SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
≪HIT!≫
「彼女の歌、聞こえなくなったな……」
「大丈夫だ。大門未知子がいれば、な……」
「そうか……」
アクセルが目の前にいたバグスターウイルスを切り倒した直後、呟いた言葉に、ブレイブは一切微動だにせずに言葉を返した。
その、あまりにも自信に満ち溢れた言葉に、アクセルはそれ以上の言葉を発せずに戦いに戻っていった。
確かに、自分も最初は彼女の術式の選択の失敗を疑った。しかし、カルテだけ見ていては患者のことを見ることはできない。実際に患者である岩沢に会い、つたない手でギターを触り、そして何とか声を出そうとしている姿を見た瞬間に感じた。
彼女にとって、歌がどれだけ大切なことなのかと。
そして自分は大門の真意に気が付いた。
果たして、もし自分だったらそんな事していただろうか。
患者の気持ちや生い立ち、そしてその心の支えまで考えて術式を変えることができただろうか。
きっと、できない。
確かに、自分は変わることができた。仮面ライダーとなり、宝生永夢と出会い、数々の修羅場を乗り越えたことによって、最初は患者との関係をドライで切り抜けていた自分も、少しは患者と関わることを考えるようになった。
しかし、今でも時々患者の心という物が分からなくなる時がある。患者の真意を測りかねて、怒らせてしまうことが、また術式の理解を得られないことがある。
だが、彼女は違う。自分とは違って、完璧に岩沢雅美の心を知り、そして彼女にとって大切な物を守るために術式を変えることができた。
やはり、最初に感じたとおりだ。自分と、大門未知子は違うのだと。
かくいう大門未知子も、あの場面において賢木という感応接触能力者に出会っていなかったら、果たして術式を開頭術から内視鏡に切り替えることができたのかは定かではない。
あの場に、あの男がいた。それが、岩沢の運命を変えたと言っても過言ではない。それまさしく、奇跡といっても間違いではなかった。
≪HIT!≫
≪HIT!≫
≪miss!≫
≪miss!≫
「畜生、また攻撃が効かなくなっちまいやがった!」
「まさか、あの子の歌が止まったから?」
「かもしれないですね」
と、捜査一課の三人が撃ち尽くした弾の交換をしている間に話す。
そう、先ほどまでは全部通っていた攻撃。彼女の歌が聞こえていた頃には全て当たっていた攻撃が、徐々にまた通らなくなり始めていたのだ。
きっと、岩沢の歌が止まってしまったから。そう推測するのも無理はないだろう。
「フッ! このままだとまた攻撃が通用しなくなるぞ!」
「その前に、アナザーポッピーを倒さないと!」
だが、どうやって。まだまだ自分たちの前にはバグスターウイルスが大挙しており、アナザーポッピーの傍までたどり着くことすら困難な状況。
再びバグスターへの攻撃が通用しなくなっているというこの状況下において、いかに迅速に、かつ効率的にバグスターウイルスを駆逐していったとしても、おそらく彼女の歌の効果時間が終わるその時まで持つという事はないだろう。
ならば、どうすればいい。
どうすれば。
一方、その頃校舎内にいる大門たちもまた考えあぐねていた。
「でも、手術をするって、どうやって? ここには、手術道具も何もないんですよ!?」
明日那の言葉に、大門も黙り込んだ。確かにそうだ。この学校がもし、医療を学ぶための学校、医科大学だったとしたらまだしも、ごく普通の学校が、医療器具を置いているわけがない。
麻酔だってそう。彼女の意識を完全に遠のかせて、痛みなく手術を行うには麻酔の存在が不可欠である。麻酔は何とか持ってきた。だが、それを使う麻酔科医がいなければ手術に差し支えが出る。
さらに言えば、この校舎内には滅菌されているスペースがどこにもない。汚い、というのはあまりのも失礼だが、ホコリにまみれた普通の教室の中で手術をやったとして、その後の感染症が恐ろしい物となるのは明らかな話だ。
やはり、ここは病院に運び込んだ方がいい。そう一瞬だけ考えた大門は、しかし、正直その考える時間すらも惜しかった。
「そんな時間はない。すぐに手術をしないと手遅れになる……」
脳出血というのは、あまりにも厄介な病気だ、という事は以前にも説明したと思う。迅速な判断。迅速な処置。そして、血種の取り残し等のイレギュラーを起こさないこと。それが、後遺症を回避するための最善手。
前回の時はまだ、血管のほとんどが破れかけた状態で病院に運び込まれたために出血は最小限度で収めることができた。
でも、今は違う。今回意識消失まで進行していることから考えて、おそらく彼女の血管は完全に破れてしまっている。
病院に連れて行く時間すらも惜しいというのはそのためである。
だが、だからと言ってどうする。先も言った通りこの場で手術をするというのはあまり現実的な方法と言えない。むしろ、無謀ともいえる賭け。
「やっぱり、ここで手術をしよう」
しかし、その賭けに打って出ることにした。
「ここで!?」
「一応麻酔もメスも用意してきたから。看護師もいるし」
といって、彼女は明日那の方をチラリと見た。
「でも、こんな衛生状態の悪い場所じゃ……」
「海外の戦場は、こんなもんじゃなかった」
「え?」
「そういえば、大門先生は軍医としていろんな国にいたことがあったとか……」
「……」
と、小夜が以前見た彼女の経歴を思い出しながら言った。
そう、彼女、大門未知子は日本以外の様々な国で手術を行っていた。
時には、戦地に赴き、そこで手術のイロハを学んだこともある。小夜が言っているのはその事なのだ。
その際の手術場は、吹き曝しの時もあり、虫や土埃が舞う環境の中、銃弾や兵器の破片、またやけどを負った負傷兵を何人も何人も手術をして、助けていた。
それを考えたら、この学校はまだマシな方である。まぁ、ある種戦場であることには変わらないが。
「とにかく、私のバッグから麻酔を」
と、彼女が本気でこの場所で手術をしようとした、その時だった。
『そんな場所より、もっと手術しやすい場所を“持ってきた”』
「え?」
外から、拡声器を使用した声が流れて来たのは。
そして、その声と共に現れたのは二台の大型トレーラーだ。
「あれは!?」
「鳳さんのところに頼んだ機材! やっと来たんだ!!」
と、戦闘中だったキラメイジャーの二人が反応する。
しかし、変だ。
「けど、一台は“アレ”が乗っているとしても、もう一台は!?」
そう、自分たちが頼んだもの。それを考えると、トレーラーなんて一台で余りあるほどの大きさである。それなのに、もう一台のトレーラーがある意味がよく分からなかった。
と、その時だった。
『梓ァァァァ!!!』
「あ……」
梓にとって、懐かしい声が、しかし違う声が、聞こえて来たのは。
「澪、先輩……違う、アレは!」
そうだ。まだいたじゃないか。自分が、異様な反応をしてしまった人物が。
自分のことを気にかけて、何度か遊びに行こうと誘ってくれてた、あの女性が。
彼女に、声がよく似ているから。ただ、それだけの理由で、自分が拒絶反応を起こしてしまっていた。あの、少女が。
「シノ……さん」
桜才学園生徒会長、天草シノ。桜が丘高校に到着の瞬間だった。
シノは、開かれていくトレーラーの中にその姿を現すと、マイクを手に持って言う。
『梓、お前に言いたいことが、そして、聴かせたいものがあって、ここに来た!』
「え?」
『それは……』
その瞬間だ。
「あ、あ、あ〝、あ〝、あ〝」
アナザーポッピーがトレーラーの存在に気が付いたのは。
そして、意識のない怪物は無情にも攻撃態勢をとる。
「まずい! 逃げろ!」
伊丹がシノに向けてそう叫んだ。
だが、シノは一切動じることなくその姿を見ているだけ。恐怖で足がすくんでしまったのか。
「……」
いや、違う。その目は、恐怖におびえる人間のソレではない。むしろ、その顔は―――。
「!!」
刹那、音符型の光の弾がシノに向かった。
その攻撃を、その場にいた戦士たちは誰も止めることができない。
そして―――。
「シノ先輩!!」
梓が見ている中で、巨大な爆発が、シノと、そしてトレーラーを包み込んだ。
初めてだった。彼女が、シノのことを“先輩”とつけて呼んだのは。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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ヴァルキリーズfeatボーイ
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プロジェクトSAO
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アルティメットカオス
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無への逃走
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肯定あるいは否定
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フィクションスターズ
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〜いろんな著作物から以降はいらない
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タイトルはそのままでいい