SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
マリンが、現実世界での友達と再会を果たしていたその時、また別の場所でも同じように再会を果たしていたプレイヤーたちがいた。
「長谷川さん」
その言葉に、ちうはドキッとした。この声、この口調。まさか、背後を振り返った時彼女はため息を漏らしながら言った。
「この世界ではちうだよ……意外だな。まさかお前が、こんなゲーム、プレイしているとはな」
「このかお嬢様に、誘われまして……」
「そう、か。二人は、こっちじゃどんな名前でプレイしているんだ?」
「刹那でいいですよ。長谷川さん」
桜咲刹那。ちうこと現実名長谷川千雨の現実世界での学友、クラスメイトにしてとある流派を扱う剣の達人。そして、近衛木乃香というとある協会の長の娘の幼馴染兼従者という少女だ。
そんな硬派といっても良い彼女に、こんなゲームをプレイする趣味なかったはずだ。ちうはそう考えていたが、なるほど木乃香に誘われたか。それは、断り切れないだろう。
ちうは、頑なに自分のプレイヤー名を言おうとしない刹那に対してやはりため息をついて言う。
「そう言うわけにはいかないだろ流石に」
そう。確かにこの世界はもうプライバシーも減ったくれもない世界。現実とほとんど似た世界になってしまっている。
だが、それでも少しばかりはネットリテラシーを守る姿を見せておかなければ、現実世界に帰った時に自分が順応しきれない可能性がある。そう考えて、彼女は聞いたのだ。刹那の、この世界でのプレイヤー名を。
が。
「せ……」
「?」
「せっちゃん……です」
「……」
ある意味、聞いてあげない方が良かったかなと顔を赤らめるせっちゃんを見て思ったのである。
「名付け親はこのかか?」
「はい……その、『うちもこのちゃんってつけるから、せっちゃんもせっちゃんってつけてな』と言われまして……」
せっちゃん。このちゃん。この呼び名は、二人が幼いころに互いに呼び合っていたあだ名である。最も木乃香は今でも彼女の事をせっちゃんと呼んでいるのだが、成長して主従関係と言う物を理解した刹那はそのあだ名を使用してこなかった。
だが、このゲームをプレイするにあたり、昔みたいに呼んでもらいたいと願った木乃香によって、半ば無理やりそのプレイヤー名で登録させられることとなってしまい、今に至る。簡単に言えば、そう言う事か。というより。
「木乃香、じゃないな、このちゃんもこの世界にいるのか?」
「……はい」
だろうな。さっき木乃香に誘われてこのゲームを買った旨の話もしていたし、それだけの情報を与えられれば、予想するのは簡単なことだ。だが、妙だ。
「なぁ、なんでこのちゃんはこの宴には参加していないんだ?」
そう、せっちゃんはこの自分でも奇妙と思う宴に参加していると言うのに、どうしてこのちゃんが参加していないのか。彼女の性格を考えると、こんな楽しげなソレに参加しないわけないと思うのだが。不思議なことだ。
「実は、木乃香お嬢様には」
「このちゃん、だろ? アイツの思いを少しでも汲んでやれよ、せっちゃん」
「……この、ちゃん。は、その……はじまりの街で待ってもらっています。釘宮さんと一緒に」
「釘宮……アイツまで来てるのか……」
その言葉に、やはりちうは再び苦い顔をした。彼女の語った釘宮と言うのは、本名釘宮円。ちうやせっちゃん、このちゃんと同じ学校のクラスメイト。しかし、他の数名のクラスメイトと同じくまだどこか現実感が残っているクラスメイトの一人であった。
「はい、このちゃんを危険な前線に向かわせるなんてできませんから。偶然釘宮さんを見つけて、この、ちゃんを任せて、安全なはじまりの街に一緒にいてもらっているんです」
「そうか……」
ある意味、彼女の従者としては当然の対応と言ってもいいだろう。
フィールドは危険。だから、一番最初の街にして、安全エリアの範囲にあるはじまりの街に彼女を置いておく。その考えに異論はない。が、彼女は一つ忘れているのではないだろうか。彼女の性格を。いや、もしかしたらソレを考えられない程に彼女も混乱していたと言う可能性は無きにしも非ずだが、ちうは呟いた。
「実はな……千鶴もこの世界に来て居るらしい」
「ッ!?」
この言葉に、せっちゃんもまた驚きを隠せないでいた。当然、ちうのクラスメイトであるのならば彼女にとってもクラスメイト、見知った仲。同じ学校の同じクラスからこれほどまでにデスゲームに参加させられているのはある意味で異常ではあるが、しかしあのクラスだったら可能性はなくはない。なんなら、もっといてもおかしくはないと言うのが、ちうの中での考えだった。
自分の知らないところで、他にも何人ものクラスメイトがこの世界で戦っていて、良ければ、木乃香のようにはじまりの街にずっといてくれることを願うが、しかし彼女たちの性格を知っているからこそ思う。きっと、誰もが危険なフィールドに出て、戦っているのだろうと。
そうなれば、次に願うのは誰も死なないことだが、それは高望みと言うのだろうか。自分の中の、願望と言うのだろうか。
とにかく、そんな事ついさっきまでこの世界に自分以外のクラスメイトがいることを考えていなかった自分が思うべきではないことは確かだ。
ちうは言う。
「あの世界に……」
「え?」
「いや、あの世界に行った人間にしか分からないはずだった。そんな経験を、釘宮も千鶴もしてるんだな……」
「……」
あの世界、その言葉を聞いたせっちゃんは、あの世界で一番暑い夏休みの記憶を思い出していた。あの、いつ死ぬか分からない。いつ自分の身がどうなるか分からない。そんな、誰しもが恐ろしさで身体が震えだす経験をした夏休みの冒険。
考えてみれば、自分やちう、木乃香はその世界で死と隣り合わせの危険の中にいた人間。だからこそ、こんなデスゲームの世界にされても冷静に、モンスターを相手にして戦う事が出来ていたのかもしれない。
でも、あの冒険を経験していない人間は違う。釘宮は、千鶴はその経験者じゃない人間の中にいる人間だ。
もしかしたら死ぬかもしれない。そんな世界の中にいなかった数少ない人間たちだ。
危険な冒険を経験していない、数少ないクラスメイトの内の二人だ。
ふと、せっちゃんは自分でも気が付かないうちに唇を噛みしめていた。自分は、もしかしたら釘宮にとんでもないことを頼んでしまったのではないかと。危険な冒険の経験のある木乃香と、その経験の全くない釘宮。そんな相反する二人を一緒にさせて、そして木乃香の事を任せてしまった釘宮に、とんでもない重荷を背負わせてしまっているのではないかと。
その懸念、事実だった。実際、木乃香は今はじまりの街の中にいない。今、釘宮と共にこのトールバーナへと向かっている最中。その事を、彼女は知る由もないのだが。
冷静に見えた彼女だったが、しかしこの世界の理が代わって行く中で、その冷静さを一瞬の間失っていた。それが、彼女の判断能力を鈍らせてしまっていたのだ。
「不謹慎だがな、願うなら、あの時のメンバーから来てもらいたいな……」
「え……」
せっちゃんは、ちうの言葉にどういうことかと頭をひねった。来てもらいたい、つまり自分達のようにデスゲームの中にいる存在が他にいると仮定して、あの夏休みを経験したメンバーに来てもらいたい。それは、戦力になるからか、違う。
「こんな異常な経験をする人間を……これ以上増やしたくねぇからな」
「……そうですね」
そう、彼女は安定を望んでいた。この世界の、じゃない。あのクラスの安定を。だからこそ思うのだ。あんな異常な世界を、こんな異常な世界を経験する人間を、これ以上増やしたくない。人生と言う真っ白な世界の中に、死という身近にない物を見直に置く経験をする人間を、これ以上クラスメイトから出したくないと。
だが、そんな彼女の願いも空しく、実はあの冒険に参加していなかった人間があと二人、この世界に来ていた。
残念なことに。
本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。
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