SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
私は踵を返すと再び迷宮区の方へと歩き始めようとしていた。いつも主要で使っているレイピアの耐久値は、まだまだ底が知れないし、それに予備に持ち歩いているレイピアの数もそれなりにある。
今日死ぬか、明日死ぬか分からない。が、せめて予備のレイピア全てを使い捨ててしまわなければ、私は町の宿に戻るつもりなんてなかった。
「あ、待ってくれ!」
しかし、だ。背後からまた声をかけられる。これまた赤髪の女性だ。私はつい、その女性の声に立ち止まって聞いてしまった。
「まだ何かあるの?」
「まだ、名前聞いてない。私はこの世界じゃレイアースって名乗ってる」
「は?」
自己紹介。こんな時に。こんな異常な状態のときに自己紹介何て、どれだけ呑気なのだろうか。今もなお前線では戦い続けている猛者がいると言うのに。死ぬために戦っているはずの自分と同じ人間がいると言うのに。まったくもって理解不能だった。
「私はナデシコ! よろしくね!」
「私はリーファ」
「ちう、だ」
と、最初に私に出会った女性が自己紹介をした。何だろう。みんなそれぞれに個性的でいい名前を使っていると思ったのは。自分のように、本名そのままでプレイをし始めた人間にはすこしそれがうらやましいと思うところもあった。
と言っても、ナデシコに関しては本当に本名がなでしこであるため、実は現実世界と同じ名前と言う意味ではアスナと一緒なのだが、彼女はまだソレを知らない。
それにだ。
「そして、私がイインチョウですわ!」
「イインチョウ?」
「その通りです!」
「……」
一番珍妙な名前が、そこにはあった。≪イインチョウ≫とは、あの学校などでクラスのまとめ役を買って出るあの≪委員長≫の事であろうか。それにしても、そんなものをこの世界の自分の名前に使用するなんて、お茶目と言うか遊び心があると言うか。いや、元々これはゲームとして普通に世に出た物だ。少しばかりのお茶目もあったほうが本来は良かったのかもしれない。
自分のように何も考えずに本名を名乗るよりかは。
「それで、あなたの名前は?」
なんとなくこの時点で私は何か諦め境地のような世界に入ってしまった。もう、この女性たちからは逃れることができない。そんな予感が。
きっと彼女たちはこれからも自分の事を止めにかかるだろう。自殺なんてしてはならない。死んではならない。そう言って引き留めるに決まっている。
だから、ついつい私は名乗ってしまった。
「……アスナ」
と。
「はっ?」
「なに?」
と、自分の名前を言った瞬間に反応をした、確かちうという人間。そんなに珍しい名前でもないと言うのに、そんな反応するなんて少しだけ失礼なところがある気がする。そう思いながらやはりきつい目で彼女の事を見たら、ちうが頭を掻きむしりながら言った。
「いや、知り合いに同じ名前の人間がいるだけだ」
やはり珍しい名前ではなかったようだ。自分の知り合いと同じ名前。アスナ何て名前、どこにでもあるからこそ彼女は反応した。そう、私のような人間どこにだっている。アスナという名前も、アスナという人間の歩んできた人生も、そして、そのレールを外された私たちの人生もいくつも分岐するかもしれないけれど、でも結局は外されたレールの上にもう一度乗るなんてこと、できるわけがない。
そうだ。私にはただ、この世界で死ぬと言う役目しか残されていないのだ。ソレを噛みしめながら彼女は返す刀で言った。
「そう、それじゃこれで」
「アスナさん。私たちのギルドで一緒に、戦いませんか?」
「……え?」
あまりにも突然の言葉に、私はついに迷宮区へと向かう気を削がれてしった。その言葉を発したのは、確かイインチョウと言う名前の人間だ。
「ギルド?」
「と言っても、まだ暫定的なギルドに過ぎないんですけどね」
と、照れながら言ったイインチョウ。そう、このSAOというゲームの世界においては、他のMMORPGのようにギルドという一つの集団。パーティーの強化版ともいえるような物を作ることができる。
ギルドに入れば仲間とコルを分け合ったり、仲間にすぐにメッセージを送ったり、はたまた多くの人間と一緒にプレイすることで得られる経験値が上がったり、もしも鍛冶職人のようなプレイヤーがいればその人間に低価で剣を治してもらえたりと、色々な恩恵があるのだ。
だが、このゲームの中に置いてギルドと言う物を作ることができるのは第三層になってから。それを、イインチョウは知っていた。だからそれまでは、暫定的なギルドという事でメンバーを集めているのだとか。
「はぁ、またスカウトか?」
と、言ったちうの言葉からして、彼女は多くの人間に自分のギルドに入るようにとスカウトを吹っかけているようだ。
つまり、自分もそんな有象無象の一人にするつもりなのだと、尖った考えをする彼女は、ぶっきらぼうに言う。
「別にいい。ギルドなんて……私は、私一人でこの世界で戦う……」
私に仲間なんていらない。どうせ、ギルドなんて作っても、所属しても、互いに蹴落とし合ったり、自分贔屓になってしまったりするだけだから。そう考えて目をつぶった私に、イインチョウは、私がかぶっている茶色のボロボロのフードに手をかけて言った。
「……なら、せめてそのフードは取りませんか?」
「え?」
「そんなものがあっては、せっかくの綺麗な顔が台無しですよ。もっと女の子は身だしなみを良くしないと」
身だしなみ。そんなもの考えたことなかった。というか、考える余裕なんてなかった。いや、そもそもだ。
「……あなた、馬鹿なの?」
「え?」
「生きるか死ぬかのこの世界で、身だしなみなんてものを整えても意味ないじゃない。どうせいつかは、死ぬんだから……」
そうだ。死に化粧なんて物もない様なこの架空の世界において、身だしなみを整えたところで何が変わると言う。
何も変わらない。ただただ死んだときに近くにいた誰か別の人間が自分の姿を見てデスゲームという最悪な世界の中で豪華絢爛さを振りまいていると言う珍妙な人間がいたと噂になるだけだ。
そう、アスナは考えていたのだが。
「いけません!」
と、何故か叱責を受けてしまったアスナは、その手をイインチョウに握られると言われる。
「例え今が現実であれ、偽物であれ、女の子はいつだってオシャレでなければ!」
「ちょ、何するの、離して!」
と言ったが、恐らく筋力値が高いのだろう。彼女の手はどれだけ振りほどこうとしても離れることはなく、それどころかどんどんと自分を迷宮区から遠ざけてしまう。
この女性、鍛えている。このゲームの世界で。御洒落だとかギルドだとか色々と言っていたけど、彼女もこの迷宮区の直前に単身乗り込んでくるほどの猛者。考えてみれば分かることではないか。しかしなんだ、この少女の中に宿る熱い情熱のようなものは。今まで感じたことがない。爆弾に吸い込まれそうになる最後の灯のような、そんなドキドキを私に与えてくれる。一体、この女の子は。
「いいですから! 私達のギルドに一度来てください! 貴方達も、ご招待しますわ」
「え、いいんですか?」
と言って声をかけたのは三人の女性。この言葉から聞くと三人は別に彼女の言うところのギルドとは無関係であるよう。
余談だが、イインチョウをこの場所、と言うより迷宮区までメッセージを飛ばして呼んだのはちうであった。自分の筋力だけじゃ、倒れた少女一人を持ち上げるのは困難であるし、そもそも迫りくるモンスターを相手にそんな馬鹿げた真似をして命があるはずがないとそう考えていたから。
でも、その直前にちょうどリーファたちが通りかかり、更には寝袋何ていう人間一人を運ぶのにちょうどいい物を持っていたから、イインチョウが来る前にこの場所に来れていたのである。
「勿論ですわ! ほら、アスナさんも!」
「だから私は!」
といって言い争いをしている自分たちの姿を見て、ちうはため息をついてから私の肩に手を置いて言った。
「アスナ……抵抗しても無意味だぞ」
「え?」
「そいつ、コレと言ったことには異常と言っていい程に固執するから、な」
こうして、アスナは不本意ながらも彼女たちに着いて行く羽目になってしまった。前線から遠い、でも一番近い町、≪トールバーナ≫を目指して。
プレイヤー№ 109 ???(ちう【Tiu】)≪原作:???≫
プレイヤー№ 110 ???(イインチョウ【Enthou】)≪原作:???≫
イインチョウの綴りおかしいかもしれませんが、普通に書くと【Iinthou】でなんか締まらないなと思って上記になりました。
てか、この時点で大多数分かりましたかね? 彼女の正体。
本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。
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