SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
「岩沢雅美をすぐに検査室に、あとは技師に任せる」
「了解しました」
と、指示を仰いだ鳳鏡夜のボディーガードは、岩沢雅美の乗ったストレッチャーを大門から譲り受けると、すぐにCTスキャンのできる検査室へと彼女を運ぼうとした。
「いや、その必要はねぇぜ」
だが、その瞬間である。一人の日焼けをした男性が現れてボディーガードを止めたのだ。岩沢の状態から言って一刻を争う必要があるこの時に、不必要なことで時間を取られてはならない。それを、ボディーガードも知っていた。
故に、数人のボディーガードが彼の前に立って言う。
「何者だ?」
だが、その警戒は無意味であった。ボディーガード達に対し、背後にいた鏡夜は言う。
「待て。その人物には見覚えがある」
「は?」
「何故あなたがここに? 確か、呼んだ覚えはないはずだが?」
「へへ、水無月のお嬢様にお呼ばれしてな」
なるほど、と言いたげに鏡夜は一度眼鏡を上げる。正直、自分もまた、彼を呼ぶべきか悩んでいたことがあった。彼の力があれば、検査に割く時間を割愛でき、すぐに手術に取り込むことができるから。
だが、調査によれば彼はいわゆる女遊びが好きなチャラ男と言ってもいい人間。そんな人間のスケジュールを、それもいつ手術が必要になるのか分からないような手術に呼ぶのは不可能と考えていた。
しかし、なんでもチャレンジしてみるもの。今も戦場にいる少女は、今回の事件の事を知って、彼に連絡を入れたようだ。この辺りの詳しい事情に関しては後に話を聞いてみることにして、男性は岩沢のすぐ近くによるとその傷がついた頭に触れる。
「なるほど……こいつはこの前よりやべぇ。大手術になるぜ」
「そんな事分かりきってる。私は手術の用意するから、出血の場所と数、それから内臓や骨にも異常がないか調べといて」
と、大門は男に冷たく言うと手術の身支度を整えるために車の中に向かった。
「へいへい、人使いの荒いことで」
「無駄口叩いてないでさっさとやる」
「分かったよ」
まるで長年連れ添った仲間のようなかけあい。まさか思ってもみないことだろう。この二人が、ついこの間、居酒屋で知り合ったばかりで、今回で会うのが二回目という間柄だと、息がまるであってるというのに、それは、彼が大門に、女性に合わせるのが得意だからなのか。
というか、である。
「何なのこの車の数……」
明日那は驚かざるを得なかった。いきなりとんでもない数の車が集まったと思ったら、ある車は変形するし、またある車からは様々な機材が降りてくる、またある車からは多くの看護師や医師らしき人間も現れるし、まさしく病院の手術室がそのままここに現れたかのような感じになっている。
いったいこれはなんだ。そんな、至極当然な疑問を、しかし彼女は呈する時間もなかった。
「ほら、アンタも一緒に来る!」
「わぁ!」
と、大門に連れられた明日那。こう連れていかれるという事は、彼女もまた手術をサポートする看護師として手術に立ち会うという事。まったくもって急速に発展する事態に対して、岩沢の事を診ていた男性、賢木もまた苦笑いを浮かべるしかなかった。
「たく、とんでもない現場に出されたもんだぜ……」
と。まさか、自分がこんな―――。
「おいおい、これって……」
「陸上自衛隊の装備をそのまま買い取った。今のこの時代、何が起こってもおかしくはないからな」
「そんなことしていいのかよ……」
「特段問題はない。買い取ったと言っても、これは新車だ。元々自衛隊にあった設備を持ってきたわけじゃないからな」
賢木は、鳳の淡々とした説明にどこか恐ろしさのようなものを感じ取っていた。
その日、彼は鳳の父親が経営する病院にて大きな手術があったためそれに参加していたのだ。かなり長時間のオペであり、さらに腫瘍が摘出するのに1mmのズレも許されないような繊細な手術だった。そのため、接触感応能力者である彼が外部から呼ばれたのである。
そして、手術が終わり、帰ろうとしたその時だった。鏡夜から特別にある物を見せると言われて案内された場所。それが、病院の地下に駐車してあった数多くの緑色の配色の車たちだった。
それを見て、賢木は冷や汗をかいてしまった。なぜなら、そこにあるのは普通の病院にあってはおかしいはずの車の数々だったから。
「陸自の使っている野外手術システム。まさか、個人の病院でこれを持つとはなぁ……」
野外手術システム。それは、日本では昭和63年に導入された医療施設のない場所で外科手術を行うためのシステムの事だ。主に、手術用機材の滅菌を担当する滅菌車。医薬品、輸血用の血液などの保管を行う衛生補給車。それから手術用機材の保管やレントゲンフィルムの現像などを行う手術準備車。そして、実際に手術を行うための手術車。
それからシステムに必要な電源や水の補給のための発電機を運んでいる車やらタンクトレーラーやら、大層な物がずらりと並んでいた。
本来これらの機材は陸上自衛隊が所有しているようなもの、というか逆に民間の病院では所有できないはずなのだが。
「怪人怪物が跋扈するこの世の中だ。大病院の中ではこの野外手術システムの導入を政府から許可されている病院も多数ある。うちの病院もその中の一つだ」
という事らしい。
「分かった分かった。つまり、うちの病院はこれくらいの装備を備えられるくらいの大病院だって自慢したいんだろ?」
「そういうわけじゃありません。ですが……」
と否定した鏡夜は踵を返して出口に向かう際に一言。
「もしかしたら、これが必要になる時がすぐ近くに来ているかもしれない。そう感じただけです……」
「?」
果たしてどこまで先読みをすれば気が済むのだろうか。後に、実際にこの車を使用するというタイミングが来る。岩沢雅美という一人の少女を救うために。
この時はまだ彼女の性格から予想したただの想像。いや、妄想と言っても過言ではなかった。しかし、彼女がもし自分の思った通りの人物だったとしたら絶対にこの車の存在が必要になる。そう彼は考えていたのだ。
とはいえ、彼女のためだけにこの装備を用意したわけじゃない。前述した通りここ最近この世界で発生している怪人怪物騒ぎ、そのけが人の迅速な救助のために必要な機材として用意しただけ。それが結果的に彼女のために使われる。ただ、それだけだった。
「ん?」
「あれは……」
二人が地下から地上に出た時。
出口は、病院の夜間出入口のすぐ横にあったため、そこからすっかりと日が落ちて夜となった外界に二人は姿を現した。
その時、二人は遭遇した。夜間出入口から出て来た一人の女性に。
「あ……」
女性、いや少女もまた鳳の事に気が付いたのだろう。ゆっくりと近づくと深々と頭を下げるという。
「お久しぶりです。鳳鏡夜さん」
「これはこれは、かれん嬢……こんな夜分遅くに」
と、鳳もまた礼には礼を、と言わんばかりに深々とお辞儀をしながら言った。
彼女の名前は水無月かれん。水無月グループのご令嬢であり、二人はよくパーティーで顔を合わせていた、いわゆるお坊ちゃまお嬢様友達の一人、と言ったところだ。
「いえ、迎えもちゃんといますので……」
と、かれんその身体を起こすと、すぐ近くにいた黒い車体を横目でみた。そこでは、老人。水無月家に長年仕えている執事がおおり、こちらもまた鏡夜たちに向けて軽く礼をしていた。
「この病院に来たのは、やはり……」
「はい。私の、友達を見舞うために……」
と、かれんはその友達がいるであろう階を見上げながら言った。
彼女もまた、今回の事件で大事な友達を何人もSAOに捕らえられた。いわば被害者の一人だった。
水無月グループ自体は、鳳の家と同じくSAOに出資はしていなかったためバッシングを受けた企業の中には入っていなかったものの、しかしその心労はそれ以上にひどいものだったのだろう。
「鏡夜さん。のぞみやこまち……私の友達をよろしくお願いします」
「自分に言われても困ります。ここを経営しているのは、父なので……」
「そう、でしたね……」
「そういえば、かれん嬢、高校はどこに?」
「都内にある高校に通っています」
「ほう……」
鏡夜は興味深そうに眼鏡を持ち上げた。環ほどではないが、少しだけ気になっていたからだ。
「お言葉ですが、自分が今いる桜蘭高校なら、セキリュティもばっちりで安全であるのに、どうして他の高校に?」
「……」
確かに、彼女ほどの学力と財力があるのならば桜蘭高校に来ていてもおかしくはない。そう鏡夜は考えていた。しかし、実際には彼女は桜蘭高校に入学してくることはなかった。それは、何故か。
「確かに、二年位前の私だったら、それも考えていたかもしれません、でも……」
というと、彼女は再びあの階を見上げて言う。
「夢を、もらったんです」
「夢……ですか」
「はい。サンクルミエールで大切な友達に出会えて、一緒に笑って、一緒に悩んで、そうしているうちに夢を、見つけたんです。その夢のためには桜蘭高校じゃなくてもいいと、そう思えたんです」
「なるほど……夢、ドリーム……ですか」
「!」
かれんは、その言葉に一瞬だけ胸が高鳴った。偶然か、いや、しかし彼ならばあり得ることじゃないかもしれない。
「ご安心を、自分はこの男ほど口は軽くないので、この情報も、四葉家のご令嬢から決して漏らさないようにと口止めされています。軽々しく漏洩することなんてありませんよ」
「おい、なんか俺ひどいこと言われてねぇか?」
と、何故だか一人評価を下げられた人間がいる気がするが、それは放っておくことにしてだ。
「……ありがとうございます」
「いえ、夢がかなったその時は、ぜひ……うちの病院に」
「……考えておきます」
そう言うと、水無月かれんは自分がじいやと慕う執事の下に向かった。
「何の話だったんだ?」
そう、問われた鏡夜は闇の中に消えていく前にこう呟いた。
「別に、ただの金持ち同士の社交辞令さ」
因みにプリキュア5組は六人中四人がSAOに囚われてます。
本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。
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