SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
いくつものスポットライトに当てられている中、他の人間たちよりも一段高いステージ―いつの間にか運び込んだらしい―にて奏でられる須王環のピアノ。
その旋律は美しく、かつてその姿を、SAO事件が始まるその前までの彼を思い出させるほどに洗練された物だった。
しかし、その音楽は誰も聞いたことのない音楽。岩沢雅美の演奏とも、放課後ティータイムの演奏とも違う。もちろん、彼や彼の祖母が好きだった時代劇などの音楽でもない。
アドリブだ。全て、ここに来てから頭に思い浮かんだ音を、心の底から奏でたいと思った音色を、ただただ演奏しているだけなのだ。
だが、それが一番効果的だったのかもしれない。
≪グッ! ググ……≫
環の演奏が鳴り響く中、アナザーポッピーは、その体制を崩した。いや、アナザーポッピーだけじゃない。すぐ近くにいるバグスターウイルス達もまた、頭を抱えたりうずくまったりしながら、それぞれに崩れ落ちていく。
「一体、これは……」
「音楽療法……」
「何?」
この状況下において、困惑しない人間はいない。特に、鏡などのバグスターウイルスと戦ってきたドクターライダーたちは、だ。だが、その中でも泊進ノ介はこんな特別な状況になった理由に一つ心当たりがあった。
「以前、大門先生が言っていた。音楽療法……音楽を用いた、治療……」
「音楽療法だと?」
確かに、音楽にはストレスを解消し、人をリラックスさせる効果がある。
故に、ストレスによって増加するバグスターウイルスに対して効果があるのではないか。それが、大門未知子の考えであった。
確かに、彼の演奏が始まったとたんにバグスターウイルス達が眼に見える形で弱体化しているように思える。だが、それで言うなら先ほどまでだって、新キラメイバンドのメンバーによる演奏をしていたし、実際にそれで効果があった。だが、今、これほどまでの効果はなかった。
一体何が違うというのだろう。何が。
「良い音ですね」
「え?」
呟いたのは、バグスターウイルス感染症によって苦しんでいたはずの梓だった。
だが、もはやその苦しみもどこにやら、安らかな顔をした彼女は続けて言う。
「聞こえる。感じる……震えだす、この、胸で……とても、優しい音楽……」
「中野梓……」
そう、それはまるで心に舞い降りた一枚の翼の羽のよう。
自分の心に優しく舞い降りた白い翼の羽が、彼女の心を優しく包み込み、癒してくれる。そんな気がした。
何故だろう。先ほどまでのバンドの演奏だって、いい者だと感じたのに、たった一つの楽器で奏でられるこの音楽が、とても温かいと、そう、思えるのは。
あぁ、そっか。梓は、何かを感じ取った気がした。
「きっと、さっきの演奏は、岩沢さんのための演奏だったから」
「え?」
やっぱり、そうだったのか。梓は、優しく微笑みながら小夜の言葉の続きを待つ。
「さっきの私たちの歌は、梓ちゃんのためじゃない。岩沢さんのための演奏だった。岩沢さんに、聞いてもらいたかった歌だったから……」
そう、元々自分たちキラメイバンドがあの歌を演奏した理由、それは岩沢雅美を勇気づけるためだった。と言うよりも、一人、孤独の世界で戦っていた彼女に、一人じゃないのだと、一緒に歩く仲間がいるのだと、そう教えるための歌。
そう、彼女にだって仲間がいるのだ。自分たちと別々の道を歩いているかもしれない。しかし、たった一人の事を思って、彼女に聞かせたくて必死に練習をした、あの曲を。
そうだ。自分たちの演奏の相手は、岩沢雅美だった。彼女のためだけの演奏だった。≪まだ≫、中野梓のための演奏じゃない。たった一人のための曲。だからこそ、先ほどは確かに、バグスターの攻略法としての効果はあったかもしれないが、まだそれでも半分もの力を出せていなかった。そう感じる。
「でも、あの人は違う」
「あぁ、彼は、中野梓のためだけの演奏をしている」
「たった一人のための演奏会。だからこそ、心にとっても響く、とても、エモイ演奏になってるんです」
「中野梓のための演奏……か」
誰かのための曲。たった一人のために演奏をするという努力。そして、ソレに乗せるココロ。それは、人によって全然違う物になるだろう。聞く人間も、そして演奏する人間にとっても。
興味のないような曲をいくら聞かされてもそれはストレスになってしまうし、弾きたくないような曲を弾き続けることもまたストレスとなってしまう。
逆に、自分が好きな曲を幾度となく聞いたらいつか飽きてしまうし、自分が好きで何度も演奏しているけど、もしかしたらもう飽きられているのではないかと心配する演奏家もいるかもしれない。
その間を縫った奇跡的なマッチングを果たすことができるのは、ごくわずかの可能性に賭けることができる人間だけ。そして、天才的な演奏技術と、その演奏を心の底から感じられる感受性の高い人間だけ。
今回、須王環は彼女も、そして自分自身も知らないような曲をアドリブで弾いた。きっと、それが今の彼女の心境に合う、そう感じ取ったのだろう。
だからこそ、彼女はストレスから脱し、バグスターウイルス感染症を沈めることができた。
いや、もうバグスターウイルス感染症なんてもの、環にとっては、そしてその裏で準備をしている人間たちにとってはどうでもよかった。
ただ、彼女に自分達の、そして彼女たちの曲を聞かせたい。ただそれだけを願って弾く。
それこそが、彼女に届くと信じて。
≪ッ!!≫
だが、そんな神秘的な演奏をも邪魔しようとする者がいる。そう、バグスターたちだ。
「まずい!」
「環君のところに!?」
バグスターたちは梓のストレス軽減によって弱体化はしたが、まだ動くことができていた。
結果、彼らはゾンビのような足取りを用いて須王環が今もなお演奏しているステージへと向かおうとする。
だが、環はそんな事意にも返すことなく演奏を続けていた。このままでは、彼が危険だ。そう感じた戦士たちは、すぐに環の下に向かおうとした。
その、瞬間だった。
「そんなことさせない!」
「え?」
その言葉と同時に、四人の男性と一人の女性がステージの裏から飛び出し、ゾンビのようなバグスターウイルス達の前に立った。
「あ、あれは……」
瀬奈は驚愕に目を見開いていた。そう、彼女は知っていたから。その五人のうちの一人を。
自分の陸上のコーチングもしてもらって、大事なことを教えてたくさん教えてもらった先輩だったから。
「なつめ先輩!」
真咲なつめ。スクラッチ社の開発室に勤めている女性だ。
「その横にいる人たちは?」
「あぁ、彼らは……」
等と言っている間にも戦いは始まってしまった。
「はぁッ! はぁ! ハァァァ!!!」
真咲なつめは一体、また一体と柔軟な体を生かしてバグスターウイルスを倒していく。
彼女は学生時代から現在に至るまでダンスを習っているため、その要領も用いて戦っているようだ。
「凄い……」
「彼女については何もいう事はないな、他の戦っている四人だが……」
と言いながら、鏡夜はタブレット端末を操作する。
「フッ! ハァッ!」
「まず、金髪の人間が埴之塚光邦、通称ハニー先輩で、桜蘭高校の生徒。一応あれでも三年。つまり、俺の一つ上だな」
と言っている間にも、ハニーはそのかわいらしい声とは裏腹に的確に相手の急所を狙うような攻撃を繰り広げて敵を玉砕していく。
「ッ……ッ!」
「隣で竹刀を持っているのは銛之塚崇、通称モリ先輩で同じく三年だ」
モリもモリで、激しく戦っているハニーのすぐ横で黙々と敵をしないで切り伏せていくその姿は、まさしく圧巻の一言だ。
「ハニー先輩は柔道と空手の有段者で、全国優勝の実績もある。モリ先輩も同じく、剣道全国制覇の猛者だ」
「って、三人とも一般人じゃねぇか!」
と、伊丹が叫んだ。そう、いくら空手の有段者であっても、剣道全国大会優勝者であったとしても一般人は一般人。なつめに至ってはダンスが特技というだけ。こんな、命の危機に瀕するような場所に出て来るにはあまりにも危険すぎる。そう言いたいのだろう。
だが、そんな伊丹の問いに、鏡夜はずれた眼鏡を少しだけ上げると言った。
「そう言えば、先日ハニー先輩は新しい武術を習得したと、言っていた。でしたね、四葉嬢」
「ありすで十分ですわ。えぇ、ハニーさんも、≪私も≫、少し興味がありましたから」
「私、も?」
その言葉に、かれんが疑問符を出した、その時だった。
「ハァァァァァ!!!」
ハニーが気合を込めた瞬間である。彼の背後に、桃色のオーラのようなものが見えた気がした。
「あ、あれって!」
「まさか!?」
キラメイジャーの面々は確かに以前見せてもらったことがあった。彼らの戦いを。
今、ハニーが繰り出そうとしているその技は、その時見せてもらった映像の中にあった技にそっくりなのだ。そう、まさしくそれがハニーが新たに会得した拳法。
獣の力を心に感じ、獣の力を手にする拳法。
「タァァァ!!!」
「獣拳……」
本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。
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