SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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SAO×桜蘭高校ホスト部

 この私立桜蘭学院(おうらんがくいん)は、一に家柄、二にお金。財ある物は暇を持つ。かくして桜蘭ホスト()とは暇を持て余す美少年たちが、同じく暇な女生徒たちをもてなす。スーパー金持ち学校独自の、華麗な遊戯なのだ。

 桜蘭学院ー正式には私立桜蘭学院高等部が正しいーは東京都にあるスーパー金持ち学校である。

 日本七名家にも数えられる須王家、その家が持つ財閥の現総帥である須王譲の設立したこの学校は、やんごとなき家柄であったり、財閥の御子息であったりする人たち御用達の学園なのだ。

 だが、通っているのはお金持ちばかりではない。出版社の社長の息子や、料亭の板前の娘、それからヤの付く団体の跡取り息子が通っていたりもする。

 そして極まれに、いやこの学院にただ一人だけ、お金も後ろ盾も持たずに入学してきた人間がいる。

 それがこの藤岡(ふじおか)ハルヒである。

 

「また今日も遅刻しまった……」

 

 男子生徒が着用する制服を身に纏うハルヒは、学院が用意した奨学特待生制度を利用して入学してきた人間である。当初は学園指定の服すらも買うことができず、貧相と言われても仕方のない服で通っていたこともあるほどに。

 そんな彼女が急いでいるのか急いでいないのか微妙な速さで向かっているのは、第三音楽室である。当然のことであるが、普通の学校には音楽室は三つもいらないー勿論この桜蘭高校にもー。

 時間帯は放課後であるため、授業に出席するために急いでいるというわけではないし、そもそも第三音楽室は使われておらず授業なんて元から行われない。実は音楽室には部活のために向かっているのだ。

 何度も補足を入れてしまうのは申し訳ないが、彼女は吹奏楽部でも合唱部でもマーチングバンド部でもない。ならばなんだ、と人々は疑問に思うだろうが、一般市民の中からその答えが出ることは決してないだろう。

 ハルヒが所属している部活。それは、他の学校には類を見ないある特殊な部活動であるのだ。

 そう、その部活とは―――。

 

「「「「「「いらっしゃいませ」」」」」」

「……はぁ」

 

 ホスト部、である。

 件の第三音楽室の扉を開けたハルヒは早速眩暈を起こしそうになった。

 何なのだろうこの内装は。ついキノウまでは普通、という言葉はたぶん当てはまらないのであるが、サクジツまではこの部屋は普通の音楽室の雰囲気を残していたはずだ。

 眼がくらむような値段の高級ソファーが置いてあったり、樹齢何十年というような木を加工したテーブルが置いてあったり、一つ何百万というツボが無数に置かれていたり。

 やはり普通ではない場所に普通を求めてはならないのだろうか。普段の風景という物ですらすでに普通とは言えない物ばかりで、この時点ですでに普通という言葉の意味を辞書で調べて来いと言いたくなってくる。

 まぁ、とにかく。天井から吊り下がっているシャンデリアはまだ昨日まであったから置いておくとしよう。

 だが、何なのだこの赤いじゅうたんは。並べられた甲冑は、飾られている絵は。そしてーーー。

 

「「なんだハルヒか、お客様かと思って準備しちゃったじゃん」」

「こらハルヒ。授業が終わったら真っすぐ部室に来るようにと言ってあるだろう?」

「いや、自分としては普通に教室を出たつもりだったのですが……」

 

 いつも通り変な服を着ている先輩と同級生たちは一体。

 

「あのぅ、この内装は一体……」

「今日はSAOのサービス開始まで一ヶ月を切ったから」

「それにちなんで、西洋風のおもてなしをすることになったんだってさ」

 

 と、ハルヒに答えたのは同じ顔を持つ男子生徒。常陸院光(ひたちいんひかる)常陸院馨(ひたちいんかおる)。通称常陸院(ひたちいん)ブラザースである。

 お察しの通り彼らは双子であり、この部活動の中ではハルヒと二人だけの同級生である。と言ってもそれをありがたいと思ったことはハルヒ曰くないらしいのだが。

 因みに、二人とも冒険者風の衣装を着こんでいる。その服装はほとんどが同じであるが、光の方がピンク色の、馨の方が青色を基調とした服を着こんでいるため、珍しく見分けがついている。

 この色分けは、以前二人が喧嘩のフリをして周囲を巻き込んで騒動を引き起こした時と全く同じだ。もしも、こうして違いを作ってもらっていなければ、二人の見分けはつかないだろう。

 とはいえ、何故かハルヒには二人の見分けができているらしい。理由は不明ではあるが、恐らく天然故の素質というものだろう。

 

「SAOって、確か……」

「そうだ。今度発売される最新のゲームのことだ」

 

 と、ハルヒに声をかけた眼鏡の男性は凰鏡夜(おおとりきょうや)。ホスト部副部長兼店長で、このホスト部のブレーン的な存在である。なお、ハルヒは彼のことを影のキングであると思っているのだが。あと、色々と腹黒い。やることなすことの殆どに自分に利となる何かを隠している色々な意味で頭のいい男だ。

 

「でも、何故それでホスト部がこんな感じに……」

「それはね。たまちゃんがSAOをしたからなんだよ!」

「……」

「え?」

 

 そう声をかけてきたウサギを抱きかかえた金髪の少年は、埴之塚光邦(はにのづかみつくり)。通称ハニーである。なお、ウサギを抱きかかえていたり身長が少年くらいしか身長がないため見た目では分かりづらいのであるが、これでもハルヒの二つ先輩。最上級生なのだ。だが、その見た目とは裏腹に中等部在籍時に空手と柔道で全国制覇をしているという、戦闘能力では部内でも一二を争うほどである実力者でもある。

 そして、その後ろにいる背の高い寡黙な男性は、銛之塚崇(もりのづかたかし)。通称モリ先輩。彼もまた中学の時に剣道で全国大会優勝という経歴を持つ人間である。つまり、ハニーと一二を争っている実力者というのは、彼の事なのだ。

 この二人、今ではいとこ同士であるがはるか昔は主従関係にあり、代々銛之塚は埴之塚を主としてきた家系である。時が経ってその主従関係という物は薄くなってはいるものの、銛之塚の血故か、崇は頼まれた訳でもないのに今でもハニーとの主従関係が継続しているのだ。

 

「SAOって、まだ発売されてないんですよね、それでどうして環先輩が……」

「聞きたいかハルヒ」

 

 と、言いながら椅子から立ち上がったのは、このホスト部の創設者であり部長であり、氏名率7割を誇るホスト部のエースである須王環(すおうたまき)である。ちなみに先程ハニーが言っていたたまちゃん、と言うのは彼のことである。

 須王という名前で分かる通り、彼はこの学校の理事長である須王(ゆずる)の息子。涙と常にもろくお人よし、おまけに二年生であるというにも関わらず下級生の常陸院ブラザーズにおもちゃのように悪戯を受けるという先輩としての威厳はどこへやらという人間性ではあるが、しかしこれでもカリスマ性だけはあるので侮れない。

 環はハルヒの肩を抱くと言う。

 

「平凡な俗世界を離れ、見たことのない新たな世界を巡る胸躍る冒険の数々。その時味わったこの上ない高揚感はそう、ハルヒ……お前とあった時を思い出したかのようだ……」

「どうでもいいですけど、暑苦しいから離れてくれませんか?」

 

 ハルヒは、そんな環のことを軽くあしらう。上級生としての彼を敬う気持ちはあまりない様子だ。まぁ、環自身もハルヒの質問に対して全く答えていないあたり悪いのであるが。といか、環がハルヒにあった時はそんなにドラマチックであっただろうか。

 以上、この男性陣六人に、藤岡ハルヒを加えた計七人が桜蘭高校ホスト部の全メンバーである。ずいぶん個性抜群なメンバー構成をしており、家がかなり裕福であるということ、そして全員が男性であるということが数少ない共通点、であった。だが、この年の四月に藤岡ハルヒが不本意な形で入部を果たしたことによって共通点はほとんどなくなった。

 元々この部活は、環の思い付きにより彼が高校に入学した一年前に創立された歴史の浅い部活である。そしてハルヒと、ハニーに追随する形で入部した崇以外の四人を環自身がヘッドハンティング。それぞれに悩み事を抱えこんでいた面々を誘い入れることによってできたのがこのホスト部である。

 因みに、ハルヒが入部したのは時価800万円するという花瓶を割ってしまったための弁償のためというある意味むなしい理由である。

 ともかく、環を押しのけたハルヒが言う。

 

「でも、あれってまだプレイ開始はおろか、発売もまだされてないのでは?」

「フフフッ、実はなハルヒ。須王グループは、そのSAOの開発を援助していたのだ。その礼にとSAOとナーヴギアを譲ってくれたのだよ」

「それで、殿はβテスターってことで」

「他のプレイヤーに先駆けてゲームをプレイしていたってわけ」

「βテスター?」

「まぁ、要するに実際に売り出す前の試験プレイのようなものだ」

「へぇ……」

 

 それでいつも以上にウザがらみをしてくるわけですか。と、ハルヒは心の中で悪態をつく。というか、下級生である常陸院ブラザーズに名前ではなく、殿と呼ばれる当たり環の部活内での扱いの悪さをうかがえるという物だ。

 ところで、西洋風というか、騎士風の衣装は前にやらなかっただろうか。確か、あれは聖ロベリア女学院のヅカ部が桜蘭で行われた文化部発表会のために来ていた時のことだ。あれと丸被りしていないだろうか。

 

「あぁ、あれは本物の西洋、こっちはゲームの中の偽物の西洋だからな。似てるようで、実は違う。ずる賢い人間と、狡猾な人間の違いのようなものだ」

 

 と、いうことらしい。

 さて、それよりも部活動内でこのエセ西洋風の衣装で統一した格好をするということはだ、必然的にハルヒもまたそれに準じた格好をすることになる。

 常陸院ブラザーズは先ほど言った通りに冒険者風。

 鏡夜はRPGに出てくる魔導士のような恰好。

 ハニーはなにか可愛いウサギのパジャマをやや高級感多めにしたような恰好。モンスターのつもりなのだろうか。

 崇は甲冑を着ている騎士。

 そして、環は当然というかなんというか王様の格好。これは、本人がこのホスト部のキングを自称しているからなのだろう。

 正直どの格好も面倒くさいことこの上ないのだが、はてさてどうした者だろうか。

 

「安心しろハルヒ! ハルヒの服は、このお父さんが直々に選んだぞ!」

 

 といい環は奥に引っ込む。どう考えても不安しかない。環が自分のためだとかなんだとかといっていい物を取り出したという記憶はあまりない。出てくるのは、きっと自分の感情を逆なでさせるような物となるはずだ。いつもそうなのである。

 恐らく、本人は良かれと思ってやっていることだとは思うのだが、その良かれと思ってやることがことごとく失敗しているのは残念なところである。

 さて、数十秒後環は煌びやかな桃色の服を持って現れた。まぁ綺麗なドレスであること。

 

「どうだハルヒ、これを来て王であるこの俺と舞踏会へ……」

「寝言は寝て言ってください」

「なっ!?」

 

 と、ショックを受けた環は真っ白になっていじけ始めてしまう。

 さて、ここで一つ疑問に思った人間もいるだろう。

 何故、環は『男性』であるはずのハルヒにドレスなど持ってきたのか。

 別に、環は男色家というわけではない。彼自身至って大多数的な人間であり、恋の対象も『ハルヒ』のような『女性』である。

 そう、実は藤岡ハルヒは男子の制服を着てはいるもののその正体はれっきとした女の子。生物学的にも精神的にも身体的にも本人の自覚的にも全てが女の子であるのだ。

 何故女の子がホストをしているのか、結論からすればそれは環の勘違いと、花瓶の代金の返済のため、である。

 先程、800万の花瓶を割った弁償をするためにハルヒが入部したと言う旨を説明したが、その時点で彼女の性別を知っていたのは鏡夜のみ。そのため、部長の環が彼女のことをよく知らないままに入部させてしまったのだ。

 ハルヒにとっては、800万という大金を用意することなど到底不可能であるから、ホスト部でお客の相手をすれば花瓶の代金はチャラになると言うし、別に断る理由もなかったから男としてホストをしているのだ。

 以来、このホスト部の面々はハルヒの正体がお客様にバレないように、時にはさまざまな工夫を凝らして、時にはドタバダ騒ぎを起こしながらの学校生活を送っているのだ。

 まぁそんなこんながあり、ホスト部の本日の営業開始である。

 

「外はモンスターが徘徊して危険だ。今日は俺と一緒にいよう」

「まぁ、恐ろしいですわ環様……」

「ご安心を、どんな敵が来ようとも、この剣ですぐ倒して見せましょう」

「そんな綺麗な剣が有れば一安心ですわね」

「ですが……」

「え?」

「例えどれだけ名高い鍛治氏が作った剣でも、君のその純粋無垢な白銀のような輝きには敵いはしないよ」

「あ、あぁ……」

 

「行っちゃダメだ光!」

「止めないでくれ馨! 僕は、モンスターを倒さないといけないんだ!」

「怪我でもしたらどうするんだ!」

「それでも、町の人達を守れるなら、それでいい! それじゃぁ……」

「光!」

「あっ……」

「僕だって、光のことを守れるならどんなことだってするさ」

「馨……」

「キャァァァァァァ!!」

 

「見て見て! 僕モンスター! 食べちゃうぞぉぉ!」

「キャァァァァ!」

「怖ぁぁい」

「ガオオオォォォ」

「光邦」

「?」

「裾、危ないぞ」

「ありがとう! タカシ!」

「「キャァァァァァ!」」

 

「あいも変わらずよくするなぁ……」

 

 ハルヒは、背後で行われている寸劇を見ながらそう呟いた。

 因みに鏡夜は接待をしておらず、お客様の対応をしている様子だ。そういえば、心無しか今日はお客さんの数がいつもより多い気がする。

 

「ハルヒ君」

「あ、はい」

 

 と、そういえば自分もまたお客さまの対応の途中だったのだ。

 現在の相手は、倉賀野百華(くらかのももか)桜塚希美子(さくらづかきみこ)の二人。

 ふたりはこのホスト部の常連であり、また同学年同クラスということもあってかハルヒのファンであるのだ。

 そのため、ホスト部を開店させるとほぼ毎日のように来店してくれる。借金返済=指名数であるハルヒにとってはとてもありがたいお客であるのだ。

 とはいえ、その借金に関してはすでに完済されているため指名数に関してはさほどこだわりはないのだが。まぁ、借金がある時からそうであったのだが。

 

「ハルヒ君は普通の村人の格好なのね」

「まぁ、はい」

「シンプルで素敵よ」

「ありがとうございます」

 

 まぁ、あれに比べればいくらかは、そうハルヒは心の中で呟く。

 彼女の服装は、先程環が出したドレスと比べれば装飾品も何もないRPGによく出てくるNPC(ノンプレイヤーキャラクター)の村人のような格好となっている。

 あまり目立つような格好をしたくなかった彼女の意見が反映された形である。

 

「でも、皆さんも素敵ですよ。いつも綺麗でうらやましいな」

「ハルヒ君……」

 

 ここは天国かはたまた桃源郷か、ハルヒの微笑みを間近で受けたふたりの姫君は恥ずかしそうに頬を赤らめてやんわりと微笑み返す。

 天然系ホスト藤岡ハルヒ。コレを何の忖度もなく、何の裏もなく発しているのだ。部内では、テクニック要らずとも表されているのだ。

 そんなこんなで、ホスト部の営業は続いていく。そして、お客様の数がピークに達した時、鏡夜が環に言う。

 

「そろそろ頃合いなんじゃないか?」

「そうだな」

「「頃合いって、何の話?」」

「ふっふっふっ、まあ聞け」

 

 と、双子の質問に返答した環は、部屋の中央へと移動すると言った。

 

「本日お集まりいただいた姫君達」

 

 環のその、よく透き通るかのよう声に、ハニーやハルヒ、そして彼らの接客をうけていた女生徒たちもまた環の方を注目し始める。

 

「改めて自己紹介といきましょう。私は、SAOの世界より諸君らをお招きすべく参上した。キング環」

「「そのまんまじゃん」」

「既に切符は配られた。私は、ここにいる常陸院兄弟、そして藤岡ハルヒと共にSAOの世界へと赴くこととなる」

 

 まるで劇か何かを演じているかのように環は述べる。

 おそらく、切符というのは限定一万個のSAOのソフトのことを言っているのだろうが。ここで一つ疑問が生じる。

 

「あれ、鏡夜先輩やハニー先輩たちは?」

「ほら、鏡夜先輩はもとよりそういうのに興味ないから」

「ハニー先輩やモリ先輩は受験生だし、今回は辞退したらしいよ」

「なら自分も辞退したいところなのですが……」

 

 と言ったところで無駄であろう。確かに自分はまだ受験生ではないから断る口実がないとはいえ、鏡夜と同じであまりそういったゲームには興味を持てない人種だ。だが、それでもなお自分には拒否権がないということは彼女は知っていた。

 

「この切符を、手に入れることができなかった者が多かったことは既に聞き及んでいる。中には、手が届く寸前でこぼれ落ちてしまったものもいたと言う」

 

 ふと、ここでハルヒは疑問に思った。

 

「なんで手に入れられなかったんですか? 環先輩の家のように出資すればよかったんでは?」

「なにぶんゲーム業界はあたりハズレが大きいからな。ゲームに興味のある人間やゲーム関連会社以外での出資に親が興味を示さなかったんだろう。因みにうちの家も出資はしていない」

「へぇ……」

 

 いわれてみれば、大作ゲームになればなるほどゲームの購買層からの期待は大きなものとなり、その期待に見合った物を作らなければ作った会社がバッシングをうけるのは当たり前。

 今回発売されるゲーム、SAOは世界で初めてのVRMMORPGという未知の領域のゲームとなる。そんなゲームに子供の興味本位で出資するような親なんてそうそうにいないのであろう。

 いるとすれば、多少のバッシングには揺るがぬことのない地盤をもつ会社か、環や環の父のように楽観的な人間くらいか。

 

「そこで! 君たちにチャンスを与えよう!」

「チャンス?」

「ここに、SAOの世界への切符が4枚ある」

 

 切符、先程までの言葉から察するにSAOのソフトのことなのだろうが、まさかチャンスというのは。

 そんなハルヒの考えは当たっていた。

 

「これより、SAO争奪大会を開催する!」

「やっぱり……」

 

 瞬間湧き上がる歓声。その多くを占めるのは黄色い声。

 ハニーやモリがいないとはいえ、ホスト部のエースである環や1年生トリオと一緒にゲームができるというかつて無いほどのチャンスを前にして皆一様に目の色を変えている。

 それにしても希少性の高いゲームソフトを合計8個ももらうなんて、一体どれほど出資したらそうなるのか一度聞いて見たいような気もする。

 だが、βテスターとして他のプレイヤーに先んじてゲームをプレイした環がそれほど多くの人間に遊んでもらいたいため願ったのだろうことは分かる。そして、暇を持て余している女生徒達を盛り上げる為にそのゲームを貰ったのもわかる。それにしても8個はやりすぎじゃないかと、やっぱり思ってしまう。

 そこからはまぁ、庶民はこんな物で抽選をしているのだと、≪BINGOゲーム≫で4個のSAOの争奪戦をして、意外な人が当たったりして騒然となることはあったが、最終的には4個全ての譲り先が決まり、藤岡ハルヒは憂鬱になっていた。

 ホスト部の常連をも巻き込んだことにより、自分はSAOというゲームの中ですらもここと同じようにホストを演じなければならない。自分を偽り続けなければならない。それが、彼女にとっては気掛かりに近い物だった。

 だが、まぁなるようになるしかない。ハルヒは意外と冷静であった。

 ふと、外を見ると葉が色をつけ始めて、中には枯れて落ちようとしていふ葉っぱも見て取れる。

 そうか、もう秋なんだ。

 今年も色々あったものの、まだ秋なのだ。

 その色々の中には実にさまざまな冒険があった。

 花瓶を割ってホスト部に入部することになって、色んな人たちの悩みを解決して、ホスト部廃部の危機もみんなで乗り越えて、環と環の父親と祖母との仲を取り持って、そして環の母親との再会を助けて。

 

「あっ……」

 

 その時、ハルヒ何か違和感を感じた。一瞬その正体がわからなかったが、彼女はようやく思い出した。

 

「今夜の晩御飯、トンカツにしよう……」

 

 絶対にそっちじゃない気がする。

 まぁ、そんなこんなで彼女にはその違和感の本当の正体に、矛盾に気がつく機会は確かにあった。だが、持って生まれた天然性のせいで、答えが濁り、それ以上彼女に考えさせるタイミングを与えなかった。

 もし、彼女が天然などではなく、疑問を根掘り葉掘りまで喰らい尽くすタイプの人間であったのならば、きっとこう考えていたであろう。

 

『何故、自分はまだ1年生なのだろうか』と。

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