SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
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始まりは、文字だった。
黒塗りの背景に白色の文字で現れたソレの次に現れたのは、雲海の中を進むなにか。鳥か、はたまた飛行機か。しかし、その光景は自分にとっては見慣れたもの出会ったため、一つだけわかることがあるとするのならば、その景色がもし偽りのものであったのならば、かなりリアルに近いソレであるということくらいだ。
次に現れたのは、深い霧の中木々の中を進むなにか。
そして最後に、草原をかけて行った視点は、草を巻き上げ、崖の上にいる馬に乗った人間を移して、その向こうにある巨大な建造物を映し出した。
中学二年生。それは、人生において最も充実した時期。そして、子供と大人との境目であるともされる時期。
ある者は、将来の夢のために旅立つ準備をし、ある者は部活動言うとう青春に汗を流し、ある者は子供として楽しむことのできる最後の時間を謳歌する。
そんな、貴重な貴重な時期。
けど、世の中にはそんな貴重な時期を有意義に過ごすことを選ばなかった人間がいる。
少女は、そんな貴重な時間を誰か他人のために使うことを選んだ。
少女は、貴重な友達と過ごすことのできる数限りない時間を浪費することを選んだ。
少女は、すでに夢に向けて旅立ちを決めていた。
学校は、すでに彼女にとっては邪魔なものになりかけていた。
本人は気が付いていない。しかし、それが少女にとって最も不幸であり、最も残酷な事実であり、そして助けを求めている誰かにとってはこううんなことであった。彼女が、そんな過酷な人生を選んでいると知らずに助けられる他人にとっては。
そんな、彼女の過酷な人生をしっている者がいた。
彼女の、小学生の時からの友達。親友。
この話は、そんな少女たちからある誘いを受けたそんな時から始まる物語、である。
「えす、えー、おー?」
「そう! 私の会社が出資してたから三つ手に入れられたの! だから、私とすずかとなのはの三人でするの!」
高町なのはは、とある休日に親友の月村すずかの家での茶会に誘われた際、同じく親友であるアリサ・バニングスから謎の誘いを受けた。
えすえーおーとは何であるのか。英語であると考えると、『SAO』であると思うだが、それが何であるのか検討もつかなかった。
「あ、アリサちゃん。まずはなのはちゃんにSAOが何なのかの説明をしないと……なのはちゃん、ここ何ヶ月かこっちに帰ってきてもいなかったんだし」
「あ、そうよね……」
と、すずかにたしなめられたアリサは、言葉の勢いで立ち上がってしまったその身体を再び椅子の上に戻す。
そう、実はなのはがこの街に、彼女たちの下に帰ってくるのはおよそ三ヶ月ぶり。今年の四月の始業式の日に会ってから全く会っていなかったのだ。
別に、彼女が不登校だからとか、不良生徒であるからというわけじゃない。
実は彼女は、ある世界で軍人のようなものをしているのだ。多くの世界の人を守る軍人を。
とはいえ、そんなこと学校の先生たちが知るよしもないため、彼女たちの通う学校の先生たちはなのはのことを不良生徒であると認識しているのであるが。
「にゃはは……それで、SAOってなんなの?」
「SAOっていうのはね……」
「ゲームのことよ」
「ゲーム?」
「そう、それもただのゲームじゃないの!」
「VRMMORPGっていう新しいゲームなの」
「VR……えっと」
また新しいワードが出てきた。しかも、今度はかなり長い。
RPGというのは、ロールプレイングゲームであろうことは予測できるが、ソレ以外はさっぱり分からない。
「とにかく! これを見なさい!」
といって、アリサが見せたのが、冒頭にもあった物。そのゲームのPVであるのだ。
「えっと、これって本当にゲームなの? なんだか、とってもリアリティがあった。
時空管理局。それは今現在のなのはの就職先のような場所。
この世界、この地球とはまた別の異世界に本部を置くすべての次元世界を股にかけて犯罪者を逮捕したり、危険な物体を確保したりということをしている組織である。
そんな、異世界の組織になぜ彼女が入局しているのか。それは、この三人の中で彼女にのみ備わっている特殊能力に関係がある。
それは、魔法。彼女は、魔法少女であるのだ。時空管理局の人間は魔導師と呼んでいるそうだが。
今彼女がみたSAOのPVは、少し短い物であったが、しかしその景色はとても綺麗なもので、自分が仕事で訪れた異世界の景色とよく似ていた。
自分のように異世界を見に行ったことがある人間ではないこの世界の人間が、ここまでリアリティのある世界を描ける物なのだろうか。
「本当に見たことのあるアンタがいうんなら、やっぱり茅場晶彦って天才なのね」
「茅場晶彦?」
「SAOを作ったプログラマーだよ。本職は、量子物理学者らしいんだけど」
「物理学者が……ゲームを作ったの?」
「ま、そういうことみたいね」
何ともおかしいというか、奇妙な話である。ゲームに近しい職業の人間が作るのならともかく、ゲームとはなんら関係のなさそうな職業の人間がソレを作るなんて。
「んで、そのゲーム。ゲーム機も含めて三つ手に入れたの。だから、アンタも一緒にプレイしなさい!」
「え? でも私……」
そんなことをしている暇なんてない。そう、なのはがやんわりと断ろうとした瞬間、すずかがいう。
「なのはちゃん。アリサちゃん、このゲームを手に入れるためにお父さんに無理を承知でお願いしたんだよ」
「え? 無理を承知って……」
そんな、ゲームを手に入れるのに苦労するなんて思えないのだが。どういう意味なのだろうか
「実はね、SAOって初回販売本数1万本しかないソフトなの」
「1万本って、たったの?」
こんな面白そうなゲームが、1億人以上いる人間の内1万人にしか渡らない。いや、全世界を含めるともっとなのかもしれないが、ともかく、たった一万本しか販売されないソレを手に入れるには並大抵の苦労が必要であることは分かる。
「それで、ゲームを作るために日本中の大きな会社にお金を出資してもらって、アリサちゃんの会社もその中の一つなの。それで、そのお礼にSAOを貰うことができたんだけど、本当は一つだけのはずだったのを、アリサちゃんはお父さんに……」
「ううんもう大丈夫。分かったから。ありがとう、アリサちゃん」
と、なのはは笑顔でアリサに言う。それ以上は、もう何も言わないでも分かったから。
本来、アリサは融資してもらった企業に礼として配布される予定だったSAO1本を、さらにもう二つ父親に頼み込んで手に入れたのだ。
幸い、にして、融資した会社の中には、SAOの受け取りを辞退した企業が多かったようで、アリサの父親の願いは意外にもあっさりと受け入れられて、見事三本のゲームを手に入れる事ができたそうだ。
「なのは、中学卒業したら本格的に向こうに移り住むことになるんでしょ?」
「あっ……」
「せめて、せめて思い出に残るようなこと、したいじゃない」
そう、なのはは中学を卒業したらアリサの言うところの向こう、つまりミッドチルダに移り住むことになっている。
実は来年、なのはは時空管理局の航空戦技教導菅になることが決まっているのだ。なのはがここ三ヶ月学校に来れなかったのはその準備や、教導する立場になるにあたっての訓練校への入校が重なってのことであったのだ。
だが、それを除いても彼女のプライベートは度返しで、仕事、任務、訓練、その繰り返しで友達と遊ぶ時間なんてなかった。
これは、時空管理局がブラックな企業体質だからではない(多くの人間からはブラック企業として認識されてるらしいが)。なのは自身の意思で休みをほとんど取ることが一切なかったからだ。
もし、自分が休んでいる間に誰かが悲しい目に遭っていたら、もし自分が弱いせいで誰かを悲しませてしまったら、もし自分がいたら助けられたはずの命があるのなら、そう考えたら休んでなんていられなかった。
だから、彼女は仕事人間になった。なってしまった。
その結果、花の中学生時代は無惨にも過ぎようとする。アリサは、そんななのはの人生が悲しくなった。
本当は、もっと自分の人生を大事にしてもらいたい。もっともっと自分勝手になってもいい。全ての人間を助けることのできる。そんな神様みたいな、いや神様にもできない様な所業を誰も望んでいない。ただただ、自分のできる限りの事で、多くの人たちを救えれば、それでいいんじゃないか。アリサは、そう考えてならなかった。
しかし、アリサは知っていた。なのはが、そんな性格ではないということを。自分の事よりも誰かの事を大切にするなのはが、自分勝手になることなんてできないなんてことを。
彼女は感じていた。いつか、いや違う。近いうちに、なのはと永遠の別れをすることになると。多分、最後も無茶をやらかして、誰かのために自分を傷つけて、そして、死んでいくのだろうと。自分じゃ、彼女を止められない。すずかも、きっと止められない。今のなのはの仲間であるフェイトやはやてもきっと、止められない。
なら、せめてなのはには笑って逝ってもらいたい。それが、今のアリサの願い。なのはのための思い出を一つでも多く作って、なのはに、辛いことも痛いこともあったけど、自分やすずかに出会えて、たくさんの思い出を作れて、いい人生だったと、そう思ってもらいたい。それが、今の彼女の願い。それしかできない、アリサの残念な願い。
「……」
なのはは、そんなアリサの思いを知らない。知るわけがない。
人は、自分のこと以上の事を知ることはできないからだ。
でも分かる。アリサはきっと、自分の事を思ってくれているのだと。
学生生活の良い思い出、文化祭も、体育祭も、そして多分修学旅行にも行くこともできずに終わる学生生活の中に、少しでもいい思い出を残してもらうために、とても珍しいゲームを手に入れてくれたのだろう。
なら、答えは一つ。
「ねぇ、そのゲームっていつ発売されるの?」
「10月。でも、正式なサービス開始日は11月7日だけど」
「そっか……なら、11月に有給取らないと」
「ッ、じゃあ……」
「うん。楽しみにしてるね、アリサちゃん」
なのはは、アリサにとびっきりの笑顔でそう返事を返す。
とても久しぶりに感じる。なのはの、こんなにもすがすがしいばかりの綺麗な笑顔を見るのは。きっと、なのはが魔法に出会った直後からずっと見たことのなかったような顔だ。
アリサは、そんな彼女の顔を見て嬉しく思うのと同時に、懐かしいような気持ちになる。そして、言った。
「私も、ううん。私たちも楽しみにしてるわ。なのは」
「うん!」
この後、アリサはずっと後悔することになる。この時、なのはをSAOという悪魔のゲームに誘ったという事実を。
自分のせいで死ぬこととなる命がある。それを背負ってこの人生を歩むこととなることを、アリサはこの時露にも思わなかった。
それは、元平凡な小学生だった私、高町なのはとそのお友達に降りかかった小さな事件。
信じたのは友達の願い。手にしたのは地獄への片道切符。
友達の純粋な思いを聞き入れた私に待っていたのは、たくさんの別れと、出会い、そして二度と取り戻すことのできない時間。誰かの事を思う事、それは私自身も大切なことだと思っていた共通した願い事。
けど、それで友達が傷つくことになるなんて、思いもしなかった。
私は戦う。これ以上、友達が傷つかないように、今度は友達と一緒、だから私は大丈夫。
魔法少女リリカルなのは。未来が変わった別の世界の話が今……始まります。
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本編と外伝を分けて投稿してもらいたい