SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
メインシナリオ 第三章 プロローグ
私の人生って、何だったんだろう。このゲームに閉じ込められてから二週間が経った時、私は最初の町で閉じこもる生活をやめて、剣を取り、駆け出した。
この世界に、抗うために。
「フッ、ハァ!」
私が、この≪第一層迷宮区≫の中に入って、モンスターを狩り続けて、一体何日になることか。二日か、あるいは三日。時間の感覚すら忘れるほどに、私はただひたすらに目の前の敵を屠るだけだった。
それしか、私にできる抵抗はなかったから。
私が無くなった、無くなる時間は決して帰って来ることはない。これまでの一か月。そしてこれからの数年間の無駄な時間は、決して。
「フッ! ハッ! ハッ!!」
人生とは一本のレールによって形作られた路線だ。ソレから外れた人間がどうなることか、概ね理解している。
勉学に使う時間を削がれ、自分の評価を上げる手段をもがれ、そして母や父が作ってくれた道を大きく外れた自分に、一体何が残るのだろう。
そう考えながら、私はただひたすらに目の前にいる敵に、ソードスキルの≪リニアー≫という名称の物を放ち続けていた。
敵の名前、技の名称なんてどうでもよかった。ただ、自分の今、生きる意味は戦う事しかなかった。戦って、戦って、戦って、そして最後には前のめりに倒れこむこと。抗って、笑って死に逝くことしか、自分にできる事はなかった。
だから私はここにいる。
今、この第一層で一番危険なダンジョンと言われているこの≪第一層迷宮区≫で、≪死ぬために≫、私は戦っている。
「ハァァァァ!!!!」
其の時、私の≪リニアー≫による一撃がモンスターを貫き、やや後ろに倒れこみながら止まると、青白いガラス片と、ガラスの割れる音とともに、モンスターはこの世界から私より先に消滅した。
私も、いつかこうなるのだろう。その時、自分は果たして笑って死ぬことができるのだろうか。
「フゥ……」
そう思いながら、私は一息ついた。そんなことしても、この偽物の身体には肺なんて臓器ないから空気の循環するわけないのに、まるで現実の世界にいたころの面影をそこに感じてしまう。
今までのパターンから考えて、先ほど倒したモンスターがこの辺りに再出現するにはもう少し時間がかかるだろう。その間に、自分に何ができる。
何も、ない。
英単語を覚えることも。
難しい数式を覚えることも。
そして、社交辞令の言葉を考えることも。
全部が無駄。だから、何もない。
そうだ、自分の人生は空っぽだったのだ。奇しくも今回の事件に巻き込まれてしまったことにより気がついてしまった私の薄っぺらい人生。
いや、人生と言うのもおこがましいほどの、色々な物に縛られた生活。
母に縛られ、学業に縛られ、兄や父の輝かしい功績に縛られた愚かなる人間。それが、私。
そんな人間が生き残って、一体何が残る。何年もの時間を喪った自分に、誰が味方してくれる。こんなくだらない世界で無駄な人生を送った自分を、一体だれが拾ってくれる。
そうだ。だから私は戦うのだ。自分が、死ぬために。
「ッ!」
その時だ。背後から気配を感じ取った。再出現する時間にはまだ早いはずだが、しかし彼女はその背後からの気配に対して剣先を向けた。
「おっと……近づくだけで剣向けんなよ……」
と言ったのは、自分と同じ茶色のフードをかぶった人間。いや、プレイヤーと言うのだろうか。
「ゴメンなさい……」
少し過敏になりすぎていただろうか。流石に戦って死ぬと覚悟をしてダンジョンの中に入っていったけれど、殺人者の汚名を着て死ぬなんて事考えられなかった。だからその言葉は、心の底からの謝罪、のはずだ。
まだ自分に、心と言う物があるのならばの話だが。
「良い動きだった。道の途中だったから少しだけ見てたけど」
「そう、ありがとう……」
そのプレイヤー、声色からして≪自分と同じ≫女性であるようだ。私は、その姿に少し珍しさを感じた。
このゲームにログインして≪しまって≫からと言う物、自分は確かに直近二週間はダンジョンの中に入って、必死にレベルと言う物を上げて、必死にコルというお金を稼いで宿を借りて、まるで浮浪者のような生活をしてきた。
その中で、幾度となく私は女性プレイヤーと言う物を見て来た。でも、同じくらいの男性プレイヤーと一緒に動いていたり、時には女性プレイヤーだけの集団で動いている者が多くて、自分のようにたった一人でモンスターと戦っているような人間はいなかった。
いたとすれば、あとは始まりの町で最初の二週間の間の自分のように殻に閉じこもるように絶対な安全な土地でゲームクリアされる時を待っていた何もしない人たちだけ。だから、私にとってその女性は、この世界でほとんど初めてと言ってもいい程に、ダンジョン内で出会った一人ぼっちの女性プレイヤーだという事になる。
私は、その女性プレイヤーと少しだけ話がしたい欲求にかられる。しかし、もうすぐ新しい敵が再出現する時間のはずだ。私は抜いたレイピアをそのままに、クルと九十度回転してその敵が来るのを待つ。
瞬間、泥酔した人間のように足元がふらついた。ソレを見て、後ろに立った形になる女性も不思議に思ったのだろう。
「……この辺りで、どのくらい狩り続けるんだ?」
「三日、それか、四日……」
「そんなにか……そんなことしてたらそろそろ倒れるぞ。いいのか?」
倒れる。そんなことあるのだろうか。だって、ここはゲームの世界だ。本来人間が必要としている睡眠をとる必要もないし、食事をとる必要もない。それに、もう一つの欲求何て考えたこともなかった。
だから、睡眠不足や食事摂取の有無、そして過労による気絶で倒れることなんて、考えたことなかった。
それに、もしそんなものがあったとしてもだ。
「どうせ、皆死ぬのよ……」
「……」
私は、いつの間にか声に出してしまっていた。自分の中にあるとてつもなく大きく、そしてどうしようもない不安を。
「たった一か月。たった一か月で千人が死んだわ。でも、まだ、最初のフロアすらも突破されていない。このゲームはクリア不可能なのよ。たとえどれだけ頑張ったとしても、どれだけ強くなっても、どれだけ……年月が経とうとも、けっして……」
たった一か月。されど一か月。その間に千人と言う人間が死んでいった。現実世界でナーヴギアを外されたことによって死んで行った者。モンスターに挑んで死亡した者。あるいは、これからの人生を悲観し、自ら死を選んで橋から落下し死亡した者。
それだけの犠牲を払っても、まだこの第一層すらも乗り越えられなかった。踏破されなかった。ボスのいる部屋すら発見されていなかった。自分もこうして前線で根気よくボスのいる部屋を探しているにもかかわらず、その部屋を見つけることができないでいた。
そうだ。このゲームは攻略不可能なのだ。どれだけ強く成ろうとも、どれだけの時間をかけようとも。そう言う設計になっているのだ。私の中に渦巻いている絶望の螺旋は、とても大きいものとなっていた。ソレに、彼女も気が付いたのだろう。
「自殺志願者か……」
「そんな勇気もないから……こうして前線で闘ってるんじゃない……」
と言うと、私は彼女の方に向き直ると言う。
「そう、私は戦うしかないの。もう、私の人生は、取り返しがつかないから……現実に戻るのに何年かかる? 一年? 二年? それとも、一生? なんにしたって、一度レールから外れた人生を元に戻すことはできない。一度レールから外れた人間は、そのまま舗装も何もされていない道を走り続けるしかないのよ。そして、そのうち……」
その言葉を最後に、私の意識は永遠の闇の中に沈みこんだのだった。
二度と目覚めることがないはずの、真の迷宮の中に。
プレイヤー№ 108 結城明日奈(アスナ【Asuna】)≪原作:ソードアート・オンライン≫
本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。
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