SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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 この最悪な状況を打開できるプレイヤーは、数多くいる中でもやっぱりこの子だろうなぁと思いながら執筆しました。


メインシナリオ 第三章 第十二話

「β上がりどもは、こんくそゲームが始まったその日にダッシュではじまりの街から消えよった。右も左も分からん九千何百人のビギナーを見捨てて、な。奴らはウマイ狩場やらボロいクエストを独り占めして、ジブンらだけぽんぽん強うなって、その後もずーっと知らんぷりや。……こんなかにもちょっとはおるはずやで、β上がりっちゅうことを隠してボス攻略の仲間に入れてもらお考えてるこずるい奴らが。そいつらに土下座さして、ため込んだ金やアイテムをこん作戦のために軒並み吐き出してもらわな、パーティーメンバーとして命は預けられんし、預かれんと、わいはそう言うとるんや!」

 

 まるで暴発したマシンガンのようにずらずらと身勝手な言い分ばかりを並べたキバオウ。つまりはなにか、これまで死んだ千人は、βテスターのせいで死んだのだと、彼らが、全員身勝手な行動をしてそのビギナーだったプレイヤーたちをほったらかしてはじまりの街から逃げ、そしてたくさんのクエストをクリアしてアイテムをゲットした。ソレを謝れと、そう言いたいのか。

 馬鹿げている。本当に、馬鹿げた発言だ。が、ソレを議論したところで飛んだ水掛け論にしかならないのは間違いない。イインチョウやチハヤ等、当のβテスター組は沈黙を貫こうとした。

 が。

 

「アンタばっかじゃないの!」

「なんやと!」

 

 この少女が、その軽蔑とも言えるような発言に怒らないわけなかった。

 

「そんなβテスターを晒上げるような真似をして、それこそチームワークを乱すような真似をして、そんなプレイヤーがいるんだったら、こっちこそ願い下げよ!」

「お、おいハルヒ」

「ヤ! ス! ミッ!」

 

 ヤスミ、現実世界では涼宮ハルヒ、である。そんな彼女は、隣にいたキョンの制止を振り切ってキバオウのように階段を、しかし一段ずつしっかりと足を踏みしめながら降りると、彼の前に立った。

 キバオウは、そんなヤスミの迫力に押されて何も言葉を発せない様子だ。ソレを見たディアベルが代わりに聞く。

 

「失礼、ヤスミ、君は?」

「この男が探している、βテスターの一人よ!」

「なっ!?」

「あぁあ、俺は知らんぞ……」

 

 ヤスミは、キバオウの事を指さして言ってのけた。その言葉に、ディアベルは驚きを隠すことができず、さらに仲間のキョンもまた、頭を抱えてしまった。というか、こういった状態になった彼女を抑える事なんてできないと分かりきっていたから。もうどうにでもなれ、と言わんばかりだ。

 

「お、おまえがβテスターなんか!」

「そうよ、何か文句あるの!?」

 

 気を取り直したキバオウは、しかし凄んできたヤスミの表情に後ずさりしてしまう。だが、男の意地か、あるいはゲーマー乞食の本性なのか、唇を噛みしめた後に言う。

 

「さ、さっきいうたやろ! お前らβがビギナーのプレイヤーを見捨てたそのせいで千人もプレイヤーが死んだんや! その落とし前つけぇ言うんや!!」

「だから馬鹿なのよアンタは!」

「な!?」

「いい、確かに千人死んだのは事実よ。でも、その前にβテスターだって千人しかいなかった。その千人のβテスター全員が生き残ってるって、考えてるの? 死んだ千人の中にだって、βテスターがいる可能性考えたの!? 第一、せっかく第一層のボス攻略ではじまりの街の人たちを元気づけようっていう決起集会で、わざわざその事持ち出してチームワーク乱して争わせて、アンタこそβテスターじゃないでしょうね!!」

 

 ザ・正論である。最後の、キバオウを挑発するような言葉を除けば全部が全部正論だった。

 確かに、キバオウの言う通りこの一か月で千人ものプレイヤーが死んだのは確かだ。だがしかし、果たしてその千人のプレイヤーの中にβテスターだった人間はいなかったのだろうか。自分が、このゲームを攻略しなければならない、皆を助けなければならないと使命感に燃えた結果、その命を散らしてしまったβテスターが一人もいなかったと、そう断言することができるのか。否だ。

 いたはず、いなかったはず。ソレを論議することはできる。でも、可能性の一つとしてソレがあったのだとしたら、キバオウの言ったβテスターがビギナーを置いて独りよがりにクエストやアイテムを独占したと言う論証が成立するはずがない。

 そして、このチームワークを乱す発言が第一層ボス攻略会議において一番やってはならない物だと、キバオウは認識しているのか。いや、絶対にしていない。なぜなら、彼の目的はただ一つ。

 自分が、見捨てたと思い込んでいるβテスターのプレイヤーから、彼らが所有しているコルやレアアイテムを巻き上げる事。ただ、それだけだったから。

 

「あ、アホ抜かせ!! ワシかてビギナーや! けどな、はじまりの街やホルンカで無料配布されとったこのガイドブックがなかったらどうなっとった事か分からへん!」

「……」

 

 と言って、キバオウが取り出したのは、皮製の茶色の表紙に包まれた小さな手帳型の本だった。

 その中身はキバオウが言った通り、ガイドブック。どこにどの時間、どのレベルのモンスターが現れてどのような攻撃をするのか。どのようなクエストがあり、どのようなアイテムがあって、どのようにレベリングするのが良いのかなど、ビギナーのプレイヤーにとってはありがたいとした言えない本。

 もしそれがなかったら自分も危険だっただろうとはっきりと述べたキバオウに対して、ヤスミは一瞬、唖然とした表情をして、そして―――。

 

「ふ、アハハハハハハ!!!!」

 

 笑った。ひとしきりに、まるでキバオウを馬鹿にするかのように。そのヤスミの姿に、多くのプレイヤーもまた唖然とした表情になったが、しかしその真意を知っている一部のプレイヤーもまた、ヤスミまでとは言わないが、苦笑していた。

 

「な、何がおかしいんや! β!!」

「俺も発言、良いか?」

 

 と言って現れたのは、褐色の肌にスキンヘッドという、これこそゲームキャラにいそうな風貌の持ち主。しかし、キャラクターエディットが封印された現在において、そのような風貌という事は、それが現実世界での彼の姿、つまり、その多くの人間よりも高身長であり、そしてなおかつ圧倒的なプレッシャーを持った人間が現実の世界にいるのだ。それが多くの人間に少しだけ衝撃を与える。

 

「君は?」

「オレの名前はエギルだ。キバオウさん。その冊子オレも持っているが……」

 

 と言って、エギルはキバオウが取り出した冊子と同じ冊子を取り出して、パラパラとめくっていく。そして―――。

 

「この執筆協力者の名前を見てくれ」

「執筆協力者やと……な!?」

 

 その頁を見たキバオウの顔が、驚愕に歪んだ。その頁はガイドブックの中でも後ろの方にあって、キバオウはそこまで熟読していなかったから知らなかったことだが、そこにはあるとんでもないことが書かれていたのである。

 そう、エギルの言う通り執筆協力者の名前だ。その中には、ヤスミ、という名前、つまり目の前にいるβテスターの名前もあった。これが指し示す物、それは。

 

「そうよ、そのガイドブックは、私や他のβテスターで作った物よ!」

 

 そう、それこそ通称鼠のアルゴに情報の提供をして、彼女が分かりやすいように改変を加えたビギナープレイヤーに向けたガイドブックだったのだ。

 キバオウは言っていた。もしその冊子がなかったら自分がどうなっていたいのか分からないと。つまり、キバオウは知らず知らずのうちにβテスターによって命を長らえさせてもらっていたのだ。とんだ皮肉である。

 

「そうでしょ!」

 

 更に、ヤスミはその場にいるプレイヤーたちに向けて叫んだ。その言葉が意味する物は、ほとんどのプレイヤーが分からない、しかし一部のプレイヤーは分かる物だ。

 

「……はぁ仕方ないか」

「カイト? そうね……どのみち私たちがβだってのは分かってるし……」

「……うん!」

 

 そのカイトの言葉に真琴や、春香もまた同意し、立ち上がる。春香たちは、そのかぶっていたフードを取って、久々に人工の青空の下にその顔を見せた。

 それと同時にまた多くのプレイヤーがぽつぽつと立ち上がっていく様子が、キバオウの目線から見ても、そしてプレイヤーたちの集団から見てもよく分かった。

 

「あ、あれって!?」

「プロジェクトSAOに参加していたアイドルじゃねぇか!?」

 

 と、ぽつぽつと座っていたプレイヤーたちもまた驚きを隠せなかった。当然、彼らにもプロジェクトSAOに参加していたアイドルがたくさんいるという情報は届いていた。そして、その多くがβテスターとしてゲームを先にプレイしていたという事も。

 だが、彼らは勘違いをしていた。アイドルは、全員一番最初で安全なはじまりの街にいる物だと。ゲームがクリアされるまで、安全な場所から傍観しているだけなのだと。飛んだ思い違いである。

 彼女たちは確かに人々に笑顔を届けるために活動しているアイドルだ。だが、だからと言って前線に出てはならないと誰が決めた。誰が、勝手に思い込んでいた。彼女たちだって、今はこの世界で生きる、一人のプレイヤーなのだ。前線で戦う資格は、いや、自分たちが行った罪の清算は自分たちでする。そんな覚悟を持って危険な前線にまで来ていたのだ。

 ふと、立ち上がったβテスターの姿を見ていたこちらもまた同じくプロジェクトSAOに参加していたミユキ、あと一般プレイヤーとして集団で立ち上がった765プロの面々や、アイドルのβテスターの方を向いたらん子は、見つけた。

 

「あ、ラブちゃん、いのりちゃん!」

「はるかとみなみ!!!」

「え、あ! ミユキさん!!」

「あぁ!! 一条先輩!?」

「え、知り合い?」

 

 確実にこの世界にいると思っていた、見知った仲の存在を。それは他のβ、βじゃないプレイヤー問わずそうであり、それぞれがそれぞれに指を指して驚いている姿が見て取れる。そして、その姿を見たヤスミはキリッとした表情で言った。

 

「出てきてやったわよ。アンタの言った、ガイドブックを書くだけ書いて初心者の人たちを助けようとしたβテスターが、私の……仲間達が!」

「な、が……」

 

 その数ざっと二、三十人といったところか。キバオウは思いもよらなかった。まさか、ここまで、堂々と自分たちが元βテスターであると宣言する人間がそんなにいるなんて、と。

 先も言った通りβテスターは憎まれるべき存在だ。そう思い込んでいる浅はかな男には考えられない結果である。

 

「やはりな……この詳細な情報と事細かにアップデートされるデータから、元βの人間が関わっていると思っていたが、執筆協力者に名前をそのまま載せるとはな」

 

 エギルのどこか納得にも呆れにも近い言葉にヤスミは頷いて言う。

 

「名前出さないと、いざという時に責任取るプレイヤーがいないでしょ? 何なら今あの塔の最前線でマッピングしているパーティーにも元βテスターの人間がいるわよ!」

「な、んやて!?」

「どう? これでも私たちβテスターが初心者を置いてけぼりに、初心者を見殺しにしたって言うつもり!?」

「せ、せやけど」

「なに!? それでも文句あるなら……」

 

 と、キバオウの言葉を一刀両断し続けたヤスミは、その場にいる全プレイヤーに向けて叫んだ。

 

「この中で! 自分の仲間がβだって知ってた人! そうじゃなくてもいいわ! ボス攻略戦の前に、この程度の事で会議を中断させて、βを糾弾するようなこんな男と一緒にボス攻略戦に臨みたいって思う?」

「……」

「そう来ましたか」

 

 クス、とイインチョウはヤスミの言葉に笑う。因みに彼女もまたガイドブック作成に協力したβテスターの一人である。

 

「思わない人間は立ち上がって!!」

「やれやれ……ここは、彼女に一理あるか」

「お姉ちゃん、ここは立ち上がろう」

「え? その方がいいのウイ?」

「だな……」

「私たちも立とう、ののか」

「……うん、お姉ちゃん」

 

 と言って次々と立ち上がっていくプレイヤーたち。その多くは、自分の仲間にβテスターがいることを知っていたプレイヤーたちだ。だが、そうでなくてもヤスミの言う様にその程度の事で大事な会議を中断させるような男と一緒に攻略したくない、そう考えたプレイヤーたちが次々に名乗りを上げた。その数、ざっとディアベルが見渡しただけでも。

 

「半数以上……か」

「どう? アンタがこれ以上βをまぶすような発言を繰り返すのなら、ここにいる半数以上のプレイヤーはボス戦には関わらない! 行くなら、アンタらで行きなさい!」

 

 ある意味これもまたヤスミの身勝手な発言な気もしないでもないが、だが彼女の≪こんな男と一緒にボス攻略戦に臨みたいか≫という問いに対して≪YES≫と答えた時点で、ある意味では決定事項だったのかもしれない。こうなることは。

 

「じょ、常套や! なぁ! ディアベルはん!!」

「……」

「でぃ、ディアベルはん……?」

 

 キバオウは最終手段として、この会議を開いた人間であるディアベルに同意を求めることにした。だが、ディアベルは目を閉じ、考えた後に言う。

 

「悪いが、キバオウ……君には、ボス攻略戦への同行を辞退してもらわなければならないようだ」

「な、なんでや! なんでそないな事!?」

「分からぬのか?」

「なッ……」

「そ、あんた一人とここにいる何十人っている最前線を走るトッププレイヤー。それも中には経験豊富なβもいる。そんな中で、アンタ一人を取るメリットはどこにもないってこと、分かった?」

 

 と、シンケン・R、そしてNが真理を突いた。そう、たった一人のプレイヤーと何十人もの経験豊富なプレイヤー、そのどっちを取るかなんて考えなくても分かる事。キバオウは勝手に墓穴を掘って、その中に落ちてしまったのである。

 

「そんな、アホなッ!!?」

「デデーン! キバオウ! OUTじゃ!」

 

 と、最後にフミコが死体蹴りをするかのように言った。こうして、キバオウは第一層攻略会議から追放されることとなった。いや、と言うよりもだ。

 

「こんな中で会議を進めるわけには行かないか……」

 

 こんな、その場が騒然としている中で会議を始められるわけない。残念なことに、この日の第一層ボス攻略会議は中断されることとなった。

 たった一人の、身勝手なプレイヤーのおかげで。




プレイヤー№ 137アンドリュー・ギルバート・ミルズ(エギル【Egiru】)≪原作:ソードアート・オンライン≫
プレイヤー№ 138山吹祈里(パイン【Pine】)≪原作:フレッシュプリキュア!≫
プレイヤー№ 139春野はるか(フローラ【Flora】)≪原作:Go!プリンセスプリキュア≫
プレイヤー№ 140海藤みなみ(マーメイド【Mermaid】)≪原作:Go!プリンセスプリキュア≫

本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。

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