SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ 第三章 第十話

「何が……です?」

 

 諦めたかのようなアスナの言葉に、透華は聞き返した。いや違う。諦めてるのだ。

 まるでそう、世界のすべてに絶望してしまったかのような、そんな表情を浮かべている。≪前よりもひどい≫。と、透華は思っていた。

 確かに前々から、彼女はロボットのような人間だと思っていた。社交界では作りきった笑顔で自分や他の財政界に名前を持つVIPと話して、でも、彼女自身の心はどこにもなくて、そんな感じがしていた。

 でも、ハッキリ言って今の彼女はそれよりも相当ひどい。作り物の人形よりも冷え切った感情は、どこか、自分が苦手にしている≪もう一人の自分≫を連想させてしまう。

 

「人生のレールから外れてしまった。もう、戻ることができない……私たちは、外れたままの舗装されてない道を」

「それ、昨日も言ってたな」

 

 と、ちうがアスナの言葉に無駄に補足した。彼女もまた、同じ言葉を何度も繰り返すアスナの事を壊れたテープレコーダーのように思っていた。別にバカにしているわけじゃないし、軽蔑しているわけじゃない。

 こんなバカげた世界に置き去りにされてしまったのだ。そんな感情になってもさほど不思議じゃないから。彼女の気持ちが壊れるのも分かる。三人とも、だからこそ、透華はジェラートは言う。

 

「……言っておきますけど、私。まだ何も諦めてませんから」

「勿論、私もね」

「え?」

「アスナさんが何を思ってても、どれだけ長い道のりでも、例えレールから外れても……新しいレールを敷くだけです。どれほど時間がかかっても」

 

 自分の決意。自分がどうしてここまで攻略組という危険区域にとどまっている一人として戦っていられるのか、それはまだあきらめていなかったから。人生を、未来を。透華は、アスナの言葉を踏襲して言った。

 

「……人生は、そんなにうまくいかない」

 

 アスナは、ただ独白するだけ。でも、彼女は確実に見据えていた。遠くに見える、わちゃわちゃと楽しそうにしているたくさんの少女たちの姿を。

 随分とお気楽な様子だ。こんな世界に閉じ込められて、よくあんなに笑えるものだ。透華も、よく、そんな強い言葉を出せる物だ。自分には、絶対にできっこないことだ。そう。

 

「私も、貴方達みたいに楽観的だったらよかったのに……」

 

 アスナは、強がるように言った。楽観的、何て思ってもない。彼女達は強いのだ。強いからこそ出せる言葉だったのだ。それを楽観的何て少しこじれた言い方をしてしまっているのは、アスナの、プライドが邪魔をしたのかもしれない。

 

「アスナ……疲れてるんだよ、きっと」

「そう、なのかも……」

 

 ジェラートはそんな彼女の言葉に、元気づけるわけでもなく、怒るわけでもなく、そして同情するわけでもなく端的に今の彼女の状態を言葉にした。

 疲れている、そうだ自分は疲れているのだ。こんな危険一杯の世界から早く帰りたい。でも帰ったらまた、毎日のように忙しない、将来のためと言う名前のための人脈づくりとか勉強に奔走する毎日が待っている。

 だからなのか、この世界で死にたいと思ったのは。もしかして、もう自分は元の世界に帰りたくないから、危険のあるこの世界での戦いに日々明け暮れているのか。

 自分は、未来に絶望しているから、レールから外れたからこんな人生を生きることはできないと悲観的になって、自殺志願をするかのように戦いに明け暮れている。そう思っていた。

 でも違う。本当は疲れていたのだ。すべてに、自分の元の生活にも、今の生活にも、未来にも、何の希望もない。一つたりとも、自分は持ち合わせていない。だから、自分は―――。

 

「ちょっと」

「え?」

 

 その時だ、四人の、アスナのようにローブを身に纏った集団が現れ、そのうちの一人がうっすらと顔をのぞかせながらアスナ達に声をかけたのだ。

 瞬間、顔を覆っているローブを少しだけ上げてその顔を見せた少女。その顔を見た透華は驚きを隠せなかった。

 

「あ、貴方は!?」

「シー、大声出さないで。私達あまり外で歩けないんだから」

「と……そう、ですわね……」

 

 はたから見れば、どういう会話なのか、と思われるかもしれない。だが、三人は知っていた。いや、彼女たちだけじゃない。ちうや、他の龍門渕の面々、イインチョウ達もまた知っていた。そこにいる四人の女性が、どういうプレイヤーであるのかを。

 そして、誰もが知っていて、憎み、妬んでいる可能性があるメンバーであるという事を。

 

「また知り合いですか? って、あ!」

 

 と、その時だ。龍門渕の面々に挨拶をしようと来たセノがその面々の顔を見て声を上げたのは。

 ローブを着た四人の中で、一番前に立っていた少女はその口を閉じると焦るように言った。

 

「だから、シーって!!」

「! ごめんなさい……あの、もしかして皆さんって……」

 

 セノは謝罪した。だが、無理もないだろう。なぜならば、彼女の目の前にいるのは、自分にとっては高根の花と言っても過言ではない。絶対に会う機会なんて、少なくとも面と向かって話し合う機会なんて作れないような少女たちだったのだから。

 そう、光煌めく、輝いたステージの上で歌い、踊り、そして日本中を沸かせる超トップアイドルの一組。

 

「765プロの……」

「うん、初めまして。私は天海春香、それから……」

「菊池真」

「萩原、雪歩です」

「それに、水瀬グループの……」

「水瀬伊織。久しぶりね、アスナ」

「えぇ……」

 

 765プロ、それはアイドルをプロデュースする事務所、つまるところ芸能事務所である。正式名称は『765プロダクション』であり、そしてなおかつ、あの悪魔のようなプロモーションである≪プロジェクトSAO≫に参加≪させられていた≫メンバーだ。

 なるほど、だから彼女たちはその風貌を隠しているのか。βテスターと言う、枷を履いている自分たちが糾弾されないようにと。彼女たちは、自分たち自身を守るためには、そうするしかなかったのだ。

 

「アスナ、知り合いか?」

「えぇ。水瀬グループとはよく、会食で一緒になるから……」

 

 その中でも、水瀬伊織に反応し、また伊織からも挨拶を貰ったアスナに、ちうが聞いた。水瀬伊織、その家は水瀬グループという複数の業種に手を出してことごとく成功させている大企業。つまり、彼女はそのお嬢様という事になる。当然、社交の場においてアスナと面識があった。なお、SAOは、水瀬グループもまた資金援助をしているため、恐らく今頃は他の会社ともども糾弾されているだろうと言うのは、アスナの考えであり、正解でもあった。彼女たちは知る由もないことだが。

 そして、そんな水瀬伊織は、困ったような顔をして言う。

 

「私や透華にあおいだけじゃないわ。他にも琴吹家の紬や西澤ピーチグループのご令嬢。それに、那波重工の千鶴も見かけたわよ」

 

 彼女が語った企業、それはどれもこれも日本のトップの財閥、日本を支えていると言っても過言ではない会社ばかりだ。

 

「なに!? 本当かそれ!?」

「うわ、どうしたの?」

 

 と、その言葉を聞いたちうが、驚愕の表情で言った。今までクールで押し通していたような彼女からは考えられないような顔つきに、周囲の面々が驚くが、無理もないだろう。

 なぜならば、先ほど伊織が述べた面々の中に、見過ごせない名前があったのだから。

 

「いや、那波千鶴は……知り合い、クラスメイト……だ」

「そうだったのか……」

 

 そう、那波工業ご令嬢の那波千鶴は、ちうの現実世界での学校で共に勉学に励んだクラスメイトだったのだ。だが、確かに彼女の会社であれば、SAOに資金援助を行っていた可能性も十分に考えられるし、彼女の性格ならこのSAO自体に興味をひかれる可能性もある。

 

「まさかうちの学校からも何人か来てるんじゃないだろうな……いや、ありそうな気がするな……」

 

 今まで考えてなかった。いや、考えるのを止めていた、と言ってもいいのかもしれない。彼女は、自分の学校の、いや自分がいる町の人間たちの事を良く知っていた。そして、その誰もが、このSAOというゲームに一部を除いて興味を示しそうだとも。まさか、他にも誰か知っている人間が来ているのか、そう自分の世界に入り込んだちうをよそに、話は進む。

 

「そんなに……」

「アスナさん。こんな言葉を使うのはおかしいかもしれませんけど、良かったですね」

「え?」

 

 と、イインチョウは言った。完全に、この場面で使うには不謹慎極まりない言葉なのかもしれない。でも、彼女の心の重みを少しでも取り除くには必要だった言葉なのかもしれない。彼女は続ける。

 

「お知り合いの方がたくさんいて……同じ立場に立ってくれている人がいて」

「うん……そう、ね……」

 

 そう、同じ立場の人間。同じ、人生のレールから外れてしまった、人間。でも、自分と違って、未来への希望にあふれている人間たち。

 それを、自分と同じ立場の人間と言っていいのか、アスナには、よく分からなかった。いや違う。同じ立場と言って、失礼に当たるんじゃないか、そう思ってしまったのだ。

 

「あ、あと……」

「?」

「桜蘭高校の人間数人と、七条アリアを見つけたわ……」

「!?」

 

 アスナは、伊織の言葉に表情をさらに硬くした。前者はいい。桜蘭高校は、いわゆるお嬢様お坊ちゃま学校で、大金持ちがたくさん集まる、つまり自分の身知った人間がたくさんいる学校で、たぶんその数人と言うのも自分の知り合いだから。

 でも、七条アリア、お前はダメだ。

 

「見つからないようにしないと……」

 

 と言って、アスナは羽織っていたフードをさらに深くかぶって、その顔を見せないようにした。

 

「それはひどいのでは……と思いますけど、私もあの人とはあまりかかわりたくありませんね……」

「透華がそう言うなんて、珍しいな」

「あ、あはは……あの人は確かに、ね……」

「さ、流石に自重……してればいいなぁ……」

 

 透華もまた、擁護するようでもあり、しかしアスナの言葉に同意するような言葉を発した。それに対して、井上純は、どんな人間に対しても何にでもないように図々しく話しかけるような透華がそんな行動を取ったのに驚き、そしてメイドであり、七条アリアという人間の事を知っている一とジェラートはどこか遠い目をしていた。

 一方、その七条アリアは、と言うと。

 

「ハクシュン!」

「先輩、風邪ですか?」

「いや、ゲームの世界で風邪なんてありえないでしょ」

「そうだよ。ボディペイントで歩いているわけじゃないんだし」

「現実でボディペイントで外を歩いているんですか……」

「たまにね」

「「「たまに!?」」」

「「「ちゃんと服着ろよ!!」」」

 

 幸か不幸か、≪トールバーナ≫の街に到着するのは、もう少し先の事になりそうだった。




プレイヤー№ 130菊池真(キクチ【Kikuthi】)≪原作:アイドルマスター≫
プレイヤー№ 131萩原雪歩(ユキホ【Yukiho】)≪原作:アイドルマスター≫
プレイヤー№ 132水瀬伊織(イオリ【iori】)≪原作:アイドルマスター≫

本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。

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