SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
ディアベルの言葉に、驚く者少数、やっぱりか納得する者が半分。そして、残りはそんな事どうでもよかった、というプレイヤーで占めていた。当然、この宴の参加者の多くがβテスターだったから、と言うのもあるかも知れない。しかし、ディアベルにとっては、それは心の底からの嘆きも含めた告白だった。
「イインチョウもヤスミも、あまり驚いていないようだな」
「まぁ、なんとなく予想ついていましたから」
「というか、こんなゲームになってもプレイヤーをまとめようとする物好きなんてβ以外にそうはいないでしょ?」
「そう言う物なのか?」
「えっと……さぁ?」
ヤスミの言葉に疑問を呈したキョンは、この中では数少ない同じ男性プレイヤーの一人であるカイトにそう聞いた。彼も同じβテスターだったから彼女の気持ちが分かるかもしれないと思ったのだが、あの変人たるヤスミとずっとそばにいることができるキョンが分からないことを他の誰かが知ることなんてできるわけがなく。カイトも頬を指でこすりながらそう言うしかなかった。
しかし、現実問題として、今ギルドという大きな一つのグループを作り出しているイインチョウは元β、第一層ボス攻略会議を持ち掛けて来たディアベルも元βテスター。そして、その攻略会議をむちゃくちゃにして自分のペースに持ち込んだヤスミもまたβテスターだった。この辺りは何か通じ合う物があるのかもしれない。
そう思えてならなかった。ともかくだ。
「ふっ……ギルド、か。実は俺も。第三層のギルド創設クエが解禁されたら、一つのギルドをつくる予定だった」
「そうだったのですか」
「あぁ……そのための、ボス攻略戦だ」
「え?」
「……」
この言葉をすぐさま理解できたのはこの中でも半分くらいだった。という事は十分すぎる数になる。彼女たちにとって、このディアベルの言葉は、まだこのデスゲームを完全に彼が受け入れていないと言う何よりの証拠でもあった気がした。
「はじまりの街にいるみんなに、いつかはこのゲームも攻略できる。そう伝えるのだと言った言葉に、嘘はない。だが、たくさんのプレイヤーをまとめ上げ、そして率いるにはそれなりの大義名分が必要になる」
「それが、第一層ボス攻略戦の攻略の指揮官、という事ですか」
「まぁ、そう言う事になる……」
当たり前のことだが、この世界で生きているプレイヤーは皆一人一人自我を持っている。一人一人の人生があって、一人一人の考えがあって、その中で生きているプレイヤーたちをひとまとめにする方法は、ソレをなせるカリスマ性を醸し出すには、己が頼りになる人間、一緒にいて安心できるプレイヤーと言うのが一番だった。
だからこその第一層ボス攻略戦。その戦いで陣頭指揮を取って、無事に攻略できたのならば、きっと多くのプレイヤーは思うだろう。このディアベルというプレイヤーに着いて行けば大丈夫なのだと。この男の作ったギルドに入れば一安心なのだと。
ディアベルはあくまで自分本位で動いていたのだ。例え、その先にあるゲームクリアという遠い遠い道のりの上に立つという大義名分があったにせよ、彼はあくまで自分のこれからを考えて動いていた。
「それだけじゃない」
「……」
「ラストアタックボーナス。それも、取りに行く予定だった」
「ラストアタックボーナス……」
ラストアタックボーナス。それは、その名前の通りにボスに対して最後に攻撃を加えたプレイヤーに与えられるボーナス。主にレアなアイテムがゲットできるシステムの名称だ。
この第一層ボスであるはずの≪イルファング・ザ・コボルドロード≫が落とすアイテムは≪コートオブミッドナイト≫という漆黒のコート。漆黒と言うことで少し地味な印象を与えるかもしれないが、しかし実際に見ればシンプルが故に格好いいデザインをしたコート。そして何より、人の目を惹くことができる衣装だ。
彼は、ソレを取りたかったのだ。
「この混沌とした世界で、人をまとめるためには象徴となる物が必要だった。≪彼≫がいないこの世界なら、楽に取りに行くことができる、そう思った……」
「≪彼≫?」
誰が言ったかも分からないが、ディアベルはとあるプレイヤーの事を≪彼≫と評している、そしてそのプレイヤーがこのゲームに参戦していないと言うのは確かなようだ。
ディアベルの言葉に引き継ぐように≪メガR≫は言った。
「あぁ、≪キリト≫の事か? アイツいつもラストアタックボーナスをもらってたからなぁ……」
「キリト?」
「そうか、言われてみればアイツの姿、デスゲームになってから見てないな」
と、元βテスター組が口々にそう言った。どうやら、キリトという名前のβテスターはなかなかに印象深い行動を取っていたようだ。第一層から第八層まで、βの時はそこまでしか昇れなかったとかつてシンケンRは語っていた。その間の第七層までのボス戦に置いて、ひとつ残らずそのラストアタックボーナスを取っていたプレイヤーが存在した。
それが、キリト。βテスターの中でも一番この世界に馴染んでいたと言っても過言ではない人物だ。ディアベルは、βの時のその後姿を思い出しながら言う。
「生命の碑にそもそもその名前がなかったことから、恐らくログインすらしていないんだろう。運のいいことにな……」
「……」
「チャンスだと思った。キリトがいなければ、ラストアタックボーナスを取りに行ける。この世界の象徴になって、皆を率いることができると、そう思っていた。けど……」
と言って、ディアベルは二人のプレイヤー。イインチョウとシズを見て言う。
「βテスターの少女に負け、βでもなく、その教えを受けてもなかったプレイヤーにも負けてしまった。もしかしたら、俺には誰かを率いるなんてことはできないのかもしれないな」
自嘲するかのように呟いたディアベル。なるほど、どうして彼がこの場所に来たのか分かった気がする。
彼は、諦めたかったのだ。全てを。あの第一層ボス攻略会議すらまとめられなかった自分が、果たして本当に他のプレイヤーの指揮官となる資格があるのか、ソレを試したかったのだ。
だが、結果的には彼の思った通りだった。自分は何も持ち合わせていない。ヤスミのようにその場をまとめる力も、イインチョウやシズのような強さも、狡猾さも、勇気も、そして何より彼女たちよりも私利私欲で動いている自分には何もない。
そう、彼はこの場所に訪れる事で痛感したのである。
けど。
「だが、あの演説はなかなかのものだったぞ」
「え?」
あの演説。それは、自分が攻略組の面々の前で言った、あの台詞の事だろうか。綺麗ごとを並べただけに見える、でも心の底からの本音の一つでもあり得るその演説。
シンケンRは続ける。
「ディアベル。確かに貴様の実力はココにいる者よりも劣っていた。その心の底からの訴えも聞いた。だがそんなことよりも、貴様はその言葉で、他のプレイヤーたちにとって希望の一つとなれたのだ」
「俺、が?」
「そうだ。思惑が何だったにせよ、自分が生き残ることしか考えてなかった多くのプレイヤーにとって、皆を率いようとするその姿。それが何よりの希望になれた。もしかすると、この男が本当にSAOを攻略する一助になるのかもしれないと、希望となることができた」
シンケンRはそう言うと、彼の肩をもって言う。
「自信を持ってくれディアベル。先ほどの戦いを見ていたが、貴様の戦いぶりもあっぱれだった。お前なら、ボス攻略戦でも皆を率いて戦うことができるだろう」
「俺が……」
「あぁ、だが……ラストアタックボーナスを取りに行こうとして無茶はするな。万が一にでも死者が出てしまったら、このボス攻略戦だけじゃない。後のボス攻略戦においても足枷になる可能性がある。レアアイテムがなくてもいいじゃないか。貴様は、貴様のやれることをやればいい」
「俺が……やれること……」
と、言うとディアベルは自分の手を見た。今の自分にできる事が何なのか、今の自分がするべきことが何なのか。そして、自分がどう行動すべきなのか。ぎゅっと手を握ったディアベルに、イインチョウとシズの知り合い衆が言った。
「まぁ、イインチョウは元βテスターの中でも特殊な事例だからな。負けるのも無理はない」
「シズも、現実では似たような動きしてるし、というか普通に今の戦闘も危なかったし、別にそこまで気にかける必要ないわよ、ディアベルさん」
「……そうか」
ディアベルはここに、一つの決心をした。
自分は皆を≪率いて立つ≫一人の人間じゃない。≪率いることができる≫人間になろうと。例え、ラストアタックボーナスがなかったとしても、全てのプレイヤーのために、できる限りの事をしようと。
ことここにおいて、一人のプレイヤーの人生が変わったのである。
原作で、ディアベルの本心が垣間見える描写はごく僅か、と言うかほとんどキリトの視点でしか語られなかったので本人がどのような思惑を持っていたのかを察することができるのかの判断材料が少なかった。そのため、試行錯誤した結果こんな感じのキャラになりました。
本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。
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