SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
≪LAボーナス≫が最大の論点とは、どういうことなのか。βではないプレイヤーたちにとってそれはまだ未知の領域の話だった。ディアベルは言う。
「≪LA≫に付いては、少ししたら話す。まずは、ボス戦の違いについて……それは、最前線でボス部屋を発見してくれたメガRに説明をお願いしたい」
「おうよ!」
と言って現れた人物は、アスナにも見覚えのあるプレイヤー。昨日の宴に最後の方に現れたプレイヤーだ。なるほど確かに彼ら後から来たプレイヤーたちは迷宮区の最深部にもぐってボス部屋を見つけたと、後々イインチョウが言っていた。
そのプレイヤーの意見を実際に聞くことによってβとの違い、そしてその結果生じるであろう攻略戦の戦略の立て方についてを解説しようと言うのだろう。
「まず、俺の名前はメガR! よろしく頼むぜ。さて俺も元βで、前の時もボス戦にはよく参戦していたし、この第一層のボス戦にも参加していた」
と、あっさりと元βであることを告白したメガR。もうこの辺は暗黙の了解ではなくそもそも暴露しあっていった方がいいと思ったものなのだろうか、βではないアスナにはよく分からなかったが。
ともかく、メガRなるプレイヤーが年齢に似つかわしくないようなプレイヤーであるという事は分かった。
年齢は、見た限り四十は余裕で超えている。でも、その言葉遣い、その元気さはどこか高校生のようにも思えてしまうのは、気のせいか。
「その時のボス戦とは、ボス部屋の中が少し違ってたんだ」
「違ってたって、どういう事だ?」
と、この攻略会議に参加していた一人のプレイヤーが質問した。すると、メガRは言う。
「広くなってた。ざっとみて三倍ほどには」
「三倍?」
「あぁ、前のボス戦でもそれで十分一レイド四十八人が余裕で戦える広さだった。けど……」
「正式サービス開始で、一レイドの数もその三倍になった。つまり、三倍のプレイヤーが戦えることを想定して部屋を大きくしたんだろう……茅場晶彦は」
「……」
なるほど、つまり今現在のこの会場のように手狭になることなく自分の力を余すこと使う事ができるステージを、茅場も作り上げたという事なのだろう。
だが、それで大勢のプレイヤーでボスを倒すことができる、何て楽観視している人間は半分ほどしかいなかった。
「それじゃ、それだけの数でボスと戦うことができるってことじゃん! 楽勝でしょ!」
「ブルーム……」
「え?」
イーグレットはブルームに手を置いた。まるでそれは違うのだと言うかのように。
そして、ブルームと同じ発言をしようとしていた者たちはその行動に、何か自分たちの考えとは全く違う物を感じ取り、黙り込むことにした。
そして、その姿を見たディアベルはやや微笑みながら言う。
「確かに、部屋が三倍に広くなったおかげで正式サービスではさらに多くのプレイヤーの参加が望めることになった。だが……」
というと、ディアベルは顔を引き締めた。
「つまり、その分敵、ボスの取り巻きの≪ルイン・コボルト・センチネル≫の数が多くなる可能性がある、という事だ」
「取り巻き……」
「そう、皆このガイドブックを開いてくれ!」
と、ディアベルは例のガイドブックを取り出した。今までは元βとβじゃないプレイヤーたちとの確執もあっておおっぴろにその中の情報を使う事が憚れたが、しかしその関係が良好となった今なら使う事ができる。
それぞれのプレイヤーは皆手に持ったガイドブックをめくるのであった。
ボス戦の項目だ。そこの下の方を呼んでみてくれ、ディアベルの言葉にアスナもまた、その頁の下の方を見る。
「あった、≪ルイン・コボルト・センチネル≫。ボス≪イルファング・ザ・コボルト・ロード≫の取り巻きモンスター、その出て来る最大数は三体……」
と、言う事はもしもこの三倍の敵が押し寄せてくるという事は、九体、か。でもこれだけの人数がいるのだ、たった九体であったとしてもボスから切り離せることができるんじゃないか、そう思うアスナであるが違うようだ。
「そう、その数が九体になっているかもしれない。数だけならなんとかなる、だが問題はレベルが上がっているかもしれないという事だ」
「ッ……」
なるほど、それは考えていなかった。この世界はゲーム。設定を変えることによって出て来る敵の数どころか、その強さすらも簡単に変更が効くのだ。茅場晶彦は一レイドの人数を変える際、ボス戦で出て来るモンスターだけじゃなく、そのモンスターのレベル自体も弄っている可能性がある。それが、ディアベル達の考えだった。
「ルイン・コボルト・センチネルは確かにボスに比べればはるかに弱い敵だった。だが、もしもその強さを上げ、さらに数が増えるとなると……危険度は一気に増す」
「……」
この彼の言葉に緊張感を覚える面々。確かに、もしも数、強さ双方ともに上がっているとなると、その見た目以上に敵の強さ、数が増していると錯覚してしまう事だろう。それこそ、六倍、九倍くらいに。
なおかつ、自分たちには大事な任務があった。
「俺たちは今、このSAOの中で最前線をひた走る前線組を代表するプレイヤーだ。そう言ってもいい。だからこそ、だ。もし、このボス戦で一人でも死者が出たら、負けだと俺は思っている」
それは冗談でもなんでもない、ディアベルの本音だった。今、彼らの事を始まりの街にいるプレイヤーたちは待ち望んでいた。自分たちをクリアに導いてくれる存在として、英雄視していた。それをひしひしと、遠くからでも感じ取って余計なプレッシャーを貰っているアスナたち。
そしてディアベルの言葉を聞いて思った。もしも、その希望が、一人でも潰えたとしたら。一人のプレイヤーでも、この攻略戦で死んでしまったら。そうなれば、始まりの街にいるプレイヤーにとっては自分たちを解放してくれるはずだった人間が一人いなくなったと言う絶望があるし、これから攻略組に名乗りを上げようとしているプレイヤーも二の足を踏むかもしれない。
ソレを考えたからこそ、彼は言うのだ。この戦いで、死者を一人でも出すことは許されないのだと。
「そして、そのためにも、ここで、今! ≪LAボーナス≫の扱いについて取りまとめをしたいと思う」
「……」
ついに来た、LAボーナス、その意味とは果たしてそれは何なのか。
「本来、ボス戦で手に入れたコルやアイテムは、ボス戦攻略後にそれぞれのプレイヤーに均等に分配されることになっている。だが、一つだけ違う物がある。それが≪LAボーナス≫だ」
「……」
「≪LA≫とは、つまり……ラストアタックを意味する英単語だ」
「ラストアタック……」
最後の攻撃。要は、ボスに最後に攻撃を与えたプレイヤーに与えられる法相のようなものが、≪LAボーナス≫と、そう言う事なのか。
「≪LAボーナス≫で手に入れられるアイテムに関しては、推測だが、上層部に行かなければ手に入れることができないアイテムや、そのボス戦でしか手に入れられないアイテムがあると、そう考えている。だからこそ、希少性が産まれるのだからな」
「なるほど、ディアベル。君の言いたいことが何となんとなく分かった気がするよ」
と言ったのはカイトだった。昨晩、彼はディアベルから自分が≪LAボーナス≫を取りに行くつもりだった事を聞いていた。だからこそ、その危険性に行き当たったのだろう。
「≪LAボーナス≫は希少性が高い。だからこそ、ソレを狙おうとして最後の一撃を取ろうと必死になるプレイヤーが出て来る。そうなれば戦列がバラバラになって、敵からの攻撃への対処が滅茶苦茶になる恐れがある。下手をすれば、死人が出る。だから、ここでその≪LAボーナス≫への扱いを決めようと、そう言う事なんだろ?」
「そうだ……希少なアイテムを求める、というのは悲しいかなゲーマーの性なんでな。ここにいる多くのプレイヤーも、そうだろ?」
と聞くと、その場にいたプレイヤーの多くが顔を背けたり苦笑いをしていたりしていた。
本当にディアベルの言う通りなのだろうか。ここは、普通のゲームでもなんでもない、文字通り命を懸けたデスゲームの世界なのだ。その世界で生きるに際して、ゲーマーとしてのアイテムの希少性に目を付けてそれを必死に奪いに行こうとするプレイヤーがいるとは、考えにくい。
アスナはそう思っていた。しかし、悲しいかな、それがゲーマーの性と言ったのはディアベル本人であるし、実は昨日まで彼もまた、その希少な≪LAボーナス≫を手に入れて、ゲーマーたちを導く存在になることを狙っていた張本人。だからこそ、皆に伝えておきたかった。忠告しておきたかったのだ。
私利私欲で動くプレイヤーは、絶対にその命を落としてしまうのだと。
「βテストの折、第八層までしか到達できなかったことは、ガイドブックに書いてある通りだが、実はその第八層までのボス攻略戦において、そのほぼすべての≪LAボーナス≫を取得していた、あるプレイヤーがいた」
「え……」
その瞬間、ざわついた会場。無理もない。たかがゲームだった時代とはいえ、攻略中だった第八層を除いだ第七層までのボス戦全てに参加して、その全ての≪LAボーナス≫を取っていった猛者がいたなんて。そんなプレイヤーが一緒だと心強い、と多くのプレイヤーが思ったのだが、そうもいかないようだ。
ディアベルは言う。
「だが、そのプレイヤーはこのゲームをプレイしていない」
「え?」
「実は昨日一週間ほど前に黒鉄宮においてそのプレイヤー、≪キリト≫の名前を探したんだが……どこにも見つからなかった。もしもβと違う名前を使用しているのなら話は別だが、そうであったとしても前線までその名前が広まっていないと言うわけはないだろう。つまり、俺はその≪キリト≫というプレイヤーがゲームをプレイしていない、あるいはプレイする前に何らかの事情でデスゲームになった後のSAOに参戦できなかったと、そう考えている」
と。ディアベルは話した。
「キリト……」
「キリト?」
瞬間、リーファとMは脳裏に一人の名前を思い浮かべた。Mに関しては、実際にβの時にも出会ってたし、なんなら昨日その名前を聞いていた。
でも、事ここに来てMの脳裏をよぎった人間の名前は、現実のものであったのだ。まさか、そのキリトとはーーー。
「「まさか、ね」」
そう、≪『きり』ケ谷和『と』≫。リーファの兄であり、Mが現実世界で現状最後に救ったゲーム病の罹患者の名前、であった。
本小説、見てわかる通り参戦作品にあまりに年代的に幅を持たせすぎてる上になかなか読者に知られてない作品が今後も増えていくと思います。そこで、素朴な疑問ですが、そもそもこの小説見てる層がどこなのか、どの層に需要があるのか知りたいため質問したいと思います。質問は、大雑把ですが、気楽にお答えください。では、あなたはーーー。
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