

「嘘、でもあの子!」

「さっき見た時怪我をしていたぞ! あんな状態で歌えるのか!?」

 

 と、キラメイグリーン、ブルーの二人がそれぞれに目の前の敵に斬りかかりながら答える。やはり、二人の攻撃もバグスターウイルスに通じるようで、これまでの鬱憤を晴らすかのように次々とバグスターウイルスを倒していく。

 しかし、その中で泊は悲しげな顔を見せる。

 

♪ふたり ユニゾンで♪

「歌っているんだ。覚悟を持って……死を覚悟して……」

「え?」

「……」

 

 彼に分かった。その声が、何度も何度もリピートしたソレとは全く違うと言うことが。

 その声には、その時に感じていた、あの尖った雰囲気なんてもの感じ取れないと。

 その声が、自分の命を削ってまで歌う、魂を込めた歌声であるのだと。

 

♪同じ未来へ 同じ想いを♪

「歌っている……」

 

 これで三度目。ほぼ全員が、その動きを止めてある一点を見つめた。それは、岩沢雅美が、そして自分たちの仲間が、中野梓がいるはずの音楽準備室。

 その中で、一体どんな光景が繰り広げられているのか、今の彼らには分かるはずもない。しかし、それでも見つめてしまったのは、その声に確実に、覚悟を感じたからなのだろうか。

 

♪重ね合って 歌うよ たしかな愛のメロディ♪

「ハァッ!!」

 

 耳をすませなかったのは、ただ一人。仮面ライダーブレイブだけだった。

 ブレイブは一通りのバグスターウイルスを倒すと、剣を構え直すと言った。

 

「今は、目の前の執刀に集中する……彼女の覚悟に応えるためにも」

「飛彩先生……あぁ!」

 

 そんな泊の返事に呼応したかのように、アナザーポッピーは新たなバグスターウイルスを出現させる。

 果たしてこの歌声が、彼女の体力がいつまで持つか分からない。

 ならば自分たちのするべきこと。その答えは一つ。

 

「バグスター切除術を再開する!!」

 

 バグスターを切除して、梓を救う。

 それがきっと、彼女の願いだと、そう信じて。

 そして、彼女ならばきっと救えるはずだと信じて。

 

♪寄りかからぬように 寄り添い合って 自分の足で歩いていけるわ 手は離していいの♪

「い、岩沢さん……」

 

 梓は、目の前の光景にそれ以上の声を出すことができなかった。

 あぁ、あの時とは違う。昨日とは、全然違う、歌声だ。

 身も心も焦がすような、魂を込めたロックな歌じゃない。

 バラード、それもきっと、彼女だったら絶対に歌わないような、歌。

 でも、どこか彼女の雰囲気を残した歌。

 けど、その歌詞がとても心に突き刺さる。潤してくれる。洗われるような気がしてくる。

 そうか、これが、私たちの歌の意味。

 

♪心をずっと 繋いでいたら はぐれはしないでしょう♪

(私にとって、歌は……私の心の叫びを伝えてくれる、心の中で燻っていた気持ちを伝えるためのものだと、そう思っていた)

 

 岩沢は歌いながらに思う。自分が今までしてきたことは確かに間違いじゃなかった。

 でも、こと今回は、間違っていた。自分が、彼女に届けるべき歌は、心を曝け出した、積み上げたものを全部ぶっ壊して進ような、そんな過激な歌じゃない。

 彼女を救う歌。

 いや、救えるか救えないかじゃない。ただ、彼女に届けたかった歌があった。

 

♪同じ音で 同じ呼吸で 歌うように 生きよう ふたり ユニゾンで♪

(思わず声に出してた。歌にしてた。歌詞も、メロディも無かったのに、自然と歌になっていた。これが、歌を楽しむってこと。これが、本当の音楽なんだ)

 

 別に作っていたバラードの曲。自分は、その、自分の歌を彼女に届けたいと思っていた。

 でも、ソレじゃダメだと思った。何故、と聞かれると、分からない、としか言いようがないけれど、でも、確かにそう感じた。

 自分の曲じゃ、彼女を救うことは叶わない。彼女を本当に救うためには、自分たちの歌。

 自分たちの良さが、岩沢雅美と放課後ティータイムが合わさった歌が必要だった。

 それが、彼女を救える唯一の方法だった。

 

♪同じ視線で 同じ夢を 見つめながら 歌うよ 名もなき 愛のメロディ♪

(ちゃんと歌えているか、分からない。でも、これが、あたしの選んだ道。あたしの人生……あたしの、歌、音楽、なんだ……)

 

 梓は、この歌を聞いて、笑ってくれるだろうか。

 その歌に、どういう感情を持ってくれるだろうか。

 考えるだけで、怖い。

 けど、今まで他人の気持ちなんて考えてこなかった。自分自身のことしか考えてこなかった歌よりも、充実感があった。

 

♪一人きりよりも 二人で生きていく方が 勇気も 覚悟も要るけど♪

 

 歌っている。自分は今、本当の歌を奏でている。

 そして、その歌が、誰かの希望になる。

 もっと、この歌をその誰かに届けたい。そんな、後悔が浮かんでくる。でも。

 

♪同じ音で 同じ呼吸で 歌うように 生きよう ふたり♪

(これがあたしの人生なんだ……こうして、歌い続けていくことが、それが、生まれてきた意味なんだ……あたしが救われたように、誰かを救っていく。それが、私の人生……)

 

 彼女は本望だった。

 何故なら、一番聴かせたい人に、聴かせることができたのだから。

 

♪ユニゾンで♪

(見つけた……)

 

 彼女は、やり切ったのだから。

 

 フゥ、という浮遊感と共に、彼女は重力にその身を任せざるを得なかった。

 最後の一言を伝え終えた後、最後の一音を歌い終えた瞬間、まるで、それがタイムリミットであったかのように、彼女はその身を倒したのだった。

 彼女は、二度と遡ることのできない川を渡ろうとしていた。

 でも、不思議と怖さはなかった。

 辿り着いたから。自分の人生の頂点に。

 もう、彼女が“学校”へと向かうことはないだろう。

 この世界で見つけたから、自分が生まれた意味、生きている意味。そして、人生の意味を。

 彼女は、満足して逝くのだ。

 

「岩沢さん!!」

 

 少女の叫びを、子守唄にして。

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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