SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
巨大な爆発音が鳴り響いたその瞬間。彼女は、外の様子を見ていなかった。いや、正確には見えなかった。外は既に真っ暗闇で、彼女がいたであろう場所は本来灯のない場所であるため、爆発によってできた一瞬の光は、彼女の視界を遮り、彼女の事を目視するのは至難の業だっただろう。
「シノ、先輩……うぅ……」
しかし、あれだけの爆発を一般人であるシノが受け止められるはずがない。考えたくない想像が数多の中に浮かんできて、そのストレスだけでゲーム病が進行してしまう。
せっかく≪彼女≫が緩和してくれたというのに、このままだと元の木阿弥になる。そう考えたのだろう。小夜は、その≪彼女≫をある男性が持ってきたストレッチャーに乗せたのを確認すると言う。
「大丈夫。天草さんは、無事よ」
「どうして……」
「だって、彼女のすぐそばには……」
あの人たちがいるはずだから。
小夜もまた、数日前の事を思い出す。
『音楽を届ける?』
「えぇ、そう」
『それってもしかして、≪あの時≫みたいに?』
小夜が電話で連絡を取っていたのは、現在地球に残ったキラメイジャーの仲間である時雨と瀬奈の二人であった。
役者である時雨は休憩中、瀬奈もまた、競技を終えてクールタイムの真っ最中だったため、連絡が取れたのは幸いなこと。
そんな二人に対して小夜が提案したこと、それはかつて自分たちがヨドンヘイムと戦いを繰り広げていた時に結成したバンドの再結成であった。
その名も―――。
「うん……≪キラメイバンド≫の復活」
キラメイバンド。それは、ある怪人による計画を防ぐために、そして何よりもある一人の少年が手術ができるようにと勇気を届けるために魔進戦隊キラメイジャーの五人が結成したバンドの事である。
結成から披露するまでの時間が短く、まさに寝る間も惜しんで練習をしたあの頃が懐かしい、そう小夜は回想する。
そんなキラメイバンドの再結成。それは、岩沢を、そして梓を元気づけるためにはどうすればいいのか。それを考えた結果の小夜なりの決断であった。
「二人はそれぞれ別々の事情で音楽について悩んでる。一人は、自分の命を懸けてでも歌を歌う事が自分のやるべきことだと。もう一人は、仲間を喪ったショックで立ち直れなくなりそうな子。その二人をいっぺんに救うには、私たちの歌であの時のように勇気づければいいんじゃないか……そう思ったの」
『だが、話を聞く限りではその岩沢という女の子、相当頑固なようだが、俺たちの演奏で心が動くのか?』
『それに、梓ちゃんって子も……』
「確かに難しいことかもしれない……でも……」
≪せめて、自分の明日くらい変えないと≫
「でも、それでも私たちにできる事は、歌を届ける事……今の私たちが少しずつ変わっていけば、きっと未来だって帰ることができるはず。彼女たちの未来を……」
一人の力じゃ何も動かせない。当然だ。人間の力なんてそれっぽっちの小さなものなのだから。けど、それでもたくさんの力を合わせれば何かができるかもしれない。たとえ一人の力じゃ動かすことのできない巨大な岩石でも、大勢の人間の力があわされば少しくらいその動きを変えて、その先にある大きな濁流の流れさえも変えられるかもしれないから。
そう、自分たちの行動一つが、世界を変える鍵になるのかもしれないのだ。だから。
『でも、バンドの再結成って言っても……』
『あぁ、充瑠と為朝はSAOの中。バンドにとって重要なボーカルとギターがいないんじゃ話にならない』
確かに、時雨の言う通り。自分もそれは危惧していた。
かつてのキラメイバンドのメンバーとバンド構成は以下の通りだ。
ボーカル・為朝(キラメイイエロー)
ギター・充瑠(キラメイレッド)
ベース・時雨(キラメイブルー)
キーボード・瀬奈(キラメイグリーン)
ドラム・小夜(キラメイピンク)
この内の二人、それも音楽を奏でるのに一番大切な存在である二人がかけてしまっている。この状態で、バンドの再結成なんてできるはずがない。それは、小夜も考えていた。
かといって、他にメンバーを探すにしても自分たちには他にボーカル、ギタリストの知り合いなんていなかった。皮肉なことにそれに該当するメンバーが自分たちが勇気づけたいと願っている岩沢と梓なのである。
できる事なら、自分の知り合い。いや、自分たちじゃなくてもいい。少なくとも音楽に情熱をもって取り込んで、そして誰かを勇気づけるような人間が、必要なのだ。
だが、どうやってそんな人間を探せばいいのか。これが一番の難問だった。
けど、彼女は知っていた。自分と同じように、自分たちと同じように二人を助けたい、そう願う女の子がいる事を。
「ボーカルは……」
と、その時だった。病院の庭で電話をしていた小夜に話しかけて来た一人の少女がいた。
「私に、任せてもらえませんか?」
「天草さん」
そう、天草シノ、だ。
「話を少しだけ聞かせてもらいました。そのキラメイバンド……私にも参加させてください」
と。シノは、電話の奥の二人に伝えた。井戸田からの叱責を受けた後、小夜に電話した時、シノは聞いたのだ。キラメイバンドという、少し音楽をしたことのある人間で作った、バンドのこと。
そして、そのバンドで梓や岩沢を元気づけるという事を。
「歌なら、自慢じゃありませんけれど多少は歌えます。それに、私だって梓の事を救いたいんです」
それが、自分の役目。アイドルとして有象無象の誰かのために歌うんじゃない。ただ、一人の少女を否、二人の少女を救うためだけに歌を歌う。それが仲間たちへのエールにもつながると信じて。
『でも……』
「お願いです。私にできる事……いや、これは……」
シノは、一度胸に握りこぶしを置き、意を決したように吐き出した。
「私にしかできないことなんです!」
「天草さん……」
この熱意。相当なものだ。きっと、彼女自身考えに考え抜いた結果導き出した答えなのだろう。
それに、彼女の周囲に見える。彼女自身が持つ、色鮮やかなキラメンタルが。
その幻想にも似た光景を見ただけで、小夜は、そして電話の向こうの二人は判断した。判断ミスではなく、純粋なる切望をもって。
『分かった。ボーカルは、任せた』
『お願いね、シノちゃん!』
「ありがとうございます!」
こうして、NEWキラメイバンドボーカルが決まった瞬間であった。となると、残る問題はもう一つ。
『なら、あとはギタリストだけだな』
『えっと、天草さん。誰か知り合いにギターをやっている人いないの?』
「ギター……」
正直言えば、いない。というか、自分の知り合いで音楽に造詣がある人物自体がいなかったからそんなこと考えたこともなかった。
いや、しかしだ。もしかしたら彼女ならば何か知っているかもしれない。
「少し待っていてください」
と言うと、シノは携帯電話を取り出してある場所へと連絡を取っていた。その人物は―――。
『はいもしもし』
「畑か、今電話いいか?」
『えぇ、勿論』
桜才学園報道部、畑ラン子である。
『今校内新聞の見出しに脚色していたところですので』
「それは私の事じゃないだろうな?」
『……さぁ、どうでしょう』
どうやら図星だったようだ。これは、学校に帰ったら一つ問いただしてみなければならないかもしれない。
『それで、質問とはその事でしょうか?』
「あ、いや違う。畑、お前全国の高校の報道部に情報網を持っていたな?」
『えぇ、確かに』
彼女は以前、生徒会室にて言っていた。自分は全国各地、あらゆる高校の報道部、または報道に関連する人物と連絡を取り合っているのだと。ならば、彼女なら知っているのではないか。
「その誰かに、ギタリストの知り合いはいないか?」
『……少々お待ちを』
「なるべく近場で、すぐに会えるもの。それから、腕の立つ者がいいんだが……」
『分かりました』
と言って、ラン子は携帯を切る。それから数分後。新幹線のような速さでラン子から電話がかかってきた。
「早いな」
『えぇ、存外早めに見つかった物でして』
見つかった。つまり、ギタリストが存在していたという事なのか。
「それで、その人物は……」
『えぇ、埼玉県にある学園都市の中学生で、学園祭の折にギターとボーカルをしていたとのことで……』
「学園祭のギターとボーカル、か……」
『えぇ、ですがその腕前は確かだと先方は言っています』
情報だけではよくわからない。その腕前とやらを確かめなければならない。
ただの学園祭でギターを務めていたというだけじゃ上手であるとは限らないし、何より、音楽をこよなく愛する物でなければこのバンドは成功するはずがない。そう、彼女たちは考えていたから。
『心配でしたら某動画サイトにも上がっているそうなので確認をと』
「動画サイトに? 分かった、そのバンドの名前は……?」
結果的に、このギタリストとの出会いの副次効果で、彼女たちは出会うことになる。
もう一人の≪桜≫の名を冠した人物に。
今、桜が集おうとしていた。
本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。
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