SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
アスナに、イインチョウがある宣言をしたその数十分後には、他の場所で情報収集などを行っていたいくつかのパーティーも集めて、彼女のギルドに集結していた。
「一体何が始まるんだろう?」
「さぁ?」
「はぁ、少なくとも……」
「?」
と言ったのは、マコトである。彼女は、頭を抱えて言った。
「少し強引な手段に出るのはたしかね」
「その根拠は?」
「あの子が、マナに似てるから」
『あぁ……』
『?』
この真琴の言葉に納得したのはプリキュア勢のほとんどだった。因みに、マリンやドリーム、他数名はあまり理解できていない様子だった。
確かに言われてみれば彼女、イインチョウは相田マナにそっくりだ。その、どこか直線的な性格で、周りに事件や困っている人がいればすぐに駆け付けて解決しようとして、なにより、他人に愛を振りまこうとしている姿はまさしくマナその物だ。
でも、逆に言えば、だ。
「なら、六花ちゃんみたいな止め役の子がいないと……」
と、不安そうにパインが言った。
六花、というのはマナの親友であり、プリキュアの一人である女の子。彼女は常々言っていた。マナは『幸せの王子』なのだと。
これは、アイルランド出身の文人であるオスカー・ワイルドが子供向けに書いた短編小説『幸福な王子』とも訳されることのある小説の主人公である王子に由来したあだ名。自分の身を削って、他人のために他人のためにと頑張った王子様の像の、博愛と悲壮の物語。
その主人公にそっくりなのだ、マナも、そしてイインチョウも。マナの場合は、その止め役として六花がいてくれていた。でも、イインチョウの場合は。
「あぁ、その辺は心配しなくてもいいっすよ」
「え?」
と言ったのは、ペパロニである。その言葉に続けるようにカルパッチョが言った。
「シシーラさんやノルゲイさん。それからクウガさんになにより、今も一緒にいるちうさん。たくさんの人が、あの子の事を支えてくれていますから」
皆、自己犠牲の意味を知っている者たち。皆、自分の事などお構いなしに誰かのためにと動く人間を知っている。あるいは、自分自身がそうだったプレイヤーたち。そのプレイヤーたちがいるから、自己犠牲の辛さを知っているから、だから、彼女は大丈夫。そうカルパッチョは断言した。
「そう、今も……」
と言って彼女が見上げたのは、イインチョウとちう、そして件のイインチョウが消えていった二階の一室で会った。
「おいおい、本当にこの服をアスナに着せるのか?」
「はい! 当然です!」
ちうは、はぁ、とため息をついた。なぜなら、彼女が提示した服は、自分が作った服の中でもコスプレ度が高い、ネタに近い服装だったから。
彼女はこのゲームの世界の中では、実用的とはまた別で趣味として服を作ることが多かった。イインチョウが提示した服もまた、趣味の一環として作った物だったのだ。
しかし、だ。作ったはいい物の、冷静になって考えてみると自分の趣味じゃないと言う本末転倒っぷりをみせてお蔵入りにされていた、いわゆる黒歴史的な物だった。それを、彼女に、着せると。本気でそう言っているのか。
「アスナには、似合わないと思うけどな」
「さぁ、どうでしょう?」
「あの……」
と、一人話から取り残されていたアスナは、もう自分はどこかに行っていいかと、言葉をかけようとした。
しかし、その直前だった。
「アスナさん! この服を、着てください!」
「え……」
と、言ってイインチョウが取り出した物。ソレを見たアスナの第一印象は。
「えぇぇぇぇぇ!!!」
驚き、の一言に尽きるのであった。
「ただいま戻りました」
「あ、龍門渕さん」
一方そのころ、一階に集まった面々に龍門渕高校の一団で作られたパーティーが集まっていた。これで、昨日の宴に呼ばれていたプレイヤーの七割ほどが集まったであろうか。
今回のイインチョウの招集、実は強制的、というわけではなく自由意志での参加だった。そのため、来れるプレイヤーは集まってくれとのメッセージをイインチョウは送っていたのだが、結果的にクエストのために遠出をしているプレイヤーを除いたほとんどのプレイヤーが集まってしまったのは、ある意味、彼女たちがまだ好奇心旺盛の思春期と呼ばれる少年少女が中心となった面子だったからなのだろう。
そう、これからを担っていくはずだった子供たち。でも、茅場明彦によってその未来を閉ざされてしまったはずの子供たち。でも、誰も悲観的になっていない子供たち。むしろ笑い飛ばしている子供たち。
イインチョウがその子供たちを集めた事、それが今回の招集のきっかけと言っても過言ではなかったのである。
「皆さん! お待たせしました!!」
と言って、二階からイインチョウが現れた。そして。
「では見てください! 『わたくし』のコーディネートで生まれ変わったアスナさんを!」
「わたくしの、ね……」
「あのあたり、透華に似てるね」
「むっ……」
あの自意識過剰っぷり、不本意ながら確かにキャラがかぶってしまっている。そう、透華すらも思ってしまった。ある意味で、彼女はのどっちとはまた違ったライバルになるかもしれない。そう、心の中で思う透華であった。
それから、数秒後。
「ちょ、やめて! 恥ずかしい!」
「たくっ、いい加減覚悟決めろよ」
「でも、こんなの私の……」
等という会話が聞こえ始める。アスナとちうのやり取りの様だ。このセリフからして、アスナにとっては不本意なコーディネートをされたと考える一同。一体どんな服を着させられたんだと期待と、ちょっとした不安を入り交えながら待つこと数分。
ようやく覚悟を決めたらしいアスナが、一同の前に現れた。
「……」
その姿は、一言で言うと。
「可愛い……」
「え?」
そう、可愛かった。アスナの着ている服は、いわゆるロリータファッション。人形が着るような服装をしていた。主体は白、その胸元の赤いリボンを筆頭にしてスカートの先には等間隔で赤いリボンが結ばれており、その下は肌の露出を完全に抑えた靴下。
そして、何より頭にかぶっているふわふわとしたカチューシャのようなモノのおかげで、これまでフードの中に隠れていた彼女の顔がはっきりと分かって、印象的な物としていた。
「ホワイトブリムだね。ソレを少し改造したのかな?」
と言ったのはサーバントである。ホワイトブリム。俗にメイドカチューシャ、フリルカチューシャ等と呼称されることが多いメイドが頭に付けているカチューシャの名前である。ホワイトはそのまま白、ブリムは帽子のつばを意味する単語であり、かつてメイドがかぶっていた室内帽が語源となっているカチューシャだ。
流石メイド服に関しての第一人者である。見ただけですぐにソレに気がつくとは、じゃなくて。
「か、可愛い? 変じゃ、ない?」
アスナは自分の事を可愛いと評したあるプレイヤー、つまりリーファなのだがその彼女に向けて聞いた。
「全然変じゃないです! むしろ、アスナさんの顔がよく見えて」
「うん! 服と相性ばっちりだよ!」
こんな服装、自分には似合わないと思っていた。こんな、今まで着たことがない変な格好をして、人前に出るなんて恥ずかしいとさえ思っていた。そんな服装が、可愛い。本当に。自分の顔が、可愛い。本当、に。
自分は今、可愛いのだろうか。そう思うと、アスナは―――。
「フフッ……」
自然な笑みを、見せるのであった。
「それですわ!」
「え?」
と言ったのは、イインチョウである。それ、とはどういうことなのだろう。アスナは聞いた。
「それ、って、どういう事?」
「アスナさんに足りなかったもの。それは『笑顔』です!」
「『笑顔』……」
「はい!」
「なるほど、そう言う事ですか」
と言ったのは、透華である。彼女は、二階に上がりアスナの横に立つと言った。
「アスナさん。私とあなたは、よく社交界で一緒になってましたね」
「……はい」
「貴方は、私や他の方々と話す時、いつも笑顔でした。ですが、それは本当の笑顔ではなかった」
「え……」
「作りきった笑顔。自分の本音を隠して他人に自分の事を良く見せようと、悪く言えば、自分の評価を上げてもらいたいと言う本音が見え隠れした笑顔。そんなもの、機械だってできますわ」
言わんとしていることが、アスナには分かったのかもしれない。確かに自分は、社交界で父や兄の取引先の人間、目上の人間に接するときは、まるで定型文のような挨拶と、相手を不快にさせない笑みを浮かべていた。
そう、まるで機械のように、まさしく人形の笑顔のようにぎこちない笑顔で、透華は何度も社交界で彼女の事を見るたびにそう思っていたのだ。
「でも」
と、透華は言葉を切って言う。
「今の貴方の笑顔は、とても自然で……なおかつ、可愛い『笑顔』。イインチョウ、貴方はこれを引き出したかったのですね」
「はい!」
イインチョウは自信たっぷりに言った。
「アスナさんは元々素材としては超一級、私が手を加えることも憚れるほどのスタイルを持った女性ですわ。ですが、この世界に囚われて、未来が見えなくなって、アスナさんは自分を見失っていた。だから、本当の自分を見出すことができなかった」
「だから、今までのアスナとは真逆のファッションにすることで、フードの下に隠れてた本当のアスナを曝け出してなおかつ、褒められたことででる本当の笑顔を演出しようとした、か?」
「そう言う事ですわ」
ちうの言葉に、イインチョウは笑顔で返した。
これが、本当の自分。アスナは信じられないような気持だった。こんな、今まで自分の中にあった固定概念の中では絶対にしないような恰好をして、最初は確かに恥ずかしかった。
でも、その姿をたくさんのプレイヤーに見せて、口々に可愛いと言われ、こんな自分もいいかもと思えてしまった。
事ここにきて彼女は見つけた。この世界に来た意味、そして来れたことによって得られた物。
それが、『笑顔』。
本当の笑顔程、人生を変えるきっかけは存在しない。イインチョウはソレを知っていた。だからこそ、たくさんの少女たちを笑顔にするためにこれまで『めちゃモテ委員長』として、頑張って来た。自分自身を磨いてきた。
そして、これはまだきっかけに過ぎない。
「アスナさん。自信を持ってください。貴方の事を本当に評価してくれる人が、こんなにいるんです」
「評価……」
「可愛いよ! アスナさん!」
「うむ! 見事に女神転生しおったの!」
「どういう意味よそれ、でも……確かに、可愛いのは確かね」
可愛い、女神。それは、アスナが今まで受けて来たいくつもの定型文的な言葉とは全然違った生の声であると言える。生の、本当の声。本音で自分の事を評価してくれる人たち。それを弾き出してくれた、今までとはまた違った自分。
「フフッ……」
アスナは再び笑った。そこには、恥ずかしさも微塵もない。本当の、彼女の笑みがそこには残っていたのだった。
「アラ?」
と、その時だった。イインチョウにメッセージが届いたのは。ウインドウを開いた彼女は、予想通りの展開になったことに、ある意味では納得していた。
そう、≪第二回 ボス攻略会議≫がまたも紛糾しているのだと。
なお、アスナの服装の元ネタは、SAOIFにおけるスキルレコード【ラブリーパステル】となっております。
で、この子の本名と原作発表。
プレイヤー№ 110 ???(イインチョウ【Enthou】)≪原作:???≫
↓
プレイヤー№ 110 北神未海(イインチョウ【Enthou】)≪原作:極上!!めちゃモテ委員長≫
極上!!めちゃモテ委員長参戦!
本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。
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