SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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 今回はネギま組と同じく、異世界転移経験者とその経験のないとある集団の話になります。


メインシナリオ 第三章 第三十話

 ここに、トールバーナの街を駆け抜けていた六人の少年少女がいた。

 彼らは、泊まり込んでいた宿から出ると、すぐさまある場所へと向かっていた。当然、第一層攻略会議が行われる予定のあの場所である。

 

「全く、会議の時間を二時間も間違えるなんて!」

「いやぁ、わりぃわりぃ」

 

 と言ってショートヘアーの女性≪ツイン≫から叱られた小太りの男性プレイヤー≪カネコ≫は、あまり反省もしていない様子だった。

 

「たくよ、せっかく会議に参加できるってチャンスなのに」

「ホントホント」

 

 というのは、男性プレイヤーの≪パワー≫、そしてそれに同意したのは、この中で唯一、このゲームに起こった状況で嘆いていた≪かおる≫。そして。

 

「ほら、急いでオウタ君!」

「だぁもう! 分かってるって会長!」

 

 女性に急かされて一番後ろからその五人を追い抜いて行ったオウタ、と呼ばれた男性プレイヤー。この六人のパーティーもまた、このゲームによって人生を狂わされた人間たちである。

 だが先も言った通り嘆いていたのは≪かおる≫だけであった。これには、とても深い事情があるのは察してもらえればいいのだが、その前にまず、その時の様子、というよりまたもやあの茅場明彦による正式チュートリアルまで戻らなければならない。

 

「そ、そんな……」

 

 かおるは絶望していた。

 ゲームからログアウトできない?

 ナーヴギアを外されたら死ぬ?

 この世界で死ぬと現実でも死ぬ?

 理解できなかった。当たり前だろう。これまで普通の人生、普通の学校生活を送って来た、何不自由もなく何の事件にも遭遇することがなかった一般人の反応としては、これが一番適切だ。

 が。

 

「だぁぁぁぁ、今度はこのパターンかよぉぉぉ!!!」

「え?」

「あら、でも今度は学校の生徒全員じゃなくて、良かったじゃない」

「え、え?」

「ま、ソレを加味しても一万人が閉じ込められているのは、あの時以上だがな」

「ん、まぁ今回も何とかなるだろ」

「そうね、頑張りましょう」

 

 等と、かおる以外の面々はすぐさま今の現状を受け入れて冒険に出る気満々だった。断っておくが、この面子の中にはβテスターなんていない。チュートリアルが始まるまでは、フィールドに出てそれなりにモンスターと戦ったりして、この世界での戦いの感覚を自力で習得しようとしていたメンバーである。

 それなのに、なぜこんなにも落ち着いていられるのだろうか。何故、こんなにも冷静でいられるのか。そして、今度はこのパターンって、何なのか。かおるには理解ができなかった。

 そしてオウタはかおるに言う。

 

「その、わりぃな……こんなことに巻き込んじまって」

「え?」

 

 と。

 何故彼が謝る必要があるのか。その理由はひとえに、このSAOに参加するにあたってかおるを呼び込んだのは、オウタ、そしてその後ろの路地裏でソードスキルの練習をしているカネコであった。

 というのも、かおるは別にSAOというゲームに対してあまり深い関心を抱いていなかった。確かに、世界初のMMORPGという触れ込みにはそそられるものがあったが、しかしすでに社会人として世間に出ようとしていた彼女にとっては、そんなものに目を取られている場合じゃなく、忙しい毎日を送っていた。

 そんな時だった。以前の、同級生のお墓参りに行った時に出会った青年、オウタと元同級生のカネコからSAOに誘われたのは。

 

「俺が、もう一度あの感覚を、剣を振るう感覚を思い出したいって、そう思っちまったばかりに関係ない君まで巻き込んじまった……」

 

 正確に言えば、ここにいる六人全員がSAOには関係なかった。とかおるは思っていたが、しかしオウタの言っている関係あるなしの話は、彼らの冒険、そう、以前に語ったあまりにも荒唐無稽な物語の方に原因がある。

 確かに、あの戦いでオウタたちは心身ともに成長し、元の世界に帰って来た。

 しかし、今でも時折オウタは幻視するのだ。

 自分が手に持った、あの剣の感触を。

 オウタはいまだに忘れられないでいるのだ。

 あの冒険で自分たちが手にした脈動を。

 だから、ゲームとはいえ、実際に剣を振るう事ができるこのSAOというのは彼の目にはとても魅力的に映ってしまった。結果、このデスゲームに巻き込まれることになってしまった。自分の友人、知人を巻き込んで、

 かおる以外の四人はまだいい方だ。かつての冒険を共にした仲であり、そして苦難を乗り越えて長い時間―現実換算では三十分らしいが―をかけて戦った仲間であるのだから。

 このような状況に巻き込まれるのは、慣れっこだから。

 でも、かおるは違う。このような冒険に巻き込まれるのは、彼女の≪記憶の中では≫初めての事だった。

 だからこそ嘆いているのだ。それをオウタは分かっていた。

 

「ううん、こんなことになるなんて、誰も分からなかった事……だから……」

 

 と、気丈に振舞うかおるだが、やはりどこかで納得していないようす、というよりもまだ受け入れられない様子だった。当然だろう。

 そもそもこの状況に置いてやる気を出しているオウタたちの方がおかしい。そんな彼らがかおるの事を気遣っても、無意味なのだから。

 でも。

 

「そうね。私もどうしようかしら……」

「え?」

「会長……」

 

 と言って、オウタの恋人であり、会長と呼んでいる女性プレイヤー≪トゥナイト≫が演技らしく言ったのは。

 そうだ、そう言えば彼女は。

 

「来年すぐに国家試験があるはずだったのにこんなのに巻き込まれるなんてね」

「今夜……さん……」

 

 そうだった、確か彼女は現在医学部の六回生。つまり、今年度が卒業の年であり、なおかつ、来年すぐに医師国家試験を受けるべき人間だったのだ。

 医師国家試験と言う物はあまりにも難しいもの。その合格率は九十%程と、はたから見れば多いじゃないかと思われるかもしれないが、それは、数限られた人間が受験資格を持てたことによるもの。

 そもそもの話、大学の医学部に入る入試自体が難しく、そこで何人もの将来医師を目指す若者が蹴落とされる。

 さらにそこから多種多様な科を隔てて勉強する必要があるし、実際に病院に研修に出たり、そもそも学校内部での国家試験並みに難しいテストを何十回も突破しないと医師国家試験への受験資格すらももらえないのだ。

 今夜は、そんな魑魅魍魎轟く国家試験への受験資格を経て、残すは、大学でのテストくらいの物だった。その中での、この出来事だ。

 かおるは分かっていた。この騒動によって一番損をしたのは、人生を狂わされてしまったのは、六年間の大学人生を無下にされた、いや二十四年間の人生を捻じ曲げられてしまったのは、今夜なのだと。

 なのに、彼女はそれでも笑えている。どうして。

 

「どうして、そんなに笑えるんですか?」

「ん? だって、国家試験なんて、ゲームをクリアした後でも受けられるから」

「え……」

「まぁ勿論、大学に復学届とか出したり、国家試験の勉強を一から始めないといけないってのはあるかも知れないけど、でも」

 

 というと、両腕を組み腕を伸ばして言った。

 

「いつかはクリアできるから。それまで休憩を貰ったって思えばいいの。この六年間勉強漬けだったし」

「今夜さん……」

 

 強い女性だ。墓参りの時から思っていたが、彼女にはどこかリーダーシップのようなものを感じる。この堂々としている姿勢などを見ているだけでソレを感じ取れてしまう。

 楽観的な発言をしているわけじゃない。むしろ、彼女の発言は今もなお医師になるために頑張っている人間たちを冒涜するような発言だったのかもしれない。

 でも、彼女は信じていた。いつの日にか現実の世界に帰れることを。医師国家試験を、受け直すことができる事を。

 なおかつ、このゲームがクリアされる日を。あれ、順序が逆だっけ、等と今夜が心の中で思っていたのはいざ知らず、かおるはそんな覚悟を見せられて立ち上がれない、はずがなかった。

 

「私も、私も現実に帰ったら頑張って大学を卒業して、就職します! どんな困難にぶつかっても、絶対に! だから、一緒にお祝いしましょう。私の就職祝いと、それから……今夜さんが医者になったお祝いを」

「……えぇ、でも」

「え?」

「この世界では、今夜さん、じゃなくて≪トゥナイト≫って呼んでね」

「は、はい!」

 

 で、今に至る。わけだが。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……ま、間に合ったぁ……」

 

 と、オウタは肩で息を切らせながら言った。勿論、この世界では走ることによってそのプレイヤーの心拍数が上昇して、疲れる、いわゆるスタミナ切れのような状態になることはない。なので、これはその場の雰囲気による、いわゆる現実世界に長く良すぎたことによる弊害、みたいなものだと思ってもらってもいい。

 

「まだ、会議は始まってないみたいね、早く場所を探して座りましょ」

「はい、トゥナイトさん!」

「うん!」

 

 と言って、女性人三人は無邪気に階段を駆け下りていく。

 一方、残された男三人衆は。

 

「たく、もう大人だってのに心は高校生ってやつか?」

「ある意味羨ましい」

「確かに……」

 

 と、三人の高校生のような無邪気さに少しだけ嫉妬してたりして。




プレイヤーNo.189百地王太(オウタ【Outa】)≪原作:轟世剣ダイ・ソード≫
プレイヤーNo.190千導今夜(ミッドナイト【midnight】)≪原作:轟世剣ダイ・ソード≫
プレイヤーNo.191金子良雄(カネコ【Kaneko】)≪原作:轟世剣ダイ・ソード≫
プレイヤーNo.192かおる(カオル【Kaoru】)≪原作:クロノアイズ≫
プレイヤーNo.193十勝力(パワー【Power】)≪原作:轟世剣ダイ・ソード≫
プレイヤーNo.194二葉春夏(ツイン【Twin】)≪原作:轟世剣ダイ・ソード≫

本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。

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